(仮称)串間市いちき風力発電事業 環境影響評価方法書に対する意見書
令和3年3月4日
160-0022 東京都新宿区6丁目27番地30号
新宿イーストサイドスクエア6階
株式会社イメージワン
代表取締役 新井 智 様
〒880-0943 宮崎市生目台西1-2-6
日本野鳥の会宮崎県支部 支部長 岩切 久
〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
公益財団法人日本野鳥の会 理事長 遠藤孝一 (公印省略)
「(仮称)串間市いちき風力発電事業 環境影響評価方法書」に対する意見書
貴社が作成された(仮称)串間市いちき風力発電事業に係る環境影響評価方法書(以下、方法書という)に対し、環境保全の立場から下記のとおり意見を提出いたします。
記
- ①事業計画全体について
-
方法書の第7章にある、貴社が作成した計画段階環境配慮書(以下、配慮書という)に対する住民等の意見のうちNo.2に対する事業者見解で貴社は、本事業計画により宮崎県再生可能エネルギー等導入推進計画における2022年度までの風力発電導入見込量である112,800kWを大幅に超過することを認めつつも、「設備利用率が25%程度である」ので問題がないかのような見解を示し、また、「国の進める主電源化に至るものではない」と、宮崎県ではなく国の話に置き換え、さらに、「宮崎県の基本目標である“再生可能エネルギーによる持続的な社会の構築を目指す」ので受け入れてほしいと示していることは、私どもにはまったく理解できない。県は風力発電導入見込量を設備容量ベースで考えており、また、国ではなく県の目標として導入見込量等を掲げているのである。そして、宮崎県内では諸塚村、日之影町、日南市、串間市等で風力発電事業の、また、県内各地の山地や里山で大規模太陽光発電事業の計画、工事、稼働運転が開始されており、これらの事業により宮崎県の自然環境はまるで虫食い状態に、地域の自然環境や生態系が破壊されている。県の方針である再生可能エネルギーによる持続的な社会の構築は、単に再生可能エネルギーの導入量を増やすということではなく、地域との共生を図るため、景観や自然環境に配慮した発電設備の導入を推進したいということなのであるが、貴社のこの事業計画は県のビジョンにそぐわないと考えられ、我々や地域住民は受け入れることはできない。貴社は環境影響評価準備書の作成に進まず、現段階で事業を中止、または大幅に見直すべきである。
- ②地域住民の意見聴取のあり方について
-
地球温暖化対策や持続可能な社会を構築するために自然エネルギーの導入を拡大する必要性は、多くが認めるところである。しかし、それは開発行為を含む人の営みと自然環境との共生の上に成り立たねばならず、地球温暖化対策として行う開発行為が、我々の暮らしを支える生物多様性の基盤を破壊してはならない。しかし、そのようなことに気づかない人間の行為によって、後世になって地域の住民が大きな代償を払わされてきたことは、過去の多くの歴史が物語っている。宮崎県高千穂町岩戸地区では長きに渡り我慢を強いられてきた住民が健康被害などの大きな犠牲を払い、今も尚その傷は癒えていないのである。企業も行政も当初は経済発展のみを見据え、将来その地区に起こりうる環境影響に対する配慮ができていなかったのである。貴社のように大きな力を持つ企業は本来、地域の声なき声を尊重し、配慮しなければならない。そのような観点で貴社は、この事業計画に対する地域住民の意見を住民説明会や意見募集に留まらず、各戸を訪問するぐらいのつもりで丁寧に聴取すべきである。
- ③累積的影響評価について
-
配慮書に対する宮崎県知事の意見にもあるように、「事業実施想定区域の周辺で『(仮称)日南風力発電事業』及び『串間風力発電所』が手続き中であり、将来的には3箇所の風力発電所が南北に並ぶことが予想される。渡り鳥など生態系への影響等について、これら他事業との累積的な影響を考慮すること。環境影響を回避又は十分に低減できない場合は、事業実施区域の変更や風車の基数の削減などの、計画の見直しを行うこと」とある。このことについて貴社は、事業者見解として「他事業との累積的影響を考慮して実施する。」「環境影響を回避、又は十分に低減できない場合には計画の見直しを行う。」と回答している。
しかし、方法書には累積的影響評価に関する具体的な方針や考え方、評価手法等が記載されておらず、不十分な内容となっている。貴社は他事業者と協力し、情報の共有を図りながら、また、海外事例を参考にするなどして累積的環境影響評価を実施し、そのうえで、影響の回避・低減策を講じ、対象事業実施区域(以下、計画地という)の周辺に他事業の存在により生じる鳥類をはじめとした自然環境への重大な影響を回避するための方針や方法を示すべきである。また、回避できない重大な環境影響が生じると予測される場合には、事業計画そのものを見直すべきである。
- ④クマタカとサシバの生息に対する配慮について
-
方法書の第7章にある、貴社が作成した配慮書に対する住民等の意見のうちNo.2に対する事業者見解で貴社は、計画地にクマタカが生息していることを認識しているうえで、「クマタカ、サシバ等の生息状況の把握に努めます」、「実行可能な範囲内で影響の低減を図ります」と見解を示しているが、これら希少猛禽類の生息や風車建設により影響を受ける可能性があることが分かった場合は、勇気を持って事業そのものを見直すことが、最善の影響低減策であると認識していただきたい。
以上
(仮称)能代山本広域風力発電事業に係る環境影響評価準備書に対する経済産業大臣勧告に関する要望書
令和3年3月3日
160-0022 経済産業大臣
梶山 弘志 様
日本野鳥の会秋田県支部
支部長 佐々木 均 (公印省略)
秋田県横手市前郷一番町1-21
日本雁を保護する会
会長 呉地 正行 (公印省略)
宮城県栗原市若柳川南南町16
公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一 (公印省略)
東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
(仮称)能代山本広域風力発電事業に係る環境影響評価準備書に対する経済産業大臣勧告に関する要望書
秋田県能代市で白神ウインド合同会社が計画する(仮称)能代山本広域風力発電事業(以下、対象事業という)について、環境影響評価準備書(以下、準備書という)における対象事業実施区域(以下、計画地という)およびその周辺に生息する鳥類の保全の観点から、下記の通り要望いたします。
記
【要望内容】
計画地は世界的なガン・カモ・ハクチョウ類(以下カモ科鳥類という)の渡りの中継地であり、東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップ(EAAFP)の登録サイトである小友沼のすぐ北側に位置していることから、私たちは、この地域に風力発電施設(以下、風車という)の建設計画があることについて強く憂慮しています。
対象事業の実施は、能代平野におけるカモ科鳥類等の渡り鳥および希少猛禽類にバードストライクや障壁影響(注1)を含む生息地放棄などの多大な影響を及ぼす恐れがあります。すでに準備書に対し秋田県知事および環境大臣から同様の指摘がなされたことから、事業者は風車の位置を変更する等の保全措置の案を発表しましたが(図1、図2)、事業者の事前調査(注2)及び当会による鳥類調査の結果(添付資料1)からも分かるように、カモ科鳥類の移動経路および希少猛禽類の生息地との重複がそれでもなお大きく、影響の回避・低減策になっているとは言い難く、かえって鳥類の飛行や生息を阻害するような配置となっています。そのため、影響を回避・低減するためのより有効な保全措置を取るよう、経済産業大臣として今後発出される勧告を通して、以下のように事業者に対する厳しいご指導を要望いたします。
対象事業と鳥類の生息状況についての具体的な問題点として、以下の点があげられます(図2参照)。
- 比八田1号機の東側への移動案は、比八田2号機および既存風車(能代パワー金ヶ台風力発電所)との間隔を狭め、しかも南側の荷八田エリアと北側の水沢エリアと一直線上になっていないことから、障壁影響などの鳥類の渡り経路への影響を軽減しない。また採餌地間の移動については、かえって障壁影響を増大させる。
- カモ科鳥類にとって非常に重要な生息地である小友沼との距離が最も近く、移動や渡り経路、また、採餌場所としても利用頻度の高い荷八田エリアでの環境保全措置が図られていない(※荷八田エリアは環境省作成の鳥類センシティビティマップにおいて注意喚起レベルA1に指定される区域である)。
- 荒巻1号機の落合地区への移動案は、海岸沿いに風車が並ぶことによって生じる影響の軽減措置が取られていないどころか、かえって海岸沿いの風車の配置を密にし、鳥類の渡り経路及び猛禽類の採餌活動に対する阻害を増大させる。
- 海岸沿いの2か所の計画地がガン・ハクチョウ類の渡りの経路及びミサゴ等の希少猛禽類の高頻度利用区域となっていることが事業者および秋田県支部の調査で確認されている。
これらの問題点に対して取られるべき対策として、以下の点を要望します(図3参照)。
- 比八田1号機および2号機の建設そのものを取りやめる。
- 荒巻1号機の建設そのものを取りやめ、落合地区への移動は行わない。
- 荷八田エリアの5基の建設をすべて取りやめる。
- 図3には示されていないが、渡り鳥及び希少猛禽類に対して影響が及ばないよう海岸沿いの風車の基数を削減する。
本事業は6つのエリアすべてにおいて重大な環境影響が起こる可能性があり、環境保全の立場からは本来すべてのエリアの中止を求めるべき内容のものですが、ここでは特に緊急性の高いものとして上記の点について要望するものです。
環境負荷が高いと想定される場所での強引な風車の建設は、自然保護上取り返しのつかない影響を発生させることで風車建設に反対する世論を高めてしまい、かえって風力発電の今後の導入促進の妨げになるものと考えます。本事業は、計画地が鳥類を含む自然環境の保全に最も配慮すべき区域にあることを考慮し、経済産業大臣の毅然としたご判断を賜りたく、お願いいたします。
(注1)障壁影響とは
障壁影響とは、風車が鳥類の春秋の渡り経路および塒や営巣場所と餌場の間にある移動経路の上に存在することで、鳥類の飛行の障壁となることを意味する現象である(Rydell et al. 2012)。生息地放棄は地上にある鳥類の利用場所に対するものであるが、障壁影響は空中にある鳥類の利用場所の阻害を意味する。この障壁影響により鳥類の渡りや移動の経路が風車周辺で変わってしまうことがあり、そのことで鳥類は渡りや移動経路を延長せざるをえなくなり、餌場、換羽場所や中継地、繁殖地までの飛行距離が延び、場所によっては風車建設地周辺で以前は利用していた好適な生息地を利用できなくなり、ときには従来の生息地とは離れた質の劣る生息地まで移動してしまうことにつながり(Drewitt & Langston 2006)、鳥類の飛行に係るエネルギー消費が増え、結果的に鳥類の繁殖成功率や生残率を低下させる可能性を意味する(Masden et al. 2010)。障壁影響の発生の有無や程度は、鳥類の種、ねぐらおよび営巣地と餌場の間の日常的な移動や春秋の渡りなど、移動の種類や状況、飛行高度、鳥類の種ごとによる風車の回避率によって変わり、また、風車側による要因としては風車の立地や配置、施設の規模、風車の運転状況、さらに、自然条件による要因としては、時間帯、天候等による風車の視認性、風力や風向、地形などによって変わる(Gove et al. 2013)。
(引用文献)
- Drewitt A. L., Langston D. H. R. 2006. Assesing of the impacts of wind farms on birds. Ibis 148:29–42.
- Gove B., Langston R. H. W., McCluskie A. Pullan J. D. & Scrase I. 2013. Wind farms and birds:an updated analysis of the effects of wind farms on birds, and best practice guidance on integrated planning and impact assessment. Royal Society of Protection for Birds and BirdLife International.
- Masden E.A., Haydon D.T., Fox A.D. & Furness R.W. 2010. Barriers to movement: Modeling energetic costs of avoiding marine wind farms amongst breeding seabirds. Marine Pollution Bulletin 60: 1085–1091.
- Rydell J., Engström H., Hedenström A., Larsen J. K., Pettersson J. and Green M. 2012. The effect of wind power on birds and bats –A synthesis(Report6511). Swedish Environmental Protection Agency.
(注2)準備書に記載されている事業者の現地鳥類調査の内容
渡り時の移動経路:図10.1.4-34 (秋季ヒシクイ)、図10.1.4-35(秋季マガン)、図10.1.4-37(秋季ガンの一種)、図10.1.4-47(冬季ヒシクイ)、図10.1.4-48(冬季マガン)、図10.1.4-49(冬季ガンの一種)、図10.1.4-51(冬季オオハクチョウ)、図10.1.4-52(冬季ハクチョウ属の一種)
渡り鳥の年間予測衝突数:図10.1.4-85(2)(ヒシクイ:由井モデル)図10.1.4-85(4)図10.1.4-85(6) (マガン:由井モデル)図10.1.4-85(8) (ガンの一種:由井モデル)10.1.4-87(6) (ハクチョウ属の一種:由井モデル)
(地図1)準備書段階の風車配置予定図
(地図2)変更後の風車設置予定位置
(地図3)日本野鳥の会秋田県支部・日本雁を保護する会・(公財)日本野鳥の会の要望。カモ科鳥類の採餌行動・渡りの移動経路の阻害を低減するために必要最低限の変更と考えます。
参考写真
<比八田エリア>
写真①2020年3月1日6:44 比八田2号機予定地付近を通るマガンの群
写真②2020年3月7日 比八田1・2号機付近を通過するマガン(風車は金ヶ台風力発電所)
写真③2021年2月28日 比八田エリア北側に降り立つガンの群
写真④2021年2月23日 比八田エリア北側で採食するガン(風車は金ヶ台風力発電所)
<比八田エリア>
写真⑤2021年2月23日 荷八田エリア付近で採餌するヒシクイ
写真⑥2021年2月23日 荷八田エリアを飛ぶハクガン
写真⑦2021年2月28日 荷八田エリア内を東西方向に飛ぶガンの群
写真⑧2021年2月28日 荷八田・比八田エリア間を飛ぶマガン・ヒシクイ・シジュウカラガン
(参考地図)計画地の現在の既存風車配置図と写真位置
(仮称)会津若松みなと風力発電事業環境影響評価方法書に対する意見書
令和3年3月1日
160-0022 東京都新宿区6丁目27番地30号
新宿イーストサイドスクエア6階
株式会社イメージワン
代表取締役 新井 智 様
日本野鳥の会会津支部
支部長 満田信也
969-0806 福島県会津若松市宝町2-7
公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 遠藤孝一(公印省略)
141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
「(仮称)会津若松みなと風力発電事業環境影響評価方法書」に対する意見書
貴社が作成された(仮称)会津若松みなと風力発電事業環境影響評価方法書に対し、環境保全の立場から下記のとおり意見を提出いたします。
- (1)対象事業実施区域及びその周辺における鳥類の生息状況について
-
(仮称)会津若松みなと風力発電事業環境影響評価方法書(以下、方法書という)について、貴社が設定する対象事業実施区域及びその周辺(以下、計画地という)は、環境省レッドリストの絶滅危惧ⅠB類かつ国内希少野生動植物種に指定され、福島県のレッドリストにも絶滅危惧ⅠB類として掲載されているクマタカの生息地と重なることが予想されることから、風力発電施設(以下、風車という)の建設により衝突死(以下、バードストライクという)および生息地放棄が発生する可能性が高いと考える。また、計画地にはサシバやハチクマなどの希少猛禽類の渡りの経路が存在するが、それに対しては障壁影響等が発生することが懸念される。
配慮書に対する意見書で、クマタカの生息状況の確認と猛禽類の渡りに関する調査について、私ども2団体では精度の高い調査を要望した。方法書によれば、希少猛禽類調査は「繁殖期と非繁殖期に実施し、各月1回3日間程度、繁殖期は2年間調査を実施する」としている。先ず、調査内容を具体的に示すべきである。繁殖期と非繁殖期の調査期間を明示し、全体で調査を何回実施するのかも明示すべきである。調査地点は11か所あるが、最低でも3日間ずつ11地点同時に行うべきである。
渡り鳥と希少猛禽類観察の定点からの可視領域が、計画地全体をカバーしていない。それのため鳥類への影響を評価する基礎データとしては不十分であり、調査自体の信頼性を損ねる可能性があるため、観察地点の配置の見直しを要望する。また、一般鳥類の現地調査について、生物多様性の観点から計画地とその周辺に生息する鳥類全体の生息環境や生物多様性も評価すべきである。そのため、一般鳥類の調査も重要である。任意観察調査で、春夏秋冬の4季と繁殖期のテリトリーマッピング法調査を実施するとしているが、具体的な実施時期と回数を明示すべきである。5月は繁殖と渡りの時期でもあるので、他の時期より詳細な調査が必要で、この月は週に2回程度の調査が望ましい。
渡り鳥の調査について、方法書では冬春及び秋の3季に定点観察法で調査を実施し、秋の3か月間は各月複数回実施としているが、調査頻度の詳しい明示がない。渡り鳥の種類、個体数、時期は年による変動があり、対象区域におけるピークを把握することが難しいので、3日間連続の観察を月に4回の調査を2年間実施することを求める。レーダー調査を活用し、夜間の小鳥類の渡りの状況を把握することも要望する。
- (2)方法書における影響評価について
-
背炙山地区には、南北の尾根沿いに大規模風力発電事業として、既設の「会津若松ウインドファーム」(エコパワー社)、計画中の「(仮称)クリーンエナジー会津若松風力発電事業」(クリーンエナジー合同会社)と「(仮称)会津若松ウインドファーム増設事業」(コスモエコパワー(㈱)社)、および貴社が計画中の「(仮称)会津若松みなと風力発電事業」、さらに南隣の山の尾根には既設の「郡山布引高原風力発電所」((㈱)グリーンパワー郡山布引)もあり、これらすべてが、猪苗代湖西岸から南岸の山の尾根上に並び建つという状況が生まれようとしている。一方で布引高原を除いて、計画地はクマタカなどの希少猛禽類の貴重な生息地となっており、高密度で繁殖している。国内では風車建設によりクマタカやハイタカなど希少猛禽類のバードストライクや生息地放棄が起きており、本事業が実施されるとクマタカなどの希少猛禽類にバードストライクや生息地放棄などの影響が生じ、さらに累積的影響として本事業によるもののみでなく近傍の既設風車でも影響が生じることが予測される。
計画地にサシバやハチクマなどの希少猛禽類等の渡りルートもあるので、事業の実施が障壁影響を生み出し、これらの渡り鳥が風車を大きく迂回し、迂回した先の既設風車群によりバードストライクが発生することも考えられる。貴社における環境影響評価ではこれら複数の事業が一体のものとなって生じる累積的影響を適切に評価し、地域全体の環境影響、特に希少猛禽類に対する影響が最小になるよう、影響の回避低減策を講じるべきである。計画地およびその周辺においては、いわゆる発電所アセスのガイドラインにあるような一般的な環境影響評価だけでなく、計画地の環境について知見を持つ利害関係者や専門家とも十分に協議したうえで、実施する調査の内容を決定されることを求める。貴社においても、風車の建設にあたっては、鳥類の生息状況を十分に把握し、地域の優れた自然環境と生物多様性が失われないよう適切な対応をとることを強く求める。
貴社の計画地の近くの既設風車でコウモリ類の衝突死事例(バットストライク)が発生したという報告がある。方法書で捕獲調査や音声モニタリング調査を実施するとしているが、コウモリ類の特性を踏まえ、風速と衝突頻度の関係についても調査、予測及び評価を行うことを求める。
- (3)鳥類以外への影響について
-
- ①生態系の保全について
-
計画地の面積範囲の一部が日本森林浴の森100選にも選ばれている会津東山自然休養林と重なっており、風車の建設により、休養林として保全されている豊かな森林生態系が崩壊、または改変される恐れがある。そのことは森林保護を謳っている自然休養林としての存在意義が損なわれることになるため、休養林と重なる地域対象区域から除外することを強く求める。
さらに計画地の範囲に、地域住民の重要な水源や災害防止を担っている保安林が含まれている。この保安林は生物多様性保全を目的としている会津山地緑の回廊に繋がっている。風車の設置による保安林の改変および影響を受ける緑の回廊における上記の機能低下を避けるべきである。計画地には、絶滅危惧ⅠB類に指定されているクマタカの複数つがいが、高密度で生息している可能性が高い。生態系の頂点に立つクマタカ等の希少猛禽類は、餌動物となる多くの野生生物を育む豊かな自然環境に支えられているので、森林伐採や土地の改変が行われれば、餌となるノウサギ等の減少により、クマタカ等の生息地が奪われることとなる。計画地には優れた自然が多く残されており、環境省、林野庁が推進する生物多様性保全の観点からも極めて損失が大きいと考えられる。風車の設置予定範囲及び工事用道路等の改変地域を明確にし、評価するための方法を具体的に示すべきである。本事業については、生物多様性保全の観点から、中止も含めて事業規模を大幅に見直すことを要望する。
- ②累積的影響について
-
計画地の近傍には、前述のように、他社の既設風車と大規模な増設計画、またもう一つの他社の建設計画がある。それらが計画通りにすべて建設されると多数の風車が背炙山の尾根上に南北に並ぶことになり、生物多様性の保全と維持を目的として設置された緑の回廊が、環境改変により分断され、回廊の設置当初の趣旨が大きく損なわれる恐れが極めて大きい。貴社の計画地において単独で行う環境影響評価だけで評価できない累積的影響について、既設の風車及び計画の存在も含めて一体的に影響評価を行う累積的環境影響評価の適切な実施を強く求める。
- ③景観について
-
計画地がある背炙山は会津若松市の市街地の東に位置し、歴史的にも著名な観光施設の鶴ケ城の借景となっている。風車が建設されると尾根には人工物が並ぶことになり、歴史的な自然景観や観光価値も同時に損なわれる。評価は設定した主要眺望点からの垂直視野角で行うとしているが、背炙山から磐梯山方向や猪苗代湖の眺望を風車が損ねる可能性もあり、水平視野や市民の心情に対する影響も含めて適切に評価すべきである。また、フォトモンタージュ等を用い風車の建設の前後でどのように景観が変わる予定であるかを示し、準備書作成前に広く市民の意見を聴取するなどして、評価を行うべきである。さらに、送電線及び系統連携地点については、詳しい説明がない。送電線が山林に設置されると自然景観を阻害する可能性があり、大型風車の設置計画でもあるので、景観への影響を最小限にとどめるために建設位置や規模の再検討を求める。
- ④一般利用者への配慮について
-
計画地の一部はハイキング、自然観察などで、多くの一般市民に親しまれている。その工事中および完成後も市民の継続的な利用を促進できるように配慮すべきである。
- ⑤地域住民への配慮事項について
-
計画地には、赤井城跡の歴史的遺構があり、計画地を含む背炙山には、若松と湊地区を結ぶ生活道路があり、歴史的著名人も利用した記録がある。民俗的な見地から地元住民の意見を聴取するなど、事前調査を十分に実施するよう努めるべきである。
以上
(仮称)虫ヶ峰風力発電事業に係る環境影響評価方法書に対する意見書
令和3年3月1日
ジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社
代表取締役 中川 隆久 様
日本野鳥の会石川
代表 中村 正男
〒929-1125 石川県かほく市宇野気1-71
公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一 (公印省略)
〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル
(仮称)虫ヶ峰風力発電事業に係る環境影響評価方法書に対する意見書
現在、貴社が意見募集をしている(仮称)虫ヶ峰風力発電事業に係る環境影響評価方法書(以下、方法書という)に対して、鳥類の保全の見地から下記のとおり意見を述べます。
1.累積的影響評価の実施の必要性について
貴社が作成した計画段階環境配慮書(以下、配慮書という)に対し2020年9月2日付で提出した意見書でも同様のことを述べましたが、対象事業実施区域(以下、計画地という)の周辺には下記のように既設、建設中、計画中の事業(以下、他事業という)が多く存在します。したがって、既設の風力発電施設(以下、風車という)を全機撤去したうえで新たな風車に建て替えを行うリプレイス事業であろうとも、貴社は他事業の事業者と協力または情報の共有を図りながら累積的環境影響評価を実施し、能登半島中部全体における鳥類や自然環境への影響の回避・低減策を講じなければ、輻輳する風車の存在やその設置工事により、生態系の破壊や鳥類のバードストライクおよび障壁影響を含む生息地放棄などの重大な影響が能登半島中部全体で生じる可能性があります。
しかし、方法書には累積的影響評価に関する具体的な方針や考え方、評価手法等が記載されておらず、不十分な内容となっています。貴社は海外事例を参考にするなどして累積的影響の予測および評価を行い、計画地の周辺に他事業が多く存在することにより生じる鳥類をはじめとした自然環境への重大な影響を回避するための方針や方法を示すべきです。また、風車の運転開始後は事後調査を行い、その結果を示すべきです。それらを実施すること、また、具体的な手法等を記載できない限り、本事業の規模を縮小するか、計画を撤回すべきです。
【計画地周辺の他事業】
- 既設:福浦風力発電所(9基)、酒見風力発電所(1基)、あいの風酒見風力発電所(5基)、富来風力発電所(4基)、JRE志賀西海風力発電所(3基)
- 建設中:百浦赤住風力発電所、矢駄風力発電所
- 計画中:(仮称) 中能登ウインドファーム事業(最大15基)、(仮称)能登中風力発電事業(最大16基)、(仮称)志賀風力発電事業(最大7基)、(仮称)西能登ウィンドファーム事業(最大30基)、(仮称)七尾志賀風力発電事業(最大12基)、(仮称)能登里山風力発電事業(最大17基)、(仮称)志賀風吹岳風力発電事業(最大9基)
2.当該事業は、リプレイスおよび事業の拡大である。そこで稼働中の風車の環境影響を評価し、影響の大きい風車については位置の変更を行うべきである。また、スケジュールについては既設風車の撤去も含めて明示し、必要に応じて評価すべきである。
3.鳥類調査の方法等について
【表 6.2-12(1)〜(4) 調査、予測及び評価の手法】、【表 6.2-13(1) 動物の調査方法及び内容】、【表 6. 2-13(2) 動物の調査方法及び内容】、【表 6.2-13(3) 動物の調査時期の選定根拠】に記載されている内容について、下記のように意見を述べます。
- 計画地全体はKBA(Key Biodiversity Area)に含まれています。そのため、貴社は風車の建設により発生する土砂の扱いには十分留意し、土砂流出等により、ホクリクサンショウウオの生息地をはじめ、地域の生態系や、鳥類を含めた地域の生物多様性に影響を与えることのないよう、事業を計画、実施すべきです。
- 鳥類の繁殖状況や渡り鳥の渡来・通過・渡去の状況は年変動が大きいことは既知のことです。貴社はこの年変動も考慮して、鳥類調査全般の実施期間は少なくとも2年間実施する必要があります。
- 鳥類調査(一般鳥類)の各調査において調査時期と頻度がそれぞれ記載されていますが、それが適切であるかどうか専門家等の意見を聞くべきです。当会としては、現地の鳥類の状況を詳しく把握するために、繁殖期(5~6月)は調査地において出現種数が飽和するまで実施し、それ以外の時期は各月1~2回程度の調査が必要と考えます。
- 貴社は、観察地点からの視野を示す視野図を作成し、観察地点の設置位置の妥当性を検討すべきです。希少猛禽類調査および渡り鳥調査においては、各観察地点からの視野が重なって計画地全体を覆うようになっている状態で調査を実施し、影響を評価すべきです。
- 鳥類(渡り鳥)調査において、夜間録音調査の実施が記載されていません。春季には夜間(22時から翌朝4時頃)に渡り鳥が多く見られるとの報告*もあるため、夜間調査も検討すべきです。ただし、録音調査では、録音機材により確認できる鳥類の飛翔状況の距離が短いことがあるため、レーダー調査を実施するなどして、計画地における渡り鳥の利用状況等を詳細に把握したうえで影響を評価すべきです。
- 鳥類(希少猛禽類)調査では、オオタカの繁殖状況を詳しく把握するために、2月調査を「繁殖期」の調査とすべきです(2月も2季実施)。また、計画地とその周辺における希少猛禽類のペアの生息および繁殖状況をより的確に把握するために、定点観察法だけではなく、適宜、移動観察(早朝の声聞きなど)を交えるなど、対象種や環境に合わせて柔軟に調査を実施すべきです。
- 鳥類(希少猛禽類)調査および鳥類(渡り鳥)調査では、鳥類の飛翔位置を正確に把握するため、レーザーレンジファインダー等の機器を使用すべきです。
4.アセス図書の縦覧方法について
貴社が作成した方法書は、配慮書を含めて貴社が作成したアセス図書がダウンロードや印刷できないのは、著作権者である貴社の意向によるものです。しかし、パソコン上にダウンロードおよび印刷して閲覧できないことは非常に不便であることから、貴社は利用者から申請があれば、ダウンロードおよび印刷を可能にすべきです。
今回は、貴社のアセス図書の縦覧期間が意見書の提出期限前に終了していますが、利用者の利便性のために意見書の募集期間中はインターネットで閲覧できるようにしていただくことを要望いたします。
以上
*鳥類調査結果を用いた影響予測手法等について(参考)
https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/files/tyouruityousa2.pdf
(仮称)輪島市南志見風力発電事業に係る環境影響評価方法書に対する意見書
別紙
令和3年3月1日
南志見風力発電合同会社
代表社員 一般社団法人エナジーエクスプローラー
職務執行者 野坂 照光 様
日本野鳥の会石川
代表 中村 正男
〒929-1125 石川県かほく市宇野気1-71
公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一 (公印省略)
〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル
(仮称)輪島市南志見風力発電事業に係る環境影響評価方法書に対する意見書
現在、貴社が意見募集をしている(仮称)輪島市南志見風力発電事業に係る環境影響評価方法書(以下、方法書という)に対して、環境影響評価法第8条に基づき、鳥類の保全の見地から下記のとおり意見を述べます。
- 1.累積的影響評価の実施の必要性について
-
- (1)(仮称)深見町ウィンドファーム事業との間の累積的影響について
-
方法書に示されている対象事業実施区域(以下、計画地という)は、令和2年8月26日より公告縦覧されていた他社による(仮称)深見町ウィンドファーム事業(以下、重複他事業という)の計画段階環境配慮書(以下、配慮書という)にある事業実施想定区域と大きく重複しています。ほぼ同じ場所に、異なる事業者の風力発電施設(以下、風車という)が建設されることは一般的には想定し難いですが、現段階で計画地が重複している以上、貴社は重複している他事業の事業者と協力、または情報の共有を図りながら累積的環境影響評価を実施し、影響の回避・低減策を講じなければ、輻輳する風車の存在やその設置工事により、生態系への影響や鳥類のバードストライク、および障壁影響を含む生息地放棄などの重大な影響が生じる可能性があります。
貴社が作成した配慮書に対し、私ども2団体が令和2年7月30日付で提出した意見書では、能登半島には多くの風力発電所や計画中の風力発電事業があり、累積的環境影響評価の実施が必要と述べました。しかし、方法書には累積的環境影響評価に関する具体的な方針や評価手法が記載されておらず、不十分な内容となっています。計画地が重複することにより生じる鳥類をはじめとする自然環境への重大な影響を回避するための方法等が示されない限り、本事業は実施すべきではありません。
- (2)計画地周辺に多く存在する他事業との間の累積的影響について
-
計画地の周辺には(仮称)深見町ウィンドファーム事業以外にも、下記のように既設、建設中、計画中の事業(以下、他事業という)が数多く存在します。貴社は他事業の事業者と協力、または情報の共有を図りながら累積的環境影響評価を実施し、能登半島北部全体における鳥類や自然環境への影響の回避・低減策を講じなければ、輻輳する風車の存在やその設置工事により、生態系への影響や鳥類のバードストライクおよび障壁影響を含む生息地放棄などの重大な影響が能登半島北部全体で生じる可能性があります。
しかし、方法書には累積的影響評価に関する具体的な方針や考え方、評価手法等が記載されておらず、不十分な内容となっています。貴社は海外事例を参考にするなどして累積的影響の予測および評価を行い、計画地の周辺に他事業が数多く存在することにより生じる鳥類をはじめとする自然環境への重大な影響を回避するための方針や方法を示すべきです。また、風車の運転開始後には事後調査を行い、その結果を公表すべきです。事後調査を実施すること、また、その具体的な手法等を記載できない限り、本事業の規模を縮小するか、計画を撤回すべきです。
【計画地周辺の他事業】
- 既設:輪島もんぜん市民風車(1基)、輪島コミュニティウインドファーム(10基)、珠洲風力発電(30基)
- 計画中:(仮称) 輪島ウィンドファーム事業(最大21基)、(仮称) 宝立ウィンドファーム事業(最大15基)
- 2.鳥類調査の方法等について
-
【表 6.2.2-14(1)~(4) 動物に係る調査、予測及び評価の手法】、【表 6.2.2-15(1)~(2) 動物調査項目及び内容等】に記載されている内容について、下記のように意見を述べます。
- 計画地全体はKBA(Key Biodiversity Area)に含まれています。そのため、貴社は風車の建設により発生する土砂の扱いには十分留意し、土砂流出等により、ホクリクサンショウウオの生息地をはじめ、地域の生態系や、鳥類を含めた地域の生物多様性に影響を与えることのないよう、事業を計画、実施すべきです。
- 鳥類の繁殖状況や渡り鳥の渡来・通過・渡去の状況は年変動が大きいことは既知のことです。貴社はこの年変動も考慮して、鳥類調査全般の実施期間は少なくとも2年間実施する必要があります。
- 一般鳥類調査のうちスポットセンサス法による調査と任意観察調査は、「4回(春季・夏季・秋季・冬季)」実施するとあります。しかし、方法書には具体的な調査頻度が記載されていません。そのため貴社は、各季の中でどのくらいの回数で調査を実施する予定なのかを記載し、それが適切であるかどうか専門家等の意見を聞くべきです。私ども2団体としては、現地の鳥類の状況を詳しく把握するために、繁殖期(5~6月)は調査地において出現種数が飽和するまで実施し、それ以外の時期は各月1~2回程度の調査が必要と考えます。
- 貴社は、希少猛禽類調査および渡り鳥調査のための観察地点からの視野を示す視野図を作成し、観察地点の設置位置の妥当性を検討すべきです。希少猛禽類調査および渡り鳥調査においては、各観察地点からの視野が重なって計画地全体を覆うようになっている状態で調査を実施し、影響を評価すべきです。
- 渡り鳥調査において、夜間にレーダー調査を「春季、秋季に各1回、1地点」で実施するとありますが、この調査内容では不十分であり、頻度および調査地点を増やす必要があります。あわせて、夜間録音による調査も実施するなどして、計画地における渡り鳥の利用状況等を詳細に把握したうえで影響を評価すべきです。
- 希少猛禽類調査では、計画地とその周辺における希少猛禽類のペアの生息および繁殖状況をより適切かつ十分に把握するために、定点観察法だけではなく、適宜、移動観察(早朝の声による確認など)を交えるなど、対象種や環境に合わせて柔軟に調査を実施すべきです。
- 希少猛禽類調査および渡り鳥調査では、鳥類の飛翔位置を正確に把握するため、レーザーレンジファインダー等の機器を使用すべきです。
- 3.アセス図書の縦覧方法について
-
貴社が作成した方法書は、Internet Explorer以外のブラウザでも閲覧可能ですが、配慮書を含め貴社が作成したアセス図書がダウンロードや印刷できないのは、著作権者である貴社の意向によるものです。しかし、パソコン上にダウンロードおよび印刷して閲覧できないことは非常に不便であることから、貴社は利用者から申請があれば、ダウンロードおよび印刷を可能にすべきです。
今回は、貴社のアセス図書の縦覧期間が意見書の提出期限前に終了していますが、利用者の利便性のために、また、環境省からの依頼に応じて、意見書の募集期間中および意見募集期間終了後もインターネットで閲覧できるようにしていただくことを要望いたします。
以上
(仮称)肥薩ウインドファーム 環境影響評価方法書に対する意見書
令和3年2月28日
電源開発株式会社
代表取締役 渡部 肇史 様
日本野鳥の会熊本県支部
支部長 田中 忠 (公印省略)
〒861-8064
熊本県熊本市北区八景水谷3-7-38
公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一 (公印省略)
〒141-0031
東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル
(仮称)肥薩ウインドファーム 環境影響評価方法書に対する意見書
貴社が作成された(仮称)肥薩ウインドファーム発電事業に係る環境影響評価方法書(以下、方法書という)に対し、下記のように意見を提出いたします。
記
- (1)対象事業実施区域とその周辺の自然環境および鳥類全般について
-
方法書に記載されている対象事業実施区域(以下、計画地という)とその周辺は熊本県と鹿児島県の県境となっている稜線を含む一帯であり、森林性鳥類と草原性鳥類の両方が生息し、鳥類を頂点とした食物連鎖の中で豊かな生態系および生物多様性が維持されている場所であり、熊本県にとっても自然環境保全上において貴重な地域である。
熊本県側の計画地は、里山から植林地、自然林及び茶畑等の丘陵地であり、この地で発生する斜面上昇風や上昇気流を利用してクマタカなどの猛禽類をはじめ、多くの鳥類がはるか昔から生活を営み、命をつないでいる場所である。また、麓の湯出地区にある湯の鶴温泉は、平家の落人が川岸の温泉の湯でツルが傷を癒していたのを見つけたことに起因している。計画地は鹿児島県の出水平野で越冬するツル類の主要な移動経路ではないが、山口県や高知県との往来で飛行する際の利用が考えられる地である。なおかつ、森林性のヤマドリやカケス、オオルリをはじめ、草原性のホオジロ類、夏鳥のホトトギスなどが生息するなど、複合的な環境要素も併せ持つ地域である。また計画地の周辺には石坂川、芦刈川、頭石川、招川内川、軸谷川、田原川、坂元川の源流があることから、水源涵養保安林となっており、豊かな自然環境の中で、鳥類をはじめ、昆虫や爬虫類、両生類、哺乳類など数多くの生物が生息している場所である。貴社の事業は、近年、日本で減少しつつある里山から自然林にかけての分水嶺を有する貴重な稜線一帯にかけて計画されているため、鳥類への影響は極めて大きいと言わざるをえない。
方法書の4章・4-16(188)ページからの「事業実施想定区域及びその周囲の重要な動物の生息状況(鳥類)」では、15目34科100種の鳥類が選定されているが、前述のホトトギスなどの記載がない。重要種以外にも一般種の生息状況を適切に把握したうえで影響を評価し、また、予測される影響を回避できるよう、質、量ともに十分な調査を実施するために、調査方法等を以下のように再検討する必要がある。
- (2)環境影響について
-
方法書の4章・4-38ページからの「(3)評価」で、芦北海岸県立自然公園にも注視している点は望ましい。特に計画地西部に位置する芦北海岸県立自然公園の森林は、海の栄養源となるミネラル分を作り出し、川の流れとともに海岸部の芦北海岸県立公園の海に養分を補給するという重要な役割を果たしている。その多様な環境の中に水俣鳥獣保護区があるため、その環境は保全しなければならない。また、出水小学校鳥獣保護区や高川鳥獣保護区についても同様に自然環境を保全する必要がある。
さらに、「今後具体的な環境保全措置を検討する。」とされ、その留意事項として、「生息が確認された重要な種に対して環境保全措置を検討する。」とされているが、重要種だけでなく一般鳥類も含めて具体的な保全措置について記載すべきである。さらに、「資材の搬出入は極力既存道路を活用し土地の改変及び樹木の伐採面積の最小化を図る。」とされているが、樹木伐採地や道路拡幅後の法面の植栽種についても十分な配慮が必要である。植栽等の植物種によっては二ホンジカが好んで食べ、結果的にシカを誘引して個体数が増加し、現存のササなどを食べつくすことが危惧される。特に熊本県中央部から南部にかけてはスズタケなどがシカによって食べつくされ、ウグイスやコマドリなどの繁殖環境が消滅しているところがある。それらについても十分に調査し、食物連鎖による鳥類等のすみかを奪うことがないようにしなければならない。
- (3)経済産業大臣と県知事意見の順守について
-
方法書の5章と7章に記載されている、経済産業大臣と鹿児島県および熊本県の知事意見を順守した調査を行うことは必須である。特に経済産業大臣は「累積的な影響」を挙げ、「他の事業者との情報交換等に努め、累積的な影響について適切な調査、予測及び評価を行い、その結果を踏まえ、風力発電設備等の配置等を検討すること」と述べている。しかし、貴社は事業者見解として「公開情報収集を行い、可能であれば他事業者との情報交換に努め、累積的影響について、必要に応じて調査、予測及び評価を行い(以下略)」と述べるなど、累積的影響評価の実施には極めて消極的であると言わざるを得ない。貴社は海外事例を参考にするなどして累積的影響の予測および評価を行い、計画地の周辺に他事業が存在することにより生じる鳥類をはじめとした自然環境への重大な影響を回避するための方針や方法を示すべきです。また、クマタカの生息、サシバ等の猛禽類やツルの渡り経路についても、「鳥類への影響を極力低減」ではなく、回避する方法を記載すべきである。
熊本県知事は、「まず住民との十分なコミュニケーションに努めること」を意見している。貴社は、配慮書に対して87件もの意見が提出されていることを重く受け止めるべきで、当該事業は住民を第一に考えて検討すべき重責を担う事業であり、建設の可否を再度、十分に検討すべき事業である。
鳥類についても「水俣市の過去の調査結果から、クマタカとサシバの十分な調査」の必要性を知事は意見している。そのため貴社は、計画地が希少鳥類にとって重要な繁殖地となっているという視点を踏まえ、質、量ともに十分な調査を実施し、鳥類への影響を回避することが必須となる。特に貴社は「調査、予測、評価手法の検討を行う」としているが、検討ではなく、どのようにそれらを行うかの綿密な記載を方法書に記載する必要がある。
鹿児島県知事は、「インターネットでの継続閲覧」を求めている。しかし貴社は「積極的な情報公開及び説明に努めます。」と記載しているだけで、インターネットでの継続閲覧の記載がないことは極めて不十分である。
- (4)鳥類調査の方法について
-
方法書6章では、一般鳥類の調査として定点調査と任意調査を考えているが、十分な調査を行うと述べられていることから、他の事業者も実施している例があるように、計画地に存在する環境要素を概ねカバーできるようなポイントセンサス調査およびラインセンサス調査も併用する必要がある。特に近年になって個体数が減少していると言われる夏鳥のアカショウビンやヤイロチョウ、サンコウチョウなどが繁殖していないか、十分に留意して調査すべきである。
また定点調査では、鬼岳北側方向の畑地と森林の調査地点が設定されていないが、計画地における鳥類の生息状況を詳細に把握するために葛渡までを補完する調査が必要である。さらに渡り鳥調査については、鬼岳の北西部に調査地点がないことで見落としが発生する。
計画地にはクマタカが生息していることから、方法書ではクマタカを上位種とし、典型種にヤマガラを挙げている。しかし、各々1種では、森林全体の生態や保全のあり方を予測、評価するには無理がある。計画地周辺には水田を有する貴重な里山環境が多くあり、クマタカだけでなくサシバやツミ、ハチクマが繁殖する可能性があるなど、希少猛禽類が繁殖していることも視野に入れて、繁殖期には繁殖ステージごとに連続した日程で終日調査等を実施するなど、それらの繁殖状況を詳細に把握する必要がある。特に森林で新しい命をつないでいる野鳥たちの環境を保全すべき観点からも、より多くの種について詳細な調査をすることが重要である。
さらに、計画地にはサシバ、ツミ、ハチクマ、ノスリなどの渡り経路が存在する可能性がある。また前述の通り、ナベヅル・マナヅルの移動経路がある可能性もあり、詳しく調査する必要がある。ツル類の移動経路の存在が認められれば、そこでの風車建設は避けることが必須である。
なお、クマタカをはじめサシバやトビ、ノスリ、チョウゲンボウなどの斜面上昇風や上昇気流を利用して獲物をとる猛禽類が計画地やその周辺を利用しているため、風車建設の影響を評価するためには、充分な空間飛翔調査等を実施し、高さ150m以上にも及ぶ風車建設による鳥類への影響を適切に評価する必要がある。
鳥類が夜間も移動していることは広く知られるようになっているが、計画地でも夜間に鳥類が飛翔する可能性があることから、渡りの時期などにレーダーを用いるなどの夜間調査を実施したうえで、風車建設による鳥類への影響を評価すべきである。特に、繁殖期にはヨタカやフクロウ類、冬期にはコミミズクやトラフズクなどが計画地を利用していないかを調査する必要がある。計画地周辺には貴社の他に、矢筈岳、大関山、球磨村、宮ノ尾山にかけて計画地が設定されている風力発電事業がある。自社の計画地における影響評価を実施するだけでなく、他社とも互いに十分に情報を共有して累積的影響を評価するという視点で、繁殖する希少種はもちろんのこと一般種や渡り鳥等を含めて風車の建設がこの地域一帯の鳥類に与える影響を評価すべきである。
- (5)アセス図書の縦覧方法について
-
アセス図書は、環境影響評価法により定められているとは言え、縦覧期間が1~1.5か月と短く、また、縦覧場所も限られており、インターネット上で閲覧は可能であるが、印刷ができないことが多いのは不便である。数百ページもあるアセス図書を縦覧場所、またはパソコン上のみで閲覧しながら意見書を作成することは、現実的ではない。縦覧期間が過ぎてしまうと作成した意見書の内容の誤りの有無をアセス図書と整合して確認することもできない。アセス図書の内容が、実際の計画地の状況と齟齬がないかを地域住民や利害関係者等が精査できることが、環境影響評価の信頼性を確保し、地域との合意形成を図るうえで不可欠である。そのため、縦覧可能期間に限らず、縦覧期間後も地域の図書館などでアセス図書を常時閲覧可能にし、また、随時インターネットでの閲覧とダウンロード、印刷を可能にすべきである。なお、すぐにはアセス図書を常時公開することは難しいようであれば、多くの事業者が実施しているように、関係する自然保護団体等に紙媒体でのアセス図書を提供すべきである。
以上
(仮称)美浜新庄ウィンドファーム発電事業に係る環境影響評価方法書への意見書
2021年3月1日
株式会社グリーンパワーインベストメント
代表取締役社長 坂本 満 様
日本野鳥の会福井県
代表 酒井 敬治
〒911-0804福井県勝山市元町3-6-48松村方
公益財団法人日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一 (公印省略)
〒141-0031東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル
(仮称)美浜新庄ウィンドファーム発電事業に係る環境影響評価方法書への意見書
貴社が作成した環境影響評価方法書(以下、方法書という)に記載している対象事業実施区域(以下、計画地という)は、当該地域に形成されている生態系の頂点に位置するクマタカが複数ペア生息し、イヌワシは近隣生息地からの飛来が観察されるなど希少猛禽類が多く生息し、かつ、ミゾゴイ、ヨタカ、コノハズク、ヤイロチョウなどの希少鳥類が生息している可能性がある場所です。また、計画地周辺はハチクマやサシバなどの猛禽類やカモ科鳥類の渡り経路となっている可能性があります。そのため、風力発電施設(以下、風車という)の建設工事段階では騒音や作業員の存在等により、特に希少猛禽類の繁殖に重大な影響を及ぼすこと、そして、風車の稼働後にはバードストライクや障壁影響を含む生息地放棄等が発生することが大きく危惧されます。
以上の理由から、方法書に対し下記のように意見を述べますので、貴社には適切な対応を取っていただけるようお願いいたします。
記
- 1.計画地の見直しについて
-
冒頭に記述したように、計画地は地域生態系の頂点に位置し、環境省レッドリストで絶滅危惧ⅠB類、福井県版レッドリストで絶滅危惧Ⅰ類に指定されているイヌワシとクマタカ、およびその他の希少鳥類等の飛翔が確認されている。これらの種は、計画地とその周辺の地域で生息・営巣していると推察され、風車の建設はそれらの生息に重大な影響を及ぼすと考えられる。そのため、計画地は風車の建設場所としては不適切であることから、計画地の選定位置の見直しを求める。
- 2.鳥類(希少猛禽類)調査の調査地点(定点)について
-
計画地とその周辺で7箇所の定点を設定しているが、降雪期にはSt1とSt2の2箇所しか使用できない。これでは、繁殖期と重なる降雪期の十分な調査が出来るとは言えない。降雪期でも十分な調査ができるよう、スノーモービル等での移動や、ヘリコプターなどによる調査員の搬送などを実施することを求める。ただし、エンジン音等が希少猛禽類に影響を与えないよう十分な配慮も必要である。
- 3.鳥類(希少猛禽類)調査の調査日数について
-
方法書では希少猛禽類調査の日数を「1回あたり連続3日間とし、各月1回」としているが、特に春と秋は、3日間の調査日程に雨天が重なってしまい「ほとんどデータが取れない月」が生じることがある。そのため、もし雨天が重なってもその前後の好天時にデータを取得できるような調査計画を立てるべきである。
また、貴社は、計画地およびその周辺で繁殖していると推察される希少猛禽類の営巣地や高度利用域等を必ず特定し、事業の実施によるそれらへの影響を適切に評価できるような調査計画を立てるべきである。なお、調査の日程について、繁殖期間中は各月1回にこだわることなく、繁殖ステージごとの行動を把握できるように調査日程を組むべきである。
- 4.「鳥類の渡り時の移動経路」調査期間等について
-
方法書では鳥類の渡り時の移動経路調査として「2月、3月、4月、5月及び9月、10月の実施とし、各月3日間実施する。」としているが、現地の渡り鳥の状況から考えると、春は6月、秋は11月も調査時期に加えるべきである。なお、調査実施中に悪天候となりデータが取得できない日が生じる可能性も考慮した調査日程を組むべきである。
- 5.レーダー調査等の実施について
-
計画地とその周辺を渡る鳥類の移動経路の位置を把握し、事業の実施による鳥類への影響を検討するための基礎データを得るには、目視での観察調査やICレコーダーを使った調査だけでは不十分である。特にICレコーダーは音声を取得できる範囲が狭く、計画地を通過する渡り鳥の状況を広く把握することはできない。そのため、船舶用レーダーやレーザーレンジファインダー等により、できるだけ広範囲に正確な飛翔経路や高度、時間等を把握、分析したうえで、障壁影響も含めた影響評価を実施することを求める。
なお、他の事業者によって行われている風力発電事業の方法書や調査では、ほとんどの事業者がレーダー調査を導入しており、当該地のみでレーダー調査が行われないのは、他の計画地との影響評価の比較ができないことからも、レーダー調査は必須である。
- 6.累積的影響評価の実施について
-
計画地周辺では貴社が計画する事業以外にも、他の事業者による風力発電計画が複数ある。ある一定の地域に複数の施設がある場合、鳥類、特に渡り鳥に対し、障壁影響やバードストライクなど重大な影響を及ぼすことが海外の知見により知られている。そのため貴社は、互いに計画段階であったとしても、他の事業者と事前の調査結果の共有等をしながら、適切に累積的影響評価を実施し、周辺地域全体における鳥類等の自然環境に配慮すべきである。
以上
(仮称)出水水俣ウィンドファーム事業環境影響評価方法書に対する意見書
日野鳥発第2020-039号
令和3年3月1日
日本風力サービス株式会社
代表取締役 倉田 隆広 様
公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一
東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
(仮称)出水水俣ウィンドファーム事業環境影響評価方法書に対する意見書
現在、貴社が意見募集をしている(仮称)出水水俣ウィンドファームに係る環境影響評価方法書(以下、方法書という)に対して、環境影響評価法第8条に基づき、環境の保全の見地から下記のとおり意見を述べる。
記
- (1)鳥類保全の観点からの意見
-
貴社が作成した方法書に示されている対象事業実施区域(以下、計画地という)は、環境省版レッドリストの絶滅危惧Ⅱ類、および国際希少野生動植物に指定されているナベヅルとマナヅルの集団越冬地である出水平野に近く、これらのツル類の移動分散の経路になっている可能性がある。環境省は2020年度から出水平野で越冬するツル類に対する給餌量の削減を実施し分散の促進事業を進めるなど、関係各者はツル類の集中的な越冬地からの分散を促しているところであるが、貴社による風車の建設により生じる影響により、ツル類の越冬地への移動や分散を阻害することがないよう、飛翔の位置や時期等について詳細に調査する必要がある。そして、ツル類の分散経路等の確保の観点から、仮にツル類の飛翔が確認された場所に風力発電施設(以下、風車という)の設置予定地がある場合は、そこでの風車の建設を取り止めるべきである。
また、計画地には個体数が非常に減少しており保護が急務とされているサシバ(環境省 2013)やチュウヒ(環境省 2016)の移動経路が存在する可能性もあり、上記のツル類を含め渡り鳥にとって重要な場所になっていると考えられる。サシバは風車の建設により障壁影響が生じることが国内でも確認されている(Ura 2017)。また、浦ほか(2020)では、チュウヒの飛翔行動の種類によってはバードストライクが発生する危険性が高いことを指摘している。これらのことから、サシバやチュウヒは風車建設による影響を受けやすい鳥類であると考える。そのため貴社は、サシバやチュウヒなど希少猛禽類の渡り時期における飛翔の位置等について詳細に調査し、もしこれら鳥類の飛翔が確認された場所に風車の設置予定地がある場合は、そこでの風車の建設を取り止めるべきである。
そして、計画地とその周辺には環境省により絶滅危惧ⅠB類および国内希少野生動植物種に指定されているクマタカが生息している可能性があるが、クマタカはすでに国内でバードストライク(浦 2015)および繁殖等が阻害される生息地放棄(三宅 2020)の発生が確認されている。そのため、貴社が計画通り風車を建設すると、計画地とその周辺においてクマタカのバードストライク、または生息地放棄が生じる可能性がある。
このようにナベヅルやマナヅル、サシバやチュウヒ、クマタカが計画地とその周辺に生息している可能性、および適切な調査の実施が必要であることは、計画段階環境配慮書に対する経済産業大臣意見および鹿児島県知事意見にも記載されているところである。
それらを踏まえて希少鳥類等の保全の観点から考えると、貴社が計画する風車の建設がこれらの希少鳥類に影響を与えることがないよう、詳細な調査を実施したうえで影響評価を実施し、もしこれらの鳥類が生息する場所に風車の設置予定地がある場合は、そこでの風車の建設を取り止める等の保全措置を講じるべきである。
- (2)鳥類調査の方法について
- 方法書6-37(407)には、渡り鳥調査を春季(2~4月)と秋季(9~11月)に各季に3回実施するとある。しかし、1回あたりの調査日数が記載されていないので、適切な項に記載すべきである。また、計画地周辺でツル類の渡り時期となる2月中旬から3月中旬および10月、越冬初期で出水から分散の可能性の高い10月~11月の調査は区別して別途行うべきである。
サシバの渡りのピークになると考えられる3月下旬~4月上旬および9月下旬~10月半ばについては、悪天候時以外は毎日調査を実施し、ツル類とサシバ等の希少鳥類の渡りの状況を詳細に把握したうえで、風車建設による影響を評価すべきである。なお、渡り鳥の飛翔状況の把握には、レーザーレンジファインダー等の鳥類の飛翔位置を正確に計測できる機器の使用を検討すべきである。 - 計画地とその周辺にクマタカが繁殖している可能性があるが、クマタカは場所によっては3年に1回程度しか繁殖が成功しないことが知られている。そのため、現地調査においては、2営巣期内で繁殖成功が確認できなかった場合には、3営巣期にわたり調査をすべきである。
- 方法書6-37(407)には、希少猛禽類調査は各月1回3日間程度を基本とすると記載されているが、希少猛禽類の繁殖期においては造巣期から巣立ち期および巣外育雛期までの生態や行動を詳細に把握したうえで影響を評価する必要があることから、各月1回3日間程度という頻度にこだわらず、繁殖ステージごとに適切な調査時期を選定し、できるだけ多くの日数で調査を実施すべきである。また、留鳥となっている希少猛禽類の生息が認められれば、通年で詳しい生態や行動のデータを取得できる調査計画に変更すべきである。希少猛禽類の飛翔状況の把握には、レーザーレンジファインダー等の鳥類の飛翔位置を正確に計測できる機器の使用を検討すべきである。
- 計画地周辺には環境省が絶滅危惧ⅠB類に指定するブッポウソウが生息している可能性があることから、一般鳥類調査ではそのことに留意すべきである。
以上
【引用文献】
- 環境省.2013.サシバの保護の進め方.環境省,東京.
- 環境省.2016.チュウヒの保護の進め方.環境省,東京.
- 三宅 武.2020.風力発電開発で営巣地を放棄したクマタカ.野鳥841(2020年1月号):26-27.(公財)日本野鳥の会,東京.
- 浦 達也.2015.風力発電が鳥類に与える影響の国内事例.Strix 31: 3-30.
- Ura T., Kitamura W., Yoshizaki S. 2017. Case examples of barrier effects of wind farms on birds in Japan. Conference on Wind energy and Wildlife impacts 2017 Book of Abstracts: 246-247.
- 浦 達也・長谷部 真・平井千晶・北村 亘・葉山政治.2020.繁殖期のチュウヒが風力発電施設の建設により受ける影響とその行動‐日本野鳥の会サロベツ湿原チュウヒ研究グループ.自然保護助成基金助成成果報告書 28: 50-57.
(仮称)新南大隅ウインドファーム環境影響評価方法書に対する意見書
日野鳥発第2020-038号
令和3年3月1日
電源開発株式会社
代表取締役社長 村山 肇史 様
公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一
東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
(仮称)新南大隅ウインドファーム環境影響評価方法書に対する意見書
現在、貴社が意見募集をしている(仮称)新南大隅ウインドファームに係る環境影響評価方法書(以下、方法書という)に対して、環境影響評価法第8条に基づき、環境の保全の見地から下記のとおり意見を述べる。
記
- (1)鳥類保全の観点からの意見
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貴社が作成した方法書に示されている対象事業実施区域(以下、計画地という)は、近接する霧島錦江湾国立公園佐多地区に連なる自然度の高い森林など優れた景観と生態系を有する地域である。計画地がある南大隅町は佐多岬を利用する渡り鳥が多く、中でも個体数が非常に減少しており(環境省 2013)、保護が急務とされているサシバの国内通過個体のほぼすべてが佐多岬周辺に集結することは良く知られている。このことは、計画段階環境配慮書に対する鹿児島県知事意見および経済産業大臣意見にも記載されている。サシバは、風力発電施設(以下、風車という)の建設により障壁影響が生じることが国内でも確認されていることから(Ura 2017)、風車建設による影響を大きく受けやすい鳥類である。そのため、計画通り5基であっても、計画地に風車を建てると大規模な障壁影響が生じることでサシバの移動経路が変わり、天候や風況等によってはバードストライクが発生すると考えられる。
また、計画地とその周辺には環境省が絶滅危惧ⅠB類および国内希少野生動植物種に指定しているクマタカが生息している可能性があるが、クマタカはすでに国内でもバードストライク(浦 2015)、および繁殖等が阻害される生息地放棄(三宅 2020)の発生が確認されている。そのため、貴社が計画通り風車を建設すると、計画地とその周辺においてクマタカのバードストライク、または生息地の放棄が生じる可能性がある。
それらを踏まえて希少鳥類等の保全の観点から考えると、貴社が計画する風車の建設がこれらの希少鳥類に与える影響は甚大であると予測され、当該地域は風車建設には不適切であり、計画地として除外されるべき地域である。そのため、本事業は現地調査の実施および環境影響評価準備書の作成に進まずに、現段階をもって事業を中止すべきである。
以下に、調査方法についての意見を述べるが、前述の立場に立ったうえで方法書の記載内容に対して意見を述べるものであり、現地調査の実施および準備書の作成に進むことを容認するものではない。 - (2)鳥類調査の方法について
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- 方法書6-36(264)には、渡り鳥調査を春季(3~4月)と秋季(9~10月に各3回実施するとある。しかし、1回あたりの調査日数が記載されていないので、記載すべきである。また、計画地周辺でサシバの渡りのピークになると考えられる3月下旬~4月上旬および9月下旬~10月半ばは毎日調査を実施し、サシバ等鳥類の渡りの状況を詳細に把握したうえで、風車建設による影響を評価すべきである。なお、渡り鳥の飛翔状況の把握には、レーザーレンジファインダー等の鳥類の飛翔位置を正確に計測できる機器の使用を検討すべきである。
- 計画地とその周辺にクマタカが繁殖している可能性があるが、クマタカは場所によっては3年に1回程度しか繁殖が成功しないことが知られている。そのため、現地調査においては、2営巣期内で繁殖成功が確認できなかった場合には、3営巣期にわたり調査をすべきである。
- 方法書6-37(235)には、希少猛禽類調査は各月1回3日間程度を基本とすると記載されているが、希少猛禽類の繁殖期においては造巣期から巣立ち期、および巣外育雛期までの生態や行動を詳細に把握したうえで影響を評価する必要があることから、各月1回3日間程度にこだわらず、繁殖ステージごとに適切な調査時期を選定し、できるだけ多くの日数で調査を実施すべきである。また、留鳥となっている希少猛禽類の生息が認められれば、通年で詳しい生態や行動のデータを取得できる調査計画に変更すべきである。希少猛禽類の飛翔状況の把握には、レーザーレンジファインダー等の鳥類の飛翔位置を正確に計測できる機器の使用を検討すべきである。
- 計画地周辺には環境省が絶滅危惧ⅠB類に指定するアカヒゲが生息している可能性があることから(関 2008)、一般鳥類調査ではそのことに留意し、一般鳥類調査を実施すべきである。
以上
【引用文献】
- 環境省.2013.サシバの保護の進め方.環境省,東京.
- 三宅 武.2020.風力発電開発で営巣地を放棄したクマタカ.野鳥841(2020年1月号):26-27.(公財)日本野鳥の会,東京.
- 関 伸一.2008.繁殖分布の周辺域におけるアカヒゲの生息状況(Ⅰ)−大隅諸島黒島および大隅半島木場岳・稲尾岳における繁殖期の生息状況−.九州森林研究61:105-107.
- 浦 達也.2015.風力発電が鳥類に与える影響の国内事例.Strix 31:3-30.
- Ura T., Kitamura W., Yoshizaki S. 2017. Case examples of barrier effects of wind farms on birds in Japan. Conference on Wind energy and Wildlife impacts 2017 Book of Abstracts:246-247.
(仮称)八森山ウインドファーム 環境影響評価方法書に対する意見書
(仮称)八森山ウインドファーム 環境影響評価方法書に対する意見書
令和 3年 2月26日 提出
| 項 目 | 記入欄 |
| 氏 名 |
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| 住 所 |
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| 環境影響評価方法書についての環境の保全の見地からの意見 |
この度、貴社が作成された「(仮称)八森山ウインドファーム 環境影響評価方法書」について、下記のとおり意見を提出します。 記 現在、環境影響評価方法書(以下、方法書と言う)を縦覧している(仮称)八森山ウインドファームについて、対象事業実施区域(以下、計画地と言う)に風力発電施設(以下、風車と言う)を建設した場合、クマタカの生息地と重なることが予想され、衝突死(以下、バードストライクと言う)が発生する危険性が高い。また、サシバやハチクマなど希少猛禽類の渡り経路に対しても障壁影響等が発生することが懸念される。 1.私どもの観察により計画地およびその周辺ではクマタカが生息していることを確認しており、また、繁殖の可能性が高い。クマタカは、場所によっては3年に1回程度しか繁殖が成功しないことが知られていることから、現地調査においては、2営巣期内で繁殖成功が確認できなかった場合には、3営巣期にわたり調査をすべきである。国内ではクマタカでバードストライクが起きた事例があることから、計画地に風車を建設した場合、バードストライクが起こる可能性が高いと考える。そのため、繁殖期におけるクマタカの飛翔行動等の調査は、方法書に記載されている希少猛禽類調査よりも質、量とも十分なものを求める。また、強風時にはクマタカは飛翔行動を行わないことが知られているので、調査は悪天候時には実施すべきではない。 2.方法書には鳥類調査における任意観察、希少猛禽類、渡り鳥の調査地点(定点)が記載されている。ただし、この定点では計画地およびその周辺は地形や樹木の繁茂により見通しが悪く、また、広大であるため、調査に十分な視野、視界を確保することは困難であると考える。各定点から計画地をどのように見渡せるかが分かる視野図を作成し、もし見通しが悪い定点があれば、その位置を適切な場所に変更すべきである。また、希少猛禽類と渡り鳥の定点が計画地内に少ない。前述のように計画地は見通しが悪く、現状の定点の配置では、計画地内における鳥類の飛翔行動などを十分に観察できないと考える。そのため、希少猛禽類と渡り鳥の定点を観察地内にもっと増やすべきである。 3.方法書には、希少猛禽類調査は各月1回3日間程度を基本とすると記載されているが、希少猛禽類の繁殖期においては造巣期から巣立ち期および巣外育雛期までの生態や行動を詳細に把握したうえで影響を評価する必要があることから、各月1回3日間程度にこだわらず、繁殖ステージごとに適切な調査時期を選定し、できるだけ多くの日数で調査を実施すべきである。また、留鳥となっている希少猛禽類の生息が認められれば、通年で詳しい生態や行動のデータを取得できる調査計画に変更すべきである。希少猛禽類の飛翔状況の把握には、レーザーレンジファインダー等の鳥類の飛翔位置を正確に計測できる機器の使用を検討すべきである。 4.計画地の工事用道路周辺ではミゾゴイが生息する可能性がある。また、当会会員の観察結果から、ヨタカが生息している可能性もある。これらのような日の出や日没の前後などの薄明薄暮時や夜間に活動する鳥類の生態や行動を把握できるよう、適切な時期と時間に、ICレコーダーなどの機材を利用して調査を実施することを求める。 5.秋の渡り鳥調査にあたっては、夏鳥と冬鳥で南下時期が異なるため、9~11月の各月複数回(上旬・中旬・下旬)の調査回数では不十分である。夏鳥は早いもので7月下旬に渡りを開始し、冬鳥は12月でも渡ってくるため、その程度の期間は渡り鳥の調査を実施する必要がある。夏鳥であるサシバやハチクマなどの希少猛禽類、および冬鳥の小鳥類やガン・カモ・ハクチョウ類の渡りについては、現地の鳥類の状況に詳しい者から情報を得るなどして、適切な時期に適切な回数の調査を実施し、計画地およびその周辺を通過する渡り鳥全般の飛翔状況を明らかにすべきである。なお、サシバおよびハチクマの移動時期は、宮城県では9月上旬から始まり、約一ヶ月間も続くことが観察、公表されている。しかし、ピークの時期は短く、その年の天気に左右される。そのため、このピークの時期を外さない調査方法での実施が必要となる。また、計画地は広範囲であるため、その日の風向きや日射量等により上昇気流の発生位置が峰の東になるか、西になるかが変わる。上昇気流の発生位置や風力によって鳥類の飛翔コースや高度が変わることも考慮して、適切な調査方法を取る必要がある。なお、ガンやハクチョウ類等の大型鳥類の渡りの状況を把握するのに、上述したように、レーザーレンジファインダー等の使用を検討すべきである。夜間に計画地およびその周辺の上空を移動、通過する小鳥類やガン・カモ・ハクチョウ類を対象にレーダーを用いての調査を計画されているが、1か所だけでなく複数個所、複数回で実施すべきである。 以上 |







