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カラスフォーラム2001年 「都会のカラス問題に自治体はどう取り組むか」
開催日時: 2001年3月11日(日) 13:10〜16:30
開催場所: 日本教育会館(一ツ橋ホール) 8F第一会議室
共催: 環境省 (財)日本野鳥の会
後援: 東京都

 カラスは、昔から身近な鳥で、親しみを持たれる一方で神秘的あるいは気味の悪い鳥だったりしました。ところが、ここにきて「迷惑な鳥」、さらに「恐い鳥」というのが加わりました。都市地域での、カラスによる生活費害(ゴミを散らかす・うるさい・襲われる)が大きな問題になってきてからです。そして、カラスなんかみんな殺してしまえという声も大きくなりつつあるようです。でも、

  カラスはそんなに悪い鳥なんでしょうか。
  カラスと人はいっしょに暮らせないのでしょうか。

 野生鳥獣による害と言えば、農作物の食害がもっとも大きな問題です。被害の大きさは食べられた作物の価格で計られます。都市域でカラスがゴミを食べ散らかすと確かに迷惑ではありますが、人がいらないといって出したものを食べているだけですから被害額というと、どうなるのでしょう。危険だからといって駆除されてる動物は、クマですね。これも問題なんですが、それにしてもカラスはクマと同じくらい危険なんでしょうか。

 日本野鳥の会は東京周辺の支部と協力して、カラスの生息実態やゴミ散乱など生活被害との関係を調べ、カラスの問題について考えるシンポジウムを行って来ました。そして、人間側にも、改めるべき点が多いことを指摘してきました。

 ところで、カラスに困っている人が苦情を持ちこむ先はどこかというと、生活に密着した施策を実施する地方自治体です。苦情相談を受ける窓口担当の方は、日々対応に苦労されています。今回のフォーラムでは、そんな自治体の中から実際にさまざまな工夫でカラス被害の軽減に取り組んでいる方々と、カラスの生態の調査を実施している研究者など専門家が集まりました。

 都市に暮らすとはいえ、カラスは昔から日本に住む野生の生き物です。生息する数をどうするか。被害の軽減の有効な方法はなにか。具体的な対策を考える上で良いアイデアがきっと見つかることを期待してこのフォーラムを行いました。

  1. フォーラム概要
  2. 事例報告
  3. 鳥類専門家による報告
  4. フォーラム参加者の意見
  5. フォーラムの評価
   ※1〜5に関する出典:「生活と環境 平成13年5月号」


 
 
 
カラスフォーラム2001年 「都会のカラス問題に自治体はどう取り組むか」

1.フォーラム概要

日本野鳥の会研究センター 黒沢令子

 カラスは昔から人にとって身近な鳥だったが、それだけに農作物などを巡って人との軋轢があった。近年、とくに都市部において、野生のカラスがゴミを散らかしたり、人をおどかしたり攻撃したりするという生活被害が深刻化している。都市のカラス問題は、同じ地域にすむ人とカラスが、それぞれのライフスタイルとからみ合って起こる摩擦のようである。1999年から2000年までに日本野鳥の会は東京周辺の支部と協力して、東京のカラスについて生息実態とゴミの散乱など生活被害との関連を調査し、カラスの問題について考えるシンポジウムを行なってきた(カラスシンポ報告書I,II 1999)。その結果、ゴミ散乱の問題は人間側にも改めるべき点が多いことを指摘してきた。この問題は、私たち人間に対して、都市部における野生動物と共存するためのライフスタイルができていないことに端緒を発すると思われる。
 環境省では、2000年5月に都市生活の中で、カラスとつきあう心構えを紹介したパンフレットとビデオ(図1)を作成・配布した。カラスに困った人が苦情を持ちこむ先は自治体の担当者である。そこで、今年度は、カラスに悩む自治体の担当者向けの対策マニュアルを取りまとめるため、東京を中心とした5つの自治体でモデル事業を行なった。
 今モデル事業は、東京を中心とした自治体の中、2000年度に何らかのカラスに対する独自対策を行なっている自治体に協力をしてもらい、都市のカラス被害対策推進モデル事業を行なった。内容は、生じている生活被害の整理、カラスの分布調査、ゴミの散乱被害の調査、新たなゴミの散乱防止対策、アンケートなどによる効果測定とこれらにもとづい対策マニュアルの策定である。なお、このフォーラムで「カラス」と呼ぶのはおもにハシブトガラスのことを指す。このフォーラムはそのモデル事業の一環として、自治体の担当者の方々とカラスを研究している専門家を交えて情報交換や議論をしてもらう場として設定した(写真1)

環境省カラスパンフレット http://www.env.go.jp/nature/karasu/index.html


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2.事例報告

品川区におけるカラス対策

品川区環境清掃部清掃リサイクル課 中山武志

 品川区は23区内としては標準的な規模の自治体で、東海道の宿場町として始まった歴史があり、オフィス街、工場街、住宅地が混在する環境である。平成12年(2000年)の4月に清掃事業が都から区に移管されたことに伴い、より地域の実情に即した事業の実施について検討した。その結果、住民から苦情や要望が寄せられていたカラス対策について、きめこまかい施策を始めた(表1)。実施した対策は、駅前の繁華街における早朝の各戸収集、区が開発した折畳集ゴミ積ケースの設置、防鳥ネットの貸し出しなどである。
 ここでは、景観や設置場所の広さに配慮しながらもカラスによるゴミの散乱をなくすために、品川区と区内企業が共同で開発・製作した折畳式のゴミ集積ケースを紹介したい。長崎市で野犬によるごみの食い荒らし対策として集積所に設置されている折畳式のケースを参考にして、清掃事業所収集員の意見も踏まえ、改良・工夫したものである(写真2)
 開いた状態で幅120cm、高さ100cm、奥行き80cmで、折りたたむと奥行きが約20cmになり、通行上の障害を軽減できる。フレームはステンレスに樹脂加工を施し、網はFRP樹脂でできている。転倒防止のため、背面を器具で固定したり、開閉や格納がしやすいようにキャスターを取りつけたりという工夫をした。8月から設置を開始し、2000年度で27台を設置した。使用者には概ね評判はよいようで、苦情はきていない。

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2.事例報告

世田谷におけるカラス対策 −ごみ散乱防止ネットの配布―

世田谷区世田谷総合支所区民課相談 布施喜章

 世田谷区は住宅地を多く擁し、区域が大きいので5か所に総合支所を設けている(表1)
 カラスへの苦情は多いが、それぞれの支所が受け付けており、区全体でのまとめはない。カラスなどによるごみ散乱の苦情が多かったので、平成7年(1995年)にごみ散乱防止と地域の環境衛生の保全を目的として、ごみ集積所利用団体に対してごみ散乱防止ネットを試行的に配布した。要綱を制定して、区報で公募を行ない、抽選により903枚を配布した。使用後報告をしてもらい、効果測定をしたところ、「ごみ散乱が少なくなった」(87.8%)、「ごみの出し方が良くなった」(70.2%)という効果が確認された。
 2年間の試行期間をへて、平成9年度から3年間で区内の全ごみ集積所の7割に配布する目標を立て、要綱を見直し12,466枚を配布した。ネットの管理は利用している区民または団体に任せて自主管理とし、1ごみ集積所に対して1枚だけ配布した。破損、盗難などの場合も再配布はしていない。平成12年度(2000年)に清掃事業が区に移管になり、ネット配布事業の所管を清掃・リサイクル部に変更した。暫定措置として1年間、ネット配布期間を延長し、今後の対応については、区民課、環境課とともに庁内で検討している最中である。

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2.事例報告

日野市のごみ減量成功例

日野市環境共生部リサイクル推進課 大貫格

 日野市は都心から35kmの距離にあり、住宅地のほかに農地、工業団地を含む環境にあり、自然と調和のとれた都市建設を目指している(表1)
 市として家庭ごみの収集は昭和28年(1953年)に開始し、昭和44年(1969年)には増えつづける家庭ごみを効率良く収集するために鉄製のダストボックスを使用して、収集所方式で回収を始める。平成11年(1999年)に至り、人口あたりのごみ量およびリサイクル率が多摩地区で最も悪くなったので、リサイクルを徹底して、ごみの減量を目指すことを決定した。ごみの排出に市民が自覚と責任をもってもらうため、市で指定した有料のごみ袋を使用してもらうことにした。平成12年(2000年)10月に、ダストボックスを廃止・撤去し、戸別収集を開始した。9品目を資源物としてごみと同時に回収している。その結果、家庭ごみの収集量は、前年同月のダストボックスによる収集量と比較して50%以下になった。今モデル事業では,日野市が業者と開発した箱形ネット(ペタールボックス:写真3)と,個人住宅用に小型のチェーン付きネット(写真4)を試用している。
 ダストボックスや金網容器は、ルールを守って使えば、カラスやネコによる散乱を防止する効果はあるが、反省点としては四六時中ごみを出せるので、市民のごみ出しの時間を限る意識や、ごみを減らす意識が育たなかった。そのため、ごみがボックスから常にあふれ出ている場合も多く、散乱防止の役に立たないことも多かった。
 戸別収集と合わせて、生ごみの減量のために、電動生ごみ処理機の購入費を補助している。予算は1件25,000円を上限に2,700機分用意した。また飲食店を含む事業所に対して、排出者責任を徹底させるために、電話帳から全事業所を割り出してごみの排出物、排出量などを申告させ、パソコンで管理して、不法投棄の割り出しに役立てている。ごみの排出量が少ない事業所は依頼書を出せば、一般家庭と同じく市指定の有料ごみ袋で戸別収集の扱いをしている。ごみ出しの指導・管理として、「ポイ捨て条例」を実施し、不法投棄を見まわるパトロール員が6名、市内を巡回している。今後は、カラスの餌になるような生ごみの排出量ゼロを目指して、生ごみを堆肥化し、資源として活用する方向を検討している。

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2.事例報告

三鷹市におけるごみの夜間・早朝収集

三鷹市生活環境部ごみ対策課 川嶋直久

 三鷹市は緑が比較的に多く、市内全域が市街化区域の住宅地域である(表1)
 市内のごみ収集は戸別収集だが、駅前周辺の地区では飲食店や高層住宅の密度が高いので、排出されるごみの量が非常に多かった。この地区ではごみが散乱する被害が多く、美観も損ねるので住民から対策を望む声が上がっていた。市では、その対応策として、平成10年(1998年)1月より3か月の試行期間を設けて、夜間・早朝収集を行なった。その結果、欠点を補う効果があると判断されたので、平成12年(2000年)10月より本格実施を開始した。

 夜間・早朝収集のメリットとしては、
  1. 町の美化、
  2. カラスによるごみの散乱防止、
  3. 収集の作業効率化、
  4. ごみ出し遅れの防止など多様化したライフスタイルへの対応ができることがある。

 デメリットとしては、
  1. 作業騒音、
  2. 人件費などのコスト増、
  3. 作業員の労働体制負担増、
  4. マンションなどのごみ出し体制の変更の必要性などがあげられた。

 それぞれの問題について、一つづつ検討、試行をくり返して解決していった。例えば、騒音については、住宅街の収集を一番早く0時頃から始め、ごみ回収車の走行スピードを押さえること、声による合図に替えてライトを使用したこと、車両のバック警戒音を切ることなどきめこまかく対応した。またコストについては、駅前周辺地区は利用する市民が多いので、効果が現れれば、満足してもらえる市民の数が多いことを考え、コスト対効果を比較すれば、経費をかける価値があると判断された。作業員の労働時間が厳しくなることに関しては、健康を配慮して、作業ローテーションを適正に組むことで対応することができた。また、日中と比べると、交通渋滞や人や自転車などの混合交通への配慮などの心配をする必要がなく、作業効率が格段にあがったことは作業員にとっては、メリットとなった。マンションなどは個別事情の違いが想定されたので、1軒1軒職員が訪問して事情を聞き、変更への協力を要請して了解を得た。その後、対象とした駅前地区ではごみの散乱がなくなり、ほぼ順調に続いているが、さらに市民の意向を調査し、本事業の改善に向けて評価・検討をする必要があると考えている。

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2.事例報告

川崎市の現状

川崎市環境局川崎生活環境事業所生活環境推進事務 土田和幸

 川崎市は多摩川をはさんで東京の各都市と接しており、住宅地区のほかに、日本有数の工業地区、農業地区など多様な環境を擁する都市である。川崎市では、可燃ごみは週4日収集しており、ごみ散乱の被害への苦情はあるが、市として独自の散乱防止対策は今のところ行なっていない。農業地域からカラスによる被害の苦情が多いため、農協へ助成金を出して、猟友会へ依頼して有害鳥獣駆除により、年間平均400羽ていどのカラスが駆除されている。その結果の効果測定はしていないが、被害の苦情はいっこうに減っていない。
 そこで、農業振興課が、日本野鳥の会神奈川支部に依頼して、平成12年(2000年)12月から翌年1月にかけて、市内におけるカラスの生息調査を実施した。地元の自然保護団体と連携をとったことで、すみやかに実態調査を行なうことができた。現在はカラス対策といっても部署ごとに細分化されているため、一元化した対策をとることができないでいる。今後の課題として、調査結果を受けるとともに他都市の例を参考にして、もう一歩踏み込んだ対策を検討したい。

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3.鳥類専門家による報告

カラスによる人への攻撃事例研究(中間報告)

東京大学生物多様性科学研究所 森下英美子

 2000年夏期に東京都林務課で人を攻撃するカラスの巣を緊急捕獲したことをうけて、その事例について聞取り調査などを行ない、人を攻撃する事例が何故起きるのかその実態と起こるメカニズム、さらに未然に防ぐ知恵を探っている。
 カラスが人を攻撃するのは、圧倒的に繁殖期に多く、巣や雛に人が何らかの接触を行なった後に襲われることが多いことがわかった。事例としては、カラスを追い払った、巣のそばで枝を剪定した、巣のそばに登った、洗濯物を干したなどがあげられている。攻撃のパターンは後ろから飛んできて、足でこぶしを作り、それで蹴ることがほとんどで、大怪我にいたる場合は少ない。「つつかれた」と感じることが多いが、それは攻撃の瞬間を見ていないので、思いこみであることが多い。
 未然に防ぐ方法は、繁殖中はカラスを刺激しないことである。もし、攻撃を受けるようになってしまったら、繁殖が終わるまでたとえば1か月くらい、その場を迂回したり、帽子や傘をかぶって頭を防御するのがよい。こうした防御策が十分実施できないときは最後の手段として、雛が巣立つ前であれば、巣ごと撤去することも一時的に効果がある。いずれにせよ、野生動物であるカラスと共存するための知恵を人間がつける必要がある。

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3.鳥類専門家による報告

カラス問題解決に向けてのステップ

日本野鳥の会研究センター 黒沢令子

 環境省によるモデル事業の一環として、日本野鳥の会研究センターは東京周辺の4自治体でカラスの生息数とゴミの調査を行なった。その結果、東京では、カラスの密度は都心部に近い地域ほど高く、都心部から遠ざかるにしたがって、低くなる傾向が見られた。
 各協力自治体では、ごみ散乱防止のためにさまざまな工夫をしているが、今回のモデル事業でも、新たにゴミ散乱を防止する対策を講じてもらった。まだ結果は十分にまとまっていないが、用具を最も早くから配り始めた日野市ではモニターアンケートが返送されているので、2001年2月末の段階の中間報告をしたい。  日野市では2000年10月にダストボックスを廃止した際に、指定ポリ袋でゴミを戸外に置いておくと、カラスなどによってゴミが散乱するのではないかという住民の危惧が大きかった。そこで、ゴミを入れておく箱式ネット、ゴミの上に掛ける重し付ネットおよび、絞り式ネットをモニター市民に配り、ゴミの散乱防止に対する効果を測定した。多くの市民が2000年10月のダストボックス廃止以前には、近所でゴミが散乱しているのを目にしていたが、廃止・戸別収集開始以後はゴミの散乱を見ていないと答えた。また、散乱の度合いはダストボックス時代には激しかったが、戸別収集になってからは、散乱していても、範囲が小さいと答えた人の方が多かった。従来のようにカラスとゴミの接点を物理的に断つ方式では、人の側のルール違反やゴミの分量の管理が十分でなかった時に効果が落ちた反面、透明のプラスチック袋で排出しても、根本的にゴミの量を減らすことが散乱被害を減らすためには最も効果があったと考えられる。
 図2に、一たん問題がおきた時、どのようにして解決へ向けて歩んで行くかのステップを示したので、これに則って、科学的に危機を回避するシステムを考え、きめの細かい独自な対策を工夫して、解決に向かって一歩一歩慎重に歩む姿勢をもってほしい。

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3.鳥類専門家による報告

カラス問題対応マニュアルの作成にあたって

野鳥研究家 松田道生

 都市の周辺においてハシブトガラスによって引き起こされている問題に対処するため、特に行政の現場担当者が活用できるマニュアルを作成している。
 実態についての研究が進んでいない反面、マスメディアが作り上げた誤ったイメージがはびこっている現状がある。そこで、科学的な知識に基づいてできるだけ的確にカラスの実態を把握して対策を立てる必要がある。
 まず、都市において、カラスが引き起こす問題があることを認識すること(危機の認知)、正しい情報を十分揃えて方策を講じる姿勢をもつこと(現状調査)、都市住民の意識が多様化しているので多様な観点からの対策案が必要なこと(きめの細かい対策)、対症療法だけに頼らず、根本的な解決法を模索する必要がある(部署間の連携)。
 行政システムの中で点検する必要がある項目をまとめてみると、1)担当部署における認識度の確認をすること、2)苦情窓口の一本化をはかること、3)関係部署の連携をはかること、4)外部組織とのネットワークの構築(鳥類専門家、住民やボランティア)、5)継続して取組む体制の構築があげられる。

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4.フォーラム参加者の意見

 フォーラムの参加者には会場でアンケートを配布し、休憩時に回収した(図3:複数回答可)。
 第2部ではこれを集計して、その結果をもとに、参加者と意見交換を行なった。アンケートに答えてくれた人は89人おり、およそ150名の総参加者半数を超えたと思われる。仕事上でカラスと関わっている人は58人(65%)に及んだ。勤務先でみると17の区、4つの市、さらに他県の7都市からの参加者があった。近所でのカラス問題としてあげられた第1位はゴミの散乱64人(72%)で、第2位は鳴いてうるさい23人(26%)だった。人への攻撃をあげた人は18人(20%)だった。ゴミ対策がされている場合はその効果があがっているかという質問では、28人(39%)が多少あり、14人(19%)が多いにありと答えている。人を攻撃する事例についての質問では、直接蹴られたり、つつかれたことがある人が8人(44%)、そばを飛ばれて怖い思いをしたのが7人(39%)だった。攻撃の理由としてわかっているのは、巣の近くを通ったことで12人(67%)、次いで雛を連れていた3人(17%)で共に繁殖行動に由来する例だった。行政に期待するカラス対策としては、第1位が餌を断つことで62人(70%)、第2位は生態系の理解を深めるで37人(42%)だった。駆除や巣を落として欲しいと答えた人はそれぞれ13人と11人だった。最後に根本的解決のためにどのような対策が良いと思うかという質問では、68人(76%)が餌を断つことと答え、次いで生態系への理解を深める38人(43%)があり、駆除や巣を落とすと答えた人は9人と7人になった。

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5.フォーラムの評価

 環境省の担当者からは、従来になかったような形式で、モデル自治体の実例を現場担当者から詳しく聞くことができ、大変意義深かったという意見があった。モデル自治体担当者は、それまで、清掃部門とカラスへの苦情受付部門が、膝を接して話し合ったことがほとんどないのが実情だった。そこで、今回、カラスの専門家を通して、始めてカラス問題を正面から捉えるに至ったという感想を述べていた。その意味で、モデル事業を通してではあるが、対策をとる際に必要な部署の担当者が情報交換を行なうのに適した会であったと思う。
 主催者である日本野鳥の会や環境省、また後援の東京都から、担当部署を通してフォーラムのお知らせを行政の関連部署に流しておいたので、来場者の中には東京周辺の自治体の行政担当者も多く、環境課、公園課、動物園関係者、野生動物保護関係者、鳥類専門家など多彩な顔ぶれだった。参加者もある程度広域でのカラス対策を考える立場の人が多かったので、具体的で建設的な質疑応答ができたと思う。


 
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