プレスリリース 2013.06.05

平成25年 6月5日
(公印省略)

秋田県知事 佐竹 敬久 様

公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 佐藤仁志
東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル

日本野鳥の会秋田県支部
支部長 佐藤 公生
秋田県潟上市天王追分86-15

日本雁を保護する会
会長 呉地正行
宮城県栗原市若柳川南南町16

八郎潟干拓地に生息する希少鳥類の保全に関する要望書
((仮称)大潟村風力発電所新設事業に際して)

 日ごろより、私どもの自然環境保全活動についてご理解・ご協力をいただき、深く感謝申し上げます。
 さて、八郎潟干拓地に大規模風力発電施設の建設計画がサミットエナジー株式会社により進められていることは、すでにご承知のことと存じます。私ども(公財)日本野鳥の会、日本野鳥の会秋田県支部及び日本雁を保護する会は、風力発電の導入について、既存のエネルギーを自然エネルギーへ転換していくために重要な事業と考えております。しかし鳥類の重要な生息地に風力発電施設が建設された場合には、絶滅危惧種等に悪影響を与え、生物多様性に脅威となる事例があるため、そのような場所を避けて施設を建設することが重要と考えております。特に八郎潟干拓地には、国の天然記念物(以下「天」と略記)、国内希少種(以下「希」と略記)、国の絶滅危惧種(以下「絶」と略記)の鳥類が多数飛来・生息します。とりわけ、マガン(天)、亜種ヒシクイ(天/絶)、亜種オオヒシクイ(天)、シジュウカラガン(希/絶)、ハクガン(絶)などのガン類の大多数が集結し、猛禽類のオジロワシ(天/希/絶)、オオワシ(天/希/絶)が越冬し、チュウヒ(絶)の国内最大級の繁殖地となっており、本来は計画地選定の段階で除外されるべき地域です。
 しかし、事業者のアセス方法書は大潟村がガン類及び猛禽類の重要な生息地であるという認識が希薄で、調査内容も極めて不十分なので、これらの点を指摘した意見書をそれぞれの団体から事業者へ既に提出し、かつ(公財)日本野鳥の会からは計画の見直しを求める要請書も提出しております。
 現在計画されている大規模な風力発電施設を八郎潟干拓地内に建設すれば、希少性の高いガン類や猛禽類への影響は不可避と考えます。このことは貴県が積極的に進められている再生可能エネルギーの導入にも悪影響を及ぼすものと考えます。
 これらの状況をご賢察頂き、国際的にも重要な八郎潟干拓地の野生生物保全の観点から、関係行政機関としてサミットエナジー社に対して適切なご指導をとられるよう要望いたします。

 八郎潟干拓地は、東北地方南部や北陸、新潟などで越冬した天然記念物のマガン、ヒシクイ(2亜種)など27万羽ものガン類の渡りの最大級の中継地であり、日本国政府をはじめ、関係国の政府機関、関係条約事務局、国際NGO等が参加する国際的な枠組みの「東アジア地域ガンカモ類重要生息地ネットワーク」(現・東アジアオーストラリア地域フライウエイ・パートナーシップ )にも参加しています。http://www.sizenken.biodic.go.jp/flyway/
また、(公財)日本野鳥の会が世界共通基準に則り選定した「重要野鳥生息地」にも選定されている、我が国有数の水鳥の重要生息地です。
 さらに、水路沿いのヨシ原は、絶滅危惧種1B類であるタカの一種チュウヒの生息地となっており、八郎潟干拓地はその日本最大級の繁殖地です。そして、オジロワシ(30羽)やオオワシ(10羽)が越冬するなど、希少猛禽類の重要な生息地となっています。
 このようなことから、八郎潟干拓地のような重要な鳥類の生息地に巨大な風車群が建設されると、鳥類に対し下記のような影響があると考えます。

●ガン類への影響
①八郎潟干拓地は、ガンカモ類の国際的に重要な中継地/越冬地として、1999年に東アジアガンカモ類重要生息地ネットワーク(現・東アジアオーストラリア地域フライウエイ・パートナーシップ)に、20,000羽以上(基準1)、個体群の1%以上(マガン、亜種オオヒシクイ、亜種ヒシクイ)(基準2)、保護の優先度の高い個体群(亜種オオヒシクイ、亜種ヒシクイ)の生息地として参加し、また国際的に重要な湿地の保全を目指すラムサール条約の登録湿地潜在候補地にも指定されています。
②春季には日本で越冬するマガンやヒシクイ(2亜種)のほとんどが中継地として利用しています(Shimada,2009)。
③シジュウカラガンやハクガンは、ロシアやアメリカとの国際協力による数十年かけた復元事業によって羽数が回復しつつありますが、そのほぼ全てが前者は春の渡りの時期に、後者は春秋の渡りの時期に八郎潟干拓地に飛来します。
④ガン類は八郎湖でねぐらを取り、早朝にそこから干拓地水田へ向かい、夕方には再びその逆コースで八郎湖へ向かいますが、風車列が飛翔コースと直角に配置され、最も衝突の可能性が高いです。
⑤風車自体が大型で、羽の先まで131mあり、基幹送電線の高さをはるかに越える高さのため、回避するためには長い距離と多くのエネルギーを消耗します。また、視界不良(吹雪、濃霧等)の時には衝突事故が多発することが予想されます。
⑥干拓地内部の幹線排水沿いの風車列は、日中の移動の障害となり、航空機等による妨害で驚いて飛び立った場合等に集団で衝突する可能性が高いです。
⑦回復過程にある希少種のシジュウカラガン(呉地,2009)やハクガン(佐場野,2013)は同種の群れで行動するため、万一群れの衝突があった場合には、これらの鳥の個体群への影響は更に重大です。
⑧Shimada(2001)は、水田上にある高さ30m程度の送電線でもマガンの飛行ルートに影響することを述べており、水田のような平坦な土地では、計画されている風車の1/4程度の低い構造物でもマガンの行動パターンに影響を与えることがわかっています。
⑨(公財)日本野鳥の会が発行した野鳥保護資料集第25集によれば、海外ではマガンなどのガン類が風力発電施設に衝突死し、また、生息地放棄などの影響を受けている事例が知られています。

●チュウヒへの影響
①八郎潟干拓地にはヨシ原で営巣するチュウヒの本州最大の繁殖地であり、計画地は最もヨシ原が広いため、重要な営巣環境が消失します。また、チュウヒにはヨシ帯や水田及び水路上空を低空で飛翔しながら獲物を捕食する習性があり、風車に衝突する可能性が非常に高く、国内のチュウヒ個体群に致命的な影響を与える可能性があります。
②(公財)日本野鳥の会が発行した野鳥保護資料集第25集によれば、海外では実際にチュウヒが風力発電施設に衝突死した事例が知られています。

●オジロワシへの影響
①八郎潟干拓地には約30羽のオジロワシ、約10羽のオオワシが越冬しており、そのほとんどは幼鳥または若鳥です。オジロワシはこれまでに国内で30羽、オオワシは1羽が風力発電施設に衝突死しており、そのほとんどは幼鳥または若鳥であり、衝突死はオジロワシにおいて最も高い死亡要因となっています。そのため、八郎潟干拓地においてもオジロワシ及びオオワシが風車に衝突する可能性が非常に高いです。

●それ以外の鳥類への影響
①ハクチョウ類にもねぐらの水面と採食地の水田を行き来するものがあり、大型で小回りが利かないので、衝突や回避のための消耗が心配されます。
②カモ類には昼間水面で休息し、夜間に陸上で採餌するものがあるので、特に視界不良時には衝突事故が多発する可能性があります。
③大規模なヨシ原の改変はクイナ類や草地性の小鳥類の繁殖にも影響が大きいと考えられます。

 このようなことからも、本事業は、ガン類やチュウヒ、オジロワシなど希少鳥類の生息に大きな影響を及ぼす可能性が非常に高く、風力発電施設の建設には不適切な場所であることは明らかであり、対象事業実施区域を八郎潟干拓地以外の場所にするなど、選定位置の見直しを行うべきです。
 つきましては、当該風力発電施設の建設が野鳥の行動及び生息環境に対して極力少ない影響にとどまるよう、関係行政機関としてサミットエナジー社に対して適切なご指導をとられるよう要望いたします。

(添付資料)
資料・1)「(仮称)大潟村風力発電所新設事業環境影響評価方法書」に対する意見書(日本野鳥の会秋田県支部・公益財団法人 日本野鳥の会)(PDF 60.1KB)
資料・2)「(仮称)大潟村風力発電所新設事業環境影響評価方法書」に対する意見(日本雁を保護する会)(PDF 686KB)
資料・3)「(仮称)大潟村風力発電所新設事業」建設予定地である大潟村村に生息する希少猛禽類鳥類の保全に関する要請(日本野鳥の会秋田県支部・公益財団法人 日本野鳥の会)(PDF 178KB)
資料・4)大潟村に生息する天然記念物・国内希少種・絶滅危惧種(主要なガン類と猛禽類)(PDF 68.2KB)
資料・5)東アジアガンカモ類重要生息地ネットワーク・参加申込書(PDF 562KB)
資料・6)マガン春期個体数(PDF 351KB)
資料・7)オオワシ、オジロワシ分布図(PDF 461KB)
資料・8)オジロワシと風車衝突(風力発電の環境影響評価と海ワシ保護に関するフォーラム抜粋資料)(PDF 489KB)
http://hokkaido.env.go.jp/earth/mat/m_2_2_1.html
資料・9)欧州種別風発影響事例(PDF 1.03MB)