CWW2025参加、浮体式洋上風力発電機を見学

口頭発表する浦主任研究員
口頭発表する浦主任研究員

2025年9月8日(月)~12日(金)の5日間、南フランスのモンペリエで開催された「CWW2025(風力発電が野生動物に与える影響の国際学会)」に当会・自然保護室の浦主任研究員が参加し、「Changes in the flight paths of geese and swans before and after the construction of seven onshore wind farms in northern Hokkaido, Japan(北海道北部での7つの風力発電施設の建設前後におけるガン・ハクチョウ類の飛翔ルートの変化)」について口頭発表を行いました。

CWW2025

欧米を中心とする世界各国(アメリカ、イギリス、イタリア、オーストラリア、オランダ、カナダ、クロアチア、スペイン、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、フランス、ブラジル、南アフリカ、台湾、日本など)からの参加者数は900名にのぼり、風力発電施設が野生動物に与える影響について、学術的な議論を行いました。

モンペリエの街並み。路面電車にツバメのシルエットがあしらわれていた
モンペリエの街並み
路面電車にツバメのシルエットがあしらわれていた

CWW2025会場。大会実行委員が開会式を始めるところ
CWW2025会場
大会実行委員が開会式を始めるところ

発表内容の80%は鳥類、15%はコウモリ類など飛翔性哺乳動物、5%は歩行性哺乳動物についてで、洋上および陸上の風力発電が動物の個体群に与える影響、累積的影響評価、影響の回避低減策、動物の種におよぼす影響、生態系や生物多様性への影響などに関する最新の研究成果を聴講することができ、大変勉強になりました。

特に累積的影響評価の方法についての発表が多く、以下のような議論がありました。

  • 事業者や環境コンサルタントが現地で取得してくるデータには質や量に違いがあるため、どうすれば地域や国をまたいだ累積的影響を同じ土俵で評価することができるか
  • サイト特有の課題を有するために同じ土俵では評価できない項目はどれか
  • 今後、地域や国を越えて共通で取得すべき、またはすべきでないデータや調査項目はどれか
  • 国際的なデータのプラットフォーム形成の必要性など

「累積的影響評価」の定義がされていない日本と比べると、欧州の方が10年以上も累積的影響評価に関する議論が先行しているという印象をうけました。

会場からの質問に答える浦・主任研究員
会場からの質問に答える浦主任研究員

企業ブース出展のようす
企業ブース出展のようす

※欧州では風力発電施設の建設において、事前・事後のモニタリング調査の実施が義務付けられている国が多いため、鳥類観測機器の技術的進歩が目覚ましい。

モンペリエの浮体式洋上風力発電機を見学

最終日には、モンペリエの海岸から15km沖に3基(1基あたりの定格出力は10,000kW/h)ある浮体式洋上風力発電機を見学しました。

日本では浮体式を含め洋上風力発電機を製作するメーカーがないことと政治的な要因により、着床式であっても洋上風力発電の導入はしばらく停滞する可能性があります。浮体式の導入はさらに先のことになると予想しますが、それでも遠くはない将来、日本でも同様の洋上風力発電機が建つ可能性を考えると、この見学も非常に参考になりました。

モンペリエ沖にある浮体式洋上風力発電機
モンペリエ沖にある浮体式洋上風力発電機

浮体式洋上風力発電機の見学を終えたところ
浮体式洋上風力発電機の見学を終えたところ

今回の発表の際にいただいた、海外の研究者からのコメントを参考にして、さらに本件について調査や分析を進め、スペインのマラガで開催予定のCWW2027でその成果を発表したいと思います。

もうひとつの風景

学会会場でのランチ時のようす

各国の研究者のコミュニケーションの場となり賑わう学会会場の休憩スペース。
ランチはバイキング形式、ディナーは野菜中心の構成。
美食の国フランスだけあり、料理はすべて美味しかった。


モンペリエのアパート
アパートの壁には
北斎の浮世絵が描かれていた

モンペリエでは9月末に「Japon matsuri」があるため、スーパーの総菜コーナーには寿司やとんかつなどの日本食が並び、本屋では1フロア丸まる日本の漫画が並んでいた。
また、店内でも日本から来たと言えば日本語で「こんにちは」とあいさつをしてくれる人や「京都・大阪・東京に行ってみたいんだ」と話す人など地元の方との交流の中で、フランスでは日本文化が受け入れられていると感じることが多かった。