JP085 父島列島(ちちじまれっとう)

東京都:小笠原村

東京都:小笠原村

位置 N 27°03′ E 142°13′
面積 3,862ha

環境構成【火山地形(島嶼)/草原/照葉樹林(乾性低木林など)】

小笠原自然文化研究所
写真:小笠原自然文化研究所

父島列島は、東京から南へ約1,000kmの太平洋上に連なる小笠原群島の中心に位置し、弟島、兄島、父島、南島などからなり、各島は急峻で複雑な地形を呈する。弟島は第2次世界大戦前に人が居住していたため、森林は人為的影響を強く受けている。
兄島は過去に人間の定住がなく、父島列島内で唯一原生状態が保たれ、列島を代表する乾性低木林が発達している。ここには多くの固有陸産貝類が生息し、固有生物の「保存庫」となっている。父島(列島唯一の有人島)は小笠原群島最大の面積(面積約24k㎡、標高約318m)で、中央山域東側(東平)には、多くの絶滅危惧植物を含む固有種が生育する乾性低木林が広がる。南島は隆起石灰岩からなり、特異な沈水カルスト地形を有し都の天然記念物に指定されている。

選定理由

A2 カラスバト

保護指定

サイトの全域(90%以上)に法的な担保がある
<保護指定の内容>
国指定鳥獣保護区(小笠原群島)、国立公園(小笠原)、都道府県立自然公園、自然環境保全地域、保護林

保全への脅威

  • 東南海地震時の津波、西之島の山体崩壊時の津波、小笠原近海地震の津波、硫黄島における大規模火山噴火時の津波等が想定されている。
  • 外来種の影響(近年、兄島、西島でノヤギが排除された。弟島でノブタ、ノヤギが排除された。兄島、弟島、西島、東島、南島、巽島でネズミ類が駆除された。兄島、弟島、西島、南島で再侵入が確認された。陸産貝類、海鳥類、植物等への悪影響が懸念されている。)
  • 父島洲崎地区に飛行場建設計画がある。 2016年3月から、父島に外国航路からの直接帰港が開始される。動物検疫施設がないこと等が懸念される。
  • 放射性物質の影響(過去の追跡調査から、聟島列島のクロアシアホウドリは、育雛期後半には東日本沿岸域で採餌することが明らかになっている。卵やヒナへの放射性物質の長期的なモニターが必要と考える。)
  • 中国船によるサンゴの濫獲(直接は海洋資源の破壊として問題となっている。付随して、海洋へのゴミ投棄、無人島(海鳥コロニー含む)への上陸の懸念がある。)
  • 漁業による混獲(周辺海域で漁業が行われている。ただし、現在の小笠原漁業は、地域開発された、たて延縄(カジキマグロ)であり、大型海鳥等の混獲の危険性が非常に低い。今後、アホウドリが増加した場合に、他県船の横延縄漁の影響が懸念される。)
  • 開発による生息地と人間活動域の接近
  • 人為的事故(人工照明衝突、交通事故、人工構造物衝突や絡まり事故など)
  • 外来化するペットが逸脱する危険性、コンパニオンアニマルの持ち込み(観光客の持ち込みによる人獣共通感染症の危機拡大も含む)

保全活動

  • 環境管理:実施者(環境省、林野庁、東京都、小笠原村)
    内容:
    自然再生事業、国立公園事業、国立公園整備事業、特定外来種対策事業、種の保存法関連事業:環境省
    森林生態系保全地域における保全及び修復事業:林野庁
    植生回復事業、種の保存法関連事業、希少生物保全関連事業ほか:東京都
    天然記念物保護管理事業:小笠原村
  • 外来種のコントロール:実施者(環境省、林野庁、東京都、小笠原村、民間団体
    小笠原ネコに関する連絡会議、東京都獣医師会 ほか)
    内容:外来植物の駆除
    外来動物(ネコ、ネズミ、ヤギ、プラナリア、アリほか)の駆除ほか
    小笠原自然文化研究所では、ネコ連絡会議に参画。
  • 環境教育活動:実施者(民間団体はじめ、多様な実施者)
    内容:民間団体、行政機関ともに多様な取り組み多数
    アカガシラカラスバト保全のための普及啓発イベント各種(あかぽっぽネットワーク)
  • 保全のための人材育成活動:実施者(民間団体はじめ、多様な実施者)
    内容:民間団体、行政機関ともに多様な取り組み多数。
  • 法律制定、政策、規制:実施者(小笠原村、林野庁)
    内容:民間団体、行政機関ともに多様な取り組み多数。例:小笠原村ネコ登録条例
    アカガシラカラスバト保全のための東平サンクチュアリーなど
  • モニタリング調査:実施者(行政 民間団体)
    内容:多種多様な主体による多様なモニタリングが実施されている。
    カツオドリ標識調査等 小笠原自然文化研究所及び小笠原の自然を考える会など
    アカガシラカラスバトの生態調査、海鳥の生息状況及び外来種生息調査、小笠原諸島のクロアシアホウドリ分布拡大及び標識調査、オガサワラオオコウモリ保全研究(小笠原自然文化研究所)
    アカガシラカラスバトの保全調査及び対策、自然再生推進計画調査(環境省、林野庁)
    南島、石門自然環境モニタリング(東京都・小笠原村)
  • 経済活動を通じた保全(エコツーリズム等):実施者(小笠原エコツーリズム協議会ほか)内容:多様な主体による、多様なメニューが実施されている。
    東京都版エコツーリズムの推進、東京都自然ガイド制度運用(東京都・小笠原村)
  • その他:
    希少植物の保護増殖(環境省、林野庁、東京都・小笠原村)
    オガサワラオオコウモリ農業被害対策事業(東京都・小笠原村)
    傷病鳥獣救護(小笠原自然文化研究所 *東京都委託、東京都鳥獣保護員と協働)

※サイト情報の詳細版はこちら(PDF 714KB)

※父島列島・東島の周辺海域は、マリーンIBA(Marine Important Bird and Biodiversity Areas:海鳥の重要生息地)に選定されている。 詳しくはこちら

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