シマアオジ保全の国際行動計画が策定されました

2023年11月に立てられたシマアオジ保護のための国際行動計画が、2月のボン条約会議(COP14)で承認されました。その内容を紹介します。

移動性動物種保全のためのボン条約

国際行動計画書
ボン条約で採択されたシマアオジの国際行動計画

移動性動物種の保全に関する条約(通称 ボン条約)の第14回締約国会議(COP14)が、2024年2月12日から17日にウズベキスタンのサマルカンドで開催されました。

この条約は国境を越えて移動するさまざまな動物種を多国間で保全するために、1979年に採択された条約です。残念ながら、日本はこの条約に加盟していません。理由は、ワシントン条約やラムサール条約と規制内容が重複していることや、クジラやサメが保護対象になっているためと言われています。

シマアオジは2008年に掲載

シマアオジは保護の必要な種として2008年にボン条約の附属書1に掲載され、2020年にインドで開催されたCOP13で、科学委員会と常設委員会が保全のための行動計画を作成することが決議されました。その結果、2023年11月に常設委員会でこの行動計画が立てられ、今回のCOP14で正式に承認されました。

この行動計画は、2016年に中国の広東省広州市で開催され、当会も参加したワークショップで出されたアイデアをもとに、ロシア、日本、ミャンマー、中国、タイ、カンボジアでのワークショップと関係者間で議論をし、当会の研究員であるシンバ・チャン氏が取りまとめたものです。

行動計画の概要

行動計画では、減少の主要な要因として渡りの中継地および越冬地で食用のために過剰に捕獲されたことと、生息地の劣化や農薬をあげています。

図.シマアオジの繁殖つがい数
シマアオジの繁殖つがい数
国内で唯一の繁殖地であるサロベツ原野で確認されたシマアオジのつがい数。依然として減少が続いている

必要な行動として、

  • 法律による取り締まりや生息地の保護
  • 関係するすべての人々の意識向上
  • 分布、渡りおよび生物学に関するさらなる研究の必要性
  • 行動の実施に関する国際協力や、研究者や保護活動家のネットワークを構築し、すべての分布国への迅速な知識と経験の移転を行うこと

をあげており、こうした取り組みが、シマアオジ1種だけでなく同様の脅威に直面している他のスズメ目の種にもよい状況をもたらすとも述べています。行動計画では、関係するすべての地域で研究者や保護関係者、行政など関係者の協力を求めています。

しかし残念ながら、アジアでシマアオジが分布する国の中でボン条約に加盟しているのはモンゴル、インド、バングラデシュとフィリピンだけです。各国が条約への加盟、非加盟を問わず行動することが必要です。

幸い日本では、シマアオジは種の保存法の国内希少野生動植物種に指定されています。また、日中、日韓、日露の二カ国間渡り鳥保護協定等の会議の際にも、主導的に議論を進めています。今後は、もう一歩踏み込んだ国際協力による活動を期待します。

切手シート
中国で国家1級保護野生動物の新規指定を普及するために発行された切手

今後も渡り鳥全般に必要な国際協力

これまでもボン条約では、ヒガシシナアジサシ、クロツラヘラサギ、ヘラシギなどの水鳥に関する国際的な行動計画が作られています。さらにこれらの種の行動計画は、日本も参加している東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップ(以下、EAAFP)でも保護活動の基礎資料として活用されています。

EAAFPは渡り性の水鳥を対象とした取り組みですが、渡り鳥が利用するフライウェイは水鳥だけではなく、陸生の鳥類も利用するものです。シマアオジの保護には、これまで当会が働きかけてきたEAAFPの活動の対象範囲を陸生鳥類へ広げるか、別途、陸生鳥類のモニタリングの動きを各国政府が後押しできるような仕組みが必要です。当会では各国のNGOと連携してシマアオジの保護活動を続けてまいります。

文/葉山政治

葉山政治(はやま・せいじ)
当会常務理事。野鳥保護事業全般を統括するなかで、野鳥保護や生息地保全に関する法令の整備や、環境省の施策への提言などの活動を行っている。