宮崎県串間市「串間風力発電所(仮称)建設計画 環境影響評価方法書」に対する意見書を提出しました

2013.3.21

 日本野鳥の会宮崎県支部と公益財団法人日本野鳥の会(事務局:東京都品川区、会員サポーター数5万人)は、国内でも最大級となる風力発電計画であり、特に渡り鳥への影響が懸念される、宮崎県串間市での風力発電施設の建設計画に関して、適切な環境影響評価が行われるための調査手法を提案する観点から、事業者である串間ウインドヒル株式会社(代表取締役社長 久富 洋一 氏)に対して、下記の内容で意見書を提出しました。

  • 意見書提出先…串間ウインドヒル株式会社
  • 本件問合せ連絡先…公益財団法人日本野鳥の会(自然保護室・浦 達也) TEL 03-5436-2633

日野鳥発第  101 号

「串間風力発電所(仮称)建設計画 環境影響評価方法書」に関する意見書

平成25年 3月21日

ご氏名 日本野鳥の会宮崎県支部
支部長 前田(まえだ)幹雄(みきお)

〒141-0031
ご住所 東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
ご氏名 公益財団法人日本野鳥の会
理事長 佐藤(さとう)仁志(ひとし)
連絡先 03-5436-2633

環境影響評価法第8条の規定に基づき、環境の保全の見地から次の通り意見を提出する。

 この度、貴社が作成された「串間風力発電所(仮称)設置計画」に係る環境影響評価方法書について、次の通り意見を提出します。

I.対象事業計画で確認されている希少鳥類について
2010年3月に宮崎県環境科学協会が発行した「宮崎県の保護上重要な野生生物」(宮崎県版レッドデータブック)によれば、対象事業実施区域周辺では、クマタカをはじめ、別記1に示した希少鳥類の生息が多数確認されている。
ついては、一般鳥類はもとより、これら希少鳥類についても、風力発電施設の建設が与える影響を評価、予測するための十分な調査が必要である。

II.【3.1自然的状況】について
第3.1-17表(1)について、本来記載すべきクマタカが記載されていない。
ついては、この表にクマタカを加え、重要な種として影響評価の対象とすること。

III.【4.2調査、予測及び評価の手法の選定】について
1.第4.2-4表(1)について
① 対象事業実施区域において、適切な時期に一般鳥類調査と同じ回数、夜間鳥類調査を実施し、夜行性鳥類の有無など必要な情報把握に努めること。

② 対象事業区域のみならず、周辺域も含め、適切な時期に一般鳥類調査と同じ回数で鳥類における任意踏査を実施し、重要な種や注目すべき生息地の情報等の把握に努めること。

③ 鳥類に関するラインセンサス法での調査については、各調査期において確認種数が飽和するよう、1回の調査につき4回のセンサスを行うこと。

④ 鳥類に関するポイントセンサス法での調査については、調査地点を地図に示し、調査の目的や対象種に応じた適切な調査時間や頻度を設定したうえで、各調査時期において、1回の調査につき3日以上、調査を実施すること。

⑤ 鳥類に関する空間飛翔調査および飛翔軌跡調査については、調査地点を地図に示し、調査実施に必要十分な調査地点の位置および数となっているか検討すること。そのうえで、調査地点の位置が適切はなかったり、調査地点数が十分でないと判断される場合は、調査地点の位置見直しや調査地点の増設を行うこと。

⑥ 鳥類に関する飛翔軌跡調査については、飛翔高度を正確に把握するため、レーザー距離計等を使用すること。

2.第4.2-4表(2)について
① 鳥類の調査期間については、「春夏秋冬計5回行う」とのみ記されているが、具体的には春の「渡り時期、繁殖期、秋の渡り時期及び越冬期に計5回行う」とすべきである。

② 対象事業実施区域周辺にどのような鳥類が繁殖、越冬、春秋の渡りを行っているか、その全容を掴むには、各年により変動があることを踏まえ、単年度調査では不十分であり、クマタカ同様、少なくとも2年以上継続して調査を実施すること。

③ 鳥類の渡り時期の移動経路に関する調査についても、別記2のように対象事業実施区域およびその周辺で、多くの渡り鳥(カッコウ、アカショウビン、オオルリなどの夏鳥、オオタカ、ハイタカなどの冬鳥)が通過していることが想定されるため、猛禽類だけでなく、全ての渡り鳥を対象に十分な調査を実施すること。

④ 鳥類の渡り時期の移動経路に関する調査については、野鳥の渡り時期の幅が広いことから、春季調査については3月中旬~5月上旬、秋季調査については8月下旬~11月中旬とし、また、期間中の調査は複数日とするなど、十分な配慮が必要である。さらに、渡り時期に出現する鳥種の変化も、短期間中でも大きいことから、各調査は、少なくとも2週間に1回(1回につき3日間)程度実施すること。

⑤ 鳥類の渡り時期の移動経路に関する調査については、調査地点を地図に示し、調査実施に必要十分な調査地点の位置および数となっているか検討すること。そのうえで、その位置が適切でなかったり、調査地点数が十分でないと判断される場合は、調査地点の位置見直しや調査地点の増設を行うこと。

⑥ 鳥類の渡り時期の移動経路に関する調査については、対象事業実施区域および周辺の地形、植生、社会的状況が許す範囲で、昼夜間のレーダー調査を行うこと。

⑦ クマタカやサシバなどの希少猛禽類の生息状況調査は、1回の調査を3日間として毎月2回以上、少なくとも2年間実施すること。特に、猛禽類の風車へのバードストライクは天候不良時に起きやすいとされることから、好天時と悪天候時の行動様式についても調査すること。

3.第4.2-3図(1)について
 クマタカの定点調査については、まず、定点からの視野図を作成したうえで、クマタカの持つ広い行動圏を把握するのに十分な定点の位置および数となっているか検討すること。そのうえで、その定点が適切な場所でなかったり箇所数が十分でないと判断される場合は、定点の位置見直しや定点の増設を行うこと。

IV.その他
 (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構による風力発電のための環境影響評価マニュアル(第2版)に従い、本方法書の確定にあたっては、公開を前提として、有識者からの意見聴取を行うこと。 また、環境調査中においても、随時、調査が適切に行われているか等を検討し、風力発電と野鳥との共存が図られるよう、公開を前提とした複数の有識者からなる委員会を設置し、必要な検討や提言を受けること。

別記1

「対象事業計画杭域で確認されている主な希少鳥類」について
※宮崎県の保護上重要な野生生物(宮崎県版レッドデータブック)より
・クマタカ…環境省レッドリスト : 準絶滅危惧ⅠB(EN)
      宮崎県レッドリスト : 絶滅危惧Ⅱ類(ⅤU-g)
・フクロウ…宮崎県レッドリスト : 絶滅危惧Ⅱ類(ⅤU-g)
・カッコウ…宮崎県レッドリスト : 準絶滅危惧(NT-r)
・アカショウビン…宮崎県レッドリスト : 準絶滅危惧(NT-r)
・ブッポウソウ…環境省レッドリスト : 絶滅危惧Ⅰ類(EN)
        宮崎県レッドリスト : 絶滅危惧ⅠB類(EN-r)
・オオルリ…宮崎県レッドリスト : 準絶滅危惧(NT-r)
・サンコウチョウ…宮崎県レッドリスト : 準絶滅危惧(NT-r)
・サシバ…宮崎県レッドリスト : 準絶滅危惧(NT-r)
・アオバズク…宮崎県レッドリスト : 準絶滅危惧Ⅱ類(ⅤU-g)
・コシジロヤマドリ…環境省レッドリスト : 準絶滅危惧(NT)
          宮崎県レッドリスト : 準絶滅危惧(NT-g)

別記2
「日南市南郷町贄波 峠の駐車場(県亜熱帯試験場)2011年会員調査」

調査日 天候 サシバ ノスリ ハイタカ オオタカ ハヤブサ チゴハヤブサ チョウゲンボウ ミサゴ ツミ
10月 2日 晴   1         1    
10月 9日 晴 3 1 3       2    
10月10日 曇     1     2      
10月12日 晴 1   2 1   4      
10月13日 曇     3       3    
10月16日 晴     2       2 2  
10月17日 曇     2     1      
10月18日 晴     1     1 2    
10月19日 晴 1   4     2 2    
10月22日 曇     8     1   1  
10月25日 曇 1   2       1    
10月26日 晴     7         2  
10月27日 晴     2            
10月31日 晴   2 2   2        
11月 1日 晴     20            
11月 3日 曇 1 1 3            
11月 7日 晴     4 2 2        
11月13日 晴     30         1  
11月14日 晴     4            
11月15日 晴   3 7            
11月17日 晴     5   2        
11月20日 晴     2         1  
11月21日 晴   1 2            
7 9 116 3 6 11 13 7 0

※1.上記の調査は2012年1月1日発行、“野鳥だより みやざき”229号に掲載。
※2.例年はサシバが多いが2011年秋は少なく、例年よりハイタカが多かった。
※3.観察地の宮崎県亜熱帯試験場は日南市南郷町贄波海岸沿いの高台にあり、試験場から約12キロ南が当該対象事業実施区域のある都井岬および荒崎地区となる。

福島県楢葉町および広野町沖「浮体式超大型風力発電機設置実証事業環境影響評価方法書」に対する意見書を提出しました

2013.3.18

 福島県日本野鳥の会連携団体連合会と公益財団法人日本野鳥の会(事務局:東京都品川区、会員サポーター数5万人)は、超大型としては国内初となる沖合型浮体式洋上風力発電であり、国内では海鳥への影響が未知である、福島県楢葉町および広野町沖での洋上風力発電施設の建設計画に関して、適切な環境影響評価が行われるための調査手法を提案する観点から、事業者である資源エネルギー庁(長官 高橋 一郎 氏)に対して、下記の内容で意見書を提出しました。

意見書提出先

資源エネルギー庁

本件問合せ連絡先

公益財団法人日本野鳥の会(自然保護室・浦 達也) TEL 03-5436-2633

日野鳥発第102号
平成25年3月11日

資源エネルギー庁
長官 髙橋 一郎 様

福島県日本野鳥の会連携団体連合会
会長 白岩 康夫
公益財団法人 日本野鳥の会
福島県福島市松川町字古天神27-2

理事長  佐藤 仁志
東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル

「浮体式洋上超大型風力発電機設置実証事業((仮称)三菱重工業風力発電所及び
(仮称)ジャパンマリンユナイテッド風力発電所設置事業環境影響評価方法書」に対する意見書

 この度、貴庁が作成された「浮体式洋上超大型洋上風力発電機設置実証事業」に係る環境影響評価方法書について、次のとおり意見を提出します。

1.全体的な問題点
2011年3月11日に発生した東日本大震災及びその後の地震(以下「東日本大震災」という。)、並びに同時期に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故(以下「福島原発事故」という。)により生じた、人的・経済的、さらには環境に及んだ影響等が一切反映されていないため、同報告書の内容は、現状ときわめて大きなかい離がある。
とりわけ、予定地の楢葉町は「避難指示解除準備区域」に、また広野町も「緊急時避難準備区域」に指定されており、送電施設や後方支援施設など、今回の計画施設に関連する施設の整備やそれに伴う要員配置等にも大きな制約があると懸念されること等をみても、同震災・同原発事故による様々な影響や変化等を反映した評価方法書としなければ、同報告書は全く意味をなさないものと考える。
2.個々の項目に関する問題点
(1)「Ⅰ 【3.1 自然的状況】 3.1.2水環境の状況」について
1)「(2)水質の状況」のうち、「(a)海域」「b)河川」「(c)地下水」「(d)水質汚濁に係る苦情の発生状況」について、福島原発事故以降、多大な放射線の影響を受けている現状とまったくかけ離れている内容となっている。
例えば、「(a)海域」に記載されている健康項目(カドミウム、全シアン等)についても、「すべての項目で環境基準に適合している」としているが、放射線の影響を大きく受けている現状を踏まえた記載内容に見直すべきである。
2)「(3)水底の底質の状況」のうち(a)底質の状況および(b)底質に係る苦情の発生状況についても、放射線の影響を大きく受けている現状を踏まえ、記載内容を見直すべきである。
3)「3.1.3土壌及び地盤の状況」について
「ダイオキシン類に係る環境基準」について記載があるが、これについても放射線の影響を多大に受けている現状を踏まえ、記載内容を見直すべきである。
4)「3.1.5動植物の生息又は成育、植生及び生態系の状況」について
東日本大震災並びに福島原発事故の影響による、地形や土地利用の大幅な改変および環境汚染による影響で、動植物の生息状況は大きく変化していると考えられるため、それらを踏まえた記載内容にすべきである。
(2)「Ⅱ. 【3.2社会的状況】」について
1)「3.2.1人口及び産業の状況」および「3.2.3河川、湖沼、海域の利用並びに地下水の利用の状況」について
「3.2.1」および「3.2.3」全般に係る記載内容について、東日本大震災や福島原発事故等による影響を踏まえた記載内容にすべきである。
(3)「Ⅲ.対象事業計画で確認されている希少鳥類」について
「野鳥の記録 東京から釧路航路の30年‐1997年~1999年を中心として」によれば、対象事業実施区域周辺では、一般鳥類はもとより、下記に掲げる希少な鳥類も生息していることが分かっている。そのため、これらの希少な鳥類についても、風力発電施設の建設が与える影響を評価、予測するための十分な調査計画と適切な実施が必要である。
・事業実施区域周辺の絶滅危惧種(野鳥の記録 東京から釧路航路の30年より)
アホウドリ(環境省・絶滅危惧Ⅱ類)
コアホウドリ(環境省・絶滅危惧ⅠB類)
クロコシジロウミツバメ(環境省・絶滅危惧ⅠA類)
ヒメクロウミツバメ(環境省・絶滅危惧Ⅱ類)
オーストンウミツバメ(環境省・準絶滅危惧種)
アカアシカツオドリ(環境省・絶滅危惧ⅠB類)
ヒメウ(環境省・絶滅危惧ⅠB類)
ハヤブサ(環境省・絶滅危惧Ⅱ類)
ホウロクシギ(環境省・絶滅危惧Ⅱ類)
コアジサシ(環境省・絶滅危惧Ⅱ類)
ウミガラス(環境省・絶滅危惧ⅠA類)
ウミスズメ(環境省・絶滅危惧ⅠA類)
カンムリウミスズメ(環境省・絶滅危惧Ⅱ類)
(4)「Ⅳ.【4.2調査、予測及び評価の手法の選定】」について
1)「表4.2-2表(4)調査、予測及び評価の手法」について
①トランセクト調査においては、全数調査やスナップショット法による調査など、どのような手法を用いるかを具体的に記載すること。
②ウミスズメ類等小型鳥種の見落としおよび誤識別を避けるため、各トランセクトの観察幅は両舷200mとすべきであること。
③観察・記録する項目については、鳥類の種や個体数だけでなく、海面に着水している個体も含め、飛翔高度、飛翔個体の飛翔方向、さらに、着水個体が飛立った場合には船からの距離等も記録すること。
④航空機トランセクト調査については、航空機の飛行高度によっては、動画撮影データを得るために搭載するカメラに写る前に、海面に着水している鳥類を飛去させるなど、正確な個体数を把握することができない場合がある。そのため、航空機トランセクト調査を行う際には、その飛行高度も記載すること。
⑤航空機トランセクト調査時に、動画撮影カメラに写る前に飛去した鳥類の個体がいた場合は、その個体の種・数・位置も別途記録すること。
⑥鳥類の重要な種および注目すべき生息地があった場合、別途詳細な調査をすること。また、その旨を記載すること。
⑦日本では沖合域での鳥類の生態はよく把握されておらず、不明な点が多い。そのようなことから、本事業は実証実験ではあるものの、建設後の事後調査にも資するデータとするため、対象事業実施区域及びその周辺での鳥類の状況等をできるだけ詳細に把握すべきである。それらの観点からも、トランセクト幅は1kmとし、全部で7本程度を用意すべきであること。また、トランセクト1本の距離は15kmとすべきであること。
⑧調査時期については、春夏秋冬ではなく、繁殖期前期・繁殖期後期・移動期(春・秋)・越冬期に調査すること。また、調査回数は、越冬期に2回、その他は1回、年間で少なくとも計6回の調査を行うべきであること。
⑩1回の調査は、3出航日分であることを記載すること。
⑪トランセクト調査時の船舶の航行速度を記載すること。なお、海外での同様の調査事例をみると、一般的には6~10ノットとみられる。
⑫トランセクト調査にあたり、出航できない気象・海象条件等がある場合はその内容を記載すること。
⑬トランセクト調査を実施するにあたり、必要な人数を記載すること。
⑭トランセクト調査を実施するにあたり、観察が困難な逆光状態を避けるよう留意すること。
2)「表4.2-2表(5)調査、予測及び評価の手法」について
①予測地域は、上記Ⅱ-1-⑦で示した範囲とすること。
②予測対象時期等は、工事期間中および風力発電機が稼動する時点だけではなく、運転開始後も対象とすること
③評価の手法として衝突確率モデルを用いる場合は、専門家による意見聴取等を行い、最新の衝突確率計算モデルを用いること
④鳥類は常に一定の高度を飛行するのではないことから、飛行高度に関する評価を行う場合や飛行高度を衝突確率モデルに用いる場合は、高度L(0m~ローター下)は高度M(ローター下端~ローター上端)として計算すること。

以上

北海道・石狩湾新港での洋上風力発電所建設計画に対し意見書を提出しました

北海道石狩市「(仮称)石狩湾新港洋上風力発電事業環境影響方法書」に対する意見書を提出しました

2012.07.09

 日本野鳥の会札幌支部、日本野鳥の会小樽支部と公益財団法人日本野鳥の会(事務局:東京都品川区、会員サポーター数5万人)は、国内で初となる本格的な沖合型洋上風力発電であり、国内では海鳥への影響が未知である、北海道石狩市の石狩湾新港での洋上風力発電施設の建設計画に関して、適切な環境影響評価が行われるための調査手法を提案する観点から、事業者である株式会社グリーンパワーインベストメント(代表取締役 堀 俊夫氏)に対して、下記の内容で意見書を提出しました。

意見書提出先

株式会社グリーンパワーインベストメント

本件問合せ連絡先

公益財団法人日本野鳥の会(自然保護室・浦 達也) TEL 03-5436-2633

日野鳥発第 10 号
平成24年7月9日

株式会社グリーンパワーインベストメント
代表取締役 堀 俊夫 様

日本野鳥の会札幌支部
支部長 山田 三夫

日本野鳥の会小樽支部
支部長 梅木賢俊

公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 佐藤 仁志
東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル

「(仮称)石狩湾新港洋上風力発電事業 環境影響評価方法書」に対する意見書

 この度、貴社が作成された(仮称)石狩湾新港洋上風力発電事業に係る環境影響評価方法書について、下記のとおり意見を提出します。

  1. 事業実施予定区域及び周辺の鳥類及び重要な種について
     事業実施予定区域及び周辺の鳥類及び重要な種を選定するにあたり、「第3回自然環境保全基礎調査 動物分布調査報告書‐日本産鳥類の繁殖分布」の結果を用いているが、対象事業実施予定区域の鳥類の状況を把握するためには、「札幌東北部」に係るメッシュの内容も用いるべきである。
  2. 鳥の渡り経路の調査について
     事業を検討するうえで、事業実施予定区域内に生息する海鳥を中心とした鳥類だけでなく、風車の設置により、衝突や障壁効果といった影響を受けると考えられる、海岸部を含めた周辺地域を渡り経路として利用する鳥類についても調べておく必要がある。そのため、同方法書の項目として、「鳥類の渡り時の移動経路に関する調査」を追加すべきである。
     また、渡り時の経路の調査にあたっては、レーダー調査と定点による目視調査の両方を用いるべきであり、調査期間は鳥類の渡り時期とである9~11月と3~5月とし、その間、月に2回、1回3日間の調査を行うべきである。
     なお、渡り時期には調査区域を利用する鳥類の種構成が大きく変化することでされるため、少なくとも月に2回程度、調査を行わなければ、その変化を把握できないことに留意されたい。
     さらに、オジロワシなどの海ワシ類、マガンやヒシクイおよび希少種となっている海鳥の移動の妨げとならないよう十分に注意して調査をすべきである。
  3. 海鳥の調査手法について
     「海鳥の生息状況を把握するために、船舶を利用したトランセクト調査や定点観察調査を実施する」とあるが、同方法書には、定点の位置を記載していないので、地図等を用いてその調査地点を示すべきである。
     また、海鳥の調査にあたっては、今後、衝突リスクなどを判断する可能性があることから、出現した鳥の種や個体数とその位置について、GPS機器を使っての記録だけでなく、それらの飛行高度や飛行速度、飛行方向や確認距離を計測すべきである。
     なお、海鳥の識別には熟練し技術と経験を要することから、調査者は海鳥調査に習熟した者を充て、記録ミスが無いようにボイスレコーダーを使用することを推奨する。
     さらに、同方法書に用いる飛行高度計測時の高度区分は、本事業で実際に使用する風力発電機の特徴に合わせて、Lを0~20m、Mを20~130mとすべきである。
  4. 海鳥の調査地点について
    海鳥の調査を行うにあたり、同方法書では3km間隔で長さ7kmのトランセクトラインが3本設定されているが、実際に対象事業実施予定区域を通るトランセクトはうち1本しかない。事後評価が難しい洋上風力発電事業では、事業実施予定区域の海鳥等の生息状況を事前に十分把握し、影響を評価することが重要となる。そのためにも、トランセクトラインは1.5km間隔とするとともに、事業実施予定区域を通るトランセクトラインを3本程度、全体で5本程度のトランセクトラインを設定する必要がある。
  5. 海鳥の調査期間について
     海鳥の調査期間等については、「四季の実施」とするとある。しかし、生息する海鳥の種構成は、特に秋~冬では頻繁に変わることが予想される。
     ついては、英国での事例を参考にして、少なくとも最初の1年間は、1回の調査を3日間として、毎月調査を行うべきである。
  6. 希少鳥類に関する調査について
     船舶からや、定点による海鳥の調査等において、事業実施予定区域やその周辺で、希少鳥類の生息が確認された場合は、「希少鳥類に関する調査」等を追加して実施すべきである。
  7. 海底地形の改変について
     石狩湾と同様、遠浅の砂質地形であるScroby Sands洋上風力発電所(英国)周辺では、発電所の建設後、海底の砂の流れが変わり、砂が堆積もしくは流出する場所が発生し、周辺で繁殖していたアジサシ類が生息地を放棄するなど、大きな影響が出ている。
     これらの事例も踏まえ、海底地形の変化について、シミュレーションを行い、その影響評価を方法書に含めるべきである。
  8. 協議会の設置について
     本事業は、国内でもまだ例のない本格的な沖合型洋上風力発電の建設計画である。このため、沖合型洋上風力発電を設置した場合に、どのような環境影響が出るかといった国内での知見は皆無であることから、国土交通省港湾局が2012年6月に策定した「港湾における風力発電の導入を円滑にするマニュアル」に基づき、検討のための協議会を設置し、各関係機関と協議しながら事業を進めるべきである。
     なお、同協議会には、関係者または学識経験者として、鳥類保護団体を参加させるべきである。

参考文献

  • Joyce Huddleston. Understanding the Environmental Impacts of Offshore Windfarms. 2010. COWRIE, London.
  • 環境庁.1981.第3回自然環境保全基礎調査 動物分布調査報告書‐日本産鳥類の繁殖分布.環境庁,東京.
  • 土交通省港湾局・環境省地球環境局.2012.港湾における風力発電について-港湾の管理運営との共生のためのマニュアル Ver.1.国土交通省,東京.
  • 財団法人日本野鳥の会.2011.野鳥と洋上風力発電‐影響とその評価.日本野鳥の会,東京.

北海道北見市での風力発電所建設計画に対し意見書を提出しました

北海道北見市「(仮称)常呂・能取風力発電事業環境影響評価書」に対する意見書を提出しました

2012.05.31

 日本野鳥の会オホーツク支部と公益財団法人日本野鳥の会(事務局:東京都品川区、会員サポーター数5万人)は、絶滅のおそれのある鳥類の生息に対して影響を与えることが懸念される、北海道北見市常呂町での大規模風力発電施設の建設計画に関して、適切な環境影響評価が行われるための調査手法を提案する観点から、事業者である株式会社ユーラスエナジーホールディングス(代表取締役社長 清水 正己氏)に対して、下記の内容で意見書を提出しました。

意見書提出先

株式会社ユーラスエナジーホールディングス

本件問合せ連絡先

公益財団法人日本野鳥の会(自然保護室・浦 達也) TEL 03-5436-2633

日野鳥発第 15 号
平成24年5月25日

株式会社ユーラスエナジーホールディングス
代表取締役社長 清水 正己 様

日本野鳥の会オホーツク支部
支部長 川崎 康弘

公益財団法人 日本野鳥の会
理事長  佐藤 仁志
東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル

 

「常呂・能取風力発電事業(仮称)環境影響評価方法書」に対する意見書

 

 この度、貴社が作成された「常呂・能取風力発電事業(仮称)」事業に係る環境影響評価方法書について、次のとおり意見を提出します。

    1. 対象事業計画区域で確認されている希少鳥類について
       これまでに対象事業実施区域(以下「計画区域」という。)周辺ではオジロワシをはじめ、種の保存法および文化財保護法に指定、また、レッドリスト(環境省 2006)およびレッドデータブック(北海道 2001)に掲載されている希少鳥類(別記)の生息が多数確認されている。
       ついては、一般鳥類はもとより、これら希少鳥類について、風力発電施設(以下「風車」という。)の建設が与える影響を評価、予測するための調査計画が必要である。
    2. 【2.2対象事業の内容(2)対象事業実施区域の位置】について
       計画区域内は、畑地や牧草地などに風車を建設する際に、地目変更が必要な場所や、風車設置に適さない傾斜地も多く、どこにでも容易に風車を設置できるとは考えにくいことから、設置可能な位置を図面上に具体的に明示すべきである。
       また、今後行う環境調査および影響予測の結果を受けて、設置可能な位置を選定する場合は、その旨を方法書に明記すべきである。
    3. 【3.1地域の自然的状況(2)動物・植物の概況 動物】について
       計画区域及びその周辺における重要な鳥類の生息状況については、1に述べた希少鳥類を含めて調査し、選定結果や選定根拠を明示するべきである。
    4. 【4.2.5動物(2)調査の手法 鳥類】について
      ①ラインセンサス法について
       次の通り、調査方法の見直しを行うべきである。

      • 各調査期において、1つのコースにつき、確認種数が飽和するように6回のセンサスを行うことで、1回の調査とすること。

      ②定点センサス法について
       次の通り、調査方法の見直しを行うべきである。

      • 調査地点を選定するに当たっては、定点候補地からの視野図を作成したうえで、実際に見通しの良い定点かどうか評価すること。
      • 1回30分の調査時間では不十分なため、調査の目的や対象種に応じ、適切な調査時間や頻度を設定すること。
      • 3日間を1回の調査とすること。
      • 「調査時には観察幅を設定しない」とあるが、調査の目的や対象種に応じて、適切な観察幅を設定すること。

      ③任意踏査について
       次の通り、調査方法の見直しを行うべきである。

      • 計画区域内はどこでも自由に踏査できる環境とは考えられないため、現実的に踏査可能な範囲を示すこと。
      • 調査時期、調査回数、観察幅を明示すること。

      ④空間飛翔調査について
       次の通り、調査方法の見直しを行うべきである。

      • 「計画区域内の4地点(P1~4)」とあるが、P3は計画区域外であるため、計画区域内に設置しなおすこと。
      • 定点を設定する際は、全ての定点候補地において視野図を作成したうえで、調査地点として適切かどうか評価すること。
      • 地点ごとに30分間の調査では、調査時間が短く、不十分である。
        ついては、当会出版の野鳥保護資料集第26集等を参考に、調査の目的や対象種に応じた適切な調査時間、観察幅等を設定すること。
      • 霧の発生時や強風、降雪時など、悪天候時にも調査を実施すること。
        (オジロワシの繁殖期である5~8月は、霧に覆われる日があり、越冬期は風雪の伴う日がある。悪天候と晴天時では鳥類の行動に違いがあることが考えられ、実際に、根室市内の昆布盛ウィンドファームでは霧の日にオジロワシのバードストライクが発生している)
      • 飛翔高度を正確に把握するため、レーザー距離計等を使用すること。
      • 風力発電機の規模に応じて、高度区分を具体的に明示すること。

      ⑤鳥類の渡り時の移動経路に関する調査について
       計画区域周辺では、ガン、カモ、ハクチョウ類以外にも、多くの鳥類が渡るため、全ての渡り鳥を対象にした調査を実施する必要がある。
       特に、計画地に隣接地した能取湖の西岸では、春季と秋季に、環境省の「シギ・チドリ類渡来湿地目録」にも掲載されているように、キアシシギやダイゼンといったシギ・チドリ類が多く確認され、また、希少種のヘラシギやホウロクシギも確認されている。
       さらに、計画区域は紋別市のコムケ湖と網走市の能取湖・濤沸湖などを結ぶルートの重要な渡りの経路となっている可能性があるため、夜間調査(鳴き声)も含めた十分な調査が必要である。
       また、目視だけでなくレーダー調査を並行して行うこと。

      ⑥希少猛禽類の生息状況に関する調査について
       計画区域では希少猛禽類のほかにも、オオジシギやクマゲラといった希少種や、エゾライチョウといった鳥類が生息していると考えられるが、それらに関する調査方法の記述が一切ない。これら3種も含めて、その生息状況を網羅できる調査計画を方法書に組み入れ、希少鳥類全般を対象とした調査(営巣地・繁殖場所・冬ねぐら・エサ資源調査等)を行うべきである。

    5. 【4.2.5動物(3)調査地域等】について
      ①空間飛翔調査の調査地点について

      • 調査の目的が定点調査と異なることから、調査地点が同一位置では不適当である。ついては、調査地点は、稜線や尾根の先端を優先的に選定すべきであり、方法書の図4.2-5にあるP2、P4に加えて、能取湖を見下ろすことのできる尾根上に2点を設定すべきである。また、P1は河川と畑地に挟まれた場所であり、風車が建てられるような場所とは考えられず、空間飛翔調査の調査地点としていることは大いに問題がある。

      ②鳥類の渡り時の移動経路に関する調査、希少猛禽類の生息状況に関する調査の調査地点について
       地点数が4点では不十分であり、計画区域内と区域外で少なくとも各3地点ずつ設定すべきである。
      また、設定された地点P1~P4、R1~R4については、次の通り見直しを行うべきである。

      • P1、R1は河川と畑地に挟まれた場所であり、風車が建てられるような場所とは考えられず、計画区域及び区域内の調査地点としていることは不適切である。設置可能な範囲に調査地点を変更すること。
      • P2は、視野が広い場所ではないため、見晴らしがよく、湖岸の干潟等も確認できるP2から南へ200mの地点へ変更すること。
      • R2とR4は林と牧草地が混在するエリアにあり、ルートの左右や前後で環境が異なり、生息種も大きく異なると思われるため、正確に生息状況を把握するため、調査範囲を左右で分け、かつ50mまたは100mごとに区切って記録すること。

    6. 【4.2.5動物(4)調査期間等】について
    7. ①鳥類に関する動物相の状況(ラインセンサス、定点センサス、空間飛翔)
       四季の実施では不十分なため、繁殖期、越冬期および春と秋の渡りの時期に設定すべきである。なお、渡りの時期の調査については、シギ・チドリ類、ガン・カモ類、小鳥類で時期が異なるためそれぞれ適切な時期を設定すること。
       また、少なくとも2年間継続して実施すること。
      ②渡り時の移動経路に関する調査
       方法書に記載されている期間では渡りの状況を十分に把握することはできないため、次の通り調査期間の見直しを行うべきである。

      1. 秋季は8~11月、春季は3月~6月とすること。
        (能取湖の西岸にはヒシクイが渡りの中継地として利用しているため、秋季は8月から調査する必要がある。また、春季は、当該計画地で6月上旬まで渡りが見られるため。)
      2. 期間中は、2週間に1回(1回=3日間)実施すること。

      ③希少猛禽類の生息状況に関する調査
      越冬期から繁殖期にかけての希少猛禽類の生息状況を把握するには、方法書にある調査期間は十分でないため、次の通り調査期間の見直しを行うべきである。

      • 調査期間は2年間とし、毎月3日間以上行うこと。
      • 霧の発生時や強風、降雪などの悪天候時にも調査を実施すること。

    8. 【4.2.5動物(5)予測の手法】について
    9.  次の通り手法の見直しを行うべきである。

      • 分布または生息環境の改変の程度を予測する方法について、詳細な記載がされていない。ついては、どのような手法を用いて予測を行うのか、具体的に記載すること。
      • 引用した文献などを明記すること。
      • 鳥類にとって回避が難しいと考えられる影響が予測される場合、建設計画を中止または一部変更することを含めて、影響軽減策を検討すること。

    10. 【4.2.8 景観(4)調査地点】について
       計画区域に風車が建設された場合、方法書で示されている3地点のほかにも、紋別市や大空町から風車が見える可能性が高い。また、藻琴山や知床連山などの景勝地からも一望できる可能性があるため、眺望景観の状況についても調査し、設置後の予測を行う必要がある。加えて、風車が見える可能性のある範囲の住民や市町村に対し、景観上の問題が無いか意見聴取をする必要がある。
      1. 以上

別紙

「対象事業計画区域で確認されている主な希少鳥類

■オジロワシ

  • 種の保存法 国内希少野生動植物種
  • 文化財保護法 天然記念物指定種
  • 環境省 レッドリスト 絶滅危惧IB類
  • 北海道 RDB 絶滅危惧種

■オオワシ

  • 種の保存法 国内希少野生動植物種
  • 文化財保護法 天然記念物指定種
  • 環境省 レッドリスト 絶滅危惧Ⅱ類
  • 北海道 RDB 絶滅危惧種

■オオタカ

  • 種の保存法 国内希少野生動植物種
  • 環境省 レッドリスト 準絶滅危惧種
  • 北海道 RDB 絶滅危急種

■ハイタカ

  • 環境省 レッドリスト 準絶滅危惧種
  • 北海道 RDB 絶滅危急種

■ミサゴ

  • 環境省 レッドリスト 準絶滅危惧種
  • 北海道 RDB 絶滅危急種

■ヒシクイ(亜種ヒシクイ)

  • 文化財保護法 天然記念物指定種
  • 環境省 レッドリスト 絶滅危惧Ⅱ類
  • 北海道 RDB 希少種

■マガン

  • 文化財保護法 天然記念物指定種
  • 環境省 レッドリスト 準絶滅危惧種
  • 北海道 RDB 希少種

■ホウロクシギ

  • 環境省 レッドリスト 絶滅危惧Ⅱ種
  • 北海道 RDB 希少種

■ヘラシギ

  • 環境省 レッドリスト 絶滅危惧IA類
  • 北海道 RDB 絶滅危急種

■オオジシギ

  • 環境省 レッドリスト 準絶滅危惧種
  • 北海道 RDB 希少種

■クマゲラ

  • 文化財保護法 天然記念物指定種
  • 環境省 レッドリスト 絶滅危惧Ⅱ類
  • 北海道 RDB 絶滅危急種

■エゾライチョウ

  • 環境省 レッドリスト 情報不足
  • 北海道 RDB 希少種

※環境省版レッドリストでは情報不足により生息数は不明だが、狩猟捕獲数および狩猟登録数当たりの捕獲数が1970年代以降激減していることから、生息数が減少し、絶滅が危ぶまれる種と考えられる。

参考資料:

  • 文化財保護法(法律 第214号)
  • 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(法律第75号)
  • 環境省.2006.改訂・日本の絶滅のおそれのある野生動物-レッドリスト-鳥類.東京 
    http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=8929&hou_id=7849
  • 北海道.2001.北海道の希少野生動物 北海道レッドデータブック2001.北海道
  • 環境庁.1982. 第2回自然環境保全基礎調査 動物分布調査報告書-日本産鳥類の繁殖分布-
  • 環境庁.1989. 第3回自然環境保全基礎調査 動植物分布調査報告書-鳥類-
  • 環境省.2004. 第6回自然環境保全基礎調査 種の多様性調査 鳥類繁殖分布調査報告書
  • バードリサーチ.2006. バードリサーチニュース.2006. Vol.3 No.1

背炙山の風力発電計画に対し、環境影響評価の再実施を要請しました

日本野鳥の会会津、日本野鳥の会奥会津連合、(公財)日本野鳥の会は背炙山の風力発電計画に対し、環境影響評価の再実施を要請しました

2012.05.17

 日本野鳥の会会津(事務局:会津若松市、代表:林克之)、日本野鳥の会奥会津連合(事務局:会津町、代表:長沼勲)と公益財団法人日本野鳥の会(事務局:東京、会長:柳生博、会員・サポーター数約5万人)は、5月16日、福島県会津若松市の背炙山における風力発電施設建設計画について、絶滅のおそれのある鳥類の生息や鳥の渡り経路に対する影響の有無を適切に評価するため、事業者のエコ・パワー株式会社に対し、環境影響評価(調査・評価・影響予測)の再実施を求める要請書を提出しました。また、福島県知事に対しても、同要請内容について、文書で提示しました。
 当該計画地では、クマタカ(国内希少野生動植物種、絶滅危惧ⅠB類)が5ペアと、これまでも周辺の風車で衝突死事例が多いノスリ(準絶滅危惧種)が複数ペアで繁殖しています。
 また、ハヤブサやオオタカ、サシバ、ミサゴ、ハチクマ、ハイタカなど、希少な猛禽類の生息も多数確認されています。
 さらに、計画地周辺には大規模な鳥の渡り経路も存在することが明らかとなっています。
 以上のことから、この場所に現計画のまま大規模風力発電施設が建設されれば、これら鳥類の繁殖が阻害されたり、生息地の消失や衝突死、渡り経路の阻害などの悪影響は避けられないと憂慮しています。
 このため、事業者に対して、環境影響評価の再実施を強く要請し、5月末日までの回答を求めました。

<主な要請書の内容>

  1. 当該計画がクマタカに及ぼす影響を適切に判断するためには、環境省ガイドラインに従って、クマタカの予定区域周辺の利用エリアや行動圏の内部構造を明らかにする必要があること。
    また、採餌環境の代替地はないことやクマタカは風車を回避しないことを前提に、営巣地と餌場が分断されることを予測に入れ、再評価すべきこと。
  2. ノスリについては、予定区域とその周辺において影響調査を追加し、詳細な行動パターンを把握し、風車を回避しないことを前提に、再度、影響予測と評価を実施すべきこと。
  3. 「ハヤブサ、オオタカなど希少猛禽類について本計画が及ぼす影響は小さい」としているが、国をあげて保護に努めているこれら鳥類に対し、今回の風車建設が真に影響を及ぼさないか、影響調査を追加実施し、影響予測と評価を実施すべきこと。
  4. 当該計画が鳥類の渡り経路に影響を与えないか正確に把握するため、調査期間を春季・秋季に広く設定する必要があること。また、目視観察以外にも、レーダー調査を行うなど、詳しい調査を行い、影響予測および評価を再度行うべきこと。
  5. 環境影響評価準備書で提示されているクマタカとノスリに関する環境保全措置では、影響を回避できるとは到底考えられないため、追加調査および再評価を実施し、あらためて環境保全措置の実施内容について検討すべきこと。

要望書提出先

  エコ・パワー株式会社

本件問合せ連絡先

  • 日本野鳥の会会津 林 克之
  • 日本野鳥の会奥会津連合 長沼 勲
  • (公財)日本野鳥の会自然保護室 担当:浦 達也(TEL 03-5436-2633:平日のみ) 

日野鳥発第 5 号
平成24年5月16日

エコ・パワー株式会社
 代表取締役社長 周布 兼定 様

日本野鳥の会会津
代表 林 克之

日本野鳥の会奥会津連合
代表 長沼 勲

公益財団法人 日本野鳥の会
理事長  佐藤 仁志

「会津若松ウィンドファーム(仮称)事業」建設予定地である
背炙山に生息する希少猛禽類と渡り経路の保全に関する要請

 今般、貴社が計画中の「会津若松ウィンドファーム(仮称)事業」建設予定地である背炙山は、会津東山自然休養林の一角に位置し、風光にも優れ、多くの人々が自然を楽しむ環境である一方、希少な野生動植物の重要生息地でもあります。
 特に鳥類にあっては、クマタカやオオタカ、ハヤブサなど「種の保存法」による国内希少野生動植物種や、サシバやノスリなど環境省によるレッドリスト掲載種の鳥類の生息が確認されています。
 貴社が公開された「会津若松ウィンドファーム(仮称)事業」に係る環境影響評価準備書(以下、「準備書」といいます)に対し、すでに提出した意見書で述べましたが、背炙山に風力発電施設を建設した場合、下記で述べるようにクマタカなど希少鳥類の生息および渡り経路に対して重大な影響を及ぼすことが危惧されます。
 したがって、特に希少鳥類の生息および渡り経路の状況についての追加調査を行い、影響予測および評価を再度実施することを要請します。

  1. クマタカについて
     背炙山はクマタカ(国内希少野生動植物種、絶滅危惧ⅠB類)を含む猛禽類にとって、餌条件が整っている場所であり、クマタカの生息密度が高く、現在5ペアのクマタカの生息が確認されている場所です。このことは、貴社が作成された準備書で、風力発電機設置予定区域(以下、「予定区域」といいます)の周辺で複数のクマタカの行動が示されていることからも明らかです。また、準備書で示されているように、繁殖期を含めて時期を問わず、クマタカの行動域が予定区域と重複していることから、クマタカはこの場所について餌場を含めた生息地として、高度に利用していることが明らかであり、これら現状からすれば、予定区域での風力発電施設の建設は不適当と判断せざるを得ません。
     それにもかかわらず、準備書では予定区域周辺にも同様の環境があるため、生息地の減少や喪失の影響はないとしています。
     また、

    • クマタカやその餌となる動物は騒音に対して馴到する、
    • クマタカは風車を回避する、

    という根拠のない理由から、生息地放棄の発生や衝突リスクはきわめて低いと評価しています。さらに、環境省によるガイドライン(以下、「猛禽類保護の進め方」という)に従って、利用区域や行動圏の内部構造を明らかにしていないにもかかわらず、準備書内で影響予測や評価を行っています。
     予定区域やその周辺などクマタカが活発に活動する場所に風車を建設した場合、衝突事故が起こるほか、

    • 頻繁に利用している餌環境が環境改変により喪失する、
    • 営巣放棄を引き起こす、
    • 繁殖成功率が低下する、
    • 営巣の中心地と採餌場所を分断する、
  2. ノスリについて
     背炙山では、予定区域およびその周辺で、繁殖期を含めて、時期を問わず、複数ペアによるノスリ(準絶滅危惧種)の行動が頻繁にみられており、活発に活動していることが準備書からも明らかとなっています。
     ノスリは、郡山布引高原風力発電所(背炙山から南東に約10kmの会津布引山で電源開発株式会社が運営)で、複数の衝突死事例が確認されています。その後事業者は、風力発電所内でノスリの衝突死事故防止策を実施していますが、その効果は明確でなく、今後もノスリの事故が予想されます。また、会津布引山の他、北海道苫前町の風力発電施設でも、ノスリのバードストライクが確認されています。
     このようなことから、ノスリが活発に活動する場所に風車を建設した場合、その衝突リスクは非常に高いものと考えられますが、準備書では、ノスリが風車を回避するという根拠のない理由から、「衝突リスクはきわめて低い」と評価されています。
     以上のことから、風車に衝突する可能性が高く、生息条件の変化によっては絶滅危惧種となる可能性のあるノスリについては、予定区域およびその周辺において、影響調査を追加し、詳細な行動パターンを把握したうえで、ノスリは風車を回避しない可能性が高いことを前提に、再度、影響予測と評価を実施すべきです。
  3. ハヤブサ、オオタカ、サシバ、ミサゴ、ハチクマ、ハイタカについて
     貴社が作成された準備書で示されているように、背炙山では予定区域およびその周辺で、

    • ハヤブサ(国内希少野生動植物種、絶滅危惧Ⅱ類)、
    • オオタカ(国内希少野生動植物種、準絶滅危惧種)、
    • サシバ(絶滅危惧Ⅱ類)、

    の行動が確認されています。
     また、生息条件の変化によっては絶滅危惧種となる可能性のある準絶滅危惧種であるミサゴ、ハチクマ、ハイタカの生息も確認されています。
     このように、希少な猛禽類の複数の種が生息できるのは、背炙山が豊かな生物多様性に支えられ、採餌環境が整っていることを示していると言えます。
     ついては準備書で、「風力発電施設の建設がこれらの希少猛禽類に及ぼす影響は小さい」としていますが、国をあげて保護に努めているこれら鳥類に対して、風力発電施設の建設が影響を及ぼさないかどうかを正確に予測するため、予定区域とその周辺において、追加の影響調査を実施し、再度の影響予測と評価を実施すべきです。

  4. 鳥類の主要な渡り経路となっている風力発電機設置予定区域周辺について
     準備書にあるように、予定区域の西側には大規模な鳥類の渡り経路が、また予定区域および東側と北側にも渡り経路が存在することが明らかとなっています。
     一方、準備書では、予定区域は、鳥類の主要な渡り経路にはなっていないかのように記述されていますが、「ふるさとの鳥をたずねる」(昭和54年福島県野鳥の会)によると、

    • 新潟県から阿賀川沿いに入り、会津若松市付近でそのまま阿賀川沿いに南下するルート、
    • 猪苗代湖上空を抜けるルート、

    と二つの渡り経路が示されています。このことから、背炙山は渡り経路上にあり、さらにその付近で二つの渡り経路に分かれ、鳥にとっては交通の要所となっていると考えられ、実際、背炙山では鳥類の渡りが多数観察されています。
     また、渡りのコースはその日の風向や風力などによって、1~2kmは簡単に移動することから、天候により、渡り経路が予定区域寄りに多少でも変化した場合、多数の鳥類が予定区域上空を通過することが容易に予想できます。
     いずれにしろ、準備書では少ない日数での調査結果が示されているだけであり、その結果のみで、「予定区域がメインの渡りルートではない」と推定するには、あまりにも根拠が不十分です。
     環境省による「鳥類等に関する風力発電施設立地適正化のための手引き」でも、渡り経路は風力発電施設建設に際して配慮すべき重要な地域であると示されており、準備書の内容および当会で把握している既存の情報から考える限り、予定区域は風力発電の建設に適した場所ではないと思慮します。
     以上のことから、背炙山での風力発電施設建設が鳥類の渡り経路に影響を与えないか正確に把握するため、春季および秋季に広く調査期間を設定し、目視観察以外にも、昼夜問わずレーダー調査を行うなど、詳しい調査を行い、影響予測および評価を再度行うべきです。

  5. クマタカ、ノスリに対する環境保全措置について
     準備書では、「クマタカとノスリが風車に衝突する確率は低い」としながらも、「ススキを主体とした緑化を段階的に行うことで、餌動物の採餌等に係る衝突リスクの回避に努める」とあります。
     しかし、イヌワシが衝突死した釜石広域ウインドファーム(株式会社ユーラスエナジーが設置)では、建設に伴い、風車の設置場所周辺の低木林および放棄された草原について、管理した草原環境にしたことで、餌動物を誘引し、イヌワシが頻繁に採餌しにくるようになった可能性が考えられています。また、先述のとおりノスリの衝突死事例が発生している郡山布引高原風力発電所内は牧草地で、ススキ草原と同様の草原環境のため、今のところ、どのようなバードストライク防止策も効果を発揮していない状況にあります。
     このようなことから、準備書で提示しているクマタカとノスリに対する環境保全措置では、影響を回避できるとは到底考えられず、このためにも、当要請書で当会が提案する追加調査および再評価を実施したうえで、あらためて環境保全措置の実施内容について検討すべきです。
  6. 回答期日について
    本要請書に対する公式回答を5月末日までに、要望三団体宛に書面をもって提出してください。

以上

北海道根室フレシマでの風力発電所計画建設計画に対し意見書を提出しました

北海道根室フレシマでの風力発電所計画建設計画に対し意見書を提出しました

2012.05.11

公益財団法人日本野鳥の会(事務局:東京、会長:柳生博、会員・サポーター数約5万人)は2012年5月10日、絶滅のおそれのある鳥類の生息に対して影響を与えると懸念される、根室市フレシマにおける風力発電所建設計画に関して、適切な環境影響評価が行われるための調査手法を提案する観点から、事業者である電源開発株式会社に対して意見書を提出しました。

今回の計画は、電源開発株式会社が北海道根室市別当賀と初田牛を結ぶ太平洋岸の海岸段丘上に風力発電施設(以下、風車という)を設けようとするものですが、同計画地は、日本野鳥の会が所有する渡邊野鳥保護区フレシマ(面積203.7ha)に近接する、湿原と草原、湖沼からなる、数少ない北海道的な原風景が残された希少な場所です。

また、当会は同計画地において、

  • オジロワシ(国内希少野生動植物種、天然記念物、絶滅危惧ⅠB類)
  • オオワシ(国内希少野生動植物種、天然記念物、絶滅危惧Ⅱ類)
  • タンチョウ(国内希少野生動植物種、特別天然記念物、絶滅危惧Ⅱ類)
  • オオジシギ(準絶滅危惧種)

など、希少な鳥類の生息をこれまでに確認しています。

特に、オジロワシは風車への衝突事故が多く(添付資料を参照)、計画地に近い根室市昆布盛及び浜中町でも、過去に複数の衝突死が起きており、本計画地でも、風車の存在はオジロワシへの脅威となります。

また、オオワシについては北海道せたな町で、オオジシギも福島県郡山市で、風車への衝突死が発生しています。

さらに、タンチョウを含むツル類でも、長崎県生月町において、風車が設置されたことで、ツル類の渡りの飛行コースが変化したという影響も出ています。

以上のようなことから、フレシマ周辺での風車の建設は、絶滅のおそれのある鳥類の生息に対して多大なる影響を与える恐れがあり、不適切であると当会は考えており、立地選定から本計画を見直す必要があると判断しています。

加えて、当会は、本日、併せて電源開発株式会社による環境影響評価方法書で示されている内容では、鳥類への影響を十分に評価できないとの観点から、必要な影響回避の判断に資するため、同社に対し別添のとおり意見書を提出し、調査手法を提案しました。

<意見書で提案した内容(骨子)>

  1. 計画されている「鳥類調査」では、調査地点の設定場所、調査箇所数が十分でなく、見直す必要があること。また、悪天候時にも調査を行う必要があること。
  2. 「鳥類の渡り時の移動経路に関する調査」については、同計画地は多くの鳥類が渡るため、ガン、カモ、ハクチョウ類など特定鳥類に限定せずに、すべての渡り鳥を対象に行う必要があること。
  3. 「希少猛禽類の生息状況に関する調査」については、調査地点が鳥から目立つ位置にあり、調査の実施自体、猛禽類の行動を攪乱しかねないことから、調査地点の設定(場所)を見直す必要があること。
  4. 影響予測の手法について、「分布または生息環境の改変の程度」を予測する方法が方法書に明記されておらず、どのような手法を用いて予測を行うのか、具体的に記載すべきであること。

要望書提出先

電源開発株式会社

本件問合せ連絡先

公益財団法人日本野鳥の会(保全プロジェクト推進室・松本 潤慶、手嶋 洋子) Tel 0153-25-8911

公益財団法人日本野鳥の会(自然保護室・浦 達也) Tel 03-5436-2633

添付資料:日本における鳥類の風力発電施設への衝突事故死の発見事例

図1.建設予定地(点線部)と、隣接する渡邊野鳥保護区フレシマ(実線部)の位置

図2.根室フレシマ風力発電所(仮称)建設予定地の風景。点線部分が想定建設区域

図3.2004年12月、根室市昆布盛の風車に衝突死したオジロワシ

図4.2008年10月、厚岸郡浜中町の風車に衝突死したオジロワシ。死体は周辺に散乱していた

日野鳥発第 10 号

平成24年5月10日

電源開発株式会社

取締役社長 北村 雅良 様

公益財団法人 日本野鳥の会

理事長  佐藤 仁志

東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル

 

「根室フレシマ風力発電所(仮称)環境影響評価方法書」に対する意見書

 

この度、貴社が作成された「根室フレシマ風力発電所(仮称)」事業に係る環境影響評価方法書について、次のとおり意見を提出します。

    1. 対象事業計画区域で確認されている希少鳥類についてこれまでに公益財団法人日本野鳥の会(以下、当会という。)は、対象事業計画区域(以下、計画区域といい、方法書にある地図中の対象事業実施区域も指すものとする。)周辺で、下記の希少鳥類の生息を確認しており、それぞれ種の保存法および文化財保護法に指定され、また、レッドリスト(環境省 2006)およびレッドデータブック(北海道 2001)に掲載されている。そのことから、一般鳥類のみならず、下記の希少鳥類についても、風力発電施設の建設が与える影響を評価、予測するための調査計画が必要である。
      • オジロワシ
        • 種の保存法 国内希少野生動植物種
        • 文化財保護法 天然記念物指定種
        • 環境省 レッドリスト 絶滅危惧IB類
        • 北海道 RDB 絶滅危惧種
      • オオワシ
        • 種の保存法 国内希少野生動植物
        • 文化財保護法 天然記念物指定種
        • 環境省 レッドリスト 絶滅危惧Ⅱ類
        • 北海道 RDB 絶滅危惧種
      • タンチョウ
        • 種の保存法 国内希少野生動物種
        • 文化財保護法 特別天然記念物指定種
        • 環境省 レッドリスト 絶滅危惧種Ⅱ類
        • 北海道 RDB 絶滅危惧種
      • オオジシギ
        • 環境省 レッドリスト 準絶滅危惧種
        • 北海道 RDB 希少種

参考資料:

      • 文化財保護法(法律 第214号)
      • 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(法律第75号)
      • 環境省.2006.改訂・日本の絶滅のおそれのある野生動物-レッドリスト-鳥類.東京
        http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=8929&hou_id=7849
      • 北海道.2001.北海道の希少野生動物 北海道レッドデータブック2001.北海道

 

  1. 方法書の内容、特に鳥類調査に対する意見について①【4.2.5動物(2)(a)(ア)(ⅰ)ラインセンサス法】について

    方法書では計画区域及びその周辺の代表的な環境に3ルート(R1、R2、R3)を設定したとあるが、計画区域周辺には森林・湖沼・湿地・草原などの環境が存在する。鳥類の繁殖状況を把握するためには、現存する環境要素をできるだけセンサスコースに含める必要があるが、方法書にあるR1~R3の3つのルートにはそれらの環境が十分に含まれていない。そのため、すべての環境要素を網羅できるようにルートの設定を見直すべきである。調査は毎月 1回行い、最低でも2年間実施すべきである。なお、毎月の調査では、1つのコースにつき6回のセンサスを行うことで、月1回の調査とする。

    ②【4.2.5動物(2)(a)(ア)(ⅱ)定点センサス法】について

    方法書では見通しの良い定点として2地点(P1、P2)を設定しているが、鳥類は環境によって生息する種が大きく異なるため、ラインセンサス法と同様に、計画区域内の環境要素をすべて網羅するように定点を設定するように見直すべきである。また、定点からの視野図を作成し、実際に見通しの良い定点かどうかを示す必要がある。調査時間は1回30分では不十分なため、調査の目的や対象種に応じた調査時間や頻度の設定を見直す必要がある。調査は3日間を1回とし、月2回を2年間行うべきである。なお、調査時には観察幅を設定しないとあるが、調査の目的や対象種に応じて設定すべきである。

    ③【4.2.5動物(2)(a)(ア)(ⅲ)任意踏査】について

    計画区域内はどこでも自由に踏査できる植生環境や地形とは考えられないため、現実的に踏査可能な範囲を示し、調査時期、調査回数、観察幅を明確に記載すべきである。

    ④【4.2.5動物(2)(a)(ア)(ⅳ)空間飛翔調査】について

    方法書では、計画区域内に1地点(P1)、比較対照地点として計画区域外に1地点(P2)を定点に設定したとあるが、地図上では2地点とも計画区域内となっている。P2を対照区として設定するのであれば、計画区域外に定点の位置を変更すべきである。また、定点の数も十分ではないため、定点を増やすべきである。定点を設定する際は視野図を作成し、設定した定点が調査地点として適切か評価するべきである。

    オジロワシの繁殖期である5~8月は霧に覆われる日が多く、越冬期は風雪の伴う日が多い。悪天候と晴天時では鳥類の行動に違いがあることが考えられ、実際に、近隣の昆布盛ウィンドファームでは霧の日にオジロワシのバードストライクが発生している。そのため、霧の発生時や降雪時など、悪天候時にも調査を実施する必要がある。なお、この調査は2年間行うべきである。

    計画区域内での鳥類の飛翔行動を把握するには、30分間では不十分である。当会で出版している野鳥保護資料集第26集を参考に、調査の目的や対象種に応じた適切な調査時間、観察幅等を設定すべきである。飛翔高度については、正確に把握するためにレーザー距離計を使用すべきである。

    ⑤【4.2.5動物(2)(b)(ア)鳥類の渡り時の移動経路に関する調査】について

    計画区域では、ガン、カモ、ハクチョウ類以外にも多くの鳥類が渡るため、すべての渡り鳥を対象にした調査を実施する必要がある。方法書では6地点から調査地点を選定するとあるが、特に海側の3つの調査地点は鳥から目立つ位置にあり、調査の実施が鳥類を攪乱する可能性があるため、調査地点の設定位置を見直すべきである。また、調査地点からの視野図を作成し、調査実施にあたり適切な調査地点か評価するべきである。

    ⑥【4.2.5動物(3)(b)(イ)希少猛禽類の生息状況に関する調査】について

    方法書で示された調査地点のうち、特に海側のものは鳥から目立つ位置にあるため、調査の実施が猛禽類を攪乱する可能性がある。また、道路沿いの調査地点は視界が狭く、十分な調査できないと考えられるため、調査地点の設定を見直すべきである。そして、調査地点からの視野図を作成し、調査にあたり適切な調査地点か評価するべきである。

    その他、当会は計画区域でタンチョウとオオジシギの生息を確認しているが、方法書では、それらに関する調査方法の記述が一切ない。そのため、タンチョウとオオジシギの2種の生息状況を網羅できる調査計画を方法書に組み入れ、希少鳥類全般を対象とした調査(営巣地・繁殖場所・冬ねぐら・エサ資源調査等)を行うべきである。

    ⑦【4.2.5動物(4)(b)(ア)渡り時の移動経路に関する調査】について

    渡り時の移動経路に関する調査期間について、方法書に記載されている期間では、渡りの状況を十分に把握することはできないと考える。そのため調査期間については、秋季は8~11月、春季は3月~5月とし、目視だけでなくレーダー調査および捕獲調査を並行して行うべきである。また、方法書では秋季、春季それぞれ3日間の調査を行うことになっているが、それでは十分ではないため、2週間に1回(1回=3日間)は行うべきである。

    ⑧【4.2.5動物(4)(b)(イ)希少猛禽類の生息状況に関する調査】について

    越冬期から繁殖期における希少猛禽類の生息状況を把握するには、方法書にある調査期間は十分ではない。調査期間は2年間とし、調査は毎月3日間以上行う必要がある。【4.2.5動物(2)(a)(ア)(ⅳ)空間飛翔調査】についてでも述べたように、霧の発生時や降雪など悪天候時にも調査を実施する必要がある。

    ⑨【4.2.5動物(5)予測の手法】について

    分布または生息環境の改変の程度を予測する方法が、方法書には詳細に記載されていない。どのような手法を用いて予測を行うのか、具体的に記載するべきである。また、その際に引用した文献などについても記載すべきである。なお、鳥類にとって回避が難しいと考えられる影響が予測される場合、建設を中止することが最善の保全対策であることを明言すべきである。

    ⑩【4.2.8景観(1)調査すべき情報】について

    景観を評価するためには、根室フレシマ風力発電所(仮称)建設予定地周辺の住民、地権者、根室市民等に広く、景観が変化することへの意見をヒアリングすべきである。

    ⑪【4.2.8景観(3)調査地域】について

    根室フレシマ風力発電所(仮称)の隣接地には、当会の渡邊野鳥保護区フレシマが設置されている。根室市民だけでなく全国から人が訪れる当会のシンボルであるが、風力発電施設の設置が野鳥保護区の景観に影響することが考えられる。そのため、野鳥保護区からの眺望も調査対象とすべきである。

 

以上

図1.建設予定地(点線部)と、隣接する渡邊野鳥保護区フレシマ(実線部)の位置

図2.根室フレシマ風力発電所(仮称)建設予定地の風景。点線部分が想定建設区域

図3.2004年12月、根室市昆布盛の風車に衝突死したオジロワシ

図4.2008年10月、厚岸郡浜中町の風車に衝突死したオジロワシ。死体は周辺に散乱していた

写真提供: 日本野鳥の会 根室支部

報 道

本件が以下の新聞に掲載されました。

三重県度会町での風力発電計画に対し意見書を提出

三重県「度会ウィンドファーム事業に係る環境影響評価準備書」に対する意見書を提出しました

2012.04.02

 公益財団法人日本野鳥の会(事務局:東京都品川区、会員サポーター数5万人)は、三重県度会町に大規模風力発電施設を建設計画中のエコ・パワー株式会社(代表取締役社長 周布 兼定氏)に対して、建設により希少鳥類の生息環境への影響が危惧されることから、建設の一部見直しや追加調査を要請する意見書を提出しました。要望事項の概要は次の5点です。

  1. 計画地の東側でクマタカが活発に活動するため、少なくとも計画地の東端から8基の風車は建設すべきではない。また、その周辺の尾根では大規模な工事を行うべきではない。
  2. クマタカについて、当初の計画通りに実行した場合の影響予測に加え、計画変更後の予測についても数値を示すなどして、具体的な影響の予測結果を示すべきである。
  3. 風車建設前のサシバの生息状況が風車の稼働によりどのような影響を受けるか予測し、事後調査の実施計画にサシバに関する内容を入れるべきである。
  4. 渡りルートについての評価では、1日だけの調査結果が示されているだけであり、その結果のみで計画地がメインの渡りルートではないと推定するには根拠が不十分である。追加調査を行い、再評価を行うべきである。
  5. ヤイロチョウが一度でも確認された以上、拡幅工事の予定地やその周辺でヤイロチョウが繁殖していないかを確認するため、次の繁殖期に追加調査を行うべきである。

意見書提出先

エコ・パワー株式会社

本件問合せ連絡先

公益財団法人日本野鳥の会(自然保護室・浦 達也)Tel 03-5436-2633

日野鳥発第 93 号
平成24年3月30日

エコ・パワー株式会社
代表取締役社長 周布 兼定 様

公益財団法人 日本野鳥の会
理事長  佐藤 仁志
東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル

度会ウィンドファーム事業に係る「環境影響評価準備書」に対する意見書

 この度、貴社が作成された「度会ウィンドファーム事業に係る環境影響評価準備書」について、次のとおり意見を提出します。

  1. クマタカについて
    (1)計画地の南東側に営巣するクマタカについて
     度会ウィンドファーム事業に係る環境影響評価準備書・資料編の資‐60~資‐75で示されているように、計画地の南東側にクマタカが営巣しており、計画地東端の風車から数えて1~8基目までの地域で、活発な活動がみられる。さらに、資料編の飛翔図から作成したメッシュ地図(準備書・本編6-136)では、風車建設予定地の尾根の北側で飛翔頻度が高いことが示されている。おそらくこのクマタカのつがいは、尾根の南側だけでなく北側もなわばりとして活動していると考えられる。
     このような活発に活動する場所に風車を建設した場合、衝突事故が起こる以外にも、営巣放棄を引き起こす、繁殖成功率を低下させる、営巣の中心地と採餌場所を分断させるなど、営巣するクマタカのつがいにとって避けられない大きな影響を及ぼすと考えられる。
     そのため、少なくとも計画地の東端から8基の風車は建設すべきではなく、その周辺の尾根でも大規模な工事を行うべきではない。
    (2)クマタカへの影響の予測について
     準備書・本編7-10の9.1.1では、タカへの影響の予測結果として、「計画段階での変更を行って、改変面積を極力縮小したことによって、クマタカの生息への影響は実行可能な範囲で低減したと予測された」と示されている。本来は、建設前の状況と比べて、風車の稼働がクマタカの生息にどのような影響を及ぼすかを予測しなければならない。しかしながらここでは、方法書に記載された計画と比べ、計画変更後は影響が低減することしか書かれておらず、当初の計画どおり実行した場合の影響予測がどうであったのかが示されていない。ついては、当初の計画通りに実行した場合の影響予測に加え、計画変更後の予測についても数値を示すなどして、具体的な影響の予測結果を示すべきである。
  2. サシバについて
     準備書・本編6-66には、計画地の南側にサシバが営巣しており、計画地の西端から2~8基目までの地域で活動がみられる。今回の予定地は主要な活動場所ではないと思われるが、サシバは絶滅危惧種Ⅱ類とされていることから、近辺で少しでも活動が見られた場合には注意を払うべきである。
    少なくとも、サシバの生息状況が風車の稼働によりどのような影響を受けるか予測し、準備書・本編7-10の9.2の事後調査の実施計画にサシバに関する内容を入れるべきである。
  3. 渡りの調査について
     準備書・本編6-61~6-63に示されている渡り鳥の調査結果について、10月にC地点で630個体、D地点で884個体を観察している。それに対して計画地上空となるA地点では58羽という記録個体数であったことから、ここは渡りのメインルートではないとしている。
     一方、日本野鳥の会三重が本計画地域の南にある藤阪峠で過去5回行なわれた渡りの調査では、そのうち2回で、400羽を越える渡りが記録されている。また、渡りのコースは、その日の風向や風力などによっても変化することから、天候の都合により、渡りルートがCおよびD地点より南寄りに変化した場合、多数の鳥が計画地上空を通過する可能性も考えられる。
     いずれにしろ、本準備書では1日だけの調査結果が示されているだけであり、その結果のみで計画地がメインの渡りルートではないと推定するには根拠が不十分である。
     ついては今後、10月以降に渡るノスリ、ハイタカ、ツミも調査対象に含めて、十分な調査頻度を確保し、飛行高度の計測を含めた追加調査を行い、本計画地域が真にメインの渡りルートになっていないか、再評価を行うべきである。
  4. ヤイロチョウ(絶滅危惧種)について
     準備書・本編6-74で示されているとおり、計画地の北側に伸びる、今回改修し拡幅される予定の林道上でヤイロチョウの生息が確認されている。ヤイロチョウはレッドリストにおいて、環境省では絶滅危惧ⅠB類、IUCNではVulnerable(Ⅱ類)に指定されている希少な鳥である。また、ヤイロチョウは全国でも分布域が限られ、生息数もごくわずかであり、三重県内でもほとんど繁殖記録がない。ヤイロチョウの生態は十分に把握されていないが、ほとんど人の手が入っていない広い常緑広葉樹林で繁殖すると考えられている。今回観察された場所は林道を拡幅予定の地点であり、ここがヤイロチョウの繁殖地であれば、工事で受ける影響は重大であると考える。
     そのような絶滅危惧種であるヤイロチョウが一度でも確認された以上、拡幅工事の予定地やその周辺でヤイロチョウが繁殖していないかを確認するため、次の繁殖期に追加調査を行うべきである。なお、ヤイロチョウの繁殖が確認された場合、影響の予測を行い、その結果に応じた影響緩和策を講じるべきである。

以上

風力発電導入マニュアル見直し等についてのお願い

2001年11月30日

環境省 環境大臣
川口 順子 様

日本野鳥の会東北ブロック協議会
第24回総会会長 白岩 康夫

要望書
風力発電導入マニュアル見直し等についてのお願い

「風力発電導入マニュアル(環境省)」の風力発電システム設置の事前調査及び環境影響評価は、鳥類への影響は渡りの経路をさけるとの記述のみで不十分です。世界各地の鳥類の衝突例も設置場所の観光地化による稀少猛禽類への影響も、昼夜回転による騒音の鳥類への影響も明らかにされていません。また、鳥類の環境影響評価の調査を施工者に義務づける記述もありません。
風力発電システムの導入促進が地球温暖化対策等の環境保全対策への貢献に結びつくとして、現在国内の主用風力発電施設は2001年3月現在34都道県、265基(東北は6県51基)に拡大しています。
また、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「地域新エネルギービジョン策定等事業」実施自治体は220自治体にもおよび、導入目標値も大幅に引き上げられて、北海道や東北地方で大規模な導入が進められています。東北の大型風力発電の建設可能台数は4868基とみなされており、東北各地で導入が急増することは明らかです。
オランダでは2万羽の野鳥が巻き添えになったと推測され、鳥の生息地域や密集するような地形をもつ地域、視界の悪い地域、天候が常に悪い地域への建設は避けるような警告がされるべきとの報告があります。
2001年9月1日、福島県の北塩原村で開催された第24回「日本野鳥の会東北ブロック協議会総会」で、風力発電と野鳥について討議、決議した下記のことを強く要望いたします。

  1. 現行の「風力発電導入マニュアル」では、鳥類の保護対策が不十分なので「風力発電導入マニュアル」の見直しを急ぐよう要望いたします。
  2. 稀少猛禽類および水鳥の重要な生息地とその周辺への設置は、衝突回避の対策技術が開発されるまで認めないよう要望いたします。

以上

※NEDOの数値等は「風力発電システム導入促進検討の手引き」(財)新エネルギー財団(2001.8発行)から引用。

宗谷岬ウインドファーム計画について

日野鳥発 第1号
平成16年4月1日

株式会社ユーラスエナジージャパン
札幌支社長  秋吉 優 様

〒151-0061
東京都渋谷区初台1-47-1
財団法人 日本野鳥の会
会長 小杉 隆

宗谷岬ウインドファーム計画について

現在、貴社において計画されている宗谷岬ウインドファーム(仮称)計画は、鳥類の保護上重大な問題が予測されることから、下記について要望いたします。

(要旨)

  1. 宗谷岬ウインドファーム計画(仮称)における環境影響評価は、鳥類に関する影響評価に重大な欠陥があるため、4月の工事着工を見合わせること。
  2. 希少種オオワシ、オジロワシ等の計画地周辺における渡り状況について十分な追加調査を行ない、その結果に基づいて環境影響評価をやり直すこと。
  3. 環境影響評価の結果、オオワシ、オジロワシ等への悪影響が避けられない場合は、計画を変更、または中止すること。

(補足説明)

  • 当該計画地は、日本最北の鳥類の渡りルートとして重要な位置にあります。特に、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」の国内希少野生動植物種であり、IUCNのレッドデータブック記載種、日ロ渡り鳥条約の記載種でもある国際的な保護鳥オジロワシやオオワシの渡り経路の要所であることが、環境省がロシアと共同で行なった衛星追跡調査(1993~1995年度に実施)により明らかになっています。また、(財)日本野鳥の会(以下「本会」という。)が1997~1999年度に行なった調査でも確認されています。
  • 現在、環境省で検討されている「国立・国定公園内における風力発電施設設置のあり方に関する基本的考え方」においても、「風力発電施設の設置にあたっては、事前の環境調査の結果を踏まえて鳥類等の野生生物の重要な生息地・生育地(例えば猛禽類をはじめとした希少種の生息地や、渡り鳥や海鳥の重要な渡来地、中継地、繁殖地等)においては、立地計画段階において回避する等の環境保全措置を講ずることが必要である。」とされています。宗谷岬ウインドファームの建設される場所はまさに、この基準に該当する場所です。
  • オジロワシやオオワシのように個体数が少ない鳥類は、1羽の死亡がその個体群に大きな影響を与えます。たとえばオオワシでは、年間10羽程度の死亡が増えるだけで個体群が絶滅に向かってしまうことが指摘されています。したがってウインドファームの建設によって衝突死が起これば、たとえ低頻度であったとしても個体群は危機にさらされます。
  • 苫前町においては、2004年2月5日に、風車に衝突して死んだと見られるオジロワシの死体が発見されました。このように、風車への衝突死はオオワシやオジロワシにとって現実の脅威となっているため、宗谷岬ウインドファームの建設にあたっては十分に調査を行ない、その場所への建設の可否を含めて慎重に検討することが必要です。
  • 本会が、宗谷岬ウインドファーム任意検討委員会の一員として、貴社より任意検討委員会に提供いただいた「宗谷岬ウインドファーム建設に係る環境影響評価調査」について、詳細に検討を行った結果、貴社が実施された調査及びその調査結果に基づく環境影響評価は、まことに不十分なものであると判断せざるをえない内容でした。
  • ワシ類は、天候や時期、時間帯等により飛翔場所や高さ等が変化します。したがって、長期にわたってさまざまな気象状態での調査を行なうことが不可欠ですが、貴社の調査はそのような方法で行われておりませんでした。
  • 鳥類の環境影響評価に重大な問題を残した状況下における工事着工は、環境影響評価の趣旨からして、重大な問題があると考えます。
  • また、平成16年4月から計画地で実施される除雪・重機運搬などの作業が開始された後における追加調査では、これらの作業が鳥類の分布や行動に影響を与え得るため、客観的なデータとはなりえず、環境影響評価のための有用な調査とはなり得ません。

以上

汐首岬のウインドファームの設置計画に対する要望書

日野鳥発第33号
平成18年6月27日

株式会社ユーラスエナジージャパン 御中

財団法人 日本野鳥の会
会長  柳生 博
日本野鳥の会北海道ブロック協議会
会 長  藤巻 裕蔵

汐首岬のウインドファームの設置計画に対する要望書

現在、貴社が函館市汐首町の汐首岬において計画されているウインドファームの計画地は、北海道と本州の間を渡る鳥類の渡りのルートとして重要な位置にあることが明らかになりつつあることはご承知のとおりです。日本野鳥の会道南檜山支部が2005年秋(9月下旬~11月の13日間)と2006年春(3月下旬~5月中旬の18日間)に行った調査によれば、以下のことが明らかになっています。

  1. 計画地付近は、複数の絶滅のおそれのある種の生息地となっており、風車の設置により衝突死等の影響を被る危険性があります
    計画地付近の上空を、次のような絶滅のおそれのある種が飛翔しているところが見つかりました。

    オジロワシ
    絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(以下種の保存法と略記)国内希少野生動植物種、レッドデータブック(以下RDBと略記)絶滅危惧IB類、天然記念物
    クマタカ
    種の保存法国内希少野生動植物種、レッドデータブック(以下RDBと略記)絶滅危惧IB類、天然記念物
    オオタカ
    種の保存法国内希少野生動植物種、RDB絶滅危惧II類
    チュウヒ
    RDB絶滅危惧II類
    ハヤブサ
    種の保存法国内希少野生動植物種、RDB絶滅危惧II類
    ハイタカ
    RDB準絶滅危惧
    ミサゴ
    RDB準絶滅危惧
    ハチクマ
    RDB準絶滅危惧

    これらの希少猛禽類は、建設予定地付近を渡りの経路としている可能性が高いと考えられます。またハヤブサについてはすぐ近くに繁殖地があり、風車が設置されれば繁殖期の行動を阻害されることも予想されます。
    周辺の海岸、海域では、絶滅のおそれのある海鳥として下記の種も目撃されました(2006年4~5月)。

    チシマウガラス
    種の保存法国内希少野生動植物種、RDB絶滅危惧IA類

    これらの種は、風車の設置により衝突死の危険が高まり、生存が脅かされるおそれがあります。特に猛禽類のように産卵数が少なく長寿の種は、1羽の死亡がその個体群の存続に大きな影響を与えます。ウインドファームの建設によって衝突死が起これば、たとえ低頻度であったとしても個体群は危機にさらされます。北海道内においては、2004年以来すでに5羽ものオジロワシが風力発電施設に衝突して死んだと見られており、風車への衝突死は希少猛禽類にとって現実の脅威となっています。

  2. 希少種以外の鳥類も多種多数渡っており、北海道と本州の間の鳥類の渡りのルートとして重要な場所となっています
    計画地付近では他にも、調査期間中通算で秋季294羽、春季491羽に及ぶノスリや、1日で3000羽を超すこともあるヒヨドリなど、96種以上の鳥類が確認されており、その行動から大部分は渡りの途上と思われます。地形的にも、北海道と本州の大間岬との間を結ぶ鳥類の渡りのルートとして重要な場所である可能性が高く、従来知られていた白神岬-竜飛崎と並ぶ重要なルートである可能性が示唆されています。このような場所にウインドファームを設置すれば、非常に多数の鳥類が衝突死し、あるいは風車を回避するために渡り行動に余分な負荷がかかるといったマイナスの影響を、長期間にわたって被るおそれがあります。

短期間の断片的な調査にも関わらず、以上のような事実が明らかになっており、計画地付近が多くの鳥類にとって非常に重要な場所であり、ウインドファームの設置が鳥類への脅威となり、特に希少種の生存を脅かすことになることは明白と思われます。

 環境省は、2004年3月に公表した「国立・国定公園内における風力発電施設設置のあり方に関する基本的考え方」において、「風力発電施設の設置にあたっては、事前の環境調査の結果を踏まえて鳥類等の野生生物の重要な生息地・生育地(例えば猛禽類をはじめとした希少種の生息地や、渡り鳥や海鳥の重要な渡来地、中継地、繁殖地等)においては、立地計画段階において回避する等の環境保全措置を講ずることが必要である。」としていますが、汐首岬のウインドファームの計画地はまさに、この回避の対象に該当する場所にあります。

 以上のことから、次のことを要望いたします。

  1. 汐首岬におけるウインドファームの計画地は、鳥類に対する重大な環境影響が予測されるため、設置に適当な場所ではありません。立地選定の抜本的な見直しをお願いいたします。

以上

  • 日本野鳥の会
    事務局:〒151-0061  東京都渋谷区初台1-47-1
    本件担当部署:自然保護室 〒191-0041 日野市南平2-35-2 WING
  • 日本野鳥の会北海道ブロック協議会
    事務局:〒070-8332 旭川市南2条21丁目 高野正方 日本野鳥の会旭川支部
    構成団体(15団体)
    日本野鳥の会小清水支部、日本野鳥の会オホーツク支部、日本野鳥の会根室支部、日本野鳥の会釧路支部、日本野鳥の会十勝支部、日本野鳥の会旭川支部、日本野鳥の会滝川支部、日本野鳥の会道北支部、日本野鳥の会江別支部、日本野鳥の会札幌支部、日本野鳥の会小樽支部、日本野鳥の会苫小牧支部、日本野鳥の会室蘭支部、日本野鳥の会函館支部、日本野鳥の会道南檜山支部