(仮称)天竜風力発電事業環境影響評価方法書に対する意見書

令和3年2月26日

JR東日本エネルギー開発株式会社
代表取締役社長 中島 等 様

日本野鳥の会遠江
代表 増田 裕 (公印省略)
静岡県袋井市砂本町3-12

公益財団法人日本野鳥の会
理事長 遠藤孝一 (公印省略)
東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル

「(仮称)天竜風力発電事業 環境影響評価方法書」に対する意見書

日本野鳥の会遠江、および(公財)日本野鳥の会は、地球温暖化対策および代替エネルギーとして実用的な技術レベルに達している風力発電をはじめとした自然エネルギーを積極的に導入していくことに賛成しています。ただし、風力発電の導入にあたり、野鳥など野生生物の生息に悪影響を及ぼし、現状の生物多様性に大きな影響を与えるのは本末転倒であり、生物多様性の危機のうち第4の危機(地球温暖化による地球環境の変化による危機)への対応によって第1の危機(開発や乱獲による種の減少・絶滅、生息・生育地の減少)を招くべきではないと考えています。

貴社が作成した環境影響評価方法書(以下、方法書という)に示されている対象事業実施区域(以下、計画地という)とその周辺は、風力発電施設(以下、風車という)の建設による影響を受けやすく、環境省レッドリストで絶滅危惧ⅠB類および国内希少野生動植物種、天然記念物に指定されているイヌワシとクマタカの生息地であり、サシバやハチクマ等の希少猛禽類の渡り経路となっています。これらのことは、当会の調査等により継続的に確認され(添付クマタカ資料参照)、また、配慮書に対する経済産業大臣意見でも述べられており、環境省が作成した環境アセスメント環境基礎情報データベースシステム(EADAS)にある風力発電における鳥類のセンシティビティマップ(陸域版)でも「注意喚起A3」のメッシュとして示されています。

浦(2015)および武田(2013)によると、イヌワシやクマタカの風車に衝突死するバードストライクが発生していることがすでに国内で確認されています。また、風車の稼働によるクマタカの営巣地放棄については、三宅(2020)で報告されています。さらに、国内でも風車建設によりサシバおよびハチクマの渡りに障壁影響が生じていることがUra(2017)で報告されています。

上記を踏まえて希少猛禽類の保全の観点から考えると、風車の建設がこれらの鳥類に与える影響は甚大であると予測され、当該地域は風車建設には不適切であり、計画地として除外されるべき地域であると考えます。そのため、本事業は現地調査の実施、および環境影響評価準備書の作成に進まずに、現段階をもって事業を中止すべきです。

なお、下記の(1)から(6)の項目は前述の立場に立ったうえで方法書の記載内容に対して意見を述べるものであり、現地調査の実施および準備書の作成に進むことを容認するものではありません。

(1)対象事業実施区域の選定方法について

貴社は計画地の位置を選定するにあたり、浜松市が平成31年3月に公表した風力発電ゾーニング計画に基づく陸上風力発電ゾーニングマップを活用したと考えます。そのマップの中でBエリアに指定されているNo.4、No.6、No.7を、また、EADASにある鳥類のセンシティビティマップ(陸域版)で注意喚起A3のメッシュに指定されているエリアを計画地に含んでいます。しかし、これらの場所は風車の設置可能エリアではなく、立地にはクリアすべき課題があり調整が必要なエリア(Bエリア)および重要種が生息するために風車の建設には注意を要するエリア(A3)です。そのため、貴社は、これらのエリアを計画地から除外することを念頭に、再度、計画地の設定のあり方について浜松市およびその他の利害関係者と協議を行い、その結果によっては事業の撤回も検討すべきです。

(2)専門家等へのヒアリングの結果について

方法書6-11(343)から6-12(344)ページにかけて、3名の専門家による助言等の内容が記載されています。EADASのセンシティビティマップにもあるように、計画地周辺にはイヌワシが生息している可能性があるにもかかわらず、専門家等はそのことについてまったく言及していません。そのため、貴社は計画地周辺におけるイヌワシの生息状況についての助言をいただくことができる専門家等にもヒアリングを行い、計画地の位置や希少猛禽類調査の方法の妥当性について意見を得るべきです。

(3)希少猛禽類調査について
【イヌワシについて】

方法書の6-34(366)から6-38(370)ページにかけての「動物に係る調査、予測及び評価の手法」の中に希少猛禽類調査の方法が記載されており、そこには、猛禽類の保護の進め方(改訂版)を参照し、希少猛禽類の調査範囲はクマタカを想定し対象事業実施区域から1.5kmとすると記載されています。しかし、EADASでは計画地がイヌワシの生息地となっていることが推測されており、また、計画地が含まれるメッシュの北および東に隣接するメッシュはイヌワシの生息確認区域となっています。そのため貴社は、計画地にイヌワシが生息していることを想定して、希少猛禽類調査の方法を再検討したうえで、方法書を再度作成し直すべきです。そうすると、調査範囲は対象事業実施区域から1.5kmではなく、計画地が含まれる10km四方のメッシュ全体になります。

【クマタカについて】

既存文献および当会が所有する調査データにおいても、計画地がクマタカの生息地と重なっていることを確認しています。しかし、これらはクマタカの生息状況の把握を目的とした調査結果ではないため、計画地とその周辺におけるクマタカの詳しい生息状況が判明している訳ではありません。そのため、準備書の作成に向けては計画地におけるクマタカの生息状況や行動を詳細に把握する必要があり、計画地のようにクマタカの生息密度が高い場所では、つがいが谷ごとに行動圏を持つことが知られていますので、貴社は水系ごとに生息の有無等を確認する必要があります。具体的には、風力発電機設置予定区域にかかわる7つの水系のそれぞれで生息状況調査を2営巣期に渡り実施する必要があります。水系ごとに観察定点を設置し、月3回以上、時間帯は9~16時とし、必要に応じて早朝の時間帯を加えて調査を実施することを求めます。

(4)渡り鳥調査について

計画地における渡り鳥調査は、サシバやハチクマなど猛禽類の秋の渡りが中心対象になりますが、猛禽類の渡りは日による通過個体数の変動が大きいため、方法書に記載されている1回2日間とする月2回の定点観察調査では不足しています。そのため、計画地を利用する渡り鳥の状況を詳細に把握するためには、9月中旬から10月中旬は毎日8時から16時の8時間の連続調査を2シーズンは実施する必要があります。観察定点には、風力発電機設置予定区域を見晴らせる竜頭山山頂と山住家老平を含めるようにすべきです。

(5)一般鳥類調査について

任意観察法について、調査は風力発電機設置予定区域のみで実施すればよいですが、常光山周辺の自然林、山住神社付近の植林地、井戸口山から県民の森までの3エリアに分け、自然林と二次林を含むように観察定点を設置して、調査を実施することを求めます。特に常光寺山付近は自然林が広く残っている区域であり、風車の設置による環境改変が大きくなると予想されるため、BACI(Before–After Control Impact)と呼ばれる風車建設の前後影響比較のためにも、詳細な調査を実施することを求めます。なお、常光寺山付近での任意観察調査の期間は2年間とし、毎月実施することも求めます。

(6)住民説明会の実施について

貴社はアセス法に基づいて計画地のある地域で住民説明会を実施することが義務づけられていますが、現時点では説明会の開催が設定されていません。貴社は、オンライン形式など対面によらない方法でもよいので早急に住民説明会を開き、地域住民との円滑なコミュニケーションを図るべきです。アセス法の趣旨を蔑ろにしてはいけません。

以上


【引用文献】

  • 三宅 武.2020.風力発電開発で営巣地を放棄したクマタカ.野鳥841(2020年1月号):26-27.(公財)日本野鳥の会,東京.
  • 武田恵世.2013.風力発電機の鳥類の繁殖期の生息密度への影響.日本鳥学会誌62(2):135-142.
  • 浦 達也.2015.風力発電が鳥類に与える影響の国内事例.Strix 31:3-30.
  • Ura T., Kitamura W., Yoshizaki S. 2017. Case examples of barrier effects of wind farms on birds in Japan. Conference on Wind energy and Wildlife impacts 2017 Book of Abstracts:246-247.

(仮称)能登中風力発電事業に係る環境影響評価方法書に対する意見書

令和3年2月22日

合同会社潮風
代表者員 合同会社RJキャピタル
職務執行者 牧野 達明 様

日本野鳥の会石川
代表 中村 正男
〒929-1125 石川県かほく市宇野気1-71

公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一 (公印省略)
〒141-0031 東京都品川区西五反田3—9-23丸和ビル

(仮称)能登中風力発電事業に係る環境影響評価方法書に対する意見書

現在、貴社が意見募集をしている(仮称)能登中風力発電事業に係る環境影響評価方法書(以下、方法書という)に対して、環境影響評価法第3条の7に基づき、鳥類の保全の見地から下記のとおり意見を述べます。

1.累積的影響評価の実施の必要性について
(1)(仮称)中能登ウインドファーム事業との間の累積的影響について

貴社が作成した計画段階環境配慮書(以下、配慮書という)に対し2020年7月7日付で提出した意見書でも同様のことを述べましたが、他社による(仮称)中能登ウインドファーム事業(以下、重複他事業という)の方法書に示されている対象事業実施区域(以下、計画地という)と本事業の計画地は大きく重複しています。ほぼまったく同じ場所に違う事業者の風車が建設されることは一般的には想定し難いですが、現段階で計画地が重複している以上、貴社は重複他事業の事業者と協力または情報の共有を図りながら累積的環境影響評価を実施したうえで影響の回避・低減策を講じなければ、輻輳する風力発電施設(以下、風車という)の存在やその設置工事により、生態系の破壊や鳥類のバードストライクおよび障壁影響を含む生息地放棄などの重大な影響が生じる可能性があります。

しかし、方法書には累積的環境影響評価に関する具体的な方針や評価手法が記載されておらず、不十分な内容となっています。計画地が重複することにより生じる鳥類をはじめとする自然環境への重大な影響を回避するための方法等が示されない限り、本事業は実施すべきではありません。

(2)計画地周辺に多く存在する他事業との間の累積的影響について

計画地の周辺には(仮称)中能登ウインドファーム事業以外にも、下記のように既設、建設中、計画中の事業(以下、他事業という)が多く存在します。貴社は他事業の事業者と協力または情報の共有を図りながら累積的環境影響評価を実施し、能登半島中部全体における鳥類や自然環境への影響の回避・低減策を講じなければ、輻輳する風車の存在やその設置工事により、生態系の破壊や鳥類のバードストライクおよび障壁影響を含む生息地放棄などの重大な影響が能登半島中部全体で生じる可能性があります。

しかし、方法書には累積的影響評価に関する具体的な方針や考え方、評価手法等が記載されておらず、不十分な内容となっています。貴社は海外事例を参考にするなどして累積的影響の予測および評価を行い、計画地の周辺に他事業が多く存在することにより生じる鳥類をはじめとした自然環境への重大な影響を回避するための方針や方法を示すべきです。また、風車の運転開始後は事後調査を行い、その結果を示すべきです。それらを実施すること、また、具体的な手法等を記載できない限り、本事業の規模を縮小するか、計画を撤回すべきです。

【計画地周辺の他事業】

  • 既設:福浦風力発電所(9基)、虫ヶ峰風力発電所(10基)、酒見風力発電所(1基)、あいの風酒見風力発電所(5基)、富来風力発電所(4基)、JRE志賀西海風力発電所(3基)
  • 建設中:百浦赤住風力発電所、矢駄風力発電所
  • 計画中:(仮称)中能登ウインドファーム事業(最大15基)、(仮称)志賀風力発電事業(最大7基)、(仮称)虫ヶ峰風力発電事業(最大13基、現10基は撤去)、(仮称)西能登ウィンドファーム事業(最大30基)、(仮称)七尾志賀風力発電事業(最大12基)、(仮称)能登里山風力発電事業(最大17基)、(仮称)志賀風吹岳風力発電事業(最大17基)
2.鳥類調査の方法等について

【表 6.21-1 調査、予測及び評価の方法(動物)】、【表 6.21-1 調査の手法(動物)】、【表 6.21-1 調査時期の選定根拠】に記載されている内容について、下記のように意見を述べます。

  • 計画地全体はKBA(Key Biodiversity Area)に含まれています。そのため、貴社は風車の建設により発生する土砂の扱いには十分留意し、土砂流出等により、地域の生態系や、鳥類を含めた地域の生物多様性に影響を与えることのないよう、事業を計画、実施すべきです。
  • 希少猛禽類調査では「繁殖期については2季実施する」とありますが、鳥類の繁殖状況や渡り鳥の渡来・通過・渡去の状況は年変動が大きいことは既知のことです。貴社はこの年変動も考慮して、鳥類調査全般の実施期間は少なくとも2年間実施する必要があります。
  • 鳥類調査のうちポイントセンサス法による調査と任意観察調査は、春・夏・秋・冬の4季に実施するとあります。しかし、方法書には具体的な調査頻度が記載されていません。そのため貴社は、各季の中でどのくらいの回数で調査を実施する予定なのかを記載し、それが適切であるかどうか専門家等の意見を聞くべきです。当会としては、現地の鳥類の状況を詳しく把握するために、繁殖期(5~6月)は調査地において出現種数が飽和するまで実施し、それ以外の時期は各月1~2回程度の調査が必要と考えます。
  • 貴社は、希少猛禽類調査および渡り鳥調査のための観察地点からの視野を示す視野図を作成し、観察地点の設置位置の妥当性を検討すべきです。希少猛禽類調査および渡り鳥調査においては、各観察地点からの視野が重なって計画地全体を覆うようになっている状態で調査を実施し、影響を評価すべきです。
  • 渡り鳥調査において、夜間録音調査を実施するとありますが、録音機材で確認できる鳥類の飛翔状況は距離が短いため、レーダー調査を実施するなどして、計画地における渡り鳥の利用状況等を詳細に把握したうえで影響を評価すべきです。
  • 希少猛禽類調査および渡り鳥調査では、鳥類の飛翔位置を正確に把握するため、レーザーレンジファインダー等の機器を使用すべきです。
3.アセス図書の縦覧方法について

貴社が作成した方法書は、Internet Explorer以外のブラウザで閲覧可能ですが、配慮書を含め貴社が作成したアセス図書がダウンロードや印刷できないのは、著作権者である貴社の意向によるものです。しかし、パソコン上にダウンロードおよび印刷して閲覧できないことは非常に不便であることから、貴社は利用者から申請があれば、ダウンロードおよび印刷を可能にすべきです。

今回は、新型コロナウィルス感染症対応として貴社のアセス図書の縦覧期間が延ばされましたが、今後は通常の状況でも意見書の募集期間中はインターネットで閲覧できるようにしていただくことを要望いたします。

以上

(仮称)七尾志賀風力発電事業に係る環境影響評価方法書に対する意見書

令和3年2月22日

AR風力発電株式会社
代表取締役 大橋 純 様

日本野鳥の会石川
代表 中村 正男
〒929-1125 石川県かほく市宇野気1-71

公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一 (公印省略)
〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル

(仮称)七尾志賀風力発電事業に係る環境影響評価方法書に対する意見書

現在、貴社が意見募集をしている(仮称)七尾志賀風力発電事業に係る環境影響評価方法書(以下、方法書という)に対して、環境影響評価法第8条に基づき、鳥類の保全の見地から下記のとおり意見を述べます。

1.累積的影響評価の実施の必要性について
(1)(仮称)志賀風吹岳風力発電事業、(仮称)能登里山風力発電事業との間の累積的影響について

(仮称)七尾志賀風力発電事業は方法書により対象事業実施区域(以下、計画地という)の範囲の変更が明らかになりましたが、 (仮称)能登里山風力発電事業(以下、重複他事業という)の計画段階環境配慮書(以下、配慮書という)、および(仮称)志賀風吹岳風力発電事業の方法書に示されている計画地と本事業の計画地は大きく、あるいは一部重複しています。ほぼ同じ場所に違う事業者の風車が建設されることは一般的には想定し難いですが、現段階で計画地が重複している以上、貴社は重複他事業の事業者と協力、または情報の共有を図りながら累積的環境影響評価を実施したうえで影響の回避・低減策を講じなければ、輻輳する風力発電施設(以下、風車という)の存在やその設置工事により、生態系の破壊や鳥類のバードストライクおよび障壁影響を含む生息地放棄などの重大な影響が生じる可能性があります。

しかし、方法書には経済産業大臣の配慮書に対する意見(令和元年11月11日)でも述べられている累積的環境影響評価に関する具体的な方針や評価手法が記載されておらず、不十分な内容となっています。計画地が重複することにより生じる鳥類をはじめとする自然環境への重大な影響を回避するための方法等が示されない限り、本事業は実施すべきではありません。

(2)計画地周辺に多く存在する他事業との間の累積的影響について

計画地の周辺には(仮称)志賀風吹岳風力発電事業および(仮称)能登里山風力発電事業以外にも、下記のように既設、建設中、計画中の事業(以下、他事業という)が多く存在します。貴社は他事業の事業者と協力または情報の共有を図りながら累積的環境影響評価を実施し、能登半島中部全体における鳥類や自然環境への影響の回避・低減策を講じなければ、輻輳する風車の存在やその設置工事により、生態系の破壊や鳥類のバードストライク、および障壁影響を含む生息地放棄などの重大な影響が能登半島中部全体で生じる可能性があります。

しかし、方法書には累積的影響評価に関する具体的な方針や考え方、評価手法等が記載されておらず、不十分な内容となっています。貴社は海外事例を参考にするなどして累積的影響の予測および評価を行い、計画地の周辺に他事業が多く存在することにより生じる鳥類をはじめとした自然環境への重大な影響を回避するための方針や方法を示すべきです。さらに、風車の運転開始後は事後調査を行い、その結果を示すべきです。それらを実施すること、また、具体的な手法等を記載できない限り、本事業の規模を縮小するか、計画を撤回すべきです。

【計画地周辺の他事業】

  • 既設:福浦風力発電所(9基)、虫ヶ峰風力発電所(10基)、酒見風力発電所(1基)、あいの風酒見風力発電所(5基)、富来風力発電所(4基)、JRE志賀西海風力発電所(3基)
  • 建設中:百浦赤住風力発電所、矢駄風力発電所
  • 計画中:(仮称)能登中風力発電事業(最大16基)、(仮称)中能登ウインドファーム事業(最大15基)、(仮称)志賀風力発電事業(最大7基)、(仮称)虫ヶ峰風力発電事業(最大13基、現10基は撤去)、(仮称)西能登ウィンドファーム事業(最大30基)、 (仮称)能登里山風力発電事業(最大17基)、(仮称)志賀風吹岳風力発電事業(最大9基)
2.鳥類調査の方法等について

【表 6.2-1(20)〜(22) 調査、予測及び評価の方法(動物)】に記載されている内容について、下記のように意見を述べます。

  • 計画地全体はKBA(Key Biodiversity Area)に含まれています。そのため、貴社は風車の建設により発生する土砂の扱いには十分留意し、土砂流出等により、KBAの指定根拠となっているホクリクサンショウウオの生息地をはじめ、地域の生態系や、鳥類を含めた地域の生物多様性に影響を与えることのないよう、事業を計画、実施すべきです。
  • 希少猛禽類調査では「繁殖期については2期実施する」とありますが、鳥類の繁殖状況や渡り鳥の渡来・通過・渡去の状況は年変動が大きいことは既知のことです。貴社はこの年変動も考慮して、鳥類調査全般の実施期間は少なくとも2年間実施する必要があります。
  • 鳥類調査のうちポイントセンサス法による調査と任意観察調査は、春・夏(繁殖期)・秋・冬の4季に実施するとあります。しかし、方法書には具体的な調査頻度が記載されていません。そのため貴社は、各季の中でどのくらいの回数で調査を実施する予定なのかを記載し、それが適切であるかどうか専門家等の意見を聞くべきです。私ども2団体としては、現地の鳥類の状況を詳しく把握するために、繁殖期(5~6月)は調査地において出現種数が飽和するまで実施し、それ以外の時期は各月1~2回程度の調査が必要と考えます。
  • 貴社は、希少猛禽類調査および渡り鳥調査のための観察地点からの視野を示す視野図を作成し、観察地点の設置位置の妥当性を検討すべきです。希少猛禽類調査および渡り鳥調査においては、各観察地点からの視野が重なり計画地全体を網羅する調査を実施し、影響を評価すべきです。
  • 希少猛禽類調査および渡り鳥調査では、鳥類の飛翔位置を正確に把握するため、レーザーレンジファインダー等の機器を使用すべきです。
3.アセス図書の縦覧方法について

貴社が作成した方法書は、配慮書を含め貴社が作成したアセス図書がダウンロードや印刷できないのは、著作権者である貴社の意向によるものです。しかし、パソコン上にダウンロード、および印刷して閲覧できないことは非常に不便であることから、貴社は利用者から申請があれば、ダウンロードおよび印刷を可能にすべきです。

今回、貴社のアセス図書の縦覧期間が意見書の提出期限前に終了していますが、利用者の利便性のためには意見書の募集期間中はインターネットで閲覧できるようにしていただくことを要望いたします。

以上

(仮称)福井大野・池田ウインドファーム事業に係る環境影響評価方法書への意見書

2021年2月22日

電源開発株式会社
取締役社長 渡部 肇史 様

日本野鳥の会福井県
代表 酒井 敬治
〒911-0804福井県勝山市元町3-6-48松村方

公益財団法人日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一 (公印省略)
〒141-0031東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル

(仮称)福井大野・池田ウインドファーム事業に係る環境影響評価方法書への意見書

貴社が作成した環境影響評価方法書(以下、方法書という)に記載している対象事業実施区域(以下、計画地という)では、当該地域の生態系の頂点に位置するイヌワシやクマタカなどの希少猛禽類が生息しています。また、計画地周辺は、ハチクマやサシバなどの猛禽類をはじめ小鳥類の渡り経路となっている可能性が高い場所です。そのため、風力発電施設(以下、風車という)の建設工事段階では、騒音や作業員の存在、作業等により、特に希少猛禽類の繁殖に重大な影響を及ぼすことが、そして、風車の稼働後にはバードストライクや障壁影響を含む生息地放棄等の問題が発生することが危惧されます。

以上の理由から、方法書に対し下記の通りに意見を述べますので、貴社におかれましては適切に対応してくださいますようお願いいたします。

1.計画地の選定位置の見直しについて

冒頭に記述したように、計画地は地域生態系の頂点に位置し、環境省レッドリストで絶滅危惧ⅠB類、福井県版レッドリストで絶滅危惧Ⅰ類に指定されているイヌワシおよびクマタカ、その他の希少鳥類等の生息地となっている。特にイヌワシは福井県内では10羽前後しか生息しておらず、近年では、かつての繁殖地が単独個体の生息地になるなど、生息状況が悪化し、1個体の保護の成否が本県内の本種の存続に大きな影響を及ぼす段階にまでなっている。

これらの希少鳥類は、計画地およびその周辺の地域で営巣している他、採餌場にも利用しており、風車の建設は生息地や繁殖地などの放棄、さらにはバードストライクによる地域個体群の消滅などの重大な影響を及ぼすと考えられるため、計画地は風車の建設場所としては不適切であり、当該地における風車建設の見直しを求める。

2.鳥類(希少猛禽類)調査の調査地点(定点)と「視野図」について

計画地とその周辺で12箇所の定点を設定しているが、降雪期には使用できない定点が半数以上ある。そのため、降雪期でも十分な調査ができる場所に定点を変更するか、降雪期でも調査可能な方法を示すべきである。

また、方法書には「調査定点の視野図」が含まれていないが、「視野図」を方法書の中で示すことが必要である。なお、降雪期でも利用可能な定点における「視野図」を示し、降雪期であっても計画地全域をカバーできるような定点を配置するべきである。

3.鳥類(希少猛禽類)調査の調査日数について

方法書では希少猛禽類調査の日数を「1回あたり連続3日間とし、各月1回」としているが、特に春と秋は、連続3日間の調査データが降雨により取れない可能性があることから、「データが取れない月」が生じないよう調査計画を立てるべきである。

また、貴社は、計画地およびその周辺で繁殖していると推察される希少猛禽類の営巣地や高度利用域等を必ず特定し、事業の実施によるそれらへの影響を適切に評価できるよう調査計画を立てるべきである。なお、調査の日程について、繁殖期間中は各月1回にこだわることなく、繁殖ステージごとの行動を把握できるように調査日程を組むべきである。

4.調査項目の追加について

方法書では鳥類調査として3項目(一般鳥類・夜間調査・希少猛禽類)を設定しているが、これに「(猛禽類および一般鳥類の渡り)」を新たに4項目として追加すること。
サシバやハチクマおよびノスリなどの猛禽類は、春は越冬地から繁殖地へ、秋は繁殖地から越冬地へと渡り、当該地域では昼間に移動する。この調査を「希少猛禽類」の調査と兼ねて行うと、生息状況と渡りの状況を把握するのにどちらも不十分な調査になってしまうので、この2つの調査は分けて行うことを求める。なお、猛禽類および一般鳥類の渡りに関する調査について、春は3~6月、秋は9~11月に実施し、調査実施中に悪天候となりデータが取得できない日が生じる可能性も考慮した調査日程を組むべきである。

また昨年9月、事前に風速を計測するために設置された風況ポールに数百羽のツバメが群れていたことや周辺での目視調査から、当該地域は多くのツバメ類が非繁殖期に利用する場所であり、渡り経路になっていることが推察された。一方、2016年より5年計画で、国や地方自治体の研究機関、民間団体が協働して行っている全国鳥類繁殖分布調査では、ツバメ類やアマツバメ類などの飛翔採食性種が減少していることが報告されているが、これらの飛翔採食性鳥類の保全は、鳥類の多様性を保全していくうえで重要であり、当該地域での一般鳥類調査を行う上で特に注目せねばならないことである。

5.レーダー調査等の実施について

計画地とその周辺を渡る鳥類の移動経路の位置を把握し、事業の実施による鳥類への影響を検討するための基礎データを得るには、目視での観察調査やICレコーダーを使った調査だけでは不十分である。特にICレコーダーは音声を取得できる範囲が狭く、計画地を通過する渡り鳥の状況を広く把握することはできない。そのため、船舶用レーダーやレーザーレンジファインダー等により、できるだけ広範囲に正確な飛翔経路や高度、時間等を把握、分析したうえで、障壁影響も含めた影響評価を実施することを求める。

なお、他の事業者によって行われている風力発電事業の方法書や調査では、ほとんどの事業者がレーダー調査を導入しており、当該地のみでレーダー調査が行われないのは調査としては不十分であると考えられる。他の計画地との影響評価の比較ができないことからも、レーダー調査は必須である。

(仮称)広島西ウインドファーム事業に係る環境影響評価方法書に対する意見書

令和3年2月22日

電源開発株式会社
代表取締役社長 渡部肇史 様

日本野鳥の会広島県支部
支部長代行 日比野政彦  (公印省略)
〒733-0011 広島県広島市西区横川町3丁目9-3小田ビル1F

公益財団法人日本野鳥の会
理事長 遠藤孝一  (公印省略)
〒141-0031 東京品川区西五反田3-9-23 丸和ビル

「(仮称)広島西ウインドファーム事業に係る環境影響評価方法書」に対する意見書

現在、貴社が住民意見を募集している(仮称)広島西ウインドファーム事業に係る環境影響評価方法書(以下、方法書という)に対して、鳥類の保全の観点から下記の通り意見を述べる。

貴社が作成した計画段階環境配慮書に対し、当方が提出した意見書においてもすでに、事業実施想定区域には環境省が絶滅危惧IB類に指定するクマタカ、イヌワシ、ヤイロチョウ、絶滅危惧Ⅱ類のサシバ、ハヤブサ、準絶滅危惧種のハチクマ、オオタカ、ハイタカ、ヨタカ、また、世界自然保護連合(IUCN)により絶滅危惧Ⅱ類に指定されているコウライアイサなど、多くの希少鳥類が生息していることを指摘したが、そのことは方法書にある対象事業実施区域(以下、計画地という)についても同様であることを指摘しておく。

特にクマタカ については、本会会員による調査において計画地およびその周辺で7つがいが生息していることを確認している。また、2020年の夏には計画地の北端および南端で当歳の幼鳥のクマタカを観察していることから、現在も継続して計画地とその周辺で複数のクマタカのつがいが繁殖していることは確実である(別紙資料参照)。

方法書には鳥類に対する影響を評価するための調査方法等を記載しているが、クマタカ等の希少猛禽類や渡り鳥への影響を適切に評価し得る調査データを取得するという観点から、下記のことを実施するよう求める。

(1)鳥類(一般鳥類)調査について

6-41(319)ページにある一般鳥類調査について、図6.2-10に記載されている一般鳥類調査地点での定点観察だけでは、調査地点が少なく、計画地とその周辺の鳥類相を把握することは困難である。そのため、ラインセンサス法も併用して広く計画地をカバーした鳥類相調査を実施することを求める。

なお、計画地周辺において、広島県により絶滅危惧Ⅰ類に指定されているコノハズク、準絶滅危惧に指定されるヤマセミ、要注意種に指定されるオシドリなどが繁殖期に生息していることを本会会員が調査により確認しているので、貴社はそのことに留意して繁殖に影響のないよう十分な配慮を行なった上で、詳細な現地調査を実施すべきである。

(2)鳥類(渡り鳥)調査について

計画地とその周辺では、春および秋の渡りの時期に尾根筋を通過するハチクマ、サシバ、ハイタカ、ハリオアマツバメなどの多くの渡り鳥が飛翔していることが観察されている。これらの鳥類の移動経路上に風車が建設されれば、貴社が自ら予測しているようにバードストライク等の深刻な影響が発生することが懸念される。方法書の6-42(320)ページでは、渡り鳥調査は春季3回、秋季3回(春季:3~5月、秋季:8~10月)とし、定点観察法で調査するとしているが、計画地とその周辺は中国地方でも重要な鳥類の渡り経路となっていることから、貴社は方法書に記載した調査方法にこだわらず、適切な時期に適切な回数の調査を実施し、計画地およびその周辺を通過する渡り鳥全般の飛翔状況の詳細を明らかにすべきである。計画地とその周辺では夜間に渡る鳥類も多いため、レーダーを使用した夜間調査も実施することを求める。

(3)鳥類(希少猛禽類)調査について

6-42(320)ページには猛禽類調査を「1回当たり連続3日間とし、各月一回 ※営巣期(12~8月)の調査は1営巣期実施する(9回)」と記載されているが、貴社がここで希少猛禽類として想定しているだろうクマタカは隔年で繁殖するつがいが多く、1営巣期の調査ではクマタカの繁殖を確認、または巣を発見することは困難である。2営巣期に渡り調査することにより繁殖や巣を発見できる可能性が高まるが、それにはまず、つがいの行動におけるコアエリア(高度利用域)を確定することが必要であり、そのためには方法書にあるよりも詳細な希少猛禽類調査を実施すべきである。

具体的には、各月1回3日間程度にこだわらず、繁殖ステージごとに適切な調査時期や頻度を選定し、できだけ多くの日数で調査を実施すべきである。また、視野図を作成するなどして、計画地内を飛翔または止まりをする希少猛禽類を見逃すことのないように定点を配置し、飛翔状況の正確な把握のためにレーザーレンジファインダーの使用を検討すべきである。
また、調査により、クマタカのつがいのコアエリアの位置や範囲を把握した場合、風車の設置位置はコアエリアの外郭から少なくとも1km以上隔離させることを求める。

(4)累積的影響評価について

計画地に予定通り風車が建設されると、南北11km、東西6kmの範囲に最大高150m超の大型風車が36基立ち並ぶことになり、全国的にも類のない大規模風車群がはじめて広島県内に出現することになるが、計画地とその周辺で生息を確認している7つがいのクマタカをはじめ、多くの動植物の生息が困難になると予測されることが、経済産業大臣をはじめ、環境大臣、広島県知事、広島市長からも意見の中で指摘されている。貴社の計画では、計画地が南北に2つに分かれており、また、計画地の中で風力発電機設置想定範囲が計3つに分かれているが、環境影響をそれぞれの計画地または想定範囲で評価を行うだけではなく、これらを一つの計画地として捉えて累積的な影響の評価を具体的かつ慎重に実施することを求める。

(5)生態系に係る注目種とその選定理由について

6-60(338)ページにある生態系に係る注目種とその選定理由について、オオタカとサシバは「当該地域の大部分をなす山地の森林環境よりも丘陵地の森林環境を中心とした生態系を代表する種であるため非選定とした」とあるが、近年、オオタカとサシバは山地の森林環境においても繁殖する個体群がみられるようになり、事実、本会会員の調査によっても計画地周辺でサシバとオオタカの生息が繁殖期に確認されている。したがって、オオタカとサシバも上位性の注目種として取り上げることを求める。

(6)計画地周辺の脆弱地盤について

配慮書に対する広島県知事の意見でも述べられているように、計画地とその周辺は土砂災害特別警戒区域等に指定され、地盤が脆弱であることが予想される地域である。尾根筋で掘削工事を行い、広大な範囲で裸地を生ずる本事業が、近年相次ぐ集中豪雨による沢崩れの原因となることが予想される。 いったん沢崩れが発生すれば、その周辺では大規模な砂防工事を実施することとなり、その砂防ダム工事によるクマタカの繁殖への影響も懸念される。また、クマタカだけでなく、周辺の沢沿いで繁殖するヤイロチョウやアカショウビンなどへの影響も同様である。そのため、少なくとも土砂災害特別警戒区域とその隣接地での風車の建設には慎重を期すべきである。

以上

(仮称)球磨村風力発電事業環境影響評価方法書に対する意見書

令和3年2月22日

株式会社エルゴジャパンエナジー
代表取締役 齋藤 稔 様

日本野鳥の会熊本県支部
支部長 田中 忠(公印省略)
〒861-8064
熊本県熊本市北区八景水谷3-7-38

公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一(公印省略)
〒141-0031
東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル

(仮称)球磨村風力発電事業 環境影響評価方法書に対する意見書

貴社が作成された(仮称)球磨村風力発電事業に係る環境影響評価方法書(以下、方法書という)に対し、下記のように意見を提出いたします。

(1)計画地とその周辺の自然環境および鳥類全般について

方法書に記載されている対象事業実施区域(以下、計画地という)およびその周辺は、石灰岩が隆起して形成された地形から成り、北には球泉洞などの鍾乳洞が見られるほか、北西から西部にかけて石灰岩の露頭が見られる地域一帯にある。計画地は、山口県秋吉台や福岡県北九州市の平尾台などと同様に丘陵地を形成する草原地帯であると考えられ、熊本県内では阿蘇地域と同様に数少ない草原性鳥類が生息する特別な生態系が維持されており、自然環境の保全上とても重要な地域である。

また、計画地は草原と保安林からなる譲葉鳥獣保護区内にあり、保護区の面積の約7割にあたる草原部の全域を覆うように風車の建設を計画しており、その空間で風車が稼働することで、さえずり飛翔を行う草原性のセッカおよび熊本県の鳥にも指定されているヒバリをはじめ、クマタカなどの希少猛禽類や多くの野鳥がバードストライク等の影響の危機にさらされる。さらに、計画地とその周辺地域は、現在日本で非常に減少している草原環境と森林環境を併せもつ貴重な地域である。また、芋川、庄本川、告川、漆川内川、佐敷川などの源流部を有する水環境が豊かな重要な地であり、鳥類以外にも昆虫や爬虫類、両生類、哺乳類などの数多くの生物が生息しており、生物多様性に富んだ貴重な地域である。

方法書3章の表3.1-27「文献その他の資料による動物の重要な種」では、16目35科85種の鳥類が確認されている。しかし、計画地では稀にしか出現しないと思われる水鳥やシギ・チドリなどが記載されている一方で、当該地域では真っ先に記載すべきと考えられる草原性鳥類の種名の記載がないことは大きな問題である。特に、計画地では優占種と考えられるセッカや夏鳥のホトトギスの記載がないのは、文献調査で参照した文献に不足があったからだと考える。以上のような観点から、文献調査を含めて調査方法等を再検討する必要がある。

(2)計画段階の配慮事項

方法書4章の4.3.1騒音及び超低周波音のうち3.評価では、「…騒音及び超低周波音の影響の程度を把握し、必要に応じて環境保全措置を検討する。」と記載されているが、保全措置の内容について具体的な記述がない。保全措置の前提として、特に超低周波音の人への影響だけでなく、野鳥や牧場で肥育されている牛等の家畜への影響事例の記載が必要であると考える。もし事例がない、または不足する場合は、貴社が現地で調査する必要がある。

(3)環境影響の考え方について

方法書4章の4.3.3動物の3.評価では、「鳥類は風車の稼働に伴うバードストライク等の重大な環境影響を受ける可能性がある」と記載されている。しかし、影響の回避又は低減が将来的に可能であるものと評価する根拠として、「クマタカ等の猛禽類調査や渡り鳥の移動状況調査の実施」について触れており、また、鳥類やコウモリ類が上空を利用することへの影響を想定し、「風力発電機設置位置等の情報が必要となるため、事業計画の熟度が高まる方法書以降の手続きについて適切に調査、予測及び評価を実施する。」と記載されている。しかし、熟度が高まるとはどのような状況を指すのかが明らかでなく、また、具体的な影響の回避・低減策や保全措置をどのようにとるのか等の記載がないため、新たに方法書に記載すべきである。

(4)経済産業大臣と県知事意見の順守について

方法書の5章および7章に記載されている経済産業大臣および県知事の意見を順守した調査や保全措置を行うことは必須である。特に経済産業大臣は「クマタカの衝突事故と移動阻害による希少猛禽類への影響」「サシバの渡り経路と渡り鳥への影響」を取り上げ、県知事は、「低周波音が、野生動物の生存や繁殖、個体数等に対して及ぼす影響」「猛禽類の中には、熊本県西部、中部及び東部を通過するルートで渡りを行う個体群も存在するため、事業実施により影響を及ぼさないよう検討すること」を意見している。計画地が鳥類にとって重要な繁殖地となっているという視点を踏まえ、質、量ともに十分な調査を実施し、鳥類への影響を貴社が見解で示すような低減ではなく、回避することが必須である。それを順守するには、自然環境全般に対する幅広い視野を持った詳細な現地調査を実施する必要がある。

(5)鳥類調査の方法について

方法書の6章にある調査、予測及び評価の手法(動物)では、希少猛禽類と渡り鳥において定点観察法による調査の実施が計画されている。特に計画地ではクマタカの生息地およびサシバの渡り経路の存在が懸念されるが、計画地周辺には水田を有する貴重な里山環境もあり、サシバやツミなどの希少猛禽類が繁殖していることも視野に入れて調査を実施し、それらの繁殖状況を詳細に把握する必要がある。

一般鳥類調査における任意観察調査とラインセンサス法による調査では、特に近年個体数が減少していると言われるアカショウビンやヤイロチョウ、オオルリ、クロツグミ、サンコウチョウなどの夏鳥が、水源を有する保安林で繁殖し、計画地を飛翔する可能性が高く、留意しなければならない。また、カッコウ、ホトトギス、ツツドリなどのトケン類の生息の可能性にも十分留意して調査すべきである。なお、熊本県レッドリストで絶滅危惧ⅠA類(CR)に指定されているコジュリンは、冬期に湯浦川河川で確認されていることから、夏期に草原環境で繁殖している可能性に注視して調査する必要がある。また、計画地は熊本県レッドリストで絶滅のおそれのある地域個体群に指定されているホオアカの繁殖地の南限となっている可能性があるので、留意する必要がある。

また、計画地は、悪天候時に渡り鳥の緊急避難先になっていることも考えられる。そのため貴社は、希少種だけでなく一般種や渡り鳥を含めた鳥類全般の空間飛翔調査等を実施し、この地域の鳥類の生息空間に与える影響を評価することは重大な責務である。

さらに、鳥類が夜間も移動していることは広く知られるようになっているが、計画地でも夜間に鳥類が飛翔する可能性がある。夏鳥のヨタカをはじめ、特にフクロウ類の夜間調査は繁殖期だけでなく、年中実施する必要がある。また、冬期はコミミズクやトラフズクなどに対する調査も必要である。他にも渡り鳥の存在も考えると、年間を通して夜間レーダー調査を実施したうえで、風車建設による鳥類への影響を評価すべきである。

いずれにしても、計画地ではクマタカやサシバをはじめ、ハチクマやノスリ、ハイタカやツミなど上昇気流を利用して生活する鳥類が多いため、その生息地利用の状況を詳細に把握することが、バードストライク等の鳥類への甚大な影響の回避の観点から重要となる。

さらに、計画地周辺には貴社の他に、大関山、亀嶺峠、矢筈岳、宮ノ尾山にかけて風力発電事業の計画がある。自社の計画地における影響評価を実施するだけでなく、他社とも互いに情報を共有して累積的影響を評価するという視点で、繁殖する希少種はもちろんのこと、一般種や渡り鳥等を含めて風車の建設がこの地域一帯の鳥類に与える影響を評価すべきである。

(6)アセス図書の縦覧方法について

アセス図書の閲覧は、環境影響評価法により定められているとは言え、縦覧期間が1~1.5か月と短く、また、縦覧場所も限られており、インターネット上で閲覧は可能であるが、印刷ができないことが多いのは不便である。数百ページもあるアセス図書を縦覧場所、またはパソコン上のみで閲覧しながら意見書を作成することは、現実的ではない。貴社はPDFでの提供をしているとはいえ、作成した意見書の内容の誤りの有無をアセス図書と整合して確認するのに、パソコン上では不合理である。アセス図書の内容が、実際の計画地の状況と齟齬がないかを地域住民や利害関係者等が精査できることこそが、環境影響評価の信頼性を確保し、地域住民等との合意形成を図るうえで不可欠である。そのため、閲覧可能期間に限らず、縦覧期間後も地域の図書館などで、アセス図書を常時閲覧可能にし、また、随時インターネットでの閲覧とダウンロード、印刷を可能にすべきである。すぐにはアセス図書を常時公開することが難しいようであれば、多くの事業者が実施しているように、関係する自然保護団体等に紙媒体でのアセス図書を提供すべきである。

以上

(仮称)えりも地区風力発電事業に係る環境影響評価方法書に対する意見書

日野鳥発第2020-036号

令和3年2月19日

株式会社afterFIT
代表取締役社長 谷本 貫造 様

公益財団法人日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一
東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル

(仮称)えりも地区風力発電事業に係る環境影響評価方法書に対する意見書

現在、貴社が住民等から意見を募集している(仮称)えりも地区風力発電事業に係る環境影響評価方法書(以下、方法書という)に対して、環境影響評価法第8条に基づき、環境の保全の見地から下記のとおり意見を述べる。

(1)事業全体について

貴社が作成した方法書に示されている対象事業実施区域(以下、計画地という)とその周辺は、風車の建設による影響を受けやすいシマフクロウ、タンチョウ、オオワシ、オジロワシ、クマタカ、イヌワシ、オオタカ、ハヤブサ、クマゲラ、オオセグロカモメ、ウミネコ、オオジシギ、ヒメウ、ケイマフリ、アカモズなど、環境省および北海道によるレッドリスト掲載種等の希少鳥類の生息地やガン・ハクチョウ類の渡り・移動経路と重なっており、この地域が希少猛禽類のホットスポットであることが明らかになっている。これらのことは、配慮書に対する北海道知事意見や経済産業大臣意見および配慮書や方法書における専門家等へのヒアリング結果でも述べられており、環境省が作成した環境アセスメント環境基礎情報データベースシステム(EADAS)にある風力発電における鳥類のセンシティビティマップ(陸域版)でも注意喚起A3およびBの注意喚起メッシュとして示されている。

クマタカにおいて風車に衝突死するバードストライクが発生することは、武田(2013)によりすでに国内で確認されている。また、風車の稼働によるクマタカの営巣地放棄については、三宅(2020)で報告されている。オジロワシでは国内でも多くのバードストライクが発生しており(浦 2015)、国内における希少猛禽類の保全上、大きな問題となっている。また、タンチョウやシマフクロウは空中架線等への衝突事例が多く確認されていることから(住吉 1989、環境省 2014)、電線や回転する風車ブレードなど視認しづらい人工物への衝突リスクが潜在的に高い種と考えられ、この他に、国内でバードストライクの事例が発生している、オオワシ、イヌワシ、ハヤブサ、ヒメウ、オオジシギ、オオセグロカモメ、ウミネコの生息が確認されている(浦 2015)。さらに、オオワシやオジロワシ、ガン・ハクチョウ類の移動経路上に風車を建設した場合には、障壁影響が生じることも国内事例としてすでに確認されている(Ura et al. 2017)。

それらを踏まえて希少鳥類等の保全の観点から考えると、風車の建設がこれらの希少鳥類に与える影響は甚大であると予測され、当該地域は風車建設には不適切であり、計画地として除外されるべき地域である。そのため、本事業は現地調査の実施および環境影響評価準備書の作成に進まずに、現段階をもって事業を中止すべきである。

以下に、現地調査を行う場合の注意点等を述べるが、(2)以降の意見は、前述の立場に立ったうえで方法書の記載内容に対して意見を述べるものであり、現地調査の実施および準備書の作成に進むことを容認するものではない。

(2)一般鳥類調査について
  • 方法書に記載されている方法では、計画地とその周辺の鳥類相を詳細に把握することはできない。上記のように計画地には希少鳥類が多いが、希少種は調査中における出現確率が低いため、それらの生息状況を詳しく把握するには、ラインセンサス調査およびポイントセンサス調査において、事前に調査日数を設定せず、繁殖期等の一定期間内で鳥類の出現種数が飽和するまで調査を継続すべきである。また、計画地とその周辺にはエゾフクロウなど夜行性の鳥類が生息している可能性があるので、任意調査として夜間の音声録音調査等を実施して、夜行性鳥類の生息状況についても詳しく調べるべきである。
  • 表6.2-8(1)ではラインセンサス調査について、設定ルートで1ラインあたり早朝、午前、午後の3回ずつ実施すると記載されているが、日の出後6~13時間後など時間帯によっては鳥類の出現が少なくなるので(由井 1992)、そのような時間帯での調査は避けるべきである。
  • 表6.2-8(1)にあるラインセンサス調査の方法の説明には、「球体モデルによる風車への鳥類衝突数の推定法(由井ほか 2013)」等を参考にする、また、確認高度を記録する、とあることから、貴社は空間飛翔調査を兼ねた鳥類相調査を実施しようとしているものと考える。そうであれば、すべての風車設置予定位置の周辺で空間飛翔調査を実施し、計画地全体における鳥類の衝突確率等を計算できるように調査地点の設定等をやり直すべきである。
(3)希少猛禽類調査について
  • 対象事業実施区域周辺は、日高山脈で繁殖するシマフクロウだけでなく道東や十勝方面から日高山脈以西へと繋がるシマフクロウの分散ルート上にあたると想定される。現在把握されている生息地に限らず、区域周辺の小河川を分散中の個体が利用している可能性もある。専門家の適正な助言を得て、各河川に録音機を設置して生息状況をしっかりと把握すべきである。
  • 表6.2-17(1)によると、希少猛禽類調査ではクマタカの生息を想定した調査時期や期間を設定しているが、計画地にはクマタカ以外の希少猛禽類(フクロウ類を含む)も生息しているので、それらのすべてを対象として、適切な調査時期や期間、時間等を設定すべきである。
  • 図6.2-5(4)から(21)にかけて、希少猛禽類の調査地点における上空視野および地上視野が地図上に示されているが、上空視野についてはすべて円形の視野が確保できることになっている。しかし、実際には現地の微地形や樹林の存在等の影響により、地上にある調査地点からはここにあるような円形の視野を確保できるとは考えられない。そのため貴社は、あらためて実際の視野を示す視野図を作成し、そのうえで計画地の中で視野が確保できていない場所を確認したら、その視野の隙間を埋め、できる限り計画地のすべての範囲で視野を確保して調査できるように調査地点を増やすべきである。
  • 表6.2-7(2)では、希少猛禽類調査における観察定点17地点のうち、希少猛禽類の出現状況に応じて適宜6地点を選択して調査を実施するとある。しかし、計画地では全域において希少猛禽類が生息している可能性があるため、17地点すべてで同じ日に調査をし、希少猛禽類の生息状況や行動を詳しく把握すべきである。そのことは、表6.2-8(2)にある定点観察調査の方法の説明に、球体モデルによる風車への鳥類衝突数の推定法(由井ほか 2013)」等を参考にする、また、確認高度を記録するとあることからも言える。そのうえで表6.2-18にある各月3日間×2回の調査を実施すべきである。

なお、希少猛禽類調査にあたっては、飛翔位置を正確に把握できるよう、レーザーレンジファインダー等の電子機器を使用すべきである。また、猛禽類は特に視界の悪い荒天時にバードストライクが多く発生する可能性があるため、調査日数を増やすなどして、荒天時についても飛翔等の行動のデータ取得に努めるべきである。

(4)渡り鳥調査について
  • 表6.2-18(1)に渡り鳥調査の調査日数として、各月1日間または2日間を3回と記載されているが、特に秋は荒天時に鳥類の渡りが減少することが知られているため、渡り鳥調査はできるだけ好天時に実施すべきである。一方、渡り鳥は、視界の悪い荒天時にバードストライクが多く発生する可能性があるため、調査日数を増やすなどして、荒天時の飛翔行動についてもデータ取得に努めるべきである。
  • 図6.2-5(22)から(33)にかけて、渡り鳥の調査地点における上空視野および地上視野が地図上に示されているが、上空視野についてはすべて円形の視野が確保できることになっている。しかし、実際には現地の微地形や樹林の存在等の影響により、地上にある調査地点からはここにあるような円形の視野を確保できるとは考えられない。そのため貴社は、あらためて実際の視野を示す視野図を作成し、そのうえで計画地の中で視野が確保できていない場所を確認したら、その視野の隙間を埋め、できる限り計画地のすべての範囲で視野を確保して調査できるように調査地点を増やすべきである。
  • 表6.2-8(2)にある渡り鳥の定点観察調査および帯状区調査の方法の説明には、「球体モデルによる風車への鳥類衝突数の推定法(由井ほか 2013)」等を参考にする、また、確認高度を記録するとあることから、貴社は空間飛翔調査を兼ねた渡り鳥調査を実施しようとしているものと考える。そうであれば、すべての風車設置予定位置の周辺で空間飛翔調査を実施し、計画地全体における渡り鳥等の衝突確率等を計算できるように調査地点の設定等をやり直すべきである。
  • レーダー調査の実施は春および秋の各季3日間程度としているが、渡り鳥調査と同様、月3回程度は昼夜問わずレーダー調査を実施し、定点観察調査および帯状区調査の結果とも比較しながら計画地とその周辺における渡り鳥の飛翔や移動の状況を詳しく把握したうえで、鳥類等への影響を評価すべきである。

なお、渡り鳥調査にあたっては、特に猛禽類やガン・ハクチョウ類など大型鳥類の飛翔位置を正確に把握できるよう、レーザーレンジファインダー等の電子機器を使用すべきである。

(5)ドローンによる調査について

タンチョウ調査において、ドローンを用いた調査を実施するとあるが、繁殖には影響のないように十分留意すべきである。タンチョウがドローンの飛行に対して、警戒、あるいは逃避行動を示した場合、調査は即刻中止すべきである。また、高倍率ズームカメラを搭載できるドローンのモデルを選択するなどして、特に繁殖するタンチョウに近付きすぎないような配慮も必要である。ドローンを用いた繁殖期のタンチョウ調査等では、釧路湿原や千歳市舞鶴遊水地で事例があるので、参考にされたい。

(6)淡水魚類及び底生動物の調査について

図6.2-5(38)では、歌別川を除いて各河川とも1地点で調査地点が設定されている。歌別川同様に流路が長く保護水面の設定がされているニカンベツ川においても、歌別川同様に複数地点での調査を実施すべきである。

(7)累積的影響評価について

方法書では、計画地がえりも町笛舞を中心とする北部、えりも町新浜を中心とする西部、えりも町歌別を中心とする東部の3つの地域に分かれているが、環境影響をそれぞれの地域ごとに評価するだけではなく、これらを一つの計画地として捉えて、累積的な影響の評価についても具体的かつ慎重に実施することを求める。

また、この地域には他の事業者による風力発電事業の計画もあることから、他の事業者の計画であっても、計画通りに風車が建設された状況を想定し、お互いの事業者が計画段階であっても情報を共有し、累積的な影響の評価を慎重に実施することを求める。

以上


【引用文献】(アルファベット順)

  • 環境省.2014.レッドデータブック2014 鳥類.環境省、東京.
  • 三宅 武.2020.風力発電開発で営巣地を放棄したクマタカ.野鳥841(2020年1月号):26-27.(公財)日本野鳥の会,東京.
  • 住吉 尚.1989.釧路のタンチョウ-保護の歴史と現状.世界の動物 分類と飼育10-II (ツル目)(監修:黒田長久、森岡弘之):121-124.東京動物園協会、東京.
  • 武田恵世.2013.風力発電機の鳥類の繁殖期の生息密度への影響.日本鳥学会誌62(2):135-142.
  • 浦 達也.2015.風力発電が鳥類に与える影響の国内事例.Strix 31:3-30.
  • Ura T., Kitamura W., Yoshizaki S. 2017. Case examples of barrier effects of wind farms on birds in Japan. Conference on Wind energy and Wildlife impacts 2017 Book of Abstracts:246-247.
  • 由井正敏.1992.野鳥調査とデータ解析の手法.環動昆4(1):40-44.

(仮称)苫東厚真風力発電事業に係る環境影響評価方法書に対する意見書

日野鳥発第2020-037号

令和3年2月19日

Daigasガスアンドパワー
ソリューション株式会社
代表 後藤 暢茂 様

公益財団法人日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一
東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル

(仮称)苫東厚真風力発電事業に係る環境影響評価方法書に対する意見書

現在、貴社が意見募集をしている(仮称)苫東厚真風力発電事業に係る環境影響評価方法書(以下、方法書という)に対して、環境影響評価法第8条に基づき、環境の保全の見地から下記のとおり意見を述べる。

(1)鳥類保全の観点からの意見

貴社が作成した方法書に示されている対象事業実施区域(以下、計画地という)を含む勇払原野は、これまでに277種の鳥類が観察されている豊かな鳥類相を有する地域である(石城 1987)。

計画地内には、マガン、タンチョウ、シマクイナ、ヘラシギ、オジロワシ、オオワシ、チュウヒ、ハヤブサといった国内希少野生動植物種および天然記念物に指定されている鳥類、およびウズラ、サンカノゴイ、シロチドリ、オオジシギ、ウミネコ、ハイタカ、トラフズク、アカモズなど準絶滅危惧種を含め環境省および北海道のレッドリスト掲載種が生息し、加えて、ガン・ハクチョウ類やシギ・チドリ類の渡り・移動経路とも重なっている(日本野鳥の会 未発表)。

当地域はこれらの鳥類の生息において、国内でも有数の生物多様性ホットスポットになっている。これらのことは、配慮書に対する北海道知事意見や環境大臣意見および経済産業大臣意見、また、専門家等へのヒアリング結果でも述べられている。また、環境省が作成した環境アセスメント環境基礎情報データベースシステム(EADAS)に掲載の「風力発電における鳥類のセンシティビティマップ(陸域版)」でも注意喚起A3等の注意喚起メッシュとして示されている。

このような豊かな鳥類相を有する地域であることから、風車が建設されればバードストライクや障壁影響(風車の存在により移動経路等が変わり、エネルギーロスや生息地利用の変化が生じる影響)が発生する可能性が極めて高い。

たとえばツル科の鳥類について、これまでにタンチョウではまだバードストライクが発生していることは確認されていないが、国外では近縁種のクロヅルで生じていることが確認されている(Munoz 2008a、Portulano 2006))。また、タンチョウは電線等への衝突事例が多く確認されていることから(住吉 1989)、電線や回転する風車ブレードなど視認しづらい人工物への衝突リスクは潜在的に高いと考えられる。さらに、ツル類は生息地放棄の要因となる障壁影響が起きやすい種であるとされ(Hötker et al. 2006)、実際に国内でもタンチョウと同属のナベヅルおよびマナヅルの渡りの時期に障壁影響が発生したことが長崎県で確認されている(浦 2015)。障壁影響を起こしやすい鳥類において、ねぐらと採食場所の間などのように日常的に利用する空間に風車建設地が存在すると、その周辺で利用していた好適地を利用しなくなり、時には従来の生息地とは離れた質の劣る生息地にまで移動してしまうこととなり(Drewitt & Langston 2006)、また、障壁影響が日常的に生じると飛行に係るエネルギー消費が増えるため、結果的に繁殖成功率や生残率を低下させる可能性がある(Masden et al. 2010)。

オジロワシでは海外、国内とも数多くのバードストライクが発生しており(浦 2015)、国内における希少猛禽類の保全上でも大きな問題となっている。

チュウヒについては、国内ではバードストライクが生じている事例は報告されていないものの、生態が近い近縁種のヨーロッパチュウヒやハイイロチュウヒ、ヒメハイイロチュウヒではスペイン(Rivas et al. 2004、Canizares 2008、Munoz 2008b・2008c・2008d、Munoz et al.2009、Ruiz 2008)やアメリカ(Erickson et al.2001、Johnson et al.2001、Smallwood and Thelander 2004、Kingsley and Whittam 2007)、ドイツ(Durr 2004、Kingsley and Whittam 2007)、アイルランド(Wilson et al. 2015)でバードストライクが確認されている。また、浦ほか(2020)では、チュウヒがオジロワシ等の外敵を追い払う時や繁殖期のディスプレイフライト時、日の出後の旋回上昇時、雌雄ペアでの飛翔時に風車に衝突する可能性が高くなる高度で飛翔することが多く、繁殖期のなわばりの範囲内に風車が建設されている場合には、チュウヒのこれらの行動により、バードストライクが発生する危険性が高くなることを指摘している。これらより、チュウヒは風車への衝突リスクが潜在的に高い種であると考えられる。

この他に、国内でバードストライクの事例があるオオワシ、ハイタカ、ハヤブサ、オオジシギ、ウミネコの生息が計画地で確認されている(浦 2015)。

マガンやハクチョウ類などの大型鳥類は、細かい羽ばたきができず空中での飛行操作性が低く、悪天候時は風車を避けるような行動を取りがたく、衝突リスクが高い種である(Gove et al. 2013)。実際に海外ではマガンを含むガン類で多くのバードストライクが発生しており(Rees 2012)、また、風車建設地では風車から半径で平均 373m(146–559m)の範囲で生息地放棄が起き(Hötker et al.2006)、さらに障壁影響も生じやすく(Hötker et al.2006)、風車の建設による影響が大きい鳥類であると考えられる。また、ねぐらや採食場所など、マガンが着地地点から飛び立って、一般的な大きさの風車のローター高である高度120mを超えるには、距離にして4,000m程度かかることが知られており(環境省 2010)、マガンのねぐらや採食場所がある場所から半径4,000m以内に風車を建設すると、バードストライクまたは障壁影響が発生する可能性が高い。ガン・ハクチョウ類の移動経路上に風車を建設した場合に、障壁影響が生じることが国内事例としてすでに確認されていることから(Ura 2017)、計画地を利用するガン・ハクチョウ類においても、風車建設後に障壁影響またはバードストライクが生じると考えられる。

これらを踏まえて希少鳥類等の保全の観点から考えると、風車の建設がこれらの希少鳥類に与える影響は甚大であると予測され、当該地域は風車建設には不適切なことから、計画地として除外されるべき地域である。そのため、本事業は環境影響評価準備書の作成に進まずに、現段階をもって事業を中止すべきである。

(2)希少鳥類の生息地保全の観点からの意見

計画地がある苫小牧市東部から厚真町、およびむかわ町にまたがる勇払原野は、ラムサール条約湿地であるウトナイ湖を有し、また、ウトナイ湖・弁天沼を含む計画地の西側と入鹿別川から鵡川流域に至る計画地の東側の二区域はバードライフ・インターナショナルが基準を定め、(公財)日本野鳥の会が基準A4iとして指定する重要野鳥生息地(IBAs)(日本野鳥の会 2010)、および生物多様性の保全の鍵になる重要な地域(KBA)に選定されている。また、計画地は当会が勇払原野の環境を後世に残し、広域にわたる保全を実現するために提案している勇払原野保全構想の対象エリアに含まれている(日本野鳥の会 2006)。これらの選定区域は、希少種を中心とした野生動植物の重要な生息地として世界中に周知されており(日本野鳥の会 2010)、また、自然度が高い湿原、草原、湖沼等がまとまった面積で存在することから、その隣接地域は選定区域と連続する多様な動植物の生息地となっている。

計画地は勇払原野保全構想の対象エリアに含まれ、ラムサール条約湿地、IBAsおよびKBAに隣接および囲まれる状況となっているが、計画地で風車を建設することは、このような自然保護、希少種保全上の重要な場所に大きな影響を及ぼすことになる。当計画地は、1960年代に始まった土地造成工事後に長年放置されてきたのち、自然が回復し、長年保たれてきた市街地の隣接地域としては非常に豊かな動植物相(石城 2015)を形成しており、計画による自然環境への影響は極めて大きいと予測されることから、計画地として選定されるのには不適切な場所であり、現地調査および環境影響評価準備書の作成に進まず、現段階で事業を中止すべきである。

以下に、現地調査を行う場合の注意点等を述べるが、(3)以降の意見は、前述の立場に立ったうえで方法書の記載内容について意見を述べるものであり、準備書の段階に進むことを容認するものではない。

(3)調査方法全般について

6.2-1(343)から6.2-7(349)頁に、「専門家等からの意見の概要及び事業者の対応」が記載されている。そのうち専門家BおよびCは現地鳥類調査の方法や留意点等を詳しく述べている。鳥類の保全のために実際に希少鳥類等の調査や研究をしている者の意見と考えられることから、貴社が現地調査を実施するにあたっては、専門家BおよびCの意見を検討するだけでなく、実際に取り入れる形で調査を計画、実施し、希少鳥類の繁殖に対し調査実施による影響を与えないようにしながら、希少鳥類等の生息状況に関する詳細なデータを取得すべきである。

(4)個別の項目について
①表6.2-2(20)および(21)について
  • 5.調査期間等-(1)-②鳥類-a.鳥類について、ポイントセンサス調査を4~7月は各月で実施し、5月は2回実施するとあるが、計画地で繁殖する鳥類の種数がもっとも多くなる6月も2回実施すべきである。
    計画地には希少種が多く繁殖するが、希少種は調査中における出現確率が低いため、それらの生息状況を詳しく把握するには、事前に調査日数を設定せず、繁殖期等の一定期間内で鳥類の出現種数が飽和するまで調査を継続すべきである。特にウズラとアカモズが生息する可能性がある環境では、そのように調査すべきである。
  • 5.調査期間等-(1)-②鳥類-b.希少猛禽類について、チュウヒを想定し各月1回3日間の調査を実施するとあるが、貴社もチュウヒを上位性の注目種として選定しているように、チュウヒは計画地ではもっとも生息動向に留意すべき鳥類である。そのため、貴社は各月1回3日間の調査頻度に拘らず、4~8月は各月複数回の調査を実施するなど、現地でのチュウヒの繁殖や出現状況に合わせ、適切な調査頻度で調査すべきである。
  • 5.調査期間等-(1)-②鳥類-eタンチョウについても、上記b.希少猛禽類について述べたことと同様に調査すべきである。
②表6.2-2(22-1)について
  • ポイントセンサス法による調査で重要種(マガン、タンチョウ、シマクイナ、ヘラシギ、オジロワシ、オオワシ、チュウヒ、ハヤブサ、ウズラ、サンカノゴイ、シロチドリ、オオジシギ、ウミネコ、ハイタカ、トラフズク、アカモズ等)が確認された場合、直ちにそれらを対象にした調査(希少猛禽類調査または任意観察調査)を実施すべきである。
  • 希少猛禽類における定点観察法による調査について、設定した観察定点からの視野を示す視野図を作成し、計画地のうち風車設置対象区域がすべて視野に入っているか確認し、もし視野に入っていない場所があれば、観察定点を増やす等の措置が必要である。ここに記載されている調査方法から、貴社は空間飛翔調査を行うことが読み取れるが、そうであれば、すべての風車設置対象区域で空間飛翔調査を実施し、風車設置対象区域全体における鳥類の衝突確率等を計算できるように観察定点を設置しなければならない。
  • 視野の広い地点と移動定点を組み合わせて調査すると記載されているが、移動定点調査を行う調査員であっても、チュウヒの営巣があると考えられる地点から半径500m以内には入らず、視野の広い地点に配置されている調査員と追跡観察を交代すべきである。
  • 渡り鳥における定点観察法による調査については、レーザーレンジファインダーなどの機器を使用して、なるべく正確な飛翔位置や高度を計測すべきである。そのうえで衝突確率の計算や影響を評価すべきである。
③表6.2-2(35)について
  • ③ブレード等への接触-鳥類(猛禽類、渡り鳥)における基本的な予測方法として、年間衝突予測数の算出を環境省モデルおよび由井モデルにより行うとある。しかし、このような鳥類による風車への衝突確率計算モデルは年々新しいモデルが提唱されており、環境省モデルおよび由井モデルのみに拘らず、海外文献も参照して最新かつ正確なモデルでも衝突確率を計算すべきである。
④表6.2-2(42)について
  • チュウヒの餌種・餌量調査(ネズミ類、トガリネズミ類の捕獲調査)について、チュウヒが好む採餌・探餌場所は、単なる餌種や餌量よりも微地形(水路沿い、池沼の縁、植生やその密度の違い等)や季節による餌種の分布状況によって決まるため、図6.2-5(1-1)または図6.2-7(2-1)にある(捕獲)調査地点で調査するだけでは、環境類型ごとのネズミ類やトガリネズミ類の生息密度を把握することはできても、チュウヒの採餌・探餌行動に影響を与えると考えられる環境要因と餌種や餌量とを結び付けて採餌環境の好適性やポテンシャルを把握することはできない。採餌環境の好適性やポテンシャルを正確に把握するには、チュウヒの採餌・探餌行動に影響を与える環境要因と餌種や餌量との関係が把握できるような調査を実施しなければならない。
(5)累積的影響評価について

方法書では、計画地が苫東厚真火力発電所の北側の地域と浜厚真駅から浜田浦駅の間にある海岸部地域の2つに分かれているが、環境影響をそれぞれの地域ごとに評価するだけではなく、これらを一つの計画地として捉えて累積的な影響の評価を具体的かつ慎重に実施することを求める。

以上


【引用文献(アルファベット順)】

  • Canizares, D. 2008. Plan de seguimiento faunistico del parque eolico de Cerro Vicente y ampliacion. Informe Annual 2006-2007.
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  • 石城謙吉.1987.勇払原野一帯の鳥類相.北海道大學農學部 演習林研究報告, 44(2):689-713.
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  • Munoz, R. A. 2008c. Informe anual del seguimiento ambiental. Parques eolicos ECYR. Parque eolico “Hinojal”. Informe ano 2008.
  • Munoz, R. A. 2008d. Informe anual del seguimiento ambiental. Parques eolicos ECYR. Parque eolico “El Ruedo”. Informe ano 2008.
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(仮称)山形県遊佐町沖着床式洋上風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する意見書

(仮称)山形県遊佐町沖着床式洋上風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する意見書

令和3年2月15日 提出

項 目 記入欄
氏 名
  1. 日本野鳥の会山形県支部 支部長 簗川 堅治
  2. 公益財団法人 日本野鳥の会 理事長 遠藤 孝一 (公印省略)
住 所
  1. 〒994-0081 山形県天童市南小畑4-8-33
  2. 〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
計画段階配慮書についての環境の保全の見地からの意見

この度、貴社が作成された(仮称)山形県遊佐町沖着床式洋上風力発電事業に係る計画段階環境配慮書について、下記の通り意見を提出します。

(1)現在、貴社が計画段階環境配慮書(以下、配慮書という)を縦覧している(仮称)山形県遊佐町沖着床式洋上風力発電事業について、事業実施想定区域(以下、計画地という)周辺に既に計画が進められている洋上風力発電事業が7事業ある。そのため、貴社が事業を進めるにあたっては、他の事業者7社と協議・調整を図った上で、調査方法の統一をするなどして不足しがちな海鳥のデータの収集を行うこと、また、陸上においては鳥類およびその生息地に調査圧が過大になることを避けつつ、適切な環境影響評価を実施していただきたい。

(2)計画地東部の海岸沿いでは複数の風力発電施設(以下、風車という)が稼働していることから、貴社はこれらの風車との複合的な影響(累積的影響)も評価する必要がある。方法書の作成に進む前に、先行事業のアセス図書を含む既存の情報等を用いて累積的影響を評価した結果を方法書に記載するなどして、本件事業単独ではなく、複数事業が計画地周辺の鳥類の生息に及ぼす影響を評価していただきたい。

(3)計画地周辺の海鳥の生息状況の確認にあたり、質・量ともに十分な調査をすべきであるが、陸生鳥類と違い分布や生態の調査が非常に困難なことから、どのような方法で実施、影響の予測・評価、保全措置を講じるのか、方法書において具体的に提示すべきである。

特に海鳥の飛来が多い春・秋の渡りの時期および冬季については、十分な調査を実施し、影響の予測・評価を行うべきである。

(4)海鳥はその日や時間の餌資源の分布や海象等により洋上での分布位置が変わるため、少ない調査の結果から洋上風車によるバードストライクの発生確率等を調査・予測・評価するのは難しい。そのため、貴社のこの事業計画においては、経済産業省による発電所に係る環境影響評価の手引き等に示されている方法よりも綿密な調査を実施するよう求める。特に計画地周辺では渡り鳥が重要な調査対象となるが、1シーズンだけでは影響を予測、評価するための情報が不足するため、複数年にわたる調査が必要である。

また、カモ類が夜間に渡りを行うことはよく知られているが、オオミズナギドリやアビ類、ウミスズメ類も夜間に渡りを行うと推測されている。そのため、日中のみならず夜間にもバードストライクが発生する可能性があることを念頭に置いた調査が必要であり、特に、鳥類の飛翔の確認が難しい夜間については、レーダー等の観測機器を用いるなどして十分な調査・予測・評価を行っていただきたい。

(5)計画地は、オオミズナギドリが新潟県の粟島などの繁殖地からの採餌に利用する海域であり、渡りの時期にも利用する。また、計画地のある海域を御積島で繁殖している可能性があるカンムリウミスズメが採餌に利用していることも考えられる。そして、アビ類、ウミスズメ類などが渡りの時期に利用し、冬季の生息域ともなっている。

さらに、計画地の周辺はハチクマ、ハイタカ、サシバなど希少猛禽類の渡りルートの一部にもなっている。そして、海域を含む計画地の周辺はヒシクイ、ハクガン、シジュウカラガンなどのガン・ハクチョウ類にとって主要な越冬地である八郎潟(秋田県)と福島潟(新潟県)との間の渡りの経路や中継地にもなっている。そのため、計画地での風車の建設および稼働によりこれらの鳥類でバードストライクが発生し、また、障壁影響を含む生息地放棄により生息域および渡りルートを変更させるといった影響を及ぼすことが懸念される。そのため、海鳥や希少猛禽類およびガン・ハクチョウ類などの鳥類の渡りと生息域に対するこれらの影響の回避または低減するための保全措置の案を計画の初期段階から検討すべきである。

(6)計画地周辺では、オジロワシおよびチュウヒといった国内希少野生動植物種の生息が確認されていることから、そのことを念頭に置いた情報収集等を行い、綿密な調査を方法書作成前の段階で実施し、バードストライクまたは障壁影響を含む生息地放棄等の影響が発生することが予測された場合は、影響を回避または低減するための保全措置の案を計画の初期段階から検討すべきである。

以上、計画地およびその周辺で環境影響評価を実施するにあたっては、利害関係者や専門家とも協議したうえで、経済産業省による発電所に係る環境影響評価の手引きにあるような一般的な環境影響評価よりも詳しい調査の実施を求めるところである。
貴社においても、風車の建設にあたって、鳥類の生息状況を的確に把握し、地域の優れた自然環境と生物多様性が失われないよう適切な対応をとることを強く求める。

以上

(仮称)クリーンエナジー会津若松風力発電事業環境影響評価方法書に対する意見書

令和3年2月15日

963-8371 福島県郡山市本町1丁目5番10号
クリーンエナジー合同会社
代表 金山 弘 様

日本野鳥の会会津支部 支部長 満田信也
969-0806 福島県会津若松市宝町2-7

公益財団法人 日本野鳥の会  理事長 遠藤孝一 (公印省略)
141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル

(仮称)クリーンエナジー会津若松風力発電事業環境影響評価方法書に対する意見書

貴社が作成された(仮称)クリーンエナジー会津若松風力発電事業環境影響評価方法書に対し、環境保全の立場から下記のとおり意見を提出いたします。

(1)対象事業実施区域における鳥類の生息状況について

(仮称)クリーンエナジー会津若松風力発電事業環境影響方法書(以下、方法書という)について、貴社が設定する対象事業実施区域(以下、計画地という)は環境省レッドリストの絶滅危惧ⅠB類かつ国内希少野生動植物種に指定され、福島県のレッドリストにも絶滅危惧ⅠB類として掲載されているクマタカの生息地と複数重なることが予想されることから、風力発電施設(以下、風車という)の建設により衝突死(以下、バードストライクという)および生息地放棄が発生する可能性が高いと考える。また、計画地にはサシバやハチクマなどの希少猛禽類の渡り経路が存在するが、それに対しては障壁影響等が発生することが懸念される。

配慮書に対する意見書で、クマタカの生息状況の確認と猛禽類の渡りに関する調査について、精度の高い調査を要望した。方法書によれば、希少猛禽類調査は「2繁殖期を含む2年間、各月3日間程度、繁殖期は毎月 定点観察を実施」としているが、調査内容を具体的に示すべきである。先ず、繁殖期と非繁殖期の調査期間を明示し、全体で調査を何回実施するのかを明示すべきである。また、調査地点は9か所とあるが、最低でも3日間ずつ9地点で同時に行うべきである。

渡り鳥と希少猛禽類観察の定点からの、可視領域が計画地全域をカバーしていない。そのため、鳥類への影響を評価する基礎データが不十分となり、調査報告書の信頼性を損ねる可能性がある。観察地点の配置及び数の見直しを要望する。

一般鳥類の現地調査について、生物多様性の観点から計画地とその周辺に生息する鳥類全体の生息環境や生物多様性も評価すべきである。そのため、一般鳥類の観察も重要と考える。ラインセンサス法とポイントセンサス法で1年間 春、繁殖期、夏、秋、冬の5回実施としているが、調査回数と月が明示されていない。特に5月は繁殖と渡りの時期でもあるので、詳細な調査が必要である。この月は週に2回程度の調査が必要である。

渡り鳥の調査について、方法書にある定点観察では、「日の出前後及び日没前後を中心とした時間に飛翔する渡り鳥を識別し、種、飛行ルート及び飛翔高度を記録する。」とあり、さらに調査期間は1年間、春の渡り3回、秋の渡り3回実施すると記載されているが、調査頻度についての詳細な記載がない。渡り鳥の種類、個体数、時期は年による変動があり、計画地におけるピーク状況を把握することが難しいので、1週間連続観察を月に2回、あるいは3日間連続観察を月に4回の調査を2年間実施することを求める。小鳥類の渡りは夜間でも行われるので、目視や鳴き声を中心とした調査では不十分である。レーダー調査を活用し、夜間の小鳥類の渡りの状況を把握することも要望する。

(2)方法書における影響評価の結果について

背炙山地区には、南北の尾根沿いに大規模風力発電事業として、既設の「会津若松ウインドファーム」(エコパワー社)、計画中の貴社の「(仮称)クリーンエナジー会津若松風力発電事業」(クリーンエナジー合同会社)と計画中の「(仮称)会津若松みなと風力発電事業」((㈱)イメージワン社)と計画中の「(仮称)会津若松ウインドファーム増設事業」(コスモエコパワー(㈱)社)があり、南隣に既設の「郡山布引高原風力発電所」((㈱)グリーンパワー郡山布引)もあり、これらすべてが、猪苗代湖西岸から南岸の山の尾根上に並び建つという状況が生まれようとしている。一方で布引高原を除いて、計画地はクマタカなどの希少猛禽類の貴重な生息地となっており、高密度で繁殖している。国内で風車建設によりクマタカやハイタカなど希少猛禽類のバードストライクや生息地放棄が起きていることが知られていることから、本事業が実施されるとクマタカなどの希少猛禽類にバードストライクや生息地放棄などの影響が生じ、さらに累積的影響として本事業のみならず近傍の既設風車でも生じることが予測される。

計画地にサシバやハチクマなどの希少猛禽類等の渡りルートもあるので、事業の実施が障壁影響を生み出し、これらの渡り鳥が風車を大きく迂回したり、迂回した先の既設風車群によりバードストライクが発生すると考えられる。貴社における環境影響評価ではこれら複数の事業が一体のものとなって生じる累積的影響を適切に評価し、地域全体の環境影響、特に希少猛禽類に対する影響が最小になるよう、影響の回避低減策を講じるべきである。計画地およびその周辺においては、いわゆる発電所アセスのガイドラインにあるような一般的な環境影響評価だけでなく、計画地の環境について知見を持つ利害関係者や専門家とも十分に協議したうえで、実施する調査の内容を決定されることを求める。貴社においても、風車の建設にあたっては、野鳥の生息状況を十分に把握し、地域の優れた自然環境と生物多様性が失われないよう適切な対応をとることを強く求める。

(3)鳥類以外への影響について
①生態系の保全について

計画地の面積の一部が日本森林浴の森100選にも選ばれている会津東山自然休養林と重なっており、風車の建設により、休養林として保全されている豊かな森林生態系が破壊される、または改変される恐れがあるが、そのことは森林保護も謳っている自然休養林としての存在意義が損なわれることになるため、休養林と重なる地域は計画地から除外することを強く求める。

計画地の面積の大部分は、保安林で且つ会津山地緑の回廊に含まれており、奥羽山脈から三国山脈等に繋がる緑の回廊のネットワークの拠点となっている。緑の回廊は生物多様性の保全を目的として設定されているので、風車等の設置に伴い緑の回廊の環境を改変することは避けるべきである。計画地には絶滅危惧ⅠB類に指定されているクマタカが複数つがい、高密度で生息している可能性が高い。生態系の頂点に立つクマタカ等の希少性猛禽類は、餌動物となる多くの野生生物を育む豊かな自然環境に支えられているので、森林伐採や土地の改変が行われれば、餌となる野ウサギ等の激減により、クマタカの生息地が奪われることとなる。計画地には優れた自然が多く残されており、環境省、林野庁が推進する生物多様性保全の観点から極めて損失が大きいと考えられる。本事業については、生物多様性保全の観点から、中止も含めて事業規模を大幅に見直すことを要望する。

②累積的影響について

計画地の近傍には、前述のように他社の既設風車と大規模な増設計画、また、もう一つの他社による建設計画があるが、それらが計画通りすべて建設されると多数の風車が背炙山の尾根上に南北に並ぶことになる。それにより、生物多様性の保全を目的として設置された緑の回廊が環境改変により分断され、回廊の設置当初の趣旨が大きく損なわれる恐れが大きい。計画地のみで行う環境影響評価だけでは評価できない累積的影響について、既設の風車および計画の存在も含めて一体的に影響評価を行う、累積的環境影響評価の適切な実施を強く求める。

③景観について

計画地がある背炙山は会津若松市の市街地の東に位置し、歴史的にも著名な観光施設の鶴ケ城の借景となっている。風車が建設されると尾根には人工物が並ぶことになり、その歴史的な自然景観や観光価値が損なわれることから、景観への影響を最小限にとどめるために建設位置や規模の再検討を求める。また、フォトモンタージュ等を用い風車の建設の前後でどのように景観が変わる予定であるかを示し、広く市民の意見を聴取すべきである。なお、評価の実施を建設稼働後に設定しているが、準備書作成前に市民の意見を聴取するなどして評価を行うべきである。

④一般利用者への配慮について

計画地はハイキング、自然観察などで多くの市民に利用、親しまれている。その工事中および完成後も市民の継続的な利用を促進できるように配慮すべきである。

⑤地域住民への配慮事項について

計画地を含む背炙山には、若松と湊地区を結ぶ生活道路があり、歴史的著名人も利用した記録がある。民俗的な見地から住民意見を聴取するなど、事前調査を十分に実施するよう努めるべきである。

以上