プレスリリース 2006.10.24

羽田空港再拡張「神奈川口」構想の具体化に関し、多摩川河口干潟に悪影響を与える「橋梁案」の見直しを求め、国交省・神奈川県等に申し入れ

2006.10.24

(財)日本野鳥の会(事務局:東京、会長:柳生博 会員・サポーター数:約52,000人)と(財)世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン、事務局:東京、会長:大内照之、個人サポーター:約35,000人・法人サポーター:約300社)は、羽田空港と対岸の川崎市を連絡橋で結ぶ「神奈川口」構想に対し、東京湾に残る貴重な自然干潟の一つである「多摩川河口干潟」の重要性を考慮し、干潟に直接的な悪影響を及ぼすと考えられる「橋梁案」の見直しと、河川敷を含めた自然環境の保全・再生を求める別紙の要望書を、「神奈川口構想に関する協議会」及び「京浜臨海部基盤施設検討会」の主要メンバーである国土交通省・神奈川県・東京都・川崎市・横浜市に提出しました。

多摩川河口干潟は、埋め立て等により多くの干潟が失われた東京湾奥部にあって、なお良好な干潟生態系をとどめており、プランクトンからゴカイ類、貝類、藻類、魚類、渡り鳥に至る多様な生物空間を形作っています。また、この生態系により、水質の浄化機能や、有用な魚介類の稚仔魚を育成する機能を担っています。また、都会の中で本物の自然に触れられる場所として、多くの人が自然観察や散策等に利用しています。

科学的にも、多摩川河口干潟で確認されたレッドデータブック掲載種は、環境省基準で14種、神奈川県基準で37種に及び、標識調査結果(山階鳥類研究所の資料による)によれば米国アラスカ州、豪州各地などから定期的にシギ・チドリ類の渡りが確認されています。こうしたことから、多摩川河口干潟は、環境省の「日本の重要湿地500」及び「モニタリングサイト1000事業シギ・チドリ類調査地」に、また国土交通省により策定された多摩川水系整備計画でも「生態系保持空間」に位置づけられ、国際的な鳥類保護組織であるバードライフ・インターナショナル(BirdLife International )が選定した重要野鳥生息地(IBA;「東京湾奥部」)にも指定されています。

このように、多摩川河口干潟は、人間にとっても動植物にとっても高い価値を持った場所と位置づけることができます。要望書ではこの点を指摘し、神奈川口構想の具体化に向け、連絡道路を干潟上にかかる橋梁でわたす「橋梁案」を見直し(中止)、また干潟や河川敷の自然環境をより豊かにしそこを利用する人々にとっても心潤う空間とするよう、求めています。

要望書提出先

国土交通大臣、神奈川県知事、東京都知事、川崎市長、横浜市長

同時発表

環境問題研究会、環境記者会、神奈川県県政記者クラブ

<本件に関するお問い合せ先>
(財)日本野鳥の会 自然保護室 TEL.042-593-6872(古南:こみなみ)
(財)世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)TEL.03-3769-1713(花輪:はなわ)


資料写真:提供 日本野鳥の会 神奈川支部

1. 多摩川河口干潟の環境写真
1. 多摩川河口干潟の環境写真

2. 多摩川河口干潟を代表する鳥類 オオソリハシシギ
2. 多摩川河口干潟を代表する鳥類 オオソリハシシギ

3. 多摩川河口干潟で日本で初めて観察されたコシジロウズラシギ
3. 多摩川河口干潟で日本で初めて観察されたコシジロウズラシギ


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プレスリリース 2006.10.19

日本野鳥の会が「(仮称)根室ウインドファーム環境影響評価調査方法書」 に対し意見書提出

2006.10.19

2006年10月19日、日本野鳥の会 根室支部(事務局:根室、支部長:細川憲了、支部会員:約80人)と、(財)日本野鳥の会(事務局:東京、会長:柳生博、会員・サポーター数約5万2千人)は、株式会社ユーラスエナジージャパン(以下、ユ社)の「(仮称)根室ウインドファーム環境影響評価調査方法書」に対し、連名で別紙のような意見書を提出しました。意見書では、ユ社の根室半島での風力発電用風車15基の建設計画予定地が、オジロワシなどの希少鳥類の生息地であり、風車への衝突事故がおこらないように、必要な調査を行なうことを求めています。

■(仮称)根室ウインドファームの環境影響評価 について

ユ社では、根室半島の歯舞地区に風力発電用風車 15基の建設を計画しており、経済産業省が推奨するガイドラインに従って行う自主的な環境影響評価のための方法書を作成し、9月5日から10月4日まで 根室市 で縦覧した。意見書の提出期間は、9月5日から 10月19日までであった。

■建設計画予定地の自然について

ユ社の建設計画予定地周辺では、オジロワシ(種の保存法国内希少野生動植物種、天然記念物、環境省RDB絶滅危惧IB類、北海道RDB絶滅危惧種)をはじめ、オオワシ、タンチョウ、コクガン、オオジシギなどの希少鳥類が生息し、特にオジロワシとタンチョウは、これまで同予定地周辺で営巣が確認されている。同予定地周辺は、これらの鳥類にとって、重要な生息地となっている。また予定地全域は、環境省(2002)において、「根室半島湿原群」として「日本の重要湿地500」に選定されている。

■野鳥への影響について

オジロワシによる風車への衝突事故は、これまで国内で5例が確認、公表されている。(財)日本野鳥の会が 2006年7月に行った同予定地周辺でのオジロワシの生息状況の予備的な調査では、予定地上空を通過する個体が確認された(調査結果を参考資料として別紙に添付)。このことからも、同予定地周辺では、同種による衝突事故の可能性があると考えられる。

本件についての問合せ先
・日本野鳥の会 根室支部
(担当:事務局長 金澤裕司)
・財団法人日本野鳥の会 自然保護室
(電話: 042-593-6872、担当:自然保護室 室長 古南 幸弘)

日野鳥発第 60号
平成18年10月18日

株式会社ユーラスエナジージャパン 御中

日本野鳥の会 根室支部
支部長 細川憲了
北海道根室市西浜町 3-56
加藤宅

財団法人 日本野鳥の会
会長 柳生 博
東京都渋谷区初台1- 47-1
小田急西新宿ビル1F

「(仮称)根室ウインドファーム環境影響評価方法書」に対する意見書

 この度、御社が作成された「(仮称)根室ウインドファーム環境影響評価方法書」について、私どもでは、下記のように意見を提出しますので、よろしくご検討ください。なお、今回のように根室でのウインドファーム計画策定にあたり、環境影響評価方法書を提示し、意見を公募される機会を設けられたことを評価しております。

(1)【予定地で確認されている希少鳥類について】

 予定地周辺では、以下の希少鳥類が確認されており、それぞれ保存法、保護指定、レッドデータブック指定をうけている。このため、これらの鳥類への影響を明らかにするための調査計画が必要である。

■ オジロワシ
・ 種の保存法 国内希少野生動植物種
・ 文化財保護法 天然記念物指定種
・ 環境省 RDB 絶滅危惧IB類
・ 北海道 RDB 絶滅危惧種
■ オオワシ
・ 種の保存法 国内希少野生動植物種
・ 文化財保護法 天然記念物指定種
・ 環境省 RDB 絶滅危惧 II 類
・ 北海道 RDB 絶滅危惧種
■ タンチョウ
・ 種の保存法 国内希少野生動植物種
・ 文化財保護法 天然記念物指定種
・ 環境省 RDB 絶滅危惧 II 類
・ 北海道 RDB 絶滅危惧種
■ コクガン
・ 文化財保護法 天然記念物指定種
・ 環境省 RDB 絶滅危惧 II 類
・ 北海道 RDB 希少種
■ オオジシギ
・ 環境省 RDB 準絶滅危惧
・ 北海道 RDB 希少種
<参考資料>
・ 文化財保護法(法律 第214号)
・ 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(法律第 75号)
・ 環境省.2002.改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物-レッドデータブック-鳥類.東京
・ 北海道.2001.北海道の希少野生生物 北海道レッドデータブック2001.北海道

(2)【方法書第4-2-1表(4)、第4-2-1表(5)について】

 鳥類調査は、年4回実施することとしているが、これでは不十分である。また、調査方法として「ラインセンサス法」「ポイントセンサス法」「任意観察調査」を挙げているが、それぞれの調査地点、調査時期、調査期間、調査日数が全く不明であるため、以上の点について明確にする。

(3)【方法書第4-2-1表(4)、第4-2-1表(5)について】

 オジロワシによる風車への衝突事故は、国内で、既に5例が確認(2006年5月現在)されている。予定地周辺でオジロワシの生息可能性が認められるにもかかわらず、風車への衝突事故の危険性を予測するための調査手法が明示されていない。(予定地周辺では、2006年度、オジロワシ1つがいが繁殖し、古巣1つ、若鳥2羽以上の生息が確認されている。また、根室市中心部以東の根室半島部では、過去5箇所でオジロワシの営巣が確認されている場所がある。)

(4)【方法書第4-2-1表(4)、第4-2-1表(5)について】

 正富宏之教授のご退任を祝う会(2004)やタンチョウ保護調査連合(未発表)では、予定地周辺にあるトーサンポロ沼周辺で、1989年以降タンチョウの営巣を今までに4回、2005年、2006年に1つがいの生息を確認している。また、予定地周辺のサンコタン川水源地付近で、1996年以降断続的に営巣を確認している。しかし、同種の生息状況を把握する調査手法が明示されていない。

(5)【方法書第4-2-1表(4)、第4-2-1表(5)について】

 予定地周辺の海や湖沼には、春・秋に多数ガンカモ類が渡来し、越冬期にはコクガンなども確認されている。また、予定地周辺には、越冬のためオジロワシ・オオワシが多数飛来する。これら鳥類のうち、オジロワシは一年中確認され、2006年7月には予定地を縦断していることが確認されいる。その他の鳥類についても、太平洋側とオホーツク海側を行き来し、予定地を縦断することが予想される。しかし、それらの状況を把握するための調査手法が明示されていない。

(6)【方法書第4-2-1表(4)、第4-2-1表(5)について】

 根室半島には、ラムサール条約湿地である風蓮湖・春国岱をはじめ、ガンカモ類が訪れる湖沼が点在している。これらのガンカモ類がどのようなルートで、根室半島に訪れているかの調査は、これまで行われていない。ガンカモ類が、予定地周辺を通過しているかを把握する調査を行う必要がある。

(7) 【方法書第4-2-1表(4)、第4-2-1表(5)について】

 予定地周辺では、4月下旬~6月下旬にかけて、オオジシギの誇示飛翔が頻繁に確認されているが、オオジシギの生息状況を把握するための調査手法が明示されていない。

(8) 【方法書第4-2-1表(4)、第4-2-1表(5)について】

 予定地全域は、環境省(2002)において「根室半島湿原群」として「日本の重要湿地500」に選定されている場所で、根室半島最大の高層湿原であるが、方法書では、植物に係わる重要な種の選定基準とした文献に「日本の重要湿地500」が含まれていない。以下、表1に『「日本の重要湿地500」選定調査の選定基準』、表2に『根室湿原群の「日本の重要湿地500」選定理由・選定基準』を示す。

表1.「日本の重要湿地500」選定調査の基準(環境省2002)
基準 ① 湿原/塩性湿地、河川/湖沼、干潟/マングローブ林、藻場、サンゴ礁のうち、豊かな生物多様性を有している又は相当の規模の面積を有している場合
基準 ② 希少種、絶滅危惧種、固有種等が生育・生息している場合
基準 ③ 多様な生物相を有している場合
基準 ④ 特定の種の個体群のうち、相当数の割合の個体数が生育・生息する場合
基準 ⑤ 生物の生活史の中で不可欠な地域(採食場、産卵場等)である場合

表2.根室湿原群の「日本の重要湿地500」選定理由・基準等(環境省2002)
湿地名 湿地タイプ 選定生物 生育・生息 選定理由 選定基準
根室湿原群(根室半島湿原、ホロニタイ・フレシマ湿原、タンネ沼・オンネ沼、南部沼、長節湖、落石岬湿原、落石西湿原、落石湿原、ヒキウス沼、沖根辺沼) 高層湿原など複合型湿地、湖沼 湿原植生 根室半島湿原群(根室半島湿原、ホロニタイ・フレシマ湿原、タンネ沼・オンネ沼・南部沼・長節沼、落石岬湿原、落石西湿原、落石湿原) 歯舞の台地には高層湿原が発達している。主要な植生はヌマガヤ-イボミズゴケ群落とイソツツジ-チャミズゴケ群落、ムジナスゲ群落、ミクリ属群落、ケヤマハンノキ林。ガンコウラン、イソツツジ、エゾマルバシモツケ、クロマメノキ、コケモモ、エゾゴゼンタチバナ、ホロムイクグ、アラハシガゴケなどを産す。落石岬とその周辺台地の湿原植生は湿原生アカエゾマツ林のほか、ヌマガヤ-イボミズゴケ群落、イソツツジ-チャミズゴケ群落。落石岬にはサカイツツジが隔離分布する。海岸低地湖沼周辺の湿地にはヨシ-イワノガリヤス群落とヤチヤナギ-ムジナスゲ群落を中心とする低層湿原。水辺にはヤラメスゲ群落やフトイ群落、ガマ群落、その他水生植物群落。
水草 南部沼・オンネ沼・長節沼 ネムロコウホネ、沈水性ヒルムシロ属等の種の多様性が大きく、特に南部沼・オンネ沼は環境が悪化しておらず道東本来の湖沼植生が残る。 ①③
その他鳥類 根室湿原群(フレシマ湿原、タンネ沼・オンネ沼、ヒキウス沼、沖根辺沼) タンチョウの生息地。営巣数の約4%が存在。 ②④
昆虫類 落石岬 カラフトルリシジミ、オクエゾクロマメゲンゴロウ、ノサップマルハナバチの生息地。
淡水貝類 根室湿原群・別寒辺牛湿原・釧路湿原 ミズシタダミ類、マメシジミ類。種の多様性が高い(北方系貝類要素)。

(9)【方法書第4-2-1表(4)、第4-2-1表(5)について】

 予定地内にある歯舞の湿原では、以下の植物が確認され(ねむろ花しのぶの会)、それぞれレッドデータブック指定をうけている。

■ ホロムイコウガイ
・環境省 RDB 絶滅危惧IA類
・北海道 RDB 絶滅危急種
■ ネムロスゲ
・環境省 RDB 絶滅危惧 II 類
■ ヒメツルコケモモ
・環境省 RDB 絶滅危惧 II 類
・北海道 RDB 絶滅危急種
■ ホロムイクグ
・環境省 RDB 絶滅危惧 II 類
・北海道 RDB 絶滅危急種
■ テガタチドリ
・北海道 RDB 絶滅危急種
■ チシマウスバスミレ(ケウスバスミレ)
・環境省 RDB 絶滅危惧 II 類
・北海道 RDB 希少種
■ エゾゴゼンタチバナ
・環境省 RDB 絶滅危惧IB類
・北海道 RDB 希少種
■ ヒメミクリ
・環境省 RDB 絶滅危惧 II 類
・北海道 RDB 希少種
<参考資料>
・環境庁.2000.改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物-レッドデータブック-植物I.東京
・北海道.2001.北海道の希少野生生物 北海道レッドデータブック2001.北海道

(10)【第4-2-1表(5)について】について

 評価の手法についての説明が不明瞭で、どのように評価していくのかがわからない。

(11)【風車への野鳥の衝突事故に関するモニタリング調査について】

 根室半島では、2005年12月10日に、昆布盛のウインドファームで、オジロワシの衝突事故が発見されている。こうした事故は今後も起きる可能性があるので、現在、根室半島で稼動している風車の被害状況を確認し、対策を検討することが必要である。また、根室の夏は、毎日のように霧が発生する。そのため、霧の影響をはかることも必要である。稼動中の風車を巡回し、風車に衝突したと思われる鳥類の有無を確認するモニタリング調査の実施が必要である。1年間、特に霧の発生時期は毎日行い、その他の時期は、月2回連続3日以上ずつ実施すべきである。

(12)【鳥類の調査について】

 上述の(1)~(7)の意見を踏まえ、以下に必要と考えられる調査方法を示す。

  1. センサス調査の実施
    予定地周辺の小鳥類の繁殖状況を把握するために、センサス調査を実施する必要がある。調査方法は、植性、環境の連続性または断片化を考慮して、ラインセンサス法またはポイントセンサス法を選択する。調査コースは、予定地全域をカバーできるように設定する。ポイントセンサス法の場合、環境を抽出し、各環境毎(海岸、湖沼岸、草原、高層湿原、林)にコースを設定し、5月下旬から7月に各コース5回以上実施することとする(植田等2006)。また、年間の鳥類相を把握するために、3月、6月、9月、12月に各1度、各コース5回以上実施する。
    これらの調査で、希少鳥類が見つかった場合は、別途必要な追加調査を行うこととする。

  2. オジロワシ・オオワシの生息状況調査
    オジロワシ・オオワシの生息状況を把握するために、時刻、場所、移動経路、飛行高度、行動(採食、休息、ディスプレイやエサ運び、造巣などの繁殖に関わる行動)を把握する定点調査を実施する必要がある。定点位置は、予定地全域を把握できるように複数箇所設置し、見落とす範囲がないようにする。調査期間は、繁殖期、特に活動が盛んになる造巣期、育雛期、越冬期を含む通年とし、最低でも各時期において、行動圏の記録面積が飽和するまで行なう。時間は、日の出から、日没にかけて実施することとする。特にオジロワシの繁殖期の生息状況調査は、環境庁自然保護局(1996)に従い、連続した2繁殖シーズンを調べることとする。さらに、繁殖期と重なる時期は、濃霧に覆われることが多く、越冬期は、降雪と強風のため吹雪の発生が多い。悪天候と晴天時では鳥類の行動の違いがあることも考えられ、特に濃霧の発生時期、降雪期には、悪天候時にも調査を実施する必要がある。

    参考資料1として、2006年7月7・9日に実施した、オジロワシの生息状況調査の結果を添付する。同調査は、午前5時から午後5時まで実施した。これを元に、朝(8:00-8:30)・昼(12:00-12:30)・夕(16:30-17:00)に各30分ずつ同様の調査を行った場合のデータを参考資料2として添付する。参考資料1図1参考資料2から、短時間の調査では、生息状況を把握するために十分なデータがとれないことがわかる。>

  3. タンチョウの生息状況調査の実施
    タンチョウの生息状況を把握する必要がある。特に繁殖行動について調べる必要があり、時刻、場所、移動経路、飛行高度、行動(採食、休息、ディスプレイやエサ運びや造巣などの繁殖に関わる行動)を把握する定点調査を行うこととする。繁殖期から越冬地へ移動するまでの期間、毎月複数回の調査を実施する必要がある。また、特に繁殖期は、連続した2シーズンの調査を行うこととする。

  4. オオジシギの生息状況調査の実施
    オオジシギの生息状況を把握するために、繁殖分布状況を把握する調査を実施する必要がある。観察される個体の誇示飛翔行動域を把握するために必要なメッシュサイズを調査人員や調査能力から考えて設定し、空間の利用状況をできるだけ詳細に把握すると同時に飛行高度も記録する。また、同調査時に単位時間毎に個体数を記録し、最も多かったものを当該地域の個体数とする。時期、時間によって、オオジシギの行動圏(誇示飛翔域)が変化するため、特に誇示飛翔が盛んに行われる4月下旬から7月上旬までの間、毎月複数回の調査を行う。1回の調査では、朝、昼、夕、夜毎に行うこととする。

  5. ガンカモ類の生息状況調査の実施
    ガンカモ類の生息状況を把握するために、時刻、場所、移動経路、飛行高度を把握する定点調査を実施する必要がある。定点位置を、予定地全域を見通すことができる場所に数箇所設置し、ガンカモ類の渡来時期に毎週1回とする。時間は、日の出から日没、及び夜間、実施することとする。

以上


参考資料1

根室市温根元~珸瑶瑁地区におけるオジロワシの生息状況調査

山口 桂賜※1 ・ 長岡 滋雄※2

※1.(財)日本野鳥の会 サンクチュアリ室  〒151-0061 東京都渋谷区初台1-47-1 小田急西新宿ビル1階
※2.霧多布湿原自然学校 〒088-1365 北海道厚岸郡浜中町茶内橋北東53

はじめに

 北海道東部に位置する根室半島先端部の根室市温根元~珸瑶瑁地区では、オジロワシ Haliaeetus albicilla の生息や繁殖が確認されているが、同地域でのオジロワシの生息エリアを明らかにする調査は、これまで行なわれていない。この報告では、これを明らかにするために行なった基礎的な調査結果について述べる。

調査地と調査方法

調査地は、根室半島先端部に位置する、根室市温根元~珸瑶瑁周辺である。同地域は、北部のオホーツク海(根室海峡)と、南部の太平洋に挟まれた半島部に位置し、オホーツク海側に2つの漁港、太平洋側に 1つの漁港があり、北部にトーサンポロ沼があり、内陸部は牧草地である。
調査定点は、トーサンポロ沼東側と南側に各 1ケ所設置した。調査は、8~10倍の双眼鏡、20~40倍の望遠鏡をもちいて、7時から17時までの間に、調査エリア内を休止・飛行するオジロワシの休止位置・飛行ルートを地図上に記録した。
また、5時から6時まで、調査エリアを一周する約 21kmの周回コースを自動車で走行し、車中から確認されたオジロワシの休止位置・飛行ルートを地図上に記録し、6時から7時までの間に、定点周辺の道路沿いに2コース(2.25km、2.43km)を設定し、徒歩または自動車で確認されたオジロワシの休止位置・飛行ルートを周り、周辺のオジロワシの生息状況の確認を行った。
定点調査は、 2006年7月7日、7月9日の2日間、合計20時間実施した。調査員の延べ人数は4名であった。

調査結果

2006年7月7・9日の調査結果を図1にまとめた。
トーサンポロ沼の南東部に位置するポンオンネモト川周辺と、太平洋側を行き来するオジロワシや、トーサンポロ川の南部に位置する牧草地を東進するオジロワシが確認された。ポンオンネモト川の南部牧草地にある牧柵で休止することがよく確認された。また、当該地域には、今シーズンの繁殖は失敗しているものの、オジロワシ 1つがいの営巣が確認されており、その営巣地を休止場所の一つとして移動するオジロワシも確認された。
調査地周辺を一周する約 21kmのコースでは、7月7日にオジロワシ1羽1ヶ所での休止が確認され、定点周辺の道路沿いの2コースでは確認できなかった。

2006年7月7・9日オジロワシの休止位置・飛行ルート
図1.2006年7月7・9日 オジロワシの休止位置・飛行ルート


参考資料2

2006年7月7・9日 オジロワシの休止位置・飛行ルート
(8:00、12:00、16:30から各30分間のデータを抽出したもの)

2006年7月7・9日 オジロワシの休止位置・飛行ルート(8:00、12:00、16:30から各30分間のデータ)


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プレスリリース 2006.09.25

「風力発電施設が鳥類に与える影響に関する国際シンポジウム」の開催

2006.9.25

 最近は風力発電施設に鳥類が衝突するバードストライクの問題が注目されるようになってきましたが、財団法人日本野鳥の会では、国際シンポジウムとしては国内で初の「風力発電施設が鳥類に与える影響に関する国際シンポジウム」を地球環境基金の助成を受け、開催することにしました。この件について、報道発表および当日の取材をしていただけるようお願い申し上げます。

日時: 2006年11月4日(土) 開演10:00 閉演16:30
場所: 日本教育会館 一ツ橋ホール(〒101-0003 東京都千代田区一ツ橋2-6-2)

 地球温暖化防止のための自然エネルギーとして風力発電の設置が推進されていますが、欧米では鳥類への悪影響が数多く報告されています。日本国内でも設置基数が増えるに従い、希少種を含む鳥類が風車に衝突死するケースが報告されるようになってきました。風車は風況のよい地域に計画されますが、そのような場所は鳥の通り道にもなりやすいため、風車と鳥類の関わりについて慎重に考える必要があります。しかし、我が国では風力発電事業は環境影響評価の対象外であり、施設設置にあたっての環境影響評価のガイドラインも十分とはいえません。また、事故のメカニズムについても系統的な調査研究はなされておらず、野生生物への影響の回避については制度的にも方法論的にも整っていない状況です。

 風力発電の導入を推進する一方で、生物多様性に与える影響を回避、最小化するために、我が国でも鳥類に実際にどのような悪影響を与えるか調査研究を行い、環境影響評価の枠組みを整備する必要性と緊急性が高まっています。こうした取り組みが遅れている日本では、海外の事例を参考にし、それを国内の状況に合わせながら対応を進めていくことも必要と考えられます。

 そこで(財)日本野鳥の会は、風力発電と野鳥の関係について多くの知見を持つアメリカとイギリスから専門家を招き、外国の事例を参考にしながら、国内の関係者とともに国内でどのようにこの問題について取り組んでいくかを議論していくために、平成18年11月4日(土)に東京は一ツ橋の日本教育会館で風力発電施設が鳥類に与える影響に関する国際シンポジウム(通称:バードストライク国際シンポジウム)を開催いたします。

本件に関する問合せ先
(財)日本野鳥の会自然保護室:浦 達也
(TEL042-593-6871)


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PDF 風力発電施設の影響についての国際シンポジウムに関するプレスリリース

プレスリリース 2006.09.11

鳥類の愛玩飼養は、すみやかに終息させるべき
― 野生鳥獣の愛玩飼養はメジロとホオジロに限り1世帯1羽のみ認められている。
この2種とも愛玩飼養の許可対象からはずし、野生鳥類の愛玩飼養の歴史に終止符をー

2006.9.11

鳥獣保護法は、今年の6月8日、通常国会において改正された。しかし多数の附帯決議が付いたことに表れているとおり、抜本的な問題は今回の改正では解決されておらず、鳥獣保護行政には課題が山積しているのが実情である。このような中で、改正法を受けて各都道府県の策定する「鳥獣保護事業計画」の新たな基本指針を検討するため、環境省では3つのワーキンググループ(WG)を立ち上げた(鳥獣保護事業に関するWG、特定鳥獣保護管理計画に関するWG、人材育成に関するWG)。これらのWGには学識経験者だけでなく、それぞれNGO職員を委員として迎えており、多様な意見に耳を傾けようとする同省の姿勢は高く評価できる。
これらWGで野生鳥獣の保護管理についての様々な課題について議論が重ねられているが、当初期待したような成果が今ひとつ出せないでいる。利害の調整が難しい局面に及ぶと、どうしても従来路線の延長で穏便に決着を図ろうとしてしまう傾向がある。その典型例が、野生鳥獣の愛玩飼養の議論である。
日本国内に生息する野生鳥獣の愛玩飼養についての考え方は、実は基本的なところで一致を見ている。それは、以下のとおりである。「野生鳥獣の愛玩飼養は、鳥獣は本来自然のままに保護すべきであるという理念にもとるのみならず、鳥獣の乱獲を助長する恐れもあるので、飼養のための捕獲又は採取の規制の強化に努めるものとする」(環境省作成資料より)。この考え方の原型は、実は50年も昔にさかのぼることができる(昭和32年鳥獣審議会答申「本来は捕獲を禁止すべきものであるが、旧来より飼養の慣行もあるので、制度の運用に当たっては、学術研究、教育参考資料、愛がん飼養のため必要な場合に限り、最小限度においてこれを許可するようにすべきである」)。そもそも、昭和25年には野生鳥獣の愛玩飼養を制限する方向性が出されていたが、一挙にすべての飼養を禁止すると、野鳥の飼養慣行がまだかなり残っていた当時の社会状況から混乱が起きるとして、ヒバリ、ウグイス、ヤマガラ、メジロ、ホオジロ、マヒワ、ウソの7種に限って飼養目的の捕獲を許可するという制度が、やむを得ない措置として導入された。その後、上記答申の考え方に沿って許可対象種は削減されてきた。昭和53年の自然環境保全審議会答申には、より明瞭に廃止の考えが示された(「日本に生息する種類の鳥獣の愛がん飼養を広範囲に認めることは、鳥獣は本来自然のままに保護すべきであるという理念にもとるのみならず、鳥獣の乱獲を助長することとなるおそれがあるので、廃止することが望ましい」)。これを受け昭和54年にヒバリとヤマガラが、昭和55年にウグイスが許可対象からはずされた。平成11年にはマヒワとウソがはずされ、残すところメジロとホオジロの2種になっている。
そして、今回のワーキンググループでは、ホオジロをはずし、メジロ1種を残すという提案がなされている。ホオジロは飼養数が減っている現状にかんがみて賢明な判断である。メジロについては、9月5日に開催された第3回鳥獣保護事業に関するWGでは、ホオジロ同様許可対象からはずすべきであるという意見がWWFジャパンのみならず、他の委員からも強く出された。一度にすべて禁止すれば混乱が生じるから漸次削減していくという措置に50年以上を費やしているのは、社会通念上もはや通用しない。今回は社会的状況が整っており、2種とも許可対象からはずすのが妥当であろう。
鳴き合せ会での入賞をねらい、声の美しいメジロを違法捕獲する事例があとを絶たないのは、各種報道のとおりである。違法行為に抜け穴を用意しているかのような措置は、そろそろ終わりにすべきである。特定外来生物の指定にあたって、ブラックバスをすみやかに指定すべきであるとした小池大臣の手腕に注目したい。

お問合せ先
WWFジャパン 草刈秀紀 Tel:03-3769-1713 /広報担当:大倉寿之
日本野鳥の会 古南幸弘 Tel:042-593-6872
全国野鳥密猟対策連絡会 中村桂子 Tel:075-864-0777


参考

■野鳥の密猟事例
  • 2006年5月12日 茨城県高萩署が、鳥獣保護法違反容疑で高萩市の60歳男性宅を家宅捜索し、メジロ、ヤマガラ、オオルリなど9種76羽の野鳥を押収。
  • 2006年3月17日 愛知県新城署が鳥獣保護法違反容疑で、豊橋市の62歳男性を書類送検。2005年の11月14日にメジロ10羽、ウグイス3羽を無許可で捕獲、15日にもウグイス3羽を同様に捕獲した。
  • 2005年11月15日 徳島県牟岐署は、海部郡の70歳男性と74歳男性を鳥獣保護法違反容疑で書類送検。70歳男性はメジロ5羽、オオルリ1羽、ホオジロ2羽の計8羽を捕獲。74歳男性は、メジロ3羽を捕獲。

以上は氷山の一角であるが、特に、2005年7月に奈良県で、違法捕獲により摘発された鳴き合わせ会メンバーが、愛玩飼養登録を受けていた事例や、2000年8月に京都府でメジロを密猟した男性が、愛玩飼養許可制度をたてに正当化しようとした事例は、同制度の悪用事例として見逃すことは出来ない。
日本野鳥の会では、飼育が認められている野鳥が2種あること自体が、密猟などの問題を助長しているとし、出来るだけ早期に全面禁止にすべきとかねてから主張している。全国野鳥密猟対策連絡会でも、同様の申し入れを環境省に対して、繰り返し行なっている。

■都道府県の対応状況

 すでに独自の判断で捕獲許可を認めていない都道府県は、メジロ11、ホオジロ14に上る。つまり、都道府県が国に先行している例がこれだけあることになる。また、全国野鳥密猟対策連絡会が平成16年に各都道府県に問い合わせたところ、23府県から、実際には新たな捕獲許可を出していないとの回答を得ている。

■メジロの飼養数は、過去に許可対象からはずれた鳥類にくらべて実は少ない

平成16年度のホオジロの飼養登録数は737羽、メジロ5,977羽である。両種ともに、過去に愛玩飼養目的の捕獲許可対象からはずれた鳥類とくらべても少ない。すなわち、ヤマガラ6,048羽(昭和53年度)、ウグイス14,565羽(昭和54年度)。いずれも、捕獲許可を打ち切る前年の時点の数字である。現在のメジロよりもずっと飼養数が多い時点で、捕獲許可を打ち切っている。

※トラバサミという危険で残忍なわなの使用禁止も、附帯決議に懸案事項として書き込まれているものの、事態は思うように進展していないことも付け加えておきたい。狩猟での使用は禁止される見込みで、これについては評価できるが、有害鳥獣捕獲(許可捕獲)では依然として使用が許可される方向である。


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PDF 鳥類の愛玩飼養に関するプレスリリース

プレスリリース 2006.07.20

日本野鳥の会が「タンチョウ」の生息地 24.1haを購入
これまでに設置した野鳥保護区は合計18ヶ所約1658.3ヘクタール。

2006.7.20

 2006年7月18日、(財)日本野鳥の会(事務局:東京、会長:柳生博 会員・サポーター数5万2千人)は、当会会員の渡邊玲子氏(わたなべれいこ・兵庫県)からの寄付金をもとに、タンチョウの生息する北海道鶴居村の湿原を購入した。現地は、寄付者のお名前を冠した「渡邊野鳥保護区温根内」とし、恒久的に保全する。今回の保護区を含め、当会が野鳥保護のために設置した保護区は合計18ヶ所、面積は1658.3ha。このうちタンチョウを対象としたものは、12ヶ所、1620.1haとなった。

■購入した土地について
渡邊野鳥保護区温根内の写真

 釧路湿原西側に位置するオンネナイ川流域の湿原、面積 24.1ha(240,608m2)。この土地は、オンネナイ川流域に1990年に設置した「早瀬野鳥保護区温根内」、1993年に設置した「古山野鳥保護区温根内(注1)」の東側(下流域)に位置している。タンチョウは、この周辺で1つがいが繁殖している。
なお、今回購入した土地は、釧路湿原国立公園特別地域および国指定鳥獣保護区に通じる集水域となるが、法的な指定はなされていない場所である。今後、当地域への鳥獣保護区の拡大、国立公園の拡大を、関係機関に要望していく。
※注 1 土地所有者との協定により野鳥保護区としている。


渡邊野鳥保護区温根内位置図

■寄付者のプロフィール

 渡邊玲子さん( 75歳)は当会の会員歴27年。また、鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリの活動を支援する賛助会第I期「タンチョウ383人の会」および同第II期「タンチョウふぁんクラブ」のメンバーとして、1987年よりタンチョウ保護のために資金面での協力をしていただいていた。これまで同氏からのご寄付をもとに、5ヶ所の野鳥保護区を設置している。
※なお、直接の取材はご本人の希望により固くお断りいたします。

■渡邊玲子さんのコメント

 「 大型の動物を守りたい、大型の動物がすむ環境を守れば、そこに関わる他の動植物も守ることができるとの想いから、これまでもタンチョウの保護に力を入れてきました。今回は
タンチョウ の最大の生息地である釧路湿原の保護に関わることができ、うれしく思います。これからももっと野鳥保護区が増えることを願うとともに、引き続き応援していきたいと思います」

■購入費について

 渡邊玲子氏より、ご寄付をいただき購入した。
なお、金額は今後の購入にも関わるので、伏せさせていただきます。

■日本野鳥の会保護区事業

 野鳥の生息地の保全を目的として、当会では、 1986年から「野鳥保護区」を設置・拡大しています。これまでに北海道東部のタンチョウの営巣地を中心に18ヶ所、1658.3haを買い取り等により確保してきました。また、タンチョウ営巣地の買い取りで一定の成果が得られたため、2004年からはタンチョウに続き、シマフクロウの生息地の買い取りも始めました。
現在、野鳥保護区の総面積は、東京ディズニーランドが 33個入る大きさで、国内の自然保護団体が設置した保護区としては最大の面積です。土地の買い取りについては会員の方をはじめとする方々からの寄付を財源としています。
買い取り後は、当会職員が、調査や管理、巡回監視に当たっていきます。今回設置した「渡邊野鳥保護区温根内」のオンネナイ川上流部に位置する「早瀬野鳥保護区温根内」では、
1999年からタンチョウ生息環境復元の実験(周辺開発による土砂流入等で、ヨシ原に増加したハンノキを除去する)に着手しました。2002年には8年ぶりに営巣を確認し、以降毎年営巣が確認されています。

(財)日本野鳥の会のタンチョウ保護活動

■概要

 タンチョウは、かつて江戸時代までは道内全域に生息していたと言われているが、明治時代の乱獲と生息地である湿原の開発により激減し、一時は絶滅したと考えられていた。大正時代末期に釧路湿原で再発見されて以来、地元農家の冬期給餌などの保護活動が実り、個体数は1000羽を超えるまでになった。国の特別天然記念物にも指定されているが、分布は北海道東部に偏在し、冬期の人為的な給餌に依存している。また生息地である湿原の面積は減少する一方で、残されている湿原も営巣地の約半分は法律による保護指定がなされておらず、いつ開発されてもおかしくないのが現状である。
(財)日本野鳥の会は1987年に全国からの募金をもとに、タンチョウの越冬地である阿寒郡鶴居村の給餌人、伊藤良孝氏(故人)のご理解とご協力を得て「鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ」を開設した。そこでは日本野鳥の会のレンジャーが常駐し、タンチョウ保護のために生態調査や自然解説などを行う現地拠点となっている。また繁殖地の保護状況調査をもとに、タンチョウの営巣地でありながら法律で保護指定されていない湿原を購入、あるいは地主と協定を結ぶ等で、野鳥保護区を設置する活動を行っている。土地の購入費用は会員をはじめ、趣旨に賛同する個人、団体からのご寄付が充てられている。

■財団法人日本野鳥の会について (詳しくはホームページ http://www.wbsj.org

 自然と人間が共存する豊かな社会の実現を目指し、野鳥や自然のすばらしさを伝えながら、自然保護を進めている民間団体です。全国5万2千人の会員・サポーターの方が、自然を楽しみつつ、自然を守る活動を支えています。

・創設:1934年  ・創設者:中西悟堂  ・支部:全国89支部

<野鳥や自然を大切に思う心を伝える>

  • 全国12ヶ所のサンクチュアリやバードプラザを訪れる年間約30万人の方に、野鳥や自然のすばらしさを伝えています。
  • 東京バードフェスティバルなどの大規模イベントへの参加や野鳥図鑑などの発行を通して、バードウォッチングの楽しさを伝えています。
  • バードウォッチングの指導・案内のできる人材の育成を進めています。

<野鳥や自然を守る>

  • 北海道東部のタンチョウの営巣地を中心に、土地の買い取りや協定により野鳥保護区として保全しています。現在、保護区の面積は、17ヶ所、1634.2haで、自然保護団体としては国内最大級です。
  • 鳥類の生息地として、保全が急がれる場所を明確にするため、国際的に重要な鳥類等を指標にした重要度の基準(IBA基準)を満たした野鳥の重要な生息地の選定、リストの公表を行い、保全の推進、ネットワーク化を行っています。

<特定公益増進法人です>

日本野鳥の会は、特定公益増進法人に認定されておりますので、個人や法人が支出した寄付金に対して所得控除や損金算入が設定されています。

同時発表先

「渡邊野鳥保護区温根内」で柳生博会長が記者発表 ・  環境省記者クラブ

<本件についての問合せ先>
財団法人日本野鳥の会 野鳥保護区事業所   Tel 0153-25-8911 担当:富岡辰先
〃 鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ  Tel 0154-64-2620 担当:音成(おとなり)邦仁


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PDF 渡邊野鳥保護区温根内プレスリリース

プレスリリース 2006.05.26-2

福井県あわら市・北潟湖西岸の風力発電施設建設計画に対して申し入れを行いました

2006.5.26

(財)日本野鳥の会(事務局:東京、会長:柳生博 会員・サポーター数5万2千人)、日本野鳥の会福井県支部、同石川支部は、福井県あわら市に計画されている風力発電施設の建設計画に対して、生態系保全の観点から事業主および関係各所に対して建設予定地の変更を求める要望書を提出しました。

建設予定地は、北潟湖西岸の福井県あわら市富津付近。当該地は、国指定鳥獣保護区特別保護地区・ラムサール条約湿地である片野鴨池に飛来する国指定天然記念物マガン、ヒシクイが、ねぐらである片野鴨池と採餌場所である福井県の坂井平野の水田を往復する際に通過することがある位置にあたります。

(財)日本野鳥の会および鴨池観察館友の会が実施した調査によれば、建設予定地上空を多数のマガンが通過したことが確認され、最大では2006年3月10日に2400羽が確認されました。これは、鴨池に飛来するマガンのほとんど全てに相当する数。また、例数は1回と少ないものの、撮影された写真から飛行高度の推定を試み、地上からおよそ60mと推定されました。この高度は、風車のプロペラが回転する範囲内に含まれます。

これらの調査結果から、風力発電施設の建設がラムサール条約湿地・片野鴨池、福井県坂井平野の生態系および国指定天然記念物でレッドデータブック掲載種であるマガン、ヒシクイなどの希少鳥類に影響を与えると判断し、要望書の提出に踏み切りました。

事業主による環境影響評価も行われていますが、影響の有無を判断するには回数が少なすぎ、その結果を持って建設を実施するのは問題があると考えます。

要望書提出先

環境省 文化庁 経済産業省 資源エネルギー庁 福井県 あわら市 石川県 北陸電力株式会社 電源開発株式会社

同時発表

加賀市記者クラブ、福井県庁記者クラブ 、環境省記者クラブ(環境問題研究会・環境記者会)

お問い合わせ先
( 財 )日本野鳥の会自然保護室 TEL:042-593-6872 /FAX:042-593-6873
〒 191-0041東京都日野市南平2-35-2 ウイング1階   http://www.wbsj.org/
担当:古南


日野鳥発第12号
福井野鳥 4号
平成18年5月26日

環境大臣
小池 百合子 殿

東京都渋谷区初台1 – 47- 1
小田急西新宿ビル1F
財団法人 日本野鳥の会
会長 柳生 博

日本野鳥の会 石川支部
支部長 橘 映州

日本野鳥の会 福井県支部
支部長 柳町 邦光

ラムサール条約湿地片野鴨池および国指定天然記念物
マガン、ヒシクイの保護に関する要望

 平素より本会の環境保全活動に関するご理解、ご協力に対し、深く感謝申し上げます。
さて、現在、ラムサール条約湿地であり、国指定鳥獣保護区特別保護地区である石川県加賀市・片野鴨池に近い福井県あわら市富津に電源開発株式会社による風力発電施設の建設計画があります(添付資料参照)。施設が設置された場合、ねぐらである片野鴨池と餌場である福井県坂井平野を往復する国指定天然記念物マガン、ヒシクイなどへの影響が危惧されます。そこで、ラムサール条約湿地片野鴨池の保全および天然記念物マガン、ヒシクイの保護のため、下記の通り要望いたします。

 当該地域への風力発電施設の設置によってマガン、ヒシクイなどの希少種が影響を受けることがないよう、日本国政府として適切な対応をお取り下さい。

理由は以下の通りです。

(1)片野鴨池に飛来するマガンのほとんど全てが建設予定地上空を通過しました
ラムサール条約湿地である片野鴨池に飛来するマガンおよびオオヒシクイは、片野鴨池をねぐらとし、福井県九頭竜川流域の水田地帯を主要な餌場としているため、ねぐらと餌場の往復で毎日2回、建設予定地付近の上空を通過します。この時、北潟湖付近でどのルート、飛行高度を選択して通過するのかは、その日の天候、風向や風力などの気象条件や、その日の餌場の位置などによって変わる可能性があります。
私どもが実施した調査では、回数は少ないものの鴨池に飛来するマガンのほとんど全てである2400羽の群れも建設予定地上空を通過しました。また、3月15日に建設予定地上空を飛行した際には写真撮影に成功し、写真から算出した飛行高度は推定60mでした。今回の計画で設置予定の風車のプロペラの最高到達点は地上100mで、プロペラが通過する範囲は地上40mから100mです。このことから、施設建設によって片野鴨池に飛来するマガン個体群に直接的および間接的に与える影響は大きいと考えられます。一方で、事業主の調査によれば建設予定地はマガンの主要な飛行ルートには当たらず、少数は衝突する危険性があるものの、それによって地域個体群に与える影響は少ないとのことです。しかし、少数とはいえ、国指定天然記念物であり、絶滅危惧種もしくは準絶滅危惧種であるマガンやヒシクイが影響を受けることは避ける必要があります。
また、半年に及ぶマガンの越冬期間を考えれば事業主による調査回数は非常に少なく、越冬期間中のマガンの飛行ルート把握やルート選択の要因の特定ができているとは到底考えられません。急遽実施した私たちの調査とさえ結果が違っており、このことは調査回数が少なすぎることと施設の影響が過小評価されていることを示していると思われます。
なお、直接的に与える影響とは、プロペラや支柱に衝突すること、間接的に与える影響とは、巨大な人工建造物が飛行ルート近くにあった場合にねぐらと餌場を往復する行動に悪影響を与えることを意味します。

(2)マガン・ヒシクイは文化財保護法の定める国指定天然記念物です
マガンおよびヒシクイは文化財保護法の定める国指定天然記念物です。天然記念物とは、学術上貴重な日本の自然を記念するもので、地域の遺産として保護し、活用していく非常に重要なものです。
また、野生生物を人為的に絶滅させることがないよう、絶滅のおそれのある種を的確に把握し、各種事業者等が種の保存の取り組みに活用するために編纂された環境省のレッドデータブック(以下RDB)では、マガンは 生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性がある準絶滅危惧種に指定されて おり、石川県版RDB、福井県版RDBでは絶滅危惧II類に指定されています。ヒシクイは環境省のRDBでは絶滅危惧II類(亜種ヒシクイ)、準絶滅危惧種(亜種オオヒシクイ)に指定されており、石川県版RDBでは絶滅危惧II類、福井県版RDBでは県域絶滅危惧I類(亜種オオヒシクイ)、県域絶滅危惧II類(亜種ヒシクイ)に指定されています。このようなマガン、ヒシクイに対して、前述のような悪影響を与える可能性のある今回の計画は実施すべきではありません。
この他、福井県の県域準絶滅危惧種に指定されているコハクチョウに対しても、マガンと同様に悪影響を及ぼすと考えられます。

(3)国際的に重要なラムサール条約湿地・片野鴨池の生態系に影響を及ぼします
このマガンの休息地である片野鴨池は、地元の努力で江戸時代から330年以上に渡って保護されてきた場所で、湿地保全の国際条約であるラムサール条約の登録地になっています。また、石川県天然記念物、および生息地保全に関する国際的なネットワークであるIBAにも選定されている国内的にも国際的にも重要な湿地です。しかし、今回の計画が実行されれば、片野鴨池における生態系の中心であるマガンに悪影響を及ぼし、ひいては片野鴨池全体の生態系に重大な響を及ぼすおそれがあります。

以上の理由により、現在の予定地への建設は実施すべきではありません。日本国政府として、計画に対して適切な対応をおとりいただけるものと期待いたします。

以上


日野鳥発第15号
福井野鳥 7号
平成18年5月26日

文化庁長官
河合 隼雄 殿

東京都渋谷区初台1 – 47- 1
小田急西新宿ビル1F
財団法人 日本野鳥の会
会長 柳生 博

日本野鳥の会 石川支部
支部長 橘 映州

日本野鳥の会 福井県支部
支部長 柳町 邦光

ラムサール条約湿地片野鴨池および国指定天然記念物
マガン、ヒシクイの保護に関する要望

 平素より本会の環境保全活動に関するご理解、ご協力に対し、深く感謝申し上げます。
さて、現在、ラムサール条約湿地であり、国指定鳥獣保護区特別保護地区である石川県加賀市・片野鴨池に近い福井県あわら市富津に電源開発株式会社による風力発電施設の建設計画があります(添付資料参照)。施設が設置された場合、ねぐらである片野鴨池と餌場である福井県坂井平野を往復する国指定天然記念物マガン、ヒシクイなどへの影響が危惧されます。そこで、ラムサール条約湿地片野鴨池の保全および天然記念物マガン、ヒシクイの保護のため、下記の通り要望いたします。

 当該地域への風力発電施設の設置によってマガン、ヒシクイなどの希少種が影響を受けることがないよう、日本国政府として適切な対応をお取り下さい。

理由は以下の通りです。

(1)片野鴨池に飛来するマガンのほとんど全てが建設予定地上空を通過しました
ラムサール条約湿地である片野鴨池に飛来するマガンおよびオオヒシクイは、片野鴨池をねぐらとし、福井県九頭竜川流域の水田地帯を主要な餌場としているため、ねぐらと餌場の往復で毎日2回、建設予定地付近の上空を通過します。この時、北潟湖付近でどのルート、飛行高度を選択して通過するのかは、その日の天候、風向や風力などの気象条件や、その日の餌場の位置などによって変わる可能性があります。
私どもが実施した調査では、回数は少ないものの鴨池に飛来するマガンのほとんど全てである2400羽の群れも建設予定地上空を通過しました。また、3月15日に建設予定地上空を飛行した際には写真撮影に成功し、写真から算出した飛行高度は推定60mでした。今回の計画で設置予定の風車のプロペラの最高到達点は地上100mで、プロペラが通過する範囲は地上40mから100mです。このことから、施設建設によって片野鴨池に飛来するマガン個体群に直接的および間接的に与える影響は大きいと考えられます。一方で、事業主の調査によれば建設予定地はマガンの主要な飛行ルートには当たらず、少数は衝突する危険性があるものの、それによって地域個体群に与える影響は少ないとのことです。しかし、少数とはいえ、国指定天然記念物であり、絶滅危惧種もしくは準絶滅危惧種であるマガンやヒシクイが影響を受けることは避けるべきです。
また、半年に及ぶマガンの越冬期間を考えれば事業主による調査回数は非常に少なく、越冬期間中のマガンの飛行ルート把握やルート選択の要因の特定ができているとは到底考えられません。急遽実施した私たちの調査とさえ結果が違っており、このことは調査回数が少なすぎることと施設の影響が過小評価されていることを示していると思われます。
なお、直接的に与える影響とは、プロペラや支柱に衝突すること、間接的に与える影響とは、巨大な人工建造物が飛行ルート近くにあった場合にねぐらと餌場を往復する行動に悪影響を与えることを意味します。

(2)マガン・ヒシクイは文化財保護法の定める国指定天然記念物です
マガンおよびヒシクイは文化財保護法の定める国指定天然記念物です。天然記念物とは、学術上貴重な日本の自然を記念するもので、地域の遺産として保護し、活用していく非常に重要なものです。
また、野生生物を人為的に絶滅させることがないよう、絶滅のおそれのある種を的確に把握し、各種事業者等が種の保存の取り組みに活用するために編纂された環境省のレッドデータブック(以下RDB)では、マガンは 生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性がある準絶滅危惧種に指定されて おり、石川県版RDB、福井県版RDBでは絶滅危惧II類に指定されています。ヒシクイは環境省のRDBでは絶滅危惧II類(亜種ヒシクイ)、準絶滅危惧種(亜種オオヒシクイ)に指定されており、石川県版RDBでは絶滅危惧II類、福井県版RDBでは県域絶滅危惧I類(亜種オオヒシクイ)、県域絶滅危惧II類(亜種ヒシクイ)に指定されています。このようなマガン、ヒシクイに対して、前述のような悪影響を与える可能性のある今回の計画は実施すべきではありません。
この他、福井県の県域準絶滅危惧種に指定されているコハクチョウに対しても、マガンと同様に悪影響を及ぼすと考えられます。

(3)国際的に重要なラムサール条約湿地・片野鴨池の生態系に影響を及ぼします
このマガンの休息地である片野鴨池は、地元の努力で江戸時代から330年以上に渡って保護されてきた場所で、湿地保全の国際条約であるラムサール条約の登録地になっています。また、石川県天然記念物、および生息地保全に関する国際的なネットワークであるIBAにも選定されている国内的にも国際的にも重要な湿地です。しかし、今回の計画が実行されれば、片野鴨池における生態系の中心であるマガンに悪影響を及ぼし、ひいては片野鴨池全体の生態系に重大な響を及ぼすおそれがあります。

以上の理由により、現在の予定地への建設は実施すべきではありません。日本国政府として、計画に対して適切な対応をおとりいただけるものと期待いたします。

以上


日野鳥発第18号
福井野鳥10号
平成18年5月26日

経済産業大臣
二階 俊博 殿

東京都渋谷区初台1 – 47- 1
小田急西新宿ビル1F
財団法人 日本野鳥の会
会長 柳生 博

日本野鳥の会 石川支部
支部長 橘 映州

日本野鳥の会 福井県支部
支部長 柳町 邦光

電源開発株式会社が福井県あわら市に建設予定の
風力発電施設への補助金拠出に関する要望

 平素より本会の環境保全活動に関するご理解、ご協力に対し、深く感謝申し上げます。さて、現在、ラムサール条約湿地であり、国指定鳥獣保護区特別保護地区である石川県加賀市・片野鴨池に近い福井県あわら市富津に電源開発株式会社による風力発電施設の建設計画があります(添付資料参照)。施設が設置された場合、ねぐらである片野鴨池と餌場である福井県坂井平野を往復する国指定天然記念物マガン、ヒシクイなどへの影響が危惧されます。そこで、ラムサール条約湿地片野鴨池の保全および天然記念物マガン、ヒシクイの保護のため、下記の通り要望いたします 。

 日本国政府として、風力発電施設建設の補助金を拠出する際には、国指定天然記念物マガン、ヒシクイなどの希少種が影響を受けないことをご確認ください 。

理由は以下の通りです。

(1)片野鴨池に飛来するマガンのほとんど全てが建設予定地上空を通過しました
ラムサール条約湿地である片野鴨池に飛来するマガンおよびオオヒシクイは、片野鴨池をねぐらとし、福井県九頭竜川流域の水田地帯を主要な餌場としているため、ねぐらと餌場の往復で毎日2回、建設予定地付近の上空を通過します。この時、北潟湖付近でどのルート、飛行高度を選択して通過するのかは、その日の天候、風向や風力などの気象条件や、その日の餌場の位置などによって変わる可能性があります。
私どもが実施した調査では、回数は少ないものの鴨池に飛来するマガンのほとんど全てである2400羽の群れも建設予定地上空を通過しました。また、3月15日に建設予定地上空を飛行した際には写真撮影に成功し、写真から算出した飛行高度は推定60mでした。今回の計画で設置予定の風車のプロペラの最高到達点は地上100mで、プロペラが通過する範囲は地上40mから100mです。このことから、施設建設によって片野鴨池に飛来するマガン個体群に直接的および間接的に与える影響は大きいと考えられます。一方で、事業主の調査によれば建設予定地はマガンの主要な飛行ルートには当たらず、少数は衝突する危険性があるものの、それによって地域個体群に与える影響は少ないとのことです。しかし、少数とはいえ、国指定天然記念物であり、絶滅危惧種もしくは準絶滅危惧種であるマガンやヒシクイが影響を受けることは避ける必要があります。
また、半年に及ぶマガンの越冬期間を考えれば事業主による調査回数は非常に少なく、越冬期間中のマガンの飛行ルート把握やルート選択の要因の特定ができているとは到底考えられません。急遽実施した私たちの調査とさえ結果が違っており、このことは調査回数が少なすぎることと施設の影響が過小評価されていることを示していると思われます。
なお、直接的に与える影響とは、プロペラや支柱に衝突すること、間接的に与える影響とは、巨大な人工建造物が飛行ルート近くにあった場合にねぐらと餌場を往復する行動に悪影響を与えることを意味します。

(2)マガン・ヒシクイは文化財保護法の定める国指定天然記念物です
マガンおよびヒシクイは文化財保護法の定める国指定天然記念物です。天然記念物とは、学術上貴重な日本の自然を記念するもので、地域の遺産として保護し、活用していく非常に重要なものです。
また、野生生物を人為的に絶滅させることがないよう、絶滅のおそれのある種を的確に把握し、各種事業者等が種の保存の取り組みに活用するために編纂された環境省のレッドデータブック(以下RDB)では、マガンは 生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性がある準絶滅危惧種に指定されて おり、石川県版RDB、福井県版RDBでは絶滅危惧II類に指定されています。ヒシクイは環境省のRDBでは絶滅危惧II類(亜種ヒシクイ)、準絶滅危惧種(亜種オオヒシクイ)に指定されており、石川県版RDBでは絶滅危惧II類、福井県版RDBでは県域絶滅危惧I類(亜種オオヒシクイ)、県域絶滅危惧II類(亜種ヒシクイ)に指定されています。このようなマガン、ヒシクイに対して、前述のような悪影響を与える可能性のある今回の計画は実施すべきではありません。
この他、福井県の県域準絶滅危惧種に指定されているコハクチョウに対しても、マガンと同様に悪影響を及ぼすと考えられます。

(3)国際的に重要なラムサール条約湿地・片野鴨池の生態系に影響を及ぼします
このマガンの休息地である片野鴨池は、地元の努力で江戸時代から330年以上に渡って保護されてきた場所で、湿地保全の国際条約であるラムサール条約の登録地になっています。また、石川県天然記念物、および生息地保全に関する国際的なネットワークであるIBAにも選定されている国内的にも国際的にも重要な湿地です。しかし、今回の計画が実行されれば、片野鴨池における生態系の中心であるマガンに悪影響を及ぼし、ひいては片野鴨池全体の生態系に重大な響を及ぼすおそれがあります。

以上の理由により、現在の予定地への建設は実施すべきではありません。日本国政府として、計画に対して適切な対応をおとりいただけるものと期待いたします。

以上


(別紙) 片野鴨池で越冬するマガンの渡去期の餌場への飛行ルートに関する調査報告

(財)日本野鳥の会 

はじめに
ラムサール条約湿地である片野鴨池には、国の天然記念物マガン、ヒシクイなどのガン類が飛来する。越冬数は、マガンが 3,000 羽ほど、ヒシクイが 500 羽ほどである。これまでの調査から、片野鴨池に飛来しているマガンは太平洋側に飛来するマガンとは別の個体群に属すると考えられており、マガンの遺伝的多様性を保全する上で貴重な群れである。
マガンは、早朝鴨池を飛び立ち、福井県坂井平野の水田地帯で採餌したのち、日没前後に鴨池に戻ってねぐらを取る。これらを行き来する飛行ルート近くに風力発電施設の開発計画があり、環境アセスメント調査も実施されている。しかし、マガンなどのガン類を主な対象とした調査の回数は 1 月、 3 月合わせて 6 日間ときわめて少なかった。マガンは 9 月下旬から 3 月中旬までの約半年間鴨池に滞在し、そのうち坂井平野で採餌する期間は、例年 12 月中旬から 3 月にかけての約 3 ヶ月である。したがって、 6 日間という調査期間ではマガンへの影響の有無を判断できるとは考えにくい。
風力発電は、建設に要する土地の切り開きが他の発電方法に比べれば少ないこと、発電に際しては二酸化炭素などを発生しないことから環境に配慮したクリーンエネルギーと言われており、国策によって推進されているが、建設場所によっては二酸化炭素の削減による環境保全上の効果よりも大きな悪影響を環境、特に野生生物に与える。
片野鴨池は 330 年以上に渡って地元住民によって保全されてきた湿地で、ラムサール条約湿地であると同時に国指定鳥獣保護区特別保護地区、越前加賀海岸国定公園第一種特別地区、石川県天然記念物でもあり、石川県指定無形文化財である坂網猟が継承されている、国際的にも全国的にも重要な湿地である。建設によって片野鴨池のマガンに影響を与えることがあれば、世界的に貴重な 330 年以上に渡って保全されてきた湿地生態系を失うことになる。マガンと開発予定地の関係を正しく把握するために独自に調査を行い、飛行ルートと予定地の位置関係を示した。
したがって、本報告の最終的な目的は、マガンの飛行ルートと建設予定地の位置関係を示し、マガンに影響を与えるかどうかを検討することにある。なお、本調査は(財)日本野鳥の会 鴨池観察館担当レンジャーと鴨池観察館友の会会員が共同で実施した。

調査地と調査方法
調査地は北潟湖西岸のあわら市富津周辺である。建設予定地であるあわら市富津付近に 2 箇所、北潟湖西岸に 1 箇所設置した定点から(図 1 )、 8 倍の双眼鏡をもちいて調査地周辺を飛行するマガンの個体数と飛行ルートを地図上に記録した。また、ねぐらである片野鴨池において早朝飛び立つまたは夕方飛来するマガンの個体数を記録し、定点調査の補助とした。

調査は 3 月 7 日から 3 月 23 日にかけて、坂井平野に向かうマガンの飛行コースを記録する早朝の調査を 5 回、坂井平野から戻る飛行コースを記録する夕方の調査を 17 回、計 23 回、計 24.3 時間実施した。調査員の延べ人数は 56 名であった。なお、調査に際してマガンが鴨池を飛び立つ時刻が日の出後 30 分から 1 時間のあいだ(平均 17 分後)、ねぐら入りの時刻は日没から平均 24 分後であることから調査時刻を設定した。

確認された群れを、それぞれの飛行ルートによって、確認された群れを「湖上通過群」「予定地上空通過群」「湖上と予定地の間通過群」の 3 グループに分け、個体数の割合を比較した。
また、調査地周辺を飛行するマガンの群れを撮影し、周囲の丘、平地との比較から飛行高度の推定を試みた。飛行高度の推定に際しては、平地から丘の頂上までの高度差を地形図上で算出し、写真上で群れの位置が平地・丘の高度差の何倍あるかを元に推定した。なお、群れが丘の直上に到達した際に撮影された写真をもちい、群れの位置の変化によって高度の推定に誤差が生じないよう留意した。

結果
記録されたマガンの飛行コースを図 1 に、調査地上空を飛行した際の群れの様子を写真 1 に示した。マガンの多くは北潟湖上空を通過していたが(全体の 84.7 %)、湖上と予定地の間や予定地上空を飛行した群れも確認された(それぞれ 2.8 %、 12.5 %)。以下、早朝の調査と夕方の調査に分けて述べ、その後飛行高度について述べる。

<早朝の調査>
3 月 10 日から 3 月 18 日にかけて 5 回の調査を実施し、そのうち 3 回の調査でマガンの飛行ルートを確認することができた。

3 月 10 日の調査では、予定地上空を 2,400 羽が通過し、「予定地上空通過群」が全体の 100 %を占めた。調査期間中にそれぞれのグループが占めた割合は、湖上通過群が 66.7 %、湖上と予定地の間通過群が 0 %で、予定地上空を通過した群れが 33.3 %であった。

<夕方の調査>
3 月 7 日から 3 月 23 日にかけて 17 回の調査を実施し、 14 回の調査でマガンの飛行ルートを確認することができた。

3 月 7 日の調査では予定地上を 2,200 羽が、 3 月 15 日の調査では予定地上を 130 羽が通過し、「予定地上通過群」がそれぞれ全体の 100 %、 12.5 %を占め、割合が高かった。調査期間中にそれぞれのグループが占めた割合の平均は、予定地上空通過群が 8.0 %、湖上と予定地の間通過群が 3.4 %、湖上通過群が 88.5 %であった。

調査地とマガンの飛行ルート図1.調査地とマガンの飛行ルート

建設予定地を赤線で囲み、調査定点をXで、マガンの飛行ルートを緑の矢印で示した。 3 月 7 日には 2,200 羽、 3 月 10 日には、 2,400 羽のマガンが調査地上空を通過した。

<マガンの飛行高度>
マガンの群れが調査地付近の丘と平地直情を通過している際の写真を示した(写真 1 )。平地の海抜高度が 45 m、丘の頂上の高度が 60.2 mであることから、写真に示した白、もしくは黒のバー一つが 15 mを示す。したがって、群れの高度は平地部上空およそ 60 mと推定された。

考察
予定地上空を通過した群れは 12.5 %を占め、 3 月 7 日と 10 日には、もっとも北潟湖に近い予定地上空をそれぞれ 2,200 羽、 2,400 羽のマガンが通過した。また、 3 月 15 日に坂井平野から片野鴨池に戻る途中に建設予定地を通過したマガンの群れは、推定で地上 60 m程度を飛行していた。

3 月 7 日、 10 日に記録された個体数は、この時期に片野鴨池に滞在していたマガンのほとんど全てであって、それが一群で通過したことと、 3 月 15 日の飛行高度は建設予定の風力発電設備のプロペラの回転半径内にあることから、予定地に風力発電施設が設置された場合、一度の衝突で多数のマガンがプロペラに接触するなど、非常に大きな影響を受ける可能性が高い。また、建設予定地と北潟湖の間はもっとも狭いところではわずか 250 mしか離れていない。したがって、この範囲を通過したマガンは風向や強さによっては予定地上空を通過する可能性がある。

さらに、巨大な動く建築物が飛行ルート近くにある場合、その存在が攪乱要因となり、現在のルートを利用しなくなる可能性、坂井平野を餌場として利用しなくなる可能性も考えられ、越冬期のマガンの生存率や翌春の繁殖成功率にも影響を与えるおそれがある。

坂井平野を餌場として利用しなくなった場合には、マガンはそれ以外の水田地帯で採食することになるが、片野鴨池のマガンは大聖寺川流域と坂井平野以外では採食をしていない。大聖寺川流域の水田地帯は坂井平野と比較して面積が小さく、マガンが必要とするエネルギー要求量を満たせない。したがって、坂井平野を利用できなくなったマガンが坂井平野、大聖寺川流域以外の水田地帯で採食できなかった場合、ねぐらを片野鴨池から移すことを余儀なくされる可能性がある。

このように、現在の建設予定地に風力発電施設を建設した場合、ラムサール条約湿地片野鴨池の湿地生態系やマガン個体群に非常に大きな影響を与える可能性があるため、建設予定地を変更するか、事業を中止するべきである。

建設予定地上空を飛ぶマガンの群れ

写真 1 .建設予定地上空を飛ぶマガンの群れ。 2006 年 3 月 15 日 17 時 40 分頃、あわら市富津にて撮影。白/黒のバーは一目盛あたり 15 mを示す。マガンの群れは、地上から推定 60 mの上空を通過した。


(添付資料)

福井県あわら市富津付近に計画されている風力発電施設について

■建設予定地
福井県あわら市富津付近(下図の赤い枠の範囲内)

■設置台数
9基

■事業主
電源開発株式会社
〒104-8165  東京都中央区銀座6 – 1 – 15

福井県あわら市富津付近/風力発電建設予定地


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PDF 福井県の風力発電施設建設計画に関するプレスリリース

プレスリリース 2006.05.26-1

日本野鳥の会が福井県下と三重県下の風力発電施設建設計画について見直し、変更を経産省等に申し入れ

2006.5.26

 (財)日本野鳥の会(事務局:東京、会長:柳生博 会員・サポーター数:5万2千人)は、福井県あわら市と三重県鳥羽市に計画されている風力発電施設の建設計画に対して、野鳥保護と生態系保全に対して支障が出るおそれが強いと判断し、経産省に対し、補助金の交付にあたって環境影響についての専門的な審査と必要に応じて交付を行わないことを求める要望書を提出、また関係省庁・自治体に対しては懸念を伝えあるいは計画の変更を求める要望書を提出しました。

あわら市の建設予定地は、福井県の北潟湖西岸で、国指定鳥獣保護区特別保護地区・ラムサール条約湿地である片野鴨池に飛来するマガン、ヒシクイ(国指定天然記念物、レッドデータブック掲載種)が、ねぐらである片野鴨池と採餌場所である福井県の坂井平野の水田を往復する際に通過することがある位置で、事業主による環境影響評価も行われていますが、影響の有無を判断するには回数が少なすぎるため、日本野鳥の会と鴨池観察館友の会が
23回の調査を実施。この結果、建設予定地上空を多数のマガンが通過しており、最大時は鴨池に飛来するマガンのほとんど全てに相当する数のマガンの通過が確認されました。また、撮影された写真から、飛行高度は風車のプロペラが回転する範囲内であることが推定されました。これらの調査結果から、風力発電施設の建設がラムサール条約湿地・片野鴨池、福井県坂井平野の生態系およびマガン、ヒシクイなどの希少鳥類に影響を与えるおそれが強いと判断しました。

鳥羽市の建設予定地は、志摩半島の海岸近くの丘陵地で、伊勢志摩国立公園の普通地域内にあります。この場所はタカの渡りの日本最大級の中継地である渥美半島の伊良湖岬の対岸にあたり、サシバなどのタカ類が多数渡っていく地域にあたると考えられます。日本野鳥の会三重県支部の本年4月の予備的な観察では希少鳥類のオオタカとクマタカ(共に種の保存法の国内希少野生動植物種)の生息も確認されています。事業者側の事前調査はこれらへの影響を評価するには不十分で、渡りの時期の現地調査は秋の6日間のみ、また繁殖期の猛禽類の調査はまったく行われておらず、この事前調査に基づいて建設が行われれば鳥類への甚大な影響が起こるおそれがあることが判りました。またこの地域は地盤が軟弱で、施設工事のための道路建設によって土壌崩壊等により周辺の植生に大きな影響が出るおそれもあり、国立公園内で行う事業としてはふさわしくないと判断しました。

これらの結果に基づき、これらの事業の補助金(新エネルギー事業者支援対策事業)の審査を行う経済産業省には、補助金の交付にあたって環境影響についての専門的な審査と必要に応じて交付を行わないことを求める要望書を提出しました。また判断に関わる可能性のある関係省庁、自治体にも同様の文書を提出しました。

なお本日、あわら市の案件については、加賀市からも同様な要望書が出されています。

要望書提出先

経済産業省(資源エネルギー庁)、環境省、文化庁、福井県、あわら市、石川県、北陸電力株式会社、電源開発株式会社

同時発表

加賀市記者クラブ、福井県庁記者クラブ 、環境省記者クラブ(環境問題研究会・環境記者会)

本件についてのお問い合わせ先
財団法人 日本野鳥の会 自然保護室
TEL : 042-593-6872  担当 古南(こみなみ)


日野鳥発第21号
平成18年5月26日

経済産業大臣
二階 俊博 殿

東京都渋谷区初台1 – 47 – 1
小田急西新宿ビル1F
財団法人 日本野鳥の会
会長 柳生 博

鳥羽ウインドファーム株式会社が三重県鳥羽市に建設予定の
風力発電施設への補助金拠出に関する要望

 平素より本会の環境保全活動に関するご理解、ご協力に対し、深く感謝申し上げます。

さて、さて、現在、伊勢志摩国立公園内の 鳥羽市船津町行者山において、鳥羽ウインドファーム株式会社により風力発電施設の建設計画が立てられており、まもなく新エネルギー事業者支援対策事業による補助金の申請が行われる予定と聞いております。この地域は、タカの渡りの日本最大級の中継地である渥美半島伊良湖岬の対岸にあたり、サシバなどのタカ類が多数渡っていく地域にあたると考えられます。日本野鳥の会三重県支部の本年4月の予備的な観察では希少鳥類のオオタカとクマタカ(共に種の保存法の国内希少野生動植物種)の生息も確認され、繁殖の可能性が指摘されています。

事業者の事前調査の報告書(鳥羽風力発電事業に係る環境調査業務報告書 平成 17年11月)を見ると、これらへの影響を軽微と評価しているようですが、調査の実態は影響を評価するには著しく不十分で、渡りの時期の現地調査は秋の6日間のみ、また繁殖期の猛禽類の行動圏等の生態調査に至ってはまったく行われていません。上掲の報告書の中では「大型風車施設建設計画地における営巣の可能性が否定できないクマタカ、フクロウ、サンショウクイ、サンコウチョウの営巣状況について確認する必要があると言える」「今後、大型風車施設建設計画地と渡り鳥の渡りのコースとの関係について詳細な調査を行い、事業影響の有無について検討する必要がある」としているにも関わらず、実際に調査・検討を行わないまま、影響は軽微である旨の結論に導こうとしています。しかしこれはあまりに強引な結論であると言わざるを得ません。この不十分な事前調査に基づいて建設が行われれば鳥類への甚大な影響が起こるおそれがあります。またこの地域は地盤が軟弱で、施設工事のための道路建設によって、土壌崩壊等により地形や周辺の植生に大きな影響が出るおそれも考えられます。

当該計画の風車の設置基数は3基と聞いておりますが、風車の規模は 3000kWと非常に大きく、地上高は百数十mに及ぶと思われ、景観への影響と共に鳥類の衝突死のおそれはその分増大していると考えられます。希少猛禽類の風力発電施設による事故例として近年、オジロワシの衝突死の事例が北海道で5例報告されておりますが、そのうち2004年12月の
根室市での事故は風車の設置基数が5基、 2005年12月の 石狩市の場合は2基のファームにおけるものでした。これらの事例から、設置基数の多寡と事故の確率は、必ずしも一致しない可能性が考えられます。1個体の死亡が個体群に与える影響が大きい希少種、特に希少猛禽類の生息地には、少数基であっても風車を設置するべきではないと考えられます。

こうした状況から、当該事業について私どもは、環境省が示す「 国立・国定公園内における風力発電施設設置のあり方に関する基本的考え方」
の 「特に自然風景の保護上大きな支障があると認められる場合」にあたる疑いが非常に強いと判断し、国立公園内で行う事業としてはふさわしくないと考えております。そこで、下記の通り要望いたします。

 伊勢志摩国立公園内の鳥羽市船津町行者山への風力発電施設の設置については、自然風景の保護上大きな支障があることが疑われますので、環境影響について上記の観点からの専門的な審査を行った上で、支障が認められた場合は補助金の交付を行わないといった、適切な判断をしてくださるよう要望いたします

以上


日野鳥発第20号
平成18年5月26日

環境大臣
小池 百合子 殿

東京都渋谷区初台1 – 47 – 1
小田急西新宿ビル1F
財団法人 日本野鳥の会
会長 柳生 博

伊勢志摩国立公園における風力発電施設計画に関する要望

 平素より本会の環境保全活動に関するご理解、ご協力に対し、深く感謝申し上げます。

さて、現在、伊勢志摩国立公園内の鳥羽市船津町行者山において、鳥羽ウインドファーム株式会社により風力発電施設の建設計画が立てられており、まもなく建設に関する届出が行われる予定と聞いております。この地域は、タカの渡りの日本最大級の中継地である渥美半島伊良湖岬の対岸にあたり、サシバなどのタカ類が多数渡っていく地域にあたると考えられます。日本野鳥の会三重県支部の本年4月の予備的な観察では希少鳥類のオオタカとクマタカ(共に種の保存法の国内希少野生動植物種)の生息も確認され、繁殖の可能性が指摘されています。

事業者の事前調査の報告書(鳥羽風力発電事業に係る環境調査業務報告書 平成 17年11月)を見ると、これらへの影響を軽微と評価しているようですが、調査の実態は影響を評価するには著しく不十分で、渡りの時期の現地調査は秋の6日間のみ、また繁殖期の猛禽類の行動圏等の生態調査に至ってはまったく行われていません。上掲の報告書の中では「大型風車施設建設計画地における営巣の可能性が否定できないクマタカ、フクロウ、サンショウクイ、サンコウチョウの営巣状況について確認する必要があると言える」「今後、大型風車施設建設計画地と渡り鳥の渡りのコースとの関係について詳細な調査を行い、事業影響の有無について検討する必要がある」としているにも関わらず、実際に調査・検討を行わないまま、影響は軽微である旨の結論に導こうとしています。しかしこれはあまりに強引な結論であると言わざるを得ません。この不十分な事前調査に基づいて建設が行われれば鳥類への甚大な影響が起こるおそれがあります。またこの地域は地盤が軟弱で、施設工事のための道路建設によって、土壌崩壊等により地形や周辺の植生に大きな影響が出るおそれも考えられます。

当該計画の風車の設置基数は3基と聞いておりますが、風車の規模は 3000kWと非常に大きく、地上高は百数十mに及ぶと思われ、景観への影響と共に鳥類の衝突死のおそれはその分増大していると考えられます。希少猛禽類の風力発電施設による事故例として近年、オジロワシの衝突死の事例が北海道で5例報告されておりますが、そのうち2004年12月の根室市での事故は風車の設置基数が5基、2005年12月の石狩市の場合は2基のファームにおけるものでした。これらの事例から、設置基数の多寡と事故の確率は、必ずしも一致しない可能性が考えられます。1個体の死亡が個体群に与える影響が大きい希少種、特に希少猛禽類の生息地には、少数基であっても風車を設置するべきではないと考えられます。
こうした状況から、当該事業について私どもは、貴省が示されております「国立・国定公園内における風力発電施設設置のあり方に関する基本的考え方」
の 「 特に自然風景の保護上大きな支障があると認められる場合」にあたる疑いが非常に強いと判断し、国立公園内で行う事業としてはふさわしくないと考えております。そこで、下記の通り要望いたします。

 伊勢志摩国立公園内の鳥羽市船津町行者山への風力発電施設の設置については、自然風景の保護上大きな支障があることが疑われますので、環境影響について上記の観点からの専門的な審査を行った上で、支障が認められた場合は補助金の交付を行わないといった、適切な判断をしてくださるよう要望いたします

以上


日野鳥発第22号
平成18年5月26日

新エネルギー・産業技術総合開発機構
理事長 牧野 力 様

東京都渋谷区初台1 – 47 – 1
小田急西新宿ビル1F
財団法人 日本野鳥の会
会長 柳生 博

三重県鳥羽市および福井県あわら市における
風力発電施設計画への債務保証に関する要望

 平素より本会の環境保全活動に関するご理解、ご協力に対し、深く感謝申し上げます。

さて、現在、以下の2件の風力発電施設の建設計画について、まもなく新エネルギー事業者支援対策事業による補助金の申請が行われる予定と聞いております。これらの計画について私どもはいずれも
自然風景、生物多様性、生態系の保護上大きな支障があるのではないかとの疑いを持っております。

1.三重県鳥羽市における鳥羽ウインドファーム株式会社による計画について
伊勢志摩国立公園内の鳥羽市船津町行者山において、鳥羽ウインドファーム株式会社により風力発電施設の建設計画が立てられており、この地域は、タカの渡りの日本最大級の中継地である渥美半島伊良湖岬の対岸にあたり、サシバなどのタカ類が多数渡っていく地域にあたると考えられます。日本野鳥の会三重県支部の本年4月の予備的な観察では希少鳥類のオオタカとクマタカ(共に種の保存法の国内希少野生動植物種)の生息も確認され、繁殖の可能性が指摘されています。

事業者の事前調査の報告書(鳥羽風力発電事業に係る環境調査業務報告書 平成 17年11月)を見ると、これらへの影響を軽微と評価しているようですが、調査の実態は影響を評価するには著しく不十分で、渡りの時期の現地調査は秋の6日間のみ、また繁殖期の猛禽類の行動圏等の生態調査に至ってはまったく行われていません。上掲の報告書の中では「大型風車施設建設計画地における営巣の可能性が否定できないクマタカ、フクロウ、サンショウクイ、サンコウチョウの営巣状況について確認する必要があると言える」「今後、大型風車施設建設計画地と渡り鳥の渡りのコースとの関係について詳細な調査を行い、事業影響の有無について検討する必要がある」としているにも関わらず、実際に調査・検討を行わないまま、影響は軽微である旨の結論に導こうとしています。しかしこれはあまりに強引な結論であると言わざるを得ません。この不十分な事前調査に基づいて建設が行われれば鳥類への甚大な影響が起こるおそれがあります。またこの地域は地盤が軟弱で、施設工事のための道路建設によって、土壌崩壊等により地形や周辺の植生に大きな影響が出るおそれも考えられます。

当該計画の風車の設置基数は3基と聞いておりますが、風車の規模は 3000kWと非常に大きく、地上高は百数十mに及ぶと思われ、景観への影響と共に鳥類の衝突死のおそれはその分増大していると考えられます。希少猛禽類の風力発電施設による事故例として近年、オジロワシの衝突死の事例が北海道で5例報告されておりますが、そのうち2004年12月の根室市での事故は風車の設置基数が5基、2005年12月の石狩市の場合は2基のファームにおけるものでした。これらの事例から、設置基数の多寡と事故の確率は、必ずしも一致しない可能性が考えられます。1個体の死亡が個体群に与える影響が大きい希少種、特に希少猛禽類の生息地には、少数基であっても風車を設置するべきではないと考えられます。

こうした状況から、当該事業について私どもは、環境省が示す「国立・国定公園内における風力発電施設設置のあり方に関する基本的考え方」の
「 特に自然風景の保護上大きな支障があると認められる場合」にあたる疑いが非常に強いと判断し、国立公園内で行う事業としてはふさわしくないと考えております。

2.福井県あわら市における電源開発株式会社による計画について
ラムサール条約湿地であり、国指定鳥獣保護区特別保護地区である石川県加賀市・片野鴨池に近い福井県あわら市富津に電源開発株式会社による風力発電施設の建設計画について、施設が設置された場合、ねぐらである片野鴨池と餌場である福井県坂井平野を往復する国指定天然記念物マガン、ヒシクイなどへの影響を強く危惧しております。理由は以下のとおりです。

(1)片野鴨池に飛来するマガンのほとんど全てが建設予定地上空を通過しました
ラムサール条約湿地である片野鴨池に飛来するマガンおよびオオヒシクイは、片野鴨池をねぐらとし、福井県九頭竜川流域の水田地帯を主要な餌場としているため、ねぐらと餌場の往復で毎日2回、建設予定地付近の上空を通過します。この時、北潟湖付近でどのルート、飛行高度を選択して通過するのかは、その日の天候、風向や風力などの気象条件や、その日の餌場の位置などによって変わる可能性があります。
私どもが実施した調査では、回数は少ないものの鴨池に飛来するマガンのほとんど全てである2400羽の群れも建設予定地上空を通過しました。また、3月15日に建設予定地上空を飛行した際には写真撮影に成功し、写真から算出した飛行高度は推定60mでした。今回の計画で設置予定の風車のプロペラの最高到達点は地上100mで、プロペラが通過する範囲は地上40mから100mです。このことから、施設建設によって片野鴨池に飛来するマガン個体群に直接的および間接的に与える影響は大きいと考えられます。一方で、事業主の調査によれば建設予定地はマガンの主要な飛行ルートには当たらず、少数は衝突する危険性があるものの、それによって地域個体群に与える影響は少ないとのことです。しかし、少数とはいえ、国指定天然記念物であり、絶滅危惧種もしくは準絶滅危惧種であるマガンやヒシクイが影響を受けることは避ける必要があります。
また、半年に及ぶマガンの越冬期間を考えれば事業主による調査回数は非常に少なく、越冬期間中のマガンの飛行ルート把握やルート選択の要因の特定ができているとは到底考えられません。急遽実施した私たちの調査とさえ結果が違っており、このことは調査回数が少なすぎることと施設の影響が過小評価されていることを示していると思われます。
なお、直接的に与える影響とは、プロペラや支柱に衝突すること、間接的に与える影響とは、巨大な人工建造物が飛行ルート近くにあった場合にねぐらと餌場を往復する行動に悪影響を与えることを意味します。

(2)マガン・ヒシクイは文化財保護法の定める国指定天然記念物です
マガンおよびヒシクイは文化財保護法の定める国指定天然記念物です。天然記念物とは、学術上貴重な日本の自然を記念するもので、地域の遺産として保護し、活用していく非常に重要なものです。
また、野生生物を人為的に絶滅させることがないよう、絶滅のおそれのある種を的確に把握し、各種事業者等が種の保存の取り組みに活用するために編纂された環境省のレッドデータブック(以下RDB)では、マガンは
生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性がある準絶滅危惧種に指定されており、石川県版RDB、福井県版RDBでは絶滅危惧II類に指定されています。ヒシクイは環境省のRDBでは絶滅危惧II類(亜種オオヒシクイ)、準絶滅危惧種(亜種ヒシクイ)に指定されており、石川県版RDBでは絶滅危惧II類、福井県版RDBでは県域絶滅危惧I類(亜種オオヒシクイ)、県域絶滅危惧II類(亜種ヒシクイ)に指定されています。このようなマガン、ヒシクイに対して、前述のような悪影響を与える可能性のある今回の計画は実施すべきではありません。
この他、福井県の県域準絶滅危惧種に指定されているコハクチョウに対しても、マガンと同様に悪影響を及ぼすと考えられます。

(3)国際的に重要なラムサール条約湿地・片野鴨池の生態系に影響を及ぼします
このマガンの休息地である片野鴨池は、地元の努力で江戸時代から330年以上に渡って保護されてきた場所で、湿地保全の国際条約であるラムサール条約の登録地になっています。また、石川県天然記念物、および生息地保全に関する国際的なネットワークであるIBAにも選定されている国内的にも国際的にも重要な湿地です。しかし、今回の計画が実行されれば、片野鴨池における生態系の中心であるマガンに悪影響を及ぼし、ひいては片野鴨池全体の生態系に重大な響を及ぼすおそれがあります。
以上の理由により、現在の予定地への建設は実施すべきではありません。

以上を踏まえ、下記の通り要望いたします。

 鳥羽ウインドファーム株式会社による鳥羽市船津町行者山への風力発電施設の設置、及び電源開発株式会社による福井県あわら市への風力発電施設については、自然風景、生物多様性、生態系の保護上大きな支障があることが疑われますので、
新エネルギー事業者支援対策事業に基づく債務保証にあたっては、環境影響について上記の観点からの専門的な審査を行った上で、支障が認められた場合は債務保証を行わないといった、適切な判断をしてくださるよう要望いたします

以上


志摩半島のタカの渡り=三重野鳥の会におけるデータの再解析
およびクマタカの生息について

日本野鳥の会三重県支部
保護部 平井正志

志摩半島のタカの渡り
三重野鳥の会は 1993 年に「志摩半島のタカの渡り」という報告書を発行している。
同報告書には 1988 年から 1992 年の志摩半島内陸部と沿岸部(上陸地点)でタカの渡りを観察し、どの結果が記載されている。記載されている
1988 年から 1992 年のデータのうち、上陸地点で観察が行われている合計 17 日間のデータを合計した。上陸地点の観察場所は鳥羽市小浜、池の浦、佐田浜、安楽島、および今浦である。(小浜は日向浜、西浜などの海水浴場のある半島、佐田浜は鳥羽港で鳥羽駅付近、安楽島は菅島側につきでた半島、今浦は鳥羽駅の南東、安楽島よりも南東)
http://map.yahoo.co.jp/pl?nl=34.28.40.958&el=136.50.46.907&la=1&fi=1&sc=5

この 17 日間伊良湖岬で観察されたサシバは 28,765 羽であった。上陸地点で観察されたサシバの合計は 14,090 羽であった。これは
55% に相当する。このうち安楽島で観察された個体数は 7,779 羽であった。これは伊良湖岬で観察されたサシバの 27% に相当する。ただし、伊良湖岬でのデータは終日観察した結果であり、上陸地点でのデータはほとんどが朝だけせいぜい昼まで、のデータである。伊良湖岬では午後に大群が渡る場合もあるが、それらは上陸地点での観察数から抜け落ちていると見ざるを得ない。従って安楽島へ上陸する実数は
27% よりかなり大きいと考えられる。
(むろん天候などにより、飛行ルートは変化するようである。安楽島 / 伊良湖岬のパーセンテージは 0% ( 1992 年 10
月 7 日)から 168%(1991 年 10 月 15 日 ) まで変化した。)
地理的に見ても、伊良湖岬、神島、菅島、安楽島半島と直線的に連続しており、有視界飛行をするサシバの飛行ルートとしては最適、最短であると思われる。地理的には答志島をへて、小浜半島へ上陸するルートも考えられるが、観察結果ではこのルートを取るものは少ない。

これらの考察から安楽島付近がサシバの主な上陸場所であろうと考えられる。安楽島は行者山に隣接しており、安楽島に上陸したサシバは行者山周辺で上昇気流を取り、伊勢方面へ飛び去るものと思われる。

なお同様に伊勢市内を含む内陸部で得られた 18 日間のデータを集計すると伊勢市内の藤里町において伊良湖岬で観察された個体数の
34% が観察されている。

クマタカについて
2006 年 4 月 22 日の探鳥会後に出現したクマタカは支部会員小坂里香により撮影された (下に掲載の写真 ) 。その写真を近藤保護部長が解析した結果、2,3歳の亜成鳥であろうとの結論であった。

志摩半島では伊勢市矢持(行者山から約 13km 西南西)で 1999 年の繁殖期にクマタカの棲息を確認している。( 99 年
1 月 6 日、 1 月 X 日 2 月 8 日、 3 月 2 日、 3 月 10 日、 3 月 Y 日、 3 月 Z 日、 5
月 6 日、 6 月 11 日いずれ飛翔、うち 1 回はディスプレイ飛行、 X-Z は日付不明)ここでは繁殖の可能性が高い。矢持から行者山までは数本の道路があるものの、広大な神宮林を含み、連続した山林であり、開発はほとんどされていない。この山林に複数つがいのクマタカが棲息繁殖し、その棲息繁殖域の末端にこの亜成鳥の生息域(なわばり)がある可能性がある。亜成鳥は一般に定住性がつよく、比較的狭い縄張り内で過ごすと考えられる。行者山周辺がその縄張りである可能性が高い。

クマタカの飛翔クマタカの飛翔


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PDF 福井・三重県下の風力発電施設建設計画に関するプレスリリース

プレスリリース 2006.05.25

日本野鳥の会が「タンチョウ」の生息地35.3haを購入
これまでに設置した野鳥保護区は合計17ヶ所約1634.2ヘクタール。

2006.5.25

2006年5月25日、(財)日本野鳥の会(事務局:東京、会長:柳生博 会員・サポーター数5万2千人)は、当会会員の渡邊玲子氏(わたなべれいこ・兵庫県)からの寄付金をもとに、タンチョウの生息する北海道厚岸町の湿原を購入した。現地は、寄付者のお名前を冠した「渡邊野鳥保護区別寒辺牛湿原」とし、恒久的に保全する。今回の保護区を含め、当会が野鳥保護のために設置した保護区は合計17ヶ所、面積は1634.2ha。このうちタンチョウを対象としたものは、11ヶ所、1596.0haとなった。

■購入した土地について

渡邊野鳥保護区別寒辺牛湿原の写真

厚岸町内を流れるチライカリベツ川流域の湿原、面積35.3ha(353,245m2)。この土地は、1994年に設置した「早瀬野鳥保護区別寒辺牛湿原(注:1)」の東側に隣接している。タンチョウは、この周辺で1つがいが繁殖している。
なお、今回の購入した土地は、国指定鳥獣保護区特別保護地区およびラムサール条約登録地に隣接しているが、法的な指定はなされていない場所である。
※注:1 2005年11月に、国指定鳥獣保護区特別保護地区およびラムサール条約登録地に指定された

■寄付者のプロフィール

渡邊玲子さんは兵庫県在住。当会の会員歴27年。また、鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリの活動を支援する賛助会第I期「タンチョウ383人の会」および同第II期「タンチョウふぁんクラブ」のメンバーとして、1987年よりタンチョウ保護のために資金面での協力をしていただいていた。これまで同氏からのご寄付をもとに、4ヶ所の野鳥保護区を設置している。
※なお、直接の取材はご本人の希望により固くお断りいたします。

■渡邊玲子さんのコメント

「タンチョウがすむ環境を守れば、そこに関わる他の動植物も守ることができるという想いを実現でき、とてもうれしく思っています。これからも、もっともっと保護区を設置してもらえるよう期待しています。」

■購入費について

渡邊玲子氏より、ご寄付をいただき購入した。
なお、金額は今後の購入にも関わるので、伏せさせていただきます。

■日本野鳥の会保護区事業

野鳥の生息地の保全を目的として、当会では、1986年から「野鳥保護区」を拡大しています。これまでに北海道東部のタンチョウの営巣地を中心に17ヶ所、1634.2haを買い取り等により確保してきました。この面積は、東京ディズニーランドが33個入る大きさで、国内の自然保護団体が設置した保護区としては最大の面積です。
買い取り後は、当会職員が、調査や管理、巡回監視に当たっていきます。
なお、土地の買い取りについては会員の方をはじめとする方々からの寄付を財源としています。

(財)日本野鳥の会のタンチョウ保護活動

■概要

タンチョウは、かつて江戸時代までは道内全域に生息していたと言われているが、明治時代の乱獲と生息地である湿原の開発により激減し、一時は絶滅したと考えられていた。大正時代末期に釧路湿原で再発見されて以来、地元農家の冬期給餌などの保護活動が実り、個体数は1000羽を超えるまでになった。国の特別天然記念物にも指定されているが、分布は北海道東部に偏在し、冬期の人為的な給餌に依存している。また生息地である湿原の面積は減少する一方で、残されている湿原も営巣地の約半分は法律による保護指定がなされておらず、いつ開発されてもおかしくないのが現状である。
(財)日本野鳥の会は1987年に全国からの募金をもとに、タンチョウの越冬地である阿寒郡鶴居村の給餌人、伊藤良孝氏(故人)のご理解とご協力を得て「鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ」を開設した。そこでは日本野鳥の会のレンジャーが常駐し、タンチョウ保護のために生態調査や自然解説などを行う現地拠点となっている。また繁殖地の保護状況調査をもとに、タンチョウの営巣地でありながら法律で保護指定されていない湿原を購入、あるいは地主と協定を結ぶ等で、野鳥保護区を設置する活動を行っている。土地の購入費用は会員をはじめ、趣旨に賛同する個人、団体からのご寄付が充てられている。

■財団法人日本野鳥の会について(詳しくはホームページ http://www.wbsj.org

自然と人間が共存する豊かな社会の実現を目指し、野鳥や自然のすばらしさを伝えながら、自然保護を進めている民間団体です。全国5万2千人の会員・サポーターの方が、自然を楽しみつつ、自然を守る活動を支えています。
・創設:1934年  ・創設者:中西悟堂  ・支部:全国89支部

<野鳥や自然を大切に思う心を伝える>

  • 全国12ヶ所のサンクチュアリやバードプラザを訪れる年間約30万人の方に、野鳥や自然のすばらしさを伝えています。
  • 東京バードフェスティバルなどの大規模イベントへの参加や野鳥図鑑などの発行を通して、バードウォッチングの楽しさを伝えています。
  • バードウォッチングの指導・案内のできる人材の育成を進めています。

<野鳥や自然を守る>

  • 北海道東部のタンチョウの営巣地を中心に、土地の買い取りや協定により野鳥保護区として保全しています。現在、保護区の面積は、17ヶ所、1634.2haで、自然保護団体としては国内最大級です。
  • 鳥類の生息地として、保全が急がれる場所を明確にするため、国際的に重要な鳥類等を指標にした重要度の基準(IBA基準)を満たした野鳥の重要な生息地の選定、リストの公表を行い、保全の推進、ネットワーク化を行っています。

<特定公益増進法人です>

日本野鳥の会は、特定公益増進法人に認定されておりますので、個人や法人が支出した寄付金に対して所得控除や損金算入が設定されています。

同時発表先

環境省記者クラブ・北海道釧路支庁記者クラブ

<本件についての問合せ先>
財団法人日本野鳥の会 野鳥保護区事業所
0153-25-8911
担当:富岡辰先、山口桂賜、有田茂生

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PDF 「タンチョウ」の生息地に関するプレスリリース

プレスリリース 2006.05.09

日本野鳥の会が北海道苫小牧市周辺の勇払原野の保全構想を策定

2006.5.9

(財)日本野鳥の会(本部:東京、会長:柳生博 会員数4万6千人)は、ウトナイ湖サンクチュアリを含む勇払原野の調査結果に基づき、この地域の保全に関する独自の構想を策定し、「ウトナイ湖・勇払原野保全構想報告書」として発行した。勇払原野の大半は苫小牧東部開発地域であるが、未利用地が多く、鳥類調査の結果、釧路湿原やウトナイ湖に匹敵する豊かな自然環境であることが明らかになった。調査結果を元に、勇払原野を広域的に保全・再生していく構想を提唱した。また、様々な立場の利害関係者が参加して、生態学的な視点から保全計画を協議する場の設置を提案している。(報告書の入手先はこちら

■背景

勇払原野の位置の図

勇払原野は北海道三大原野のひとつとして、釧路湿原、サロベツ原野と並び数えられている。約3万6千haの原野を構成する湿原の面積は過去50年で著しく減少しているものの、残された自然環境は、ラムサール条約登録湿地であるウトナイ湖を含み、水鳥、草原性鳥類、絶滅のおそれのある鳥類の生息地として重要な役割を果たしている。当会はこの優れた鳥類の生息環境を将来にわたって維持していくために、2000年度から当該地域において鳥類調査を実施し、その生息状況から生息環境としての特徴を把握し、社会環境を考察して保全構想をまとめた。


■勇払原野の歴史と現状

勇払原野は台地、砂丘、湿原、湖沼と複雑な環境を持ち、先住のアイヌ民族により川を利用した太平洋側と日本海側を結ぶ交通の要衝として、またサケやシカ等の資源に恵まれた土地として自然と共存した文化があった。勇払原野の開拓は江戸時代後期からで、農業開拓は湿地と霧、火山灰土に阻まれあまり進展しなかった。その後1960年代からの高度成長期に、第三次全国総合開発計画の一環として苫小牧東部開発計画がスタートした。しかしその後の社会情勢の変化により、当初計画の約1万700haの土地の多くが未利用地域として残され、また農地として開拓された場所が放置され原野化し、結果として鳥類の良好な生息地となっている。

■鳥類調査の結果

当会が2000年~2003年に調査を行った結果、センサス等の鳥類相調査から、勇払原野で記録された野鳥は276種で、国内で記録されている野鳥の約半数を占め、釧路湿原やサロベツ原野で行われた類似の調査よりも種類数が多く、環境も多様性に富んでいることが示唆された。併せて釧路湿原と同様に森林と湿原を併せた環境を持つことが特徴であることが明らかになった。
苫小牧東部開発地域にかかるエリアで行った重点的な調査では、この地区がウトナイ湖に匹敵する希少な野生鳥獣の生息域であり、かつての勇払原野の面影を残す景観的にも優れた、豊かな自然環境であることを確認した。希少種を対象とした調査では、15種類以上の希少種が確認された(別紙参照)。このうちシマアオジ、チュウヒ、サンカノゴイ、オオジシギ、ガン類については
c3細な調査を行い、苫小牧東部開発地区がシマアオジとチュウヒにとって重要な繁殖地であること、ガン類やオオジシギについてはラムサール条約湿地の基準となる生息数を満たしていること、オオジシギの生息個体数は国際的な水鳥保護ネットワークの参加基準を満たしていることが明らかになった。

勇払原野の保全イメージ

■勇払原野の保全構想

勇払原野の今後の保全を考えるにあたり、鳥類調査の結果を総合して検討した結果、ヨシ原、湿地林等の低湿地を中核とした環境に希少種を含む鳥類が分布しており、こうした低湿地を中心とした保全が必要であることが明らかになった。そこで、勇払原野の特性を保つ特に重要な3つのコアエリア(美々川・ウトナイ湖、静川・弁天沼及び周辺草地、厚真・鵡川及び植苗・早来地区)の環境を維持することを軸として、原野環境を広域的に保全・再生していくことを提唱した。
勇払原野の法令等による指定は断片的で、生息地の分断化も進んでおり、このままでは開発の進展により勇払原野の特性が失われてしまうおそれがある。水系全体の保全と生息地の連続性の再生をめざし、勇払原野全体の一体的な保全をはかるための保全計画立案が今後必
?である。このため、様々な立場の利害関係者が参加して、生態学的な観点から保全計画を協議する場の設置を提案する。

■今後について

今後はこの報告書を活用した保全を目指し、関係者への働きかけや市民向けのシンポジウムなどを行っていく。

本件についての問合せ先
財団法人 日本野鳥の会 サンクチュアリ室
ウトナイ湖サンクチュアリ担当 原田修
〒059-1365 北海道苫小牧市植苗150-3
TEL 090-8929-5027

参考資料

勇払原野で記録のある希少鳥類

No 種名 学名 調査期間中の
記録種
環境省
RDB
北海道
RDB
IUCN
RDB
1 カンムリカイツブリ Podiceps cristatus     VU  
2 サンカノゴイ Botaurus stellaris EN EN  
3 オオヨシゴイ Ixobrychus eurhythmus EN NT  
4 コウノトリ Ciconia boyciana CR EN EN
5 マガン Anser albifrons NT NT  
6 ヒシクイ Anser fabalis (serrirostris) VU NT  
7 (オオヒシクイ)※ Anser fabalis middendorffi NT    
8 コハクチョウ Cygnus columbianus     NT  
9 オシドリ Aix galericulata     NT  
10 シノリガモ Histrionicus histrionicus     NT  
11 ミコアイサ Mergus albellus     VU  
12 ミサゴ Pandion haliaetus NT VU  
13 ハチクマ Pernis apivorus NT NT  
14 オジロワシ Haliaeetus albicilla EN EN NT
15 オオワシ Haliaeetus pelagicus VU EN VU
16 オオタカ Accipiter gentiles VU VU  
17 ハイタカ Accipiter nisus   NT VU  
18 ケアシノスリ Buteo lagopus     NT  
19 ハイイロチュウヒ Circus cyaneus     NT  
20 チュウヒ Circus spilonotus VU VU  
21 シロハヤブサ Falco rusticolus     NT  
22 ハヤブサ Falco peregrinus VU VU  
23 エゾライチョウ Tetrastes bonasia   DD NT  
24 ウズラ Coturnix japonica   DD NT  
25 ナベヅル Grus monacha   VU   VU
26 タンチョウ Grus japonensis VU EN EN
27 クイナ Rallus aquaticus     NT  
28 ヒメクイナ Porzana pusilla     NT  
29 オオジシギ Gallinago hardwickii NT NT  
30 ケイマフリ Cepphus carbo   VU VU  
31 ヨタカ Caprimulgus indicus     NT  
32 アカショウビン Halcyon coromanda     NT  
33 クマゲラ Dryocopus martius VU VU  
34 オオアカゲラ Dendrocopos leucotos     N  
35 アカモズ Lanius cristatus NT NT  
36 シマアオジ Emberiza aureola NT NT  

CR:絶滅危惧IA類,EN:絶滅危惧IB類,VU:絶滅危惧II類,NT:準絶滅危惧,DD:情報不足,N:留意種
(※ヒシクイのみ亜種によって環境省RDBのランクが分かれているため亜種別に記述)


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PDF 勇払原野の保全構想策定に関するプレスリリース

プレスリリース 2006.04.27

帰島後一年余、三宅島の自然がお茶の間で。日本野鳥の会は、三宅島のアカコッコなどの生息地にインターネットカメラを設置。

2006.4.27

(財)日本野鳥の会(本部:東京、会長:柳生博、会員・サポーター数5万2千人)は、 1993年より「三宅島自然ふれあいセンター・アカコッコ館」(三宅村立)にレンジャ ーを配置し、三宅島に生息する野鳥の保護に取り組んでいるが、今回、日本の固有種で国 の天然記念物にも指定されているアカコッコなどが生息する「三宅島自然ふれあいセンタ ー・アカコッコ館」(東京都三宅島三宅村)に、(社)昭和会館(東京、理事長:岩村和 俊、会員数2百人)の援助を得て、インターネットカメラ2台を設置した。これにより、 インターネットに常時接続できるパソコン端末から、日本野鳥の会のホームページを開く だけで、水浴びするアカコッコや2000年の大噴火により影響を受けた自然の様子をラ イブ映像で閲覧できるようになった。
閲覧に際しては、アクセス順ながらパソコン端末から、カメラを上下左右、ズームなどの 遠隔操作ができ、音声も聞ける。
日本野鳥の会では、昨年、タンチョウの生息地「鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ」 にライブカメラを設置したが、今回はその第2弾。今後も引き続き、サンクチュアリや野 鳥保護区などにインターネットカメラを設置して、野鳥や自然の魅力をお茶の間に伝えて いく。
【日本野鳥の会のホームページ】
http://www.wbsj.org

【(社)昭和会館】

■沿革

「社団法人 昭和会館」は、華族制度と貴族院が存在していた時代に、貴族院男爵議員中心の政治会派である「公正会」が国会に貢献する目的をもって昭和2年9月7日に設立した団体であ ります。その後、昭和22 年5 月3 日憲法が改正され、華族制度および貴族院が廃止され、本来の 任務が終了したのを期に、あらためて定款を改定し『公益法人』として出発することになり、昭 和23 年5 月12 日、東京都よりこれが認可されました。以来、公益法人として社会・公益のため に貢献する団体等に対する援助を主体とし、その他講演会・談話会・会員相互啓発等の活動を続 け今日に至っております。 なお、現在昭和会館は、約200 名の会員で構成されております。

■事業目的

 昭和会館の事業目的は、定款で下記のように定められております。

  1. 社会、公益のために貢献する団体等に対する援助
  2. 講演会、談話会、研究会、その他の集会の開催
  3. 会館の維持運営
  4. その他この法人の目的を達成するために必要な事業

■所在地

〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-3-2 新霞ヶ関ビル20F
TEL:03-3581-1621(代)

【三宅島の自然と日本野鳥の会の活動】

三宅島は、東京から南南西へ約180kmの太平洋上にある、周囲約38km、面積は55km2 ほど のほぼ円形をした火山島です。温暖な気候が育くんだ照葉樹林に覆われており、国の天然記念物の アカコッコ、イイジマムシクイ、カラスバト、固有亜種のオーストンヤマガラやミヤケコゲラなど 三宅島ならではの野鳥が生息しています。野鳥の生息密度が高く、別名”バードアイランド”とも 呼ばれています。 当会では、三宅島の豊かな自然と野鳥の保護、三宅村の振興の両立を目的に、「三宅島自然ふれ あいセンター・アカコッコ館(以下、アカコッコ館)」を拠点に活動をしています。 現在、三宅島では、2000 年6月に始まった火山活動により、照葉樹林が大きくダメージを受け、 野鳥の生息環境の激変が起きています。住民の生活も5年ぶりに全島避難からの帰島とはなりまし たが、未だに高濃度地区などで活動が制限されている場所もあります。 当会ではこうした状況の中で、科学的な調査方法に基づいた野鳥の生息状況の把握、島民と自然 が共存する復興のあり方への支援、特色ある三宅島の自然を活かした島の経済復興を応援いたします。そのため、2005 年2月の避難指示解除後には、アカコッコ館の運営を復旧するとともに、みやけ エコネット等による自然情報の発信、自然ガイドの養成などの活動を行っています。 今回のインターネットカメラの設置は、三宅島復興の一助として、2000 年噴火災害によって影響 を受けた自然や戻ってきた野鳥の様子を、多くの方に知っていただくきっかけとなることを願って 実施するものです。

【三宅島自然ふれあいセンター・アカコッコ館】

アカコッコ館は、特色ある三宅島の自然を将来へと受け継ぎ、自然にふれあうための拠点として、 三宅村が1993 年に開設した施設です。火山活動のために2000 年9月から休館していましたが、昨 年7月より約5年ぶりに運営を再開しました。日本野鳥の会のレンジャーが常駐し、来訪者への自 然解説や自然環境の調査、自然情報の発信、自然ガイドの養成などの活動を行っています。

〒100-1211
東京都三宅島三宅村坪田4188
TEL:04994-6-0410 FAX:04994-6-0458
開館時間 午前9時~午後4時30 分
休館日 月曜日(祝日の場合はその翌日)年末年始(12 月29 日~1月3日)
利用料金 一般200 円(15 人以上の団体:2割引)中学生以下・65 才以上:無料
アカコッコ館http://www.wbsj.org/sanctuary/miyake/
みやけエコネットhttp://www.miyake-eco.net

【アカコッコ(国・天然記念物、環境省RDB 絶滅危惧II類)について】

アカコッコ館の名称にもなっている野鳥・アカコッコは、伊豆諸島とトカラ列島でのみ繁殖する 日本固有のツグミの仲間です。伊豆諸島では、大島から青ヶ島にかけて生息し、北部より南部の島 で多く見られます。三宅島は本種の代表的な生息地で、三宅村の鳥にも選定されています。自然林 から二次林までのさまざまな環境で暮らし、中でも照葉樹林の低木層があまり発達していない場所 で多くみられます。また、林のふちで餌を探し、主にミミズやムカデ、昆虫類などを食べています。 季節によってはハチジョウグワやタブノキなどの実も食べます。子育ての時期は4月から7月にか けてで、木の根や草の茎、コケなどを土で固めたお椀状の巣を樹上に作ります。卵の数は2~5個 で、雌雄共同で雛を育てます。

【インターネットカメラ】

■設置場所

「三宅島自然ふれあいセンター・アカコッコ館」
〒100-1211 東京都三宅島三宅村坪田4188 TEL:04994-6-0410

■稼働時期と時間帯

 稼働期間は通年。時間帯は6時~18時の間

この件に関するお問い合わせは
財団法人 日本野鳥の会
〒151-0061
東京都渋谷区初台1-47-1 小田急西新宿ビル1F (担当:会員室 室長代理 安藤康弘)
TEL:03-5358-3512 FAX:03-5358-3608 http://www.wbsj.org
現地:「三宅島自然ふれあいセンター・アカコッコ館」
〒100-1211 東京都三宅島三宅村坪田4188 (担当:チーフレンジャー 山本裕)
TEL:04994-6-0410 FAX:04994-6-0458

参考写真


三宅島遠景


アカコッコ館本館


本館に設置したインターネットカメラ


当該カメラから見えるアカコッコの水浴び


当該カメラから見えるメジロの水浴び


遠景が見える位置に設置したインターネットカメラ


当該カメラから見える雄山の雲煙と枯死した木々


当該カメラから見える大路池と海


当該カメラから見える大路池と残る照葉樹林(アップ)


国の天然記念物アカコッコ


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PDF 三宅島ライブカメラ設置に関するプレスリリース
PDF 三宅島ライブカメラ設置に関するプレスリリース(写真)

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