IBAの現状
IBAへの脅威
2015年に実施したIBAモニタリング調査によると、回答があったIBAサイトの約9割から何らかの保全上の脅威があるという情報が寄せられました。
IBAへの脅威で最も件数が多かったものは、「外来種の影響:侵略的外来種、問題のある在来種、遺伝子」でした。脅威として挙げられた外来種(問題のある在来種)は、環境ごとに異なり、島嶼部では、ネズミ類やノネコなどの移入種による捕食が問題となっていました。湖沼・潟湖では、ブラックバスなどの外来魚やアライグマによる生態系の攪乱が問題となり、森林では、ニホンジカの食害による植生変化や、オオハンゴンソウの侵入が、主な問題として挙げられました。
次に多かった脅威は「人間活動による影響」でした。活動の内容は、島嶼では釣り人の影響(釣り人が残すゴミによる外敵の誘引等)、湖沼・潟湖では釣り人の影響および水上スポーツ、干潟ではマリンスポーツ、森林では登山やスノーモービル、と環境によって異なるものの、釣りやアウトドアレジャーによる利用の増加が生息環境の攪乱につながっていることがわかりました。
このほか、島嶼では地震による津波と火山の噴火、森林では地震による崩落と火山の噴火などの「自然災害の影響」が脅威の上位に上がりました。
また「気候変動・異常気象」「汚染」「自然災害の影響」といった脅威は、サイトの広範囲にわたり影響を与え、選定基準種の個体数に高い割合で影響を与えるおそれがあることがわかりました。
件数やエリアは限られているものの、「エネルギー・資源開発」は、今起きている脅威で緊急度が高く、急速に進行していることがわかりました。
選定基準種および生息環境の変化
回答があったIBAサイトの65%にあたる83サイトで、選定基準種の鳥類のカウント調査が行われており、その結果、43サイト(34%)で、個体数の減少が見られました。選定基準種に影響するような生息環境の変化は、サイトの約半数にあたる61サイト(48%)で起きていました。
生息環境の変化の内容(要因)として、最も多かったものは「外来種の影響・問題ある在来種」であり、外来種や問題ある在来種は、サイトの環境変化を引き起こし、選定基準種の個体数に大きな影響を与えていることが示唆されました。また、「工事・開発の影響」「災害」「レクリェーション活動」も、サイトの環境や選定基準種の個体数に影響を与えていることがわかりました。
生息環境の変化の内容は、多岐にわたっており、選定基準種の個体数の動向との関連も含めて、引き続きモニタリングしていく必要があります。
保全活動

シカの食害防止柵(大台ケ原) 写真:川瀬浩
回答があったIBAサイトの8割で何らかの保全活動が行われており、中でも環境教育(79サイト)、モニタリング調査(78サイト)が多くのサイトで行われていました。環境教育活動には探鳥会を含み、計42件行われていました。モニタリング調査の具体例も、63件が鳥類モニタリングと、鳥類を対象とした教育・調査活動が多く行われていました。一方で、脅威として多く挙がった外来種への対応が行われているサイトは44サイトにとどまり、問題はあるものの、対策が十分に取られていない可能性があることがうかがえました。
保全のための人材育成(34サイト)、エコツーリズムなどの経済活動を通じた保全(33サイト)は、全体の3割以下にとどまり、今後、保全活動の幅を広げ、充実させていく分野となることが期待されます。
詳細はIBAモニタリング2015報告書をご覧ください
IBAモニタリング(PDF 867KB)
重要野鳥生息地(IBA, Important Bird and Biodiversity Areas)の保全

霧多布岬 写真:河内直子
IBA(重要野鳥生息地、Important Bird and Biodiversity Areas)は、鳥類にとって重要な生息地を、世界共通の基準(IBA基準)によって選定し、すべての生息地をネットワークとして世界的に守っていこうというプログラムです。
国際的かつ科学的な基準で野鳥の生息地をリスト化し、法的な保護の目標を示すとともに、その地域を鳥たちが住みやすい状態に保全していくことが、IBAプログラムの目的です。
国際的な鳥類保護組織であるバードライフ・インターナショナルが、世界100か国以上の加盟団体と共同実施しており、日本では日本野鳥の会がIBAの選定と保全を進めています。
2024年現在、日本には168か所のIBAがあります。
サイトごとに、野鳥に関する情報や生息地の環境、保護指定の有無、保全への脅威などの情報をまとめており、各サイトの保全策を検討するときの材料として広く利用されることを目指しています。

また、海洋における食物連鎖の上位に位置する海鳥を指標に、生物多様性や環境保全において重要な海域を国内で選定しています。
マリーンIBAはこちら

オオジシギファクトシート
2016年度調査結果
- ファクトシート1 渡り経路の衛星追跡(PDF 230KB)
2017年度調査結果
- ファクトシート2 勇払原野における個体数調査1(PDF 285KB)
- ファクトシート3 勇払原野における個体数調査2(PDF 250KB)
2018年度調査結果
- ファクトシート4 本州以南におけるオオジシギの繁殖状況(PDF 435KB)
- ファクトシート5 北海道におけるオオジシギの繁殖個体数の推定(PDF 240KB)

オオジシギノート
オオジシギについてもっと知ろう!

- オオジシギノート1 オオジシギってどんな鳥?(PDF 269KB)
オオジシギコンテンツ
オオジシギの動画
リンク
- NHK for School オオジシギの飛来
(勇払原野のオオジシギの画像が見られます) - 【HTBセレクションズ】オオジシギの謎の渡りルートを解明
(当会のオオジシギ調査のようすが紹介されています)
第1弾 第2弾 第3弾 - 【北海道onデマンド】カムイの鳥の軌跡~オオジシギ2つの物語~
(当会の活動のようすが紹介されています)
シンポジウム「野鳥と風力発電のセンシティビティマップ」

当会が2005年より取り組んでいる野鳥と風力発電の問題に関して、風力発電が鳥類に与える影響を回避するために最も有効な手段であるとされる風力発電と鳥類のセンシティビティマップについて、その先駆的事例を持つ欧州から3人のゲストを招き、シンポジウムを開催いたします。同時通訳により、海外ゲストの講演も日本語で聞くことができます。皆様、奮ってご参加願います。
- タイトル:国際シンポジウム「野鳥と風力発電のセンシティビティマップ‐その作成と活用方法」
- 日時:2018年2月17日(土)10:00~17:00(開場9:30)
- 会場:東京都市大学 横浜キャンパス 3号館・31A教室
(〒224-0015 神奈川県横浜市都筑区牛久保西3丁目3-1) - 入場無料
- 事前申し込み不要
- 日英同時通訳あり(通訳機のお渡しは先着100名様まで)
- 昼食:当日は大学内の学食および売店が休業しておりますので、各自にてご用意ください。会場の最寄りの中川駅周辺に、コンビニエンスストアなどがあります。
- 講演要旨集の配布:参加される方には、受付で無料の講演要旨集を配布いたします。
- 資料集の販売:アイルランドおよびブルガリアのセンシティビティマップ作成事例が収録されている「野鳥保護資料集31」を\3,500(税込)で販売いたします。お釣りの無いよう、ご準備願います。
- 目的:
風力発電施設の建設計画に関わるステークホルダー(環境コンサルタント、事業者等)や研究者、学生、自然保護団体等を対象として、風力発電施設建設に起因する鳥類への影響を回避するために最も有効な手段であるとされ、欧州を中心に盛んになっている風力発電事業に関連した鳥類センシティビティマップ(風車建設の影響を受けやすい鳥類の生息地マップ)の作成や活用の事例について国内外の事例を学ぶ。そして、今後どのようにしたら日本国内でもセンシティビティマップの作成が盛んに行われるようになるかを考える。特に、海外の先行事例を紹介することで、国内でその作成と活用が盛んになるための糸口を探し、野鳥保護と両立する風力発電導入のあり方を考える。
-
プログラム:
- 10:00-10:10
- 開会挨拶・趣旨説明
- 10:10-10:30
- 環境省における全国向け野鳥と風力発電のセンシティビティマップ
有山 義昭/環境省自然環境局 野生生物課 - 10:30-10:50
- 衝突履歴を利用した全国スケールのセンシティビティマップ作成の試み
北村 亘/東京都市大学環境学部 - 10:50-11:10
- 鳴門市でのゾーニングにおけるセンシティビティの評価検討について
市川 大悟/世界自然保護基金ジャパン - 11:10-11:30
- 北海道北部における繁殖海鳥の洋上風力発電センシティビティマップ作成事例
風間 健太郎/北海道大学水産科学院 - 11:30-11:50
- 北海道宗谷地域における野鳥と風力発電のセンシティビティマップ作成事例
浦 達也/(公財)日本野鳥の会 自然保護室 - 11:50-12:10
- 国内外のゾーニングの取り組みと今後の課題
分山 達也/(公財)自然エネルギー財団 - 12:10-13:00
- 昼休み
- 13:00-13:50
- Reconciling birds and wind energy: The importance of sensitivity mapping
(野鳥と風力発電の調和‐センシティビティマップの重要性)
Tristram Allinson/BirdLife International - 13:50-14:40
- Bird Sensitivity Mapping Tool for Wind Energy Developments in Ireland
(アイルランドにおける野鳥のセンシティビティマップと風力発電開発)
Oonagh Duggan/BirdWatch Ireland - 14:40-15:20
- Bird sensitivity maps and wind farm development in Bulgaria
(ブルガリアにおける野鳥のセンシティビティマップと風力発電開発)
Irina Mateeva/Bulgarian Society for the Protection of Birds - 15:20-15:30
- 休憩
- 15:30-16:30
- パネルディスカッション-どうしたら日本でセンシティビティマップが普及、活用されるのか-
・パネリスト:T. Allinson、O. Duggan、I. Kostadinova、有山義昭、市川大悟
風間健太郎、浦達也、分山達也
・モデレーター:北村 亘(東京都市大学・講師) - 16:30-16:50
- 開場からの質疑応答
- 16:50-17:00
- 閉会のあいさつ



- 主催:
- (公財)日本野鳥の会
- 共催:
- 東京都市大学環境学部・バードライフインターナショナル東京
- 助成:
- 地球環境基金
- お問い合わせ先:
- [email protected](自然保護室 浦)
イベント案内チラシはこちら(PDF 533KB)
みまもって!ナベヅル・マナヅル
秋を迎え、ナベヅル、マナヅルが日本に渡って来る時期になりました。
国内でのツルの越冬地の復元・保全のため、今年も四国各県、四国地方整備局、中国四国農政局に他の自然保護団体と共同で依頼書を提出し、ツルへの配慮と狩猟者や住民の方々への周知をお願いしました。
今年はチラシ、ポスターの内容を充実させ、四国地方だけでなく熊本県内でも10月より各県から関係者に配布していただいています。
・四国4県宛て要望書
平成29年10月2日
徳島県知事 飯泉嘉門様
香川県知事 浜田恵造様
愛媛県知事 中村時広様
高知県知事 尾﨑正直様
公益財団法人日本野鳥の会
公益財団法人日本自然保護協会
公益財団法人世界自然保護基金ジャパン
公益財団法人日本鳥類保護連盟
日本ツル・コウノトリネットワーク
四国ツル・コウノトリ保護ネットワーク
四国に飛来するツル類の保護対策について
平素からツル類など野鳥の保護につきましては、ご理解とご配慮をいただき深謝しております。
一昨年度に四国各地で合計約300羽のナベヅルが渡来し、100羽以上が長期滞在(越冬)しました。昨年度は27年度ほど多くの個体は渡来しませんでしたが、最終的な越冬数は約50羽で、例年と比べると飛躍的に越冬数が増加しています。ツルは学習能力が高く、同じ越冬地を選ぶ傾向があることから、一昨年度からの様々な関係者の配慮や努力による成果ではないかと思われます。長年の課題である新越冬地の形成の兆しが見えつつあるように感じます。
つきましては、今シーズンもツル類の渡来が予想されますので、引き続きご協力いただきたく、お願い申し上げます。詳細は別紙1をご覧ください。チラシ・ポスターを製作しましたので、ご活用ください。
また、下記の通り、関係者への周知にもご協力いただきたく、重ねてお願い申し上げます。
記
1 ツル類の渡来地の関係者
- 県の鳥獣、自然保護、農業、漁業、河川担当部署と出先機関
- 市町村の上記担当部署
- 県内で登録した狩猟者、猟友会、内水面漁業協同組合
- 地域住民 等
※上記以外にも関係者がいらっしゃる場合は、適宜ご対応くださいますようお願い申し上げます。
なお、四国地方整備局、中国四国農政局には別途依頼しています。
2 資料一式
- 別紙1 ナベヅル、マナヅル保護に必要な配慮事項と対象地域(PDF 241KB)
- 別紙2 ナベヅル、マナヅルについて(PDF 324KB)
- チラシ、ポスター「みまもって!ナベヅル・マナヅル」
- 送付状 ※必要に応じてご利用ください
【問合せ】公益財団法人日本野鳥の会自然保護室 伊藤、野口、葉山
〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23
電話/Fax:03-5436-2633/2635 Eメール:[email protected]
地球環境基金助成事業シンポジウム‐地域と自然のための風力発電とは
風力発電はクリーンで持続可能な電源です。しかし、その開発においては自然環境への負荷に対する配慮と地域住民の合意形成が重要な要件である一方、それらが十分になされないまま実施される場合があります。なぜ、その様なことが起こるのか、地域や自然との調和のあり方やアセス法の仕組みの観点から学び、地域住民の声を聴きながら考えます。
- 主催者:
- 公益財団法人日本野鳥の会
〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル TEL:03-5436-2633 - 期間:
- 平成29年10月15日(日) 10:00~13:30 (受付開始 9:30~)
- 定員:
- 豊富町定住支援センター ふらっと★きた
〒098-4110 北海道天塩郡豊富町大通6丁目 TEL:0162-82-1001 - 講演・出演:
- 飯田 哲也(環境エネルギー政策研究所 所長)
北村 亘 (東京都市大学環境学部 講師)
長谷部 真(サロベツエコネットワーク 主査)
稲垣 順子(とんこり堂)
浦 達也 (公益財団法人日本野鳥の会 自然保護室 主任研究員) - 参加申込方法:
-
要事前申し込み不要(定員80名)
チラシはこちらから(PDF 280KB) - 参加者(予定):
- 一般市民等、自然保護団体、事業者、行政機関
- 参加費:
- 無料
- 入場方法:
- 受付後、自由入場(自由席)
- 責任者氏名:
- 浦 達也(公益財団法人日本野鳥の会 自然保護室 主任研究員)
- 連絡先:
- 公益財団法人日本野鳥の会 自然保護室
〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル
TEL:03-5436-2633/eメール:[email protected]
Strix Vol.33
※特集と原著論文は、摘要をご覧になれます。
特集:モニタリング
Strix編集部:モニタリング特集にあたって
天野達也:鳥類のモニタリング:その重要性,応用,将来に向けた提言(摘要)
藤田剛・掛下尚一郎・藤田薫・古南幸弘:30年にわたる鳥の相対的な個体数変化傾向から横浜自然観察の森の保全機能を推定する(摘要)
斉藤充:姫路市自然観察の森における繁殖期の鳥類生息状況 26年間のラインセンサス調査結果より(摘要)
山岸洋樹・善浪めぐみ・手嶋洋子・田尻浩伸・外山雅大:エゾシカの採食圧によるハマナス群落の衰退が草原性鳥類に及ぼす影響について(摘要)
渡辺朝一・池野進・西野正義・益子美治郎・川崎惟男・武田隆治・村上禎啓・大高由良:霞ヶ浦におけるカモ科鳥類の経年変化(摘要)
原著論文

多田英行:越冬期におけるチュウヒの同種内での排他的行動の特徴(摘要)
加藤雅之・松沢孝晋・坂本泰隆・轟正和・永井敏和・吉田賢吾・柳澤紀夫:愛知県西三河地域におけるサシバButastur indicusの営巣木の分布と変遷(摘要)
藤巻裕蔵:北海道におけるメジロの繁殖期の分布(摘要)
川上和人:小笠原諸島南鳥島の鳥類相(摘要)
福田佳弘・小林万里:北方四島における沿岸海鳥類の分布と営巣地分布(摘要)
玉田克巳:石狩川沿い河跡湖沼群に生息するカモ科鳥類(摘要)
内田博・上田恵介:イカルチドリの配偶システムと雌雄の役割分担(摘要)
短報
土方秀行・橋本寿二・宮山修・鳥飼久裕・所崎聡:奄美大島で観察されたヒメコウテンシCalandrella brachydactyla200羽以上の群れ
高橋雅雄・長瀬京子・三国孝・久保清子・久保益男・宮彰男:青森県仏沼におけるウズラの繁殖
千嶋淳・片岡義廣・青木則幸・矢萩樹・長田宏子:北海道東部太平洋側におけるカワウの繁殖初確認
上田恵介・三王達也・佐藤望・上沖正欣・三上修:火山斜面や山岳地帯のガレ場に生息するヒバリの繁殖集団について
大久保香苗:伊豆諸島におけるオニカッコウEudynamis scolopaceusの初記録と音声による同定
三上修:繁殖後のサシバの行動を追跡するためのインターバルレコーダーとトレイルカメラの有用性の検証
特集:モニタリング
天野達也:鳥類のモニタリング:その重要性,応用,将来に向けた提言(摘要)
鳥類を対象とした長期モニタリングは,様々な調査が国内外で長年にわたって継続されている.本総説ではまず,なぜ鳥類の長期モニタリング調査が重要なのか,イギリスの農地性鳥類のモニタリングを一例として議論を行う.次に日本で鳥類モニタリングデータを実際に使った研究事例を紹介することで,モニタリング調査から得られたデータの用途について,さらに鳥類モニタリング調査による生物多様性保全への貢献について議論を進める.最後に,今後さらに長期鳥類モニタリング調査の有用性を高めていくために重要だと考えられる10 箇条について紹介する.
藤田剛・掛下尚一郎・藤田薫・古南幸弘:30年にわたる鳥の相対的な個体数変化傾向から横浜自然観察の森の保全機能を推定する(摘要)
近年,平野部など生息地の分断化が進んだ地域であっても,保全重要度の高い場所があることが指摘されている.横浜自然観察の森のある横浜市南部の丘陵地帯も,このような重要性の高い地域のひとつである.著者らは,観察の森が設置された1986 年から30 年にわたって継続されてきたライントランセクト調査のデータを解析し,総記録数の多かった20 種のうち,繁殖期には半数近い8 種の増加した可能性が相対的に高く,3 種の減少した可能性が高いことを示した.また,越冬期には4 種の増加した可能性が高く,1 種の減少した可能性が高いことが分かった.増加した可能性の高い種(繁殖期と越冬期合わせて10 種)のうち4 種が森林のみを生息地とし,それ以外の種も主な生息地の一部に森林を含んでいた.一方,減少した可能性の高い種(繁殖期と越冬期合わせて3 種)は,すべて生息地の一部に草地を含んでいた.増加した可能性のあった種の中には,大きな森林を必要とすると考えられる4 種が含まれていた.とくにセンダイムシクイとオオルリは地域全体にわたって減少している種であり,観察の森がこれら大きな森林に依存する鳥の生息地として重要な役割を担っていると考えられた.
斉藤充:姫路市自然観察の森における繁殖期の鳥類生息状況 26年間のラインセンサス調査結果より(摘要)
瀬戸内地方の都市近郊で見られる典型的な二次林から成る姫路市自然観察の森で行なった最近26 年間の繁殖期のラインセンサス調査によると,1991 年~ 2015 年の5 年期毎の出現数の上位5 種はヒヨドリ,メジロ,ウグイス,ホオジロ,スズメ,カワラヒワ,ヤマガラのいずれかであり,とくに前の3 種はほとんどの期で優占種であった.統計的に有意な増加傾向がヤマガラ,ヒヨドリ,エナガ,メジロ,キビタキ,コゲラで,また統計的に有意な減少傾向がホオジロ,スズメで認められた.5 年ごとに行われている植生モニタリング調査の結果を用い,鳥の出現数の変化を植生の変化と照らし合わせてみたところ,マツ枯れによって高木層のマツ類が大規模に枯死した際にはほとんどの鳥種で出現数に大きな変化は見られなかった.
山岸洋樹・善浪めぐみ・手嶋洋子・田尻浩伸・外山雅大:エゾシカの採食圧によるハマナス群落の衰退が草原性鳥類に及ぼす影響について(摘要)
根室市春国岱第一砂丘におけるエゾシカの過度な採食によるハマナス群落の衰退が,ハマナス群落を採餌,繁殖の場として利用する草原性鳥類に与える影響を明らかにするため,以下の分析,調査を行なった.1) 春国岱で2000 年から2016 年に行なわれたラインセンサス調査のデータを分析し,どのような種が増加,減少しているのかを検討した.その結果,シマセンニュウ・ノゴマなど4 種が有意に減少していることが明らかになった.2) 衰退した春国岱のハマナス群落とエゾシカの採食の影響を受けていないフレシマ地区のハマナス群落でポイントセンサス調査を行ない,鳥類相を比較した.春国岱ではヒバリしか確認できなかったのに対し,フレシマでは上記の分析で減少傾向にあった種を含め8 種の草原性鳥類が記録された.これらの結果からエゾシカの採食によるハマナス群落の衰退は草原性鳥類の生息地を消失させ,春国岱における鳥類の種数,個体数の減少に影響していることが示唆された.
渡辺朝一・池野進・西野正義・益子美治郎・川崎惟男・武田隆治・村上禎啓・大高由良:霞ヶ浦におけるカモ科鳥類の経年変化(摘要)
関東平野東部に位置し, 日本列島で二番目の開水面積を持つ霞ヶ浦一帯における, 毎年1 月に実施される環境省の「ガンカモ類の生息調査」で記録されたカモ科鳥類個体数の, 1970 年から2015 年にかけての経年変化を分析した.総個体数は, 1980 年代から1990 年代にかけて多い年で50,000 羽程度と横這いであったが, 2000 年代以降は増加傾向にあり, 2015 年には最多の90,000 羽以上が記録された.1980 年代まで多かった潜水採餌性のスズガモ属やアイサ類が激減し, 夜間に湖外で採食するマガモやヒドリガモの増加が顕著であった.プロの鳥学研究者によって科学的な研究を進めたうえで, 霞ヶ浦一帯におけるカモ科鳥類の保護管理体制を確立する必要がある.
多田英行:越冬期におけるチュウヒの同種内での排他的行動の特徴(摘要)
岡山県の阿部池と錦海塩田跡地において,2011 年から2014 年の越冬期に,チュウヒの同種内での排他的行動を調査した.排他的行動は行動形態の特徴などから,追跡飛行,追い出し,攻撃行動,警戒音,足下ろしの5 種に分類した.各種の排他的行動は性別に関係なく観察され,特定の性別間で排他的行動が多く発生する傾向は見られなかった.また,雌雄間での排他的行動において,排他的行動の優劣に性別が関与している傾向は見られなかった.同種内での排他的行動の発生頻度には日中の個体数が関与していることが推測されたが,排他的行動の増減を明確に説明できるほどの結果には至らなかった.なお,足下ろしは1 月以降に観察される傾向が見られ,発生頻度の増加には繁殖に向けた行動の開始が関与していることが示唆された.
加藤雅之・松沢孝晋・坂本泰隆・轟正和・永井敏和・吉田賢吾・柳澤紀夫:愛知県西三河地域におけるサシバButastur indicusの営巣木の分布と変遷(摘要)
愛知県西三河地域において,2007 年から2013 年までの7 年間に26 つがいのサシバButastur indicus の営巣について調査し,営巣木の分布,営巣木利用の変遷について考察した.その結果,当該地域では,サシバ営巣木は約1,000 m の営巣木間距離で連続的に分布しており,その分布特性は営巣環境(アカマツ林),餌場環境(水田等)が狭い範囲に入り組んで存在する当該地域の谷津田環境が広範に連続することに起因することが示唆された.当該地域におけるサシバは,営巣木にアカマツを優先的に利用した.また,多くのサシバが前年と概ね同じ営巣エリアで繁殖活動を開始するが,前年の営巣木から概ね200 m 以内に生育する別の営巣木を利用していた.
1976 ~ 2016 年の4 月下旬~ 7 月下旬に北海道の993 区画(4.5 km × 5 km)内の調査路1,118 か所でメジロZosterops japonicus の分布を調べた.分布図の作成ではこの他に既存の文献と個人記録も用いた.メジロが出現した区画の割合は11.5%で,主な分布域は南部と南西部であった.生息環境別の出現率は,ハイマツ帯を除く森林で1.3 ~ 14.8%,農耕地で2.4%,ハイマツ帯と住宅地では0%であった.垂直分布では標高400 m以下に生息していた.調査路におけるメジロの出現率は温量指数が低くなるにしたがって,低くなった.
小笠原諸島南鳥島は戦前は多数の海鳥の繁殖地となっていたが,乱獲や開発による環境変化により,ほとんどの海鳥の繁殖集団は消滅している.一方で最近はこれらの影響は緩和されつつあり,海鳥の繁殖集団の回復が期待されるが,この島では1993 年以降鳥類調査が行われておらず,近年の生物相に関する情報は限られている.そこで,最近の南鳥島の鳥類相を明らかにするため,2007 年7 月に現地調査を行った.その結果,少なくとも3 つがいのアカオネッタイチョウ,16 つがいのクロアジサシ,約1700 つがいのセグロアジサシが繁殖したことが明らかになった.同時にセグロアジサシの羽毛が含まれたネコの糞も見つかり,海鳥相の回復を促すためには外来種対策が必要と考えられる.
福田佳弘・小林万里:北方四島における沿岸海鳥類の分布と営巣地分布(摘要)
筆者らは,日本側の調査としては初めて,北方四島全域における海鳥調査の機会が得られた.調査は, 択捉島は2002 年6 月11 日から6 月21 日,国後島は2003 年7 月12 日から7 月24 日,色丹島は2005年6 月8 日,11 日,12 日,歯舞群島は6 月10 日に行った.択捉島での海鳥分布調査はチシマウガラスとウミスズメ類に絞って行った.ウミスズメ類は10 種類を観察し,営巣分布調査ではチシマウガラス,ウミウ,オオセグロカモメ,ケイマフリ,ウトウ,エトピリカの営巣を確認した.国後島での海鳥海上分布調査では23 種類の海鳥類を観察し,営巣分布調査では,ウミウ,オオセグロカモメ,ケイマフリ,ウトウ,エトピリカを確認した.色丹島での海鳥海上分布調査では,14 種類の海鳥を観察し.営巣分布調査では,チシマウガラス,ウミウ,オオセグロカモメ,ケイマフリ,エトピリカを確認した.歯舞群島のハルカリモシリ島では,濃霧の中ではあったが,ウミウ,オオセグロカモメ,ケイマフリ,ウトウ,コシジロウミツバメの営巣を確認した.
石狩川沿い河跡湖沼群は,水鳥の飛来地として社会的に重要な地域として位置付けられているが,この広域な地域を対象にして水鳥を調べた調査研究はない.そこで石狩川中下流域に点在する14 か所の湖沼において,カモ科鳥類の生息状況を調べるとともに,北海道内の他湖沼で調べたカモ科鳥類の生息状況調査の結果と比較して,その特徴を明らかにした.全体で20 種のカモ科鳥類が確認された.宮島沼では秋に14 種,春に12 種が確認され,マガンAnser albifrons やコガモAnas crecca の飛来数も多く,石狩川沿い河跡湖沼群では種数,飛来数ともに多かった.人工護岸の割合が高かったしのつ湖や雁里沼では飛来種数は少なかった.
石狩川沿い河跡湖沼群に飛来する主要な種は,ヒドリガモA. penelope,マガモA. platyrhynchos,カルガモA.zonorhyncha,オナガガモA. acuta,コガモ,キンクロハジロAythya fuligula,ミコアイサMergellus albellus,カワアイサM. merganser の8 種であり,マガモ,カルガモ,コガモ,ミコアイサ,カワアイサの5 種は秋に多く,ヒドリガモ,オナガガモ,キンクロハジロの3 種は春に多い傾向があった.石狩,空知地方の平野部で繁殖するマガモとカルガモは結氷期を除く通年確認され,ミコアイサとカワアイサは10 月下旬から確認された.モニタリングサイト1000 の結果と比較したところ,カルガモは,主に淡水の湖沼に多く,ホシハジロA. ferina,スズガモA. marila,ホオジロガモBucephala clangula は淡水湖では少なく,汽水湖で多く確認される傾向が見られた.また,キンクロハジロとミコアイサは,淡水湖と汽水湖の両方で確認された.
内田博・上田恵介:イカルチドリの配偶システムと雌雄の役割分担(摘要)
本州の埼玉県中央部にある荒川支流の都幾川5.2km の区間において,1987 年から1993 年までの7 年間,イカルチドリの繁殖期の生態の調査を行った.イカルチドリは河川敷内の砂礫地に繁殖なわばりを構え,巣は河川敷内の砂礫地に造られた.繁殖なわばりは同種に対して強く防衛され,防衛行動は主に雄が行った.繁殖は一夫一妻でおこなわれた.巣は砂礫地を掘った浅い窪みで,小石や植物片などを敷かれていた.ほとんどの巣での一腹卵数は4卵であった.抱卵は4 卵目の産卵直後から始まり,ヒナは抱卵開始から約30 日で孵化した.抱卵における雌雄の分担の割合はほぼ同率であった.観察したつがいでの育雛期の雌雄の育雛分担もほとんど同率であった.雛は35日齢で飛ぶことができるようになり40 日齢から50 日齢間に親から離れ独立した.
世界一斉個体数調査(2017年)
2017年7月7日
2017年クロツラヘラサギ世界一斉個体数調査の結果
日本クロツラヘラサギネットワーク・日本野鳥の会
東南アジアの各国が協力して毎年1月に実施されている「クロツラヘラサギの世界一斉センサス」(主催:香港バードウォッチング協会)の2017年の結果がまとまりましたのでお知らせ致します。
この調査は、世界的な絶滅危惧種であるクロツラヘラサギの最新の越冬個体数と分布を知るために日本、韓国、中国、香港、台湾、ベトナム、タイ、カンボジアなど東南アジア一円の自然保護団体が参加し、実施しているものです。
日本でも九州や沖縄などの越冬地で、「日本クロツラヘラサギネットワーク」や日本野鳥の会の支部が調査を行っています。2017年の国内での調査は1月13日~15日に7県52か所、のべ90名を超える協力者を得て行われました。
1.2017年クロツラヘラサギ世界一斉個体数調査結果の概要
香港バードウォッチング協会
2017年のクロツラヘラサギの世界一斉センサスは1月13日~15日に実施されました。
2017年の調査では3,941羽が確認され、前年より17.4%(+585羽)の増加です。
最大の越冬地は台湾で、世界の約66%にあたる2,601羽が確認されています。前回の2,060羽から大きく増加しました。台湾のうち南西地域のZeng wen河口で1,810羽が確認され、クロツラヘラサギの主要な越冬地となっています。日本、ベトナムでも個体数が大きく増加しましたが、中国本土、マカオ、韓国では減少しました。
確認された個体数が着実に増加している地域がある一方で、減少の兆候が見られる地域もあり、各地域の傾向にはばらつきがあります。
表1. 地域別のクロツラヘラサギの記録数
| 場所 | 2015年調査 | 2016年調査 | 2017年調査 | 前年比 (2017年-2016年. 羽数) |
| 台湾 | 2,034 | 2,060 | 2,601 | +541 |
| 后海湾(香港、深セン) | 411 | 371 | 375 | +4 |
| 日本 | 371 | 383 | 433 | +50 |
| 中国本土 | 330 | 434 | 397 | -37 |
| マカオ | 55 | 61 | 44 | -17 |
| ベトナム | 40 | 9 | 62 | +53 |
| 韓国 | 31 | 38 | 29 | -9 |
| タイ | 0 | 0 | 0 | - |
| カンボジア | 0 | 0 | 0 | - |
| 合計 | 3,272 | 3,356 | 3,941 | +585 |
原文のリリース元
The International Black-faced Spoonbill Census 2017: The Hong Kong Bird Watching Society
2.日本におけるクロツラヘラサギ一斉調査の結果
日本クロツラヘラサギネットワーク・日本野鳥の会
2017年の調査では、日本では前年よりも50羽多い(13%増)、計433羽が確認されました。県別では、熊本県の195羽が最も多く、鹿児島県61羽、福岡県56羽、佐賀県51羽と続き、山口県31羽、宮崎県22羽、沖縄県17羽が確認されました。

図1. 日本におけるクロツラヘラサギの記録数の推移

図2. クロツラヘラサギの記録個体数の県別の推移
表2. 県別に見たクロツラヘラサギの記録数の推移










