プレスリリース 2011.10.31
2011年10月31日
日本野鳥の会が設置した野鳥保護区が釧路湿原国立公園に登録
早瀬・古山・渡邊野鳥保護区温根内の3か所合わせて56.5haが
釧路湿原国立公園に登録
公益財団法人 日本野鳥の会(事務局:東京、会長:柳生博 会員・サポーター数:約5万人)は、北海道阿寒郡鶴居村温根内に買取りと協定により設置した「早瀬野鳥保護区温根内」「古山野鳥保護区温根内」「渡邊野鳥保護区温根内」の3つの野鳥保護区が、2011年9月30日に官報号外で公示された釧路湿原国立公園拡張により、国立公園に指定されたことを報告する。
これまで当地域は、釧路湿原国立公園に隣接していながらも法的な指定がなされておらず、当会では、1990年から2006年までの間に、買取りや所有者と協定を結び野鳥保護区を設置することで湿原の保全を進めてきた。また、野鳥保護区の設置と並行して、1990年当時から法的保護指定も求めてきた。今回、こうした働きかけが実り、タンチョウの重要な繁殖地であることや、豊富な湧水がある理由から国立公園拡張の範囲に選ばれた。
かつて当地域は、周辺の森林の開発等により湿原に土砂が流れ込むことで、ヨシ原にハンノキが繁茂し、タンチョウが繁殖できない環境になっていたが、1990年に当会が野鳥保護区を設置し、ハンノキの伐採やヨシ原を復元する事業を進めてきた結果、2002年から再びタンチョウが繁殖するようになった。現在、当野鳥保護区では、3つがいのタンチョウが生息しており、1つがいについては今年度にヒナを育てているのを確認している。
今後、引き続き当地域がラムサール条約へも登録されるように国に働きかけ、各地に設置した野鳥保護区についても、鳥獣保護区などの見直しに合わせ、国に法的保護指定を働きかけていく。
登録された野鳥保護区について
早瀬(はやせ)野鳥保護区温根内 (19.5ha)
1990年、釧路湿原国立公園に隣接していながら法的な指定がなされていなかった湿原を、早瀬廣司・富氏からのご寄付をもとに買い取った。
環境は、ヨシ原とまばらなハンノキ林であり、1993年まではタンチョウが繁殖していたが、ハンノキが繁茂したため繁殖しなくなった。1999年より、タンチョウの営巣環境復元事業を進めた結果、2002年から再び繁殖をはじめた場所である。
古山(こやま)野鳥保護区温根内 (12.9ha)
1993年、釧路湿原国立公園に隣接していながら法的な指定がなされていなかった湿原を、所有者の古山正勝氏と保護協定を結び、野鳥保護区とした。
古山氏は「先祖から受け継いだ土地なので手放すことはできないが、この土地の自然環境を守ることは自分の願いでもある」と、当会と協定を結ばれた。
渡邊(わたなべ)野鳥保護区温根内 (24.1ha)
2006年、釧路湿原国立公園に隣接していながら法的な保護指定がなされていなかった湿原を、渡邊玲子氏のご寄付をもとに買い取った。
当野鳥保護区は、道道53号線の温根内橋から見ることができるオンネナイ川流域に広がる湿原。
野鳥保護区事業について
野鳥の生息地の保全を目的として、当会では「野鳥保護区」を設置している。これまでに北海道東部を中心に33か所、2938.9haを買取りや協定により確保してきた。これは東京ディズニーランドが59個入る大きさで、国内の自然保護団体が設置した保護区としては最大級の面積である。この土地の買取りの財源は、会員をはじめとする方々からの寄付で成り立っている。当会の最初の野鳥保護区は、1987年に根室に設置したタンチョウ営巣地の営巣地7.6haだった。それ以降、タンチョウ営巣地を中心に順次拡大を続け、2004年からタンチョウ保護と併せて、シマフクロウの生息地の買取りも開始している。野鳥保護区が集中する北海道東部では釧路地域と根室地域に事務所を置き、当会の専従職員を常駐させ、保護区の巡回監視にあたっている。
タンチョウGrus japonensis について
タンチョウは、かつて江戸時代までは道内全域に生息していたと言われているが、明治時代の乱獲と生息地である湿原の開発により激減し、一時は絶滅したと考えられていた。大正時代末期に釧路湿原で再発見されて以来、地元農家の冬期給餌などの保護活動が実り、個体数は1,300 羽を超えるまでになった。国の特別天然記念物にも指定されているが、分布は北海道東部に偏在し、冬期の人為的な給餌に依存している。また生息地である湿原の面積は減少する一方で、残されている湿原も営巣地の約半分は法律による保護指定がなされておらず、いつ開発されてもおかしくないのが現状である。
1987 年、(財)日本野鳥の会(現:公益財団法人 日本野鳥の会)は全国からの募金をもとに、タンチョウの越冬地である阿寒郡鶴居村の給餌人、伊藤良孝氏(故人)のご理解とご協力を得て「鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ」を開設した。そこでは日本野鳥の会のレンジャーが常駐し、タンチョウ保護のために生態調査や自然解説などを行う現地拠点となっている。また繁殖地の保護状況調査をもとに、タンチョウの営巣地でありながら法律で保護指定されていない湿原を購入、あるいは地主と協定を結ぶ等で、野鳥保護区を設置する活動を行っている。
- 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法) 「国内希少野生動植物種」
- 文化財保護法 「天然記念物」
- 改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物‐レッドデータブック‐ 2 鳥類 「絶滅危惧Ⅱ類(VU)」
- IUCN(国際自然保護連合)レッドリスト 「EN C1」
公益財団法人日本野鳥の会について (詳しくはホームページ http://www.wbsj.org)
自然と人間が共存する豊かな社会の実現を目指し、野鳥や自然のすばらしさを伝えながら、自然保護を進めている民間団体である。全国5万人の会員・サポーターが、自然を楽しみつつ、自然を守る活動を支えている。
・創設:1934 年 ・創設者:中西悟堂 ・連携団体:全国90 団体
・2011 年4 月、「財団法人日本野鳥の会」は「公益財団法人日本野鳥の会」へ移行しました。
<野鳥や自然を大切に思う心を伝えます>
- 全国10 か所のサンクチュアリやバードプラザを訪れる、年間約26 万人に野鳥や自然のすばらしさを伝えている。
- 東京バードフェスティバルなどの大規模イベントへの参加や野鳥図鑑などの発行を通して、
バードウォッチングの楽しさを伝えている。 - バードウォッチングの指導・案内のできる人材の育成を進めている。
<野鳥や自然を守ります>
- 北海道東部のタンチョウの営巣地を中心に、土地の買取りや協定により野鳥保護区として保全している。現在、保護区の面積は33 か所、2938.9ha で、自然保護団体としては国内最大級である。
- 鳥類の生息地として保全が急がれる場所を明確にするため、国際的に重要な鳥類等を指標にした重要度の基準(IBA基準)を満たした野鳥の重要な生息地の選定、リストの公表を行ない、保全の推進、ネットワーク化を行なっている。
<公益財団法人です>
日本野鳥の会は、公益財団法人に認定されており、個人や法人が支出した寄付金に対して所得控除や損金算入が設定されている。
本リリースの配布先
- 釧路総合振興局記者クラブ
- 環境省記者クラブ
- 環境記者会
<本件に関するお問い合わせ>
公益財団法人日本野鳥の会 鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ
担当:有田 茂生(ありた しげお)
〒085-1205 北海道阿寒郡鶴居村中雪裡南
TEL:0154-64-2620
公益財団法人日本野鳥の会 サンクチュアリ室
担当:富岡 辰先(とみおか たつゆき)、竹前 朝子(たけまえ あさこ)
〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル
TEL:03-5436-2634
図1:釧路湿原国立公園と、早瀬野鳥保護区温根内・古山野鳥保護区温根内・渡邊野鳥保護区温根内の位置図参考)今回拡張されたのは、釧路市11ha、釧路町1,440ha、標茶町331ha、鶴居村145ha の合計1,927ha。

2:早瀬野鳥保護区温根内・古山野鳥保護区温根内・渡邊野鳥保護区温根内の位置
参考)今回拡張された126ha のうち、当会野鳥保護区が56.5ha、国有地が48ha、その他個人所有地が21.5ha。

写真:渡邊野鳥保護区温根内の湿原風景







