石垣リゾート&コミュニティー計画に対する要請書を提出しました

名蔵アンパルの風景(写真:WWF Japan)

2026年4月20日

3月26日付けで、当会をはじめとする14団体の連名で、株式会社ユニマットプレシャスに、同社が石垣島で進めているゴルフ場付き大型リゾート「石垣リゾート&コミュニティー」の建設計画に対して要請書を提出しました。

この計画地や園周辺は自然豊かな石垣島の中でも自然や自然を取り巻く文化が存在する場所です。隣接地にはラムサール条約湿地である名蔵アンパルがあり、計画地には国の特別天然記念物であるカンムリワシや絶滅のおそれのある魚類、甲殻類、貝類などが生息しています。

これまでも、私たちは調査の不備や絶滅危惧種への配慮、地下水への影響、名蔵湾への影響や地域の産業や暮らしへ影響などについて懸念を訴えてきましたが、十分な対応や回答は示されてきませんでした。こうした動きはネイチャーポジティブやSDGsといった国際的な動きにも逆行するものと言わざるを得ないことから、要請書を提出し、速やかな回答を求めています。

10項目の概要と要請内容をまとめました。要請書の全文はこちらをご覧ください。(448KB/PDF)

※記者発表のライブ配信(アーカイブ動画あり)は日本外国特派員協会 オフィシャルサイトFCCJchannel(YouBube)をご覧ください。

要請書のおもな内容

  1. カンムリワシの生息地保全に関して
  2. 本件事業の給水計画、特に大量の地下水汲み上げの影響に関して
  3. 本件事業の排水計画、特に名蔵アンパルへ注ぐ河川と名蔵湾への排水に関して
  4. 周辺地域の住民・農業従事者への影響と貴社の説明責任に関して
  5. 景観の保全に関して
  6. 光害に関して
  7. 文化財の保存に関して
  8. 土地境界の紛争と必要な緑地帯が確保されていないこと
  9. 事業用地選定の理由に関して
  10. 持続可能な観光の観点から

1 カンムリワシの生息地保全に関して


カンムリワシ(写真:中本純市)

カンムリワシ(写真:中本純市)


カンムリワシは石垣島・西表島だけに生息する絶滅危惧の特別天然記念物で、石垣島には約110羽しかいません。しかし、貴社(事業者)は石垣島のゴルフリゾート開発において、以下の問題があると指摘されています。

  1. 生息調査を事業地の一部でしか実施せず、全域や周辺の餌場では調査していない
  2. 評価書では営巣を「未確認」としたが、アセス終了後に事業地内で営巣が確認された
  3. 回避策・軽減策がロードキル対策や照明調整など最小限で極めて不十分

また、本事業は地域未来投資促進法に基づく「基本計画」を守ることが前提ですが、環境省(沖縄奄美自然環境事務所)との必要な調整が行われておらず、基本計画の要件を満たしていないと思われます。さらに、ゴルフ場開発の指導基準に基づいて石垣市と締結した開発協定では、環境保護法令の遵守や知事意見への誠実な対応が約束されているものの、実際にはカンムリワシ保全に関する具体的対応が見られず、形骸化していると評価されています。よってカンムリワシ保全のため次の対応を要請いたします。

要請事項

  • 事業用地の全域と採餌場所を含む周辺地域におけるカンムリワシの生息状況、年間を通じた繁殖を含むライフサイクルに係るカンムリワシの生態・利用エリアに関する科学的調査を実施すること。
  • 工事実施中のカンムリワシの生息に対する影響回避・低減措置の内容を策定・公表すること。特に、事業用地内やその周辺の採餌場所でカンムリワシの営巣が確認された場合には工事を中断すること。その中断の具体的な基準・手順について、策定・公表すること。
  • 施設供用後のカンムリワシの生息に対する影響回避・低減措置の内容を策定・公表すること。特に、事業用地内やその周辺の採餌場所でカンムリワシの営巣が確認された場合など、施設の営業を停止する具体的な基準と手順について、策定・公表すること。
  • 本件事業によるカンムリワシ生息に対する影響回避・低減措置や施設利用による撹乱防止策、その効果を判断するための工事中から施設供用中に至るまでの事後調査や継続的な監視・モニタリングを計画・実施・評価するための専門家による会議体を設置し、本件事業によるカンムリワシ生息に対する影響を継続的にモニタリングできる体制を至急構築すること。


2 本件事業の給水計画、特に大量の地下水汲み上げの影響に関して

予定されているリゾート開発では、1日約1000トンの水を使用し、その約7割を地下水で賄う計画である。これにより、下流域の名蔵アンパルと周辺水系で水量減少・渇水化・塩水化が起きる懸念が強い。名蔵アンパルはラムサール条約湿地であり、多様な生物や希少種の生息地、地域の教育・観光資源として重要な場所である。


イシガキパイヌキバラヨシノボリ(写真:鈴木寿之)

事業地の水系には、県条例で保護される希少淡水魚(イシガキパイヌキバラヨシノボリ、リュウキュウタウナギ等)が生息しており、大量揚水により絶滅リスクが指摘されている。しかし事業者は、環境アセスで求められた塩水化リスク評価を実施していない。農地転用許可に際して、県は塩水化・地盤沈下・営農への影響について詳細な照会を行った。これに対して事業者はモニタリング実施や異常時の揚水停止、代替水源(受水槽、新井戸、市上水、海水淡水化)を提案したが、現実性や準備状況に大きな疑問がある。

さらに、事業者の示す地下水評価には、地質理解の誤りや不十分な調査があり、塩水化リスクの評価が欠如している。モニタリング基準(電気伝導度1,000mS/mなど)も不適切で、異常検知が遅れる懸念がある。

要請事項

  • 石垣島を含む島嶼部における水資源の逼迫状況に鑑み、本件事業で使用する水の全体量を減少させること。
  • (必要な調査)地下水流動を適切に把握するための地下水トレーサー試験の実施、塩水化のリスクを評価するための揚水試験における水位降下と連動した電気伝導度の測定、電気探査法により地下水層の垂直・水平構造を把握し、地下水収支に基づく安全揚水量の再評価を実施すること。
  • (モニタリング基準値の見直し)電気伝導度の対応が必要となる基準値をウガドゥカーラの通常値の約2倍である 70mS/m程度に再設定すること。
  • 資料10で貴社が実施するとしている地下水位・水質の継続的なモニタリング(日毎、毎月、3か月毎にそれぞれ実施し、年1回報告)体制を明らかにすること。また、このモニタリング結果を、市民が閲覧可能な状態で公開すること。
  • 地下水位・水質のモニタリングの結果、異常が感知された場合に、工事や営業を中断する手順・フローを作成・公表すること。
  • 貴社が各許可申請において提出している水調達の代替策である「上水道の利用拡大」「海水の淡水化」の準備状況を明らかにすること。


3 本件事業の排水計画、特に名蔵アンパルへ注ぐ河川と名蔵湾への排水に関して

本件リゾート開発では、ゴルフ場維持のためにネオニコチノイド系殺虫剤チアメトキサムを含む複数の農薬を長期的に使用する計画である。これら農薬は昆虫・甲殻類に強い毒性を持ち、これらを餌とするカンムリワシなど希少野生生物に深刻な影響を与える可能性が指摘されている。事業者の提出資料では、農薬・肥料・残留塩素等を含む排水が名蔵アンパルおよび名蔵湾に流入する計画が示されている。特に排水ルートAは名蔵湾へ、Eは名蔵アンパルへ直接流れ込む構造となっており、新たな排水施設の工事も予定されている。


名蔵アンパルに生息するカニ「オキナワハクセンシオマネキ」(写真:島村賢正)

名蔵アンパルにはヤエヤマヤマガニやウラウチコダマカワザンショウなど固有の希少種が生息し、名蔵湾には国立公園に指定された貴重なサンゴ礁生態系が広がる。これらは地域の漁業資源や観光資源としても極めて重要であり、農薬や赤土の流入による海洋汚染は甚大な影響を及ぼすと複数の学会が指摘しているが、事業者は影響調査を実施していない。事業地は急傾斜地であり、八重山地方で頻発する豪雨の影響も相まって、建設工事や施設稼働による大量の赤土・土砂流出が懸念される。既に周辺農園では土砂流入の被害が発生しており、過去には排水先周辺で道路冠水も起きている。

また、事業者はウガドゥカーラ(絶滅危惧種イシガキパイヌキバラヨシノボリの唯一の繁殖地)に新たな道路を敷設する計画を示しているが、専門学会は沢の改変回避を求めている。これらの工事内容は多くが非開示とされ、条例アセスでは影響予測が行われていないため、改めてアセスを実施し住民に説明する必要がある。加えて、ゴルフ場指導基準が求める「無農薬または農薬の極力削減」の検討が行われた形跡はなく、農薬使用抑制の要請も反映されていない。

要請事項

  • 本件事業のゴルフ場を無農薬で運営・管理することを検討すること。それが難しい場合は、その理由を含む検討結果について、市民が閲覧可能な状態で公開すること。
  • 名蔵湾・ペンサン川等への排水施設の新設工事の内容を明らかにするとともに、この新規工事について環境影響評価を実施し、その結果を公表すること。
  • ウガドゥカーラの上流における道路敷設工事の内容を明らかにするとともに、この新規工事について環境影響評価を実施し、その結果を公表すること。
  • 事業用地から既に発生している赤土・土砂流出を防止する対策について、策定・公表すること。


4 周辺地域の住民・農業従事者への影響と貴社の説明責任に関して

本件リゾート事業の実施により、石垣市民の森の一部が企業に提供され、市民の利用が制限されるほか、周辺の農道・里道が複数廃止される計画となっている。地域未来投資促進法に基づく基本計画では、住民への説明や意見聴取を行い、理解を得る努力が求められているが、事業者の対応は不十分である。

事業者は、公文書開示請求に対して排水施設や道路工事、地域への経済効果など、住民に最も影響のある情報を広範に非開示とし、多くは審査会の判断により開示されるに至った。情報公開の姿勢には大きな問題がある。

また、農道・里道の廃止にあたって、隣接する農園には同意書提出を一方的に求めただけで、必要性や影響の説明が全くなされず、農園は現在も反対している。地下水利用のヒアリングでも、実際に利用する農家を対象外とし、「影響なし」と結論づけており、恣意的で結論ありきの調査だといえる。

要請事項

  • 周辺河川や地下水の利用状況について、実際に利用している農業従事者を含めて再調査をすること。
  • 本件事業に伴う里道・農道の廃止に同意していない農業従事者など周辺住民に対し、廃止の計画や必要性等について説明すること。
  • 本件事業の自然環境や周辺地域への影響の大きさに鑑み、今後実施を予定している排水施設やウガドゥカーラ周辺の道路敷設等の工事の内容など開示を求められている情報を早急に公開すること。


5 景観の保全に関して

名蔵アンパルの風景(写真:WWF Japan)

貴社は開発協定書において、地域文化に配慮し、景観法や関連法令を遵守して良好な景観の創造・保全に努めることを約束している。事業地は石垣市景観条例に基づく景観保全地区(自然風景域・八重山の山並地区)に指定され、建築物の計画は景観形成審議会からの審議対象となる区域である。また、沖縄県景観形成基本計画でも、石垣島の山並みの保全・回復が重視されている。条例アセスの評価書では、本件リゾート計画により、石垣天文台や名蔵大橋、エメラルドの海を見る展望台などからの景観が大きく変わることが報告されている。そのため事業者は、景観形成審議会と調整し、意見を踏まえて可能な限り景観保全に努めるとしていた。

しかし実際には、審議会が高層宿泊棟などの建築計画の変更を求めたにもかかわらず、貴社がその意見を反映して計画を修正した事実は確認できていない。八重山の伝統的景観は市民にとって重要な文化資産であり、観光産業にとっても不可欠な価値を持つことから、景観形成審議会の意見を踏まえた計画見直しを貴社に求めるものである。

要請事項

  • 本件事業用地の周辺地区を含む八重山の伝統的な景観は、市民の貴重な資産であるとともに、石垣市の主要産業である観光業においても重要な資源であり、貴社に対し、景観形成審議会の意見を踏まえて、計画を見直すことを要請いたします。


6 光害に関して

事業用地の周辺には、用地から約250mの近距離に石垣天文台があり、毎年ホタル観察に市民らが集う林地が隣接しており、光害によって、星天観察会やホタル観察が妨げられることが予測されます。

要請事項

貴社に対し、光害による周辺地区におけるこれらの活動への影響を回避する対策を策定・公表することを要請いたします。


7 文化財の保存に関して

事業用地内には、ハラツン岡遺跡の他にも中世のものと推測される土器・人骨等の遺物が、2025年5月に新たに確認されています。また、事業用地には、これらの遺物や遺跡がよく発見される琉球石灰岩の海岸段丘があり、本件事業ではゴルフコースのフェアーウェイや道路等がこの段丘を横切る計画となっています。加えて、ウガドゥカーラの沢周辺の事業用地内には、太平洋戦争中に石垣市民の避難所などの戦跡があることも確認されています。

要請事項

これらの遺物や遺跡、戦跡に加えて、未調査の海岸段丘については、工事に先立ち、考古学の専門家と石垣市教育委員会の担当職員による事前調査を実施した上で、保存のための必要な措置を講じることを要請いたします。


8 土地境界の紛争と必要な緑地帯が確保されていないこと

本件事業用地の一部について、貴社は当初予定していた土地の取得に至っておらず、また周辺住民・農業従事者との間で複数の土地境界紛争が発生しています。また、ゴルフ場指導基準では「開発区域内の外周部には、原則として40m以上の幅を有する樹林地を配置すること」と定められていますが、貴社の計画図では、外周部が40mに満たない箇所があります。

要請事項

事業用地周辺での地域住民との土地境界紛争を早急に解決し、また基準で定められた樹木地(緑地帯)を設置することを要請いたします。


9 事業用地選定の理由に関して

貴社は、農地転用申請のため「農地転用に伴う用地選定理由書」を提出していますが、肝心の理由の部分を非開示としており、石垣市民や周辺住民にとって、事業用地の選定理由が非公開のままとなっています(貴社作成「農地転用に伴う用地選定理由書」)。

要請事項

農地転用に伴う用地選定理由書に記載されている理由「〇〇(非開示)からも最適地である」という非開示部分を開示するよう要請いたします。


10 持続可能な観光の観点から

生物多様性の回復を目指す「ネイチャーポジティブ」が国際合意・国家戦略となる中、企業には事業による自然環境リスクを評価し、公表して回避・低減することが求められている。観光業においても同様で、TNFD※開示が進む中、沖縄県は大手旅行企業の「優先地域」に位置付けられており、今後は宿泊施設やツアーにおける生態系への影響配慮が主流になると見込まれる。

沖縄県自身も、「世界から選ばれる持続可能な観光地」を将来像に掲げ、自然・文化を尊重しつつ環境容量に応じた観光のあり方を推進する方針を示している。

石垣島へのインバウンド観光客の多くを占める台湾で行われた一般調査では、来島目的として約4分の3が「自然環境」を挙げ、「ゴルフ場」を目的とする回答はごく少なかった。また、計画中のゴルフリゾート開発については8割が「知らない」と答え、自然破壊を懸念する反対意見が多く寄せられた。自由記述にも「自然は唯一の資源であり、守るべき」「開発は自然を壊すだけ」といった声が多数あった。

こうした状況に照らせば、現行の本件開発計画は環境負荷や地域との関係性に深刻な問題を抱え、持続可能な観光の潮流に逆行している。今後、開発の環境問題や住民反対が広く認知されれば、国内外の観光客や持続可能性を重視する企業が利用を回避する可能性が高い。事業者や石垣市が主張する経済効果については、費用を考慮していないなど根本的な問題点も指摘されており、実現性には大きな疑問が残る。

要請事項

本件事業が、観光業や農業をはじめとする石垣島の主要産業を支える、世界的に貴重な自然や生物多様性の価値、また市民の利益を損なうことがないように、貴社におかれましては、本要請に真摯に対応されることを求めます。

※Taskforce on Nature-related Financial Disclosures


参考:これまでの経緯

2015年 10月 石垣市長・事業者が計画公表(ゴルフリゾート建設は市長の選挙公約)
アンパルの自然を守る会が計画の見直しを求める要請を行う
2019年 2月 県条例にもとづく環境影響評価方法書に対して意見書
2021年 2月 環境影響評価準備書に対しての知事意見。17項目70件の問題点を指摘
9月 アンパルの自然を守る会、我がーやいまの自然を守る会が共同署名活動開始2022年5月12日時点で計26655名の署名
11月 環境影響評価書最終版が縦覧終了。重要項目について知事指摘に対し未対応
12月 地元のアンパルの自然を守る会、我がーやいまの自然を守る会、当会やWWFジャパンなど11団体が連名で沖縄県に対して審査を通して計画の見直しを求める要請 1
2022年 1月 日本魚類学会が計画の見直しを求める要請
2月 世界湿地の日に計画の問題点と提言を動画配信 2
3月 地域未来促進法の「地域経済牽引事業計画」を沖縄県が同意
6月 石垣市長の農業振興地域の指定解除案に対して農業従事者10名が異議申立(その後却下)
当会を含む12団体が連名で沖縄県、石垣市、事業者に対して要請 3
10月 石垣島でカンムリワシの里と森を守る会結成
2023年 4月 県知事宛て知事許可事項(農地転用・開発許可等)に対する合同要請(16団体)4
2025年 3月 沖縄県が林地開発許可
5月 沖縄県が土地計画法に基づく開発許可、農地法に基づく農地転用許可
7月 沖縄県による公文書開示
8月 緊急記者発表を行いました5
  1. (仮称)石垣リゾート&コミュニティ計画に関して、沖縄県および石垣市に要請書を提出(2021年11月30日)
  2. 「世界湿地の日 記念セミナー」動画を公開(2022年2月1日)
  3. 「(仮称)石垣リゾート&コミュニティ計画」に対する緊急要請書(2022年6月20日)
  4. 「石垣リゾート&コミュニティ計画」に係る知事許可事項に対する要請を行ないました(2023年4月17日)
  5. 石垣リゾート&コミュニティー計画に対する緊急記者発表を行いました(2025年8月13日)