当会の活動報告書 1995年~

伊豆諸島カンムリウミスズメウォッチング推奨ルール

1.目的

この推奨ルールは、伊豆諸島海域においてカンムリウミスズメウォッチングを行う際に、日本近海だけでしか生息しない希少な海鳥カンムリウミスズメの繁殖や採食など自然な行動を妨げず、またその生息海域を保護することを目的として、日本野鳥の会が推奨するものである。

2.営巣地への上陸・接近での注意事項

(1)繁殖期(2~5月)

1)営巣地への上陸、立ち入りを行わない。
2)営巣地の100m以内に船を近づけない。
(2)非繁殖期(6~1月)
1)上陸・立ち入りの際にネズミ類やネコ、イタチなどが一緒に入り込まないようにする。
2)カンムリウミスズメの天敵となるカラス類を誘引することにつながるゴミなどを放置しない。見つけたゴミはできるだけ持ち帰る。
3)釣り糸や釣り針は鳥が飲み込んだり、足に絡まってしまう恐れがあるため、みつけたら持ち帰る。

3.カンムリウミスズメへの接近時の注意事項

(1)距離・位置

1)鳥が潜るまたは飛んで逃げる距離まで接近しない。
2)船から離れようとしている鳥を、追うように接近しない。
3)鳥が進む方向をふさぐように接近しない。

(2)観察時間

1)逃げる様子が無くても、特定の個体・群れを5分以上観察しない。
2)5分以上経過したら、鳥が進む方向とは逆に離脱する。

(3)方法

1)船は十分に低速で接近し、観察後の離脱も低速で行う。
2)接近中は汽笛・警笛や拡声器などを使わない。
3)泳いであるいはスキンダイビング、スキューバダイビングなどの方法で接近しない。
4)接近中、観察中に大声を出したり手をたたいたりしない。
5)船は急な旋回や急発進は行わない。
6)写真を撮影する際にはストロボは使用しない。

(4)観察可能な時間

1)鳥への接近は9時から17時の間とし、それ以外の時間は近づかない。

4.その他

1)船上では必ず救命胴衣を着装し、船長の指示に従って行動する。
2)各島の役場や漁協などが制定している安全ルールなどを遵守する。
3)ゴミや吸い殻などは必ず持ち帰る。
4)調査・研究や取材などで推奨ルールを逸脱することが予見される場合は、あらかじめ各島の役場、漁協、ビジターセンターなどへ相談する。
5)緊急時はこの推奨ルールの限りではない。
6)このルールは随時改定する。

以上
2009年12月1日 現在

※ルールについての問い合わせ先
三宅島自然ふれあいセンター・アカコッコ館
東京都三宅島三宅村坪田4188番地
04994-6-0410
[email protected]

カンムリウミスズメを見に行こう!

カンムリウミスズメを見に行こう!

2023年2月現在

カンムリウミスズメロゴ

伊豆諸島、伊豆半島のツアー、航路

三宅島のツアー

  • ポイント
    • 伊豆諸島の三宅島は本島から11kmほど離れた場所にカンムリウミスズメの繁殖地の1つ大野原島があり、繁殖に訪れたカンムリウミスズメの姿を見ることができます。
    • 三宅島には、日本野鳥の会の協定旅館(三宅島スナッパー、新鼻荘)があり会員割引が利用できます。
    • 三宅島にはアカコッコやイイジマムシクイ、ウチヤマセンニュウなどの希少な野鳥も観察できるので、海上と陸上のバードウォッチングを手軽に楽しむことができます。
  • 料金、アクセス
    • ツアー料金など詳細は、三宅島ネイチャーツアーズmahanaをご覧ください。
      https://www.mahana.tokyo/

伊豆半島のツアー

  • ポイント
    • 伊豆半島伊東市富戸港の商漁船「光海丸」の海鳥クルーズに乗船すると、カンムリウミスズメを観察できます。
    • 富戸港は数は多くありませんが、岸近くで観察できるのが特徴で、城ヶ崎の吊り橋(門脇吊り橋)から200mほどでの記録もあります。
    • イルカウォッチングもできる海域のため、カンムリウミスズメの調査中にカマイルカの群れに出会うこともありました。
  • 料金、アクセスなど
    • ツアー料金等詳細は光海丸ホームページをご覧ください。
    • 東京駅から伊豆急線城ヶ崎海岸駅まで、新幹線利用で約1時間40分、東海道線利用で約2時間50分。
    • 城ヶ崎海岸駅から富戸港は、タクシーで10分弱、徒歩なら約30分。
      タクシーは一つ先の伊豆高原駅のほうがたくさん待っています。富戸港まで約10分。
  • 問い合わせ
    • 光海丸:電話0557-51-8181

光海丸

光海丸

神新汽船航路

  • ポイント
    • 伊豆半島下田市の下田港から伊豆諸島の4島(利島、新島、式根島、神津島)を巡る神新汽船あぜりあ丸の航路は、シーズン中の調査でのカンムリウミスズメを高確率で観察することができます。
    • 東京から新幹線利用で日帰り可能です。
    • 途中下船無しの割引チケット「ワンデークルージング」があり、お得に乗船できます。
    • あぜりあ丸は小型の貨客船で、大型フェリーに比べ速度が遅くデッキも低いので、カンムリウミスズメ観察に向いています。
  • 料金、アクセスなど
    • 運賃な詳細は神新汽船HPをご覧ください。
    • 東京駅から伊豆急下田駅までは、新幹線利用で約1時間20分。
      東京駅発6:33(こだま631号)

      熱海駅で伊豆急線直通電車に乗り換え

      伊豆急下田駅着 8:49

      下田港神新汽船乗り場までタクシーで約10分
    • あぜりあ丸と下田港乗り場には食堂、売店がありませんので、弁当は持参してください。
      下田駅前にコンビニがあります。
      飲み物の自動販売機は、乗り場と船内にあります。
  • 問い合わせ

神新汽船

神新汽船あぜりあ丸
神新汽船あぜりあ丸

東海汽船三宅島航路

  • ポイント
    • 三宅島から東京行きの東海汽船航路では、ヒナ連れが観察できることがあります。
      ヒナ連れの記録日は5月11~20日、三宅島出航の1~2時間後に観察されています。
    • 東京からだと、船中一泊、三宅島一泊でアカコッコなども観察できるプランが可能です。
    • 東京から三宅島行きは夜行便になるので、観察できません。
    • カンムリウミスズメ以外にも、オオミズナギドリやハシボソミズナギドリ、オーストンウミツバメ、アホウドリなどの海鳥が観察されています。
  • 料金、アクセスなど
    • 料金等詳細は東海汽船HPをご覧ください。
    • 船内には食堂があり、軽食と飲み物の自動販売機もあります
  • 問い合わせ


大型客船

▲先頭へ
▲カンムリウミスズメの目撃情報はこちら
▲カンムリウミスズメ保護の取り組み

その他の海域のツアー、航路

北海道根室市のツアー

  • 落石ネイチャークルーズ協議会が行っている海鳥観察のツアーで、2010年7月にカンムリウミスズメの目撃情報があります。
  • チャーター漁船に同協議会のスタッフが専任ガイドとして乗り、約2時間半の観察を行います。
  • 詳しくはこちらから
    http://www.ochiishi-cruising.com/


ツアーの様子

北海道羅臼町のツアー

  • 知床ネイチャークルーズが行っているツアーで、主にイルカ・クジラ類の観察が中心ですが、2009年8月にカンムリウミスズメの目撃情報があります。
  • 専用ツアー船で約2時間半の観察を行います。
  • 詳しくはこちらから
    https://www.e-shiretoko.com/


ツアーに使われる船


ツアーの様子

北海道網走市のツアー

  • あばしりネイチャークルーズが行っているツアーで、イルカ・クジラ類の観察が中心ですが、2011年8月にカンムリウミスズメの目撃情報があります。
  • 詳しくはこちらから
    https://www.abakanko.jp/naturecruise/

千葉県銚子市のツアー

  • 銚子海洋研究所が行っているツアーで、イルカ・クジラ類の観察が中心ですが、2010年5月にカンムリウミスズメの目撃情報があります。
  • 詳しくはこちらから
    http://www.choshi-iruka-watching.co.jp/

苫小牧-八戸航路

  • 川崎近海汽船シルバーフェリーが運航する航路で、大型フェリーが就航しています。2011年8月に観察実績があり、他にも見られたとの話しがあります。
  • 青森県八戸市の八戸フェリーターミナルと北海道苫小牧市の苫小牧フェリーターミナルを結ぶ便です。
  • 観察実績は、苫小牧沖約50km付近です。この他、八戸沖でも見られたとの話しがあります。
  • 運行スケジュール、時刻などはこちらから。
    https://www.silverferry.jp/


八戸港停泊中のフェリー

苫小牧-大洗航路

  • 商船三井フェリーが運航する航路で、大型フェリーが就航しています。2008年7月と2009年9月に目撃情報が、2010年6月には観察されています。
  • 茨城県大洗町の大洗港と北海道苫小牧市の苫小牧港を結ぶ便です。
  • 観察実績、目撃情報とも苫小牧沖から青森県尻屋崎沖、岩手県から宮城県にかけての三陸沿岸、宮城県仙台湾沖で記録されています。
  • 運行スケジュール、時刻などはこちらから。
    https://www.sunflower.co.jp/


大洗フェリーターミナル停泊中のさんふらわあしれとこ

東京-北九州航路

  • オーシャン東九フェリーが運航する航路で、大型フェリーが就航しています。2010年3月17日に目撃情報があります。
  • 東京都江東区の有明フェリーターミナルから徳島県徳島市(沖洲)のフェリーターミナルを経由し、北九州市門司区の新門司港を結んでいます。東京出港は夜ですので、観察できるのは、夜が明ける三重県熊野灘から寄港地の徳島を経由して高知県室戸岬沖にかけてです。
  • 2010年3月に徳島県阿南市沖での目撃情報があります。
  • 運行スケジュール、時刻などはこちらから。
    http://www.otf.jp/


有明フェリーターミナル停泊中のおーしゃんいーすと

▲先頭へ
▲カンムリウミスズメの目撃情報はこちら
▲カンムリウミスズメ保護の取り組み

環境保全と両立するオリンピックの開催を求めて

葛西臨海公園の自然を守ろう!

「東京のオアシス」として市民に親しまれる葛西臨海公園が、2020年オリンピックの東京招致計画のなかで、競技会場として浮上しています。しかしそのために、野鳥をはじめとする豊かな自然環境が破壊されてよいのでしょうか。東京支部は財団事務局と連携し、それに反対する取り組みをしています。

日本野鳥の会東京   代表(当時) 中村一也
(2012年野鳥誌12月号に掲載された記事より、一部改変)

東京随一の野鳥の宝庫

 東京都の東端、千葉県との県境に位置する葛西臨海公園は、東京湾に面した広大な敷地を誇り、年間を通じて数・種類ともに、東京で最も多くの野鳥に会うことができます。
 食物連鎖の上位に位置する野鳥の数や種類が多いということは、自然が豊かであるなによりの証拠です。また、渡り鳥にとって重要な繁殖地・中継地・越冬地のすべての要素を持ちあわせており、「自然環境のバロメーター」としても機能していると思います。
 東京湾の干潟や浅瀬は、江戸時代以降の埋め立てによって、その約9割が失われてしまいましたが、当地の海辺では、浅海域、潮間帯、干潟、アシ原、氾濫原、草原、樹林帯が連続しています。このように連続性が残る環境は大変貴重で、環境省の「日本の重要湿地500」にも選定されています。

kansatsukai
柳池での自然観察会 (写真提供 鳥類園友の会)

suzugamo
葛西の冬の風物詩 スズガモの群れ (写真提供 日本野鳥の会東京支部)

オオタカの若鳥
オオタカの若鳥。冬場葛西では、一日で6~7種見られることもある (写真提供 福山和夫)

競技場建設の変更要望書を提出

 この貴重な場所に、東京都は2020年に開催されるオリンピックの東京招致計画において、カヌー・スラロームの競技場を建設しようとしています。もしそうなれば、貴重な緑地の約3分の1が失われることになります。東京支部はオリンピックの招致自体に反対するものではありませんが、このような大きな自然破壊を看過するわけにはいきません。
 そこで、8月23日、招致委員会理事長と東京都知事あてに、「都立葛西臨海公園での2020年東京オリンピックカヌー競技場建設の変更についての要望書」を、財団事務局との連名で提出しました。

2016年招致計画時のカヌー競技場イメージ
2016年招致計画時のカヌー競技場イメージ(招致委員会2016立候補ファイルより)

建設予定地
建設予定地(DEXTE-K が作成)

豊かな生態系を奪わないで

 葛西臨海公園の年間来場者は、320万人(平成23年)にもおよびます。市民が気軽に訪れて、自然にふれることのできる憩いの場としての役割も担ってます。
 原生の自然ではなく造成された場所ではありますが、開園から24年を経過し、土壌も植生も豊かになり、多様な生態系が形成されています。226種の野鳥のほか、昆虫140種、クモ80種、樹木91種、野草132種を記録しています。そのなかには、トラツグミ、チョウトンボ、コガネグモ、ウラギクなど東京都23区では絶滅危惧種に指定されている生物26種も含まれています。
 もし計画通りに進めば、2017年には着工となります。競技場建設により都内屈指の豊かな自然環境が破壊されることは、生物多様性を保全するという我が国の国家目標に反することにもなります。
 近接した中央防波堤埋立地などには広大な未利用地が存在し、より競技場建設に適した候補地が存在しています。
 環境負荷がより少ない場所に変更するよう、今後も東京都と招致委員会に対し、積極的に働きかけていきます。

◆葛西臨海公園で見られる野鳥
春秋には、シギ・チドリやオオルリ、キビタキ、ノゴマなどの旅鳥が多く通過する。夏にはセッカやオオヨシキリの声がにぎやかで、2年前から絶滅危惧種のコアジサシも営巣するようになった。冬はアオジやクロジ、トラツグミのほか、チュウヒ、オオタカなどの猛禽類がよく見られる。カンムリカイツブリの越冬地としては世界最大級で、万を超えるスズガモの群れは見事だ。

オリンピックと環境

自然保護室室長 葉山政治
 世界最大規模のスポーツイベントであるオリンピックの開催には、競技場や選手村の建設、廃棄物の処理など、大きな環境負荷がともないます。今夏開催されたロンドン五輪では、CO2削減を考慮した施設づくりや廃棄物処理の取り組み、会場周辺の緑地や野生生物の生息地の整備などが報道されていました。
 世界的な環境問題への関心の高まりのなかで、オリンピック憲章では、IOC(国際オリンピック委員会)の使命と役割のひとつとして、「環境問題に関心を持ち、啓発・実践を通してその責任を果たすとともに、スポーツ界において、特にオリンピック競技大会開催について持続可能な開発を促進すること」と掲げています。「持続可能な開発」とは、将来の世代の利益を損なわない範囲で環境を利用していこうという意味です。
 東京でも、オリンピックが開催されれば、それなりの環境負荷が発生するでしょう。招致委員会では、既存施設を活用することによって、なるべく環境負荷を抑える方針だということです。ここでいま一度、葛西臨海公園の自然が与えてくれる恩恵を、将来にわたって引き継ぐための知恵が求められています。

カンムリウミスズメ保護の取り組み

カンムリウミスズメの海を守ろう

カンムリウミスズメは、世界でも日本の近海にのみ生息している、絶滅の恐れが高い海鳥です。一生のほとんどを洋上で暮らすため観察が難しく、その生態はわかってないことも多くあります。
日本野鳥の会では、以前より東京都伊豆諸島の三宅島などでこの鳥の保護活動に取り組んできました。創立75周年を迎えた2009年にこの鳥を海洋環境保全のシンボルとして選び、その保護活動を拡大し活動を続けています。

保護活動の現場から

最新情報は下記をご覧ください。

カンムリウミスズメについて

カンムリウミスズメ保護と活動のご支援

寄付とグッズ

洋上調査の費用は、1時間1万円以上がかかります。皆さまのご協力をお待ちしております。

オンライン寄付はこちら

グッズを購入して、保護活動をサポートいただくことも可能です。

グッズ購入はこちら

基金について

カンムリウミスズメの保護活動は、多くの方のご支援により行われています。
記してお礼申し上げます。

  • F氏カンムリ基金(2012年~)
  • 赤羽基金(2014年~)
  • 鏑木基金(2010年~2014年)

過去のご支援について

個人匿名寄付による基金、会費やその他のご寄付も事業財源となっております。
09~11年度事業では、次の団体から助成金、募金をいただきました。

農林水産省高病原性鳥インフルエンザ感染経路究明チーム中間とりまとめの解説

2007年5月9日掲載
(財)日本野鳥の会 金井裕

4月18日に農林水産省の第24回家きん疾病小委員会及び第4回高病原性鳥インフルエンザ感染経路究明チーム検討会が合同で開催され、2007年の宮崎県及び岡山県における高病原性鳥インフルエンザ発生にかかる感染経路究明の「中間とりまとめ」が公表されました。

この感染経路究明チームには、(財)日本野鳥の会の主任研究員 金井裕が委員として参加しています。「中間とりまとめ」の内容については、農林水産省のホームページで見ることができますが、わかりにくい点もありますので解説や補足をすることにしました。囲みの部分が「中間とりまとめ」に記載されている内容です。

印刷用PDF:農林水産省感染経路究明チーム中間とりまとめの解説

1 発生概要

・平成18年11月に韓国で発生が確認された後、翌年1月13日から2月1日にかけて養鶏業が盛んな宮崎県及び岡山県において4例続けて発生した。
1例目:宮崎県清武町における肉用種鶏飼養農場(約1万2千羽飼養、3鶏舎)
2例目:宮崎県日向市における肉用鶏飼養農場(約5万3千羽飼養、5鶏舎)
3例目:岡山県高梁市における採卵簸飼養農場(約1万2千羽飼養、10鶏舎)
4例目:宮崎県新富町における採卵鶏飼養農場(約9万3千羽飼養、1鶏舎)
・発生後、発生農場では殺処分、焼却・埋却、消毒などの防疫措置を実施した。
・発生農場を中心に半径10kmの範囲で移動制限区域-を設け、養鶏場及び愛玩鳥の検査を実施したところすべて陰性であり、続発もなかったことから3月1日にすべての移動制限を解除した。

2006年秋から2007年にかけて日韓の感染発生状況の比較

日本での感染発生は、2007年も2004年も韓国での発生に続いて起こっています。遺伝的にも非常に近く、ほぼ同じウイルスであると言って良いものであるため、日本での発生を考える時に、韓国の発生状況を見ておく必要があります。韓国の発生についての情報を得るのはむずかしいのですが、韓国内の新聞報道(※)を見ると概要をつかむことはできます。ここでは、発生時期や分布を見てみることにします。
※韓国内の発生については、朝鮮日報、中央日報、東亜日報の日本語ホームページの記事を参考にさせていただきました。

1)感染の発生時期
日韓双方の感染発生時期を一覧表にまとめてみました。韓国では2007年2月14日現在、6か所での発生がありました。韓国での感染発生は11月19日に全羅北道益山市において死亡鶏が増加したことが発端でした。この感染公表は11月23日でしたが、11月28日に道路沿いに500m南の地点で2例目の感染が公表されました。次いで全羅北道金堤市のウズラ養飼場にて12月7日から死亡が始まったことが、12月11日に公表されました。
12月21日には、忠清南道牙山市のアヒル養飼場にて感染が発生していたことが公表されました。ここでは12月11日より産卵率の低下がみられたので、検査を行ったとのことです。2007年1月22日には、4例目から8kmの忠清南道天安市の採卵養鶏場で1月19日に大量死があったことが公表されました。この養鶏場近くで12月21日に採取した野生カモ類の糞から、ウイルスが検出されたことも同時に公表されています。そして、2007年2月14日に2月6日より京幾道安城市の養鶏場で大量死が始まっていたことが公表されました。
日本においては、2007年1月11日の夜に宮崎県清武町での発生疑いがあったことが公表されました。ニワトリの死亡数が増加したのは1月7日からでした。ついで1月23日に、1月22日に243羽が死亡した事例が宮崎県日向市東郷町にて発生したことが公表されました。1月27日には、岡山県高梁市川上町で前日26日から死亡数が増加し、鳥フルの疑いがあることが公表されました。そして1月30日に、宮崎県新富町の養鶏場で大量に死亡が始まったことが公表されました。また、3月18日には、1月4日に熊本県相良村で保護収容されたクマタカが感染していたことが明らかになりました。
日本での発生は、韓国での発生が起こったのち約1ヶ月後に、韓国内での発生が継続している状況下で起こりました。2004年は、韓国では2003年の11月末から12月初めに始めて感染が発生し、その後1月にかけて発生地近傍から韓国内で発生が続いていました。日本では、2003年末に山口県阿東町で始めて感染が発生し、2月にかけて大分県と京都府で発生しました。2007年と2004年の発生時期は日韓とも極めて似通っています。感染の発生や拡大についても、共通の要因があることが考えられます。

表 2006年から2007年の日韓発生時期比較
表 2006年から2007年の日韓発生時期比較

2 現地調査の概要(調査項目は別紙)

・飼養形態、鶏舎構造、農場の立地環境などは4例4様である。

発生地の分布と自然環境の比較

日韓の発生地を2003-2004年、2006-2007年ともに地図上に示してみました。韓国の感染発生地は2003-2004年、2006-2007年ともに西海岸の低地帯で発生しています。また、牙山市と天安市では両年とも感染が発生しています。低地帯ですので、水田が近くに広がっており、水鳥の大規模生息地も10kmから20kmの範囲に存在しています。
一方、日本においては発生地の広がりには特定のパターンが見られません。西南日本の広範囲に散らばって感染が発生しています。自然環境についても、韓国のように水田や水鳥の大規模生息地が近くにあるのは宮崎県新富町ぐらいです。宮崎県清武町は、かつては水田が多かったようですが、現在は冬作の大根栽培が進んで、冬季には川沿いも大根畑となっています。宮崎県日向市の発生地は谷間の斜面で、岡山県高梁市や、2004年の山口県阿東町、京都府丹波町は山間の小平地でした。感染したクマタカが保護収容された場所は、一例目の清武町、2例目の日向市からそれぞれ約60kmの距離にある熊本県相良村の川辺川の斜面で、周辺は急斜面地帯です。
宮崎県の発生地は、環境構成が異なりますが、日本での感染発生地全体をみると、水鳥類の少ない山間地で、養鶏場では関係者以外の訪問はあまり無いようなところが多いのが特徴と言えます。

図中の数字は日韓それぞれでの感染確認順を示す。韓国天安市では12月21日採取のマガモ糞からウイルスが分離された。

農林水産省感染経路究明チーム中間とりまとめの解説各農場とも平成16年当時に比べ-般的な飼養衛生管理は概ね措置されていた。
・農場の外周に措置すべき農場フェンスについては、各農場とも未整備又は設置されていても破損等が確認されており野生動物や不審者が農場内に侵入可能な状況であった。
・防鳥ネットや金網については、鶏舎外壁や換気用天窓では設置されているものの、全ての農場で隙間又は破損等が確認。また、鶏舎内でネズミの糞や野鳥の死体も確認されたため、これらが兵舎内に侵入していたことが類堆される。
・いずれの発生農場においても、野生生物の存在が確認されている。
・農場・鶏舎出入り口の消毒施設、鶏舎専用長靴・作業着、鶏舎作業管理者の専任化、給与水の消毒、衛生害虫駆除などは、一部不備な点も確認されている。
・人・物品・車両等の動きから海外の発生地域との接点は確認されていない。
・4例の農場間でウイルスを伝播させるような人・物品・車両等の情報は確認されていない。

疫学調査とはなにをしているのか

マスコミ報道では、感染の要因調査として野鳥調査ばかりが目立ちます。しかし、感染要因として一番最初に考えるべきものが、発生地と関係する人や物の動きです。これを調べるのが疫学調査です。個人や企業のプライベート情報を含むため、具体的な報告が行われていないため、何をやっているのかわかりにくい状態となっていますが、もっとも重要な調査であり、実際はもっとも労力と時間をかけているものです。中間報告でも、具体的なことはあまり書いていません。もう少しだけ詳しく、調査項目と概要だけでも示しておきたいと思います。

1) 導入ヒナ
その養鶏場には、どこから、いつヒナを持ってきたか?
今回の発生場所については、どの養鶏場でも導入から日数が経過しているので、関係は無いと考えられます。
2) 卵や肉の出荷
養鶏場からの、卵や肉の出荷先はどこで、出荷した時期はいつか?
発生養鶏場では、出荷がなかったか、出荷先での感染発生はありません。
3) 死亡鶏の移動
死んだ鶏はどのように処理していたか、また処理業者が共通の養鶏場での異常はないか?
今回の処理では、異常はみられていません。
4) 鶏糞の移動
鶏糞はどこに持っていったか?
今回は移動先での異常は起きていません。
5) 人の動き
経営者、作業員、出入り業者、管理獣医師など養鶏場に関わる人の作業内容、来訪暦、海外渡航暦などは?
現時点では、作業も通常どおりで、最近の海外渡航も無い。感染の発生場所と作業員の動きとの関係も認められていません。
6) 車両等の動き
経営者、作業員、出入り業者、管理獣医師など養鶏場に関わる人の移動に伴う車両は?
共通する来訪養鶏場での発生等の異常はないが、さらに確認作業が進められています。清武町以外は、養鶏場隣接地を一般車両が通行するような状況ではありません。
7) 給水
水源および水の消毒、配管の配置や水の流し方は?
消毒が不完全な水を給水していた場合もありましたが、感染発生場所と配水順とも関係は認められていません。
8) 給餌
飼料の保管場所と給餌方法は?
飼料に野鳥やネズミの糞など異物が混入することはないと考えられ、給餌方法と感染発生場所との関係も認められていません。
9) 衛生管理
車両および作業員の消毒場所・方法は?
車両は養鶏場入り口でタイヤ等の消毒が行われ、鶏舎入り口では作業専用長靴を消毒液の中に入れて消毒します。養鶏場毎に何箇所か消毒するポイントがありますが、一部が省略されていたり、専用長靴がなかったり、という場合がありました。
10) 侵入動物
養鶏場および養鶏舎内に侵入していた動物がいたか?
ネズミ穴や野鳥や小動物が侵入可能な穴が空いていた場合があります。防疫処置後ですがネズミの糞やスズメの死体があったり、ハエが鶏舎壁面のすぐ外を飛行していたり鶏舎内に死体があるのを見た養鶏場もあり、そこでは、これらの小動物が鶏舎内外を出入りしていたと考えられます。

各養鶏場の疫学調査内容の詳細は、農水省の正式報告書をお待ちください。

 ・鶏舎内を移動することがないよう飼養されていた2~4例目の農場の死亡鶏は作業管理者の動線や水・飼料・集卵のラインと関係なく、鶏舎内の一部の場所に集中して確認された。

感染発生の初期に対処したため、感染がどこから始まったか詳しくわかっています。その発生地点は養鶏場作業員の鶏舎への出入り口や、水や餌の供給口とは離れたところでした。いくつかの養鶏場では、小動物が侵入可能となっている場所と近接していました。

3 ウイルス性状

(1)遺伝子性状
 ・全ての遺伝子分節が鳥由来である。
 ・分離された4つのウイルスはいずれも近縁であり、中国の青海湖、モンゴル、韓国、ロシアで過去に分離されたウイルスと同じ系統である。また熊本県のクマタカから分離されたウイルスも分離された4つのウイルスと近縁である。
 ・インドネシア、タイ、ベトナムで分離されたウイルスと異なる。
 ・2004年にわが国で分離されたウイルスと異なる。

いわゆる青海湖型とされるウイルスで、韓国と日本には新たに侵入してきたと考えられます。青海湖やモンゴルからいきなり日本に来たというわけではなく、韓国や日本に侵入が起こりやすいどこかにウイルスがあったと考えるべきです。

(2)感受性
 ・鶏に対する静脈内接種及び経鼻接種では、一部の鶏にチアノーゼなどがみられ全て死亡した。
 ・アイガモに対する経鼻接種試験では、ごく少数の死亡例は認められたが、アイガモに対する致死性は低かった。

この結果は、マガモはこのウイルスに感染しても症状を出さない可能性が高いことを示します。(アイガモはマガモの家禽化された品種で、マガモと種は同一)

 ・マウスに対する経鼻接種では、マウスに対する致死性は高かった.

ネズミ類も感染して、ウイルスを運ぶ可能性を示唆します。しかし、養鶏場周辺に生息するネズミ類であるクマネズミ、ハツカネズミ、ドブネズミ、あるいは野外に生息するアカネズミ、ヒメネズミなどが感染するか本当のところは、実際に感染実験で確かめなければわかりません。

(3)ウイルスの伝播カ
 ・ウイルス接種鶏と同居した鶏は全て死亡した。
 ・ウイルス接種アイガモと同居した鶏は全て死亡した。
 ・ウイルス接種アイガモと同居したアイガモは全て生存した。

直接のウイルス接種ではなく、近くに感染鳥がいるだけでも感染が起こるかどうかの試験を行ったということです。結果は、直接接種と同じく感染が起こりました。アイガモでも感染は起こりましたが、角膜に濁りが出た程度の症状でした。

4 野鳥のウイルス保有調査(環境省)

(1)発生確認後に行った発生農場周辺の野鳥のウイルス分離検査
1例目:252羽すべて陰性であった。
2例日:202羽すべて陰性であった。
3例目:209羽すべて陰性であった。
4例日:213羽すべて陰性であった。

感染発生地周辺で野鳥にウイルスが蔓延していることはありませんでした。
環境省発表資料は当会ホームページ参照。

(2)野鳥の全国調査
 ・野鳥の大量死は確認されていない.
 ・平成18年4月から平成19年3月までにおこなった全国の野鳥のウイルス保有調査は6,340羽すべて陰性であった。

西日本の水鳥類の大規模生息地でウイルスは確認されませんでした。

(3)熊本県のクマタカ
 宮崎県で1例日の発生が確認された平成18年1月11日より前の1月4日に熊本県で衰弱死した野生のクマタカから鳥インフルエンザH5Nl亜型ウイルスを分離。3月に行ったクマタカ発見地から槻ね半径10kmの範由で採取した野鳥220羽及び半径5kmの範囲で採取したネズミ17匹からのウイルス検出試験はすべて陰性であった。

クマタカは外傷がなかったことから、鉛中毒を疑って北海道釧路市内の研究機関で検査されました。クマタカは、小哺乳類、野鳥、野外にいる家禽や家畜およびそれらの死体を採食します。
熊本県で、収容地から10km以内の養鶏場および個人飼育鳥のある208戸にあたったところ、異常はありませんでした。

5 ウイルスの感染経路

  今後の発生予防対策を図る上で次の感染経路を想定しておくことが必要。
(1)国内への侵入経路
  【1】分離ウイルスはいずれも近縁で中国、韓国、モンゴルとも同じ系統、
  【2】ウイルスの確認は短期間で広範な地域(宮崎、岡山、熊本)、
  【3】発生地域からの家きん及び家きん肉等の輸入は停止、
  【4】発生農場と海外の発生地域との疫学的な関連が確認されていない、
  【5】小型生物(鳥類、ほ乳類など)を捕食するクマタカからウイルス分離、
  【6】ウイルスの侵入時期は不明、
  【7】韓国のカモでも同じ系統のウイルスが分離、
  などから、感染経路の特定は出来ないが海外で野鳥からウイルスが分離されていること等を踏まえると野鳥によるウイルスの持ち込みが想定される。

環境省が実施した感染地周辺および水鳥などの大規模生息地における野鳥の調査では、野鳥から問題のウイルスは確認されていません。感染発生地の多くは、水鳥類の大規模生息地からも離れています。このような結果からは、感染経路に野鳥が関わっているとする論証はできません。

一方、人為的な感染発生地相互の関係も確認できないため、防疫対策を考える上で人為的要因以外に海外から養鶏場周辺の野外にウイルスが持ちこまれた可能性を想定せざるをえません。野鳥はこのウイルスに感染する可能性があること、韓国においてもマガモからウイルスが発見されていることから、海を越えての運搬者として野鳥を想定して今後の防疫対策を考えるということです。

 一部のマスコミ報道では、野鳥を感染源として断定しているかのような記事がありますが、これは誤りです。

(2)鶏舎への侵入経路
  【1】2~4例目では人の作業動線などと関係なく鶏舎内の一部で限局的に発生、
  【2】防鳥ネットや金網に隙間や破墳が確認、
  【3】発生農場の兵舎内外で野生生物が存在、
  【4】鶏舎内でネズミの糞や野鳥の死体が確認、
  【5】人・物品・車両等の4例の農場間の疫学的な関連がない、
  【6】発生農場の飼養形態、亀舎構造、農場の立地環境などは様々、
  などから、野生生物(ネズミ、野鳥など)によるウイルスの持ち込みが想定される。

今回の感染発生は、極めて初期に確認されたため、2例目から4例目では養鶏舎内での感染発生地点が詳しくわかっています。この地点はどこも鶏舎の入り口からも、餌や水の供給開始地点とも離れていたため、人為的にウイルスが鶏舎に持ち込まれたとは考えにくい状況でした。
一方、2ヶ所の養鶏舎では、感染発生地点近くの防鳥ネットに裂け目があったり、壁面にネズミの開けた穴がありました。ここでは、鶏舎内にスズメなどが入り込んでいたり、ネズミの糞があったりと小型の野生生物が出入りしていたことも確認されています。1か所では、鶏舎に穴などがあったことは確認されていませんが、ネズミがいたことは確認されています。
ラットやマウス、イタチ科のフェレットやネコ科動物など哺乳類でも感染することや、クロバエが体内に一定期間ウイルスを保持することがわかっています。鳥だけでなく、多くの野生動物が感染の伝播に関わる可能性を想定し、防疫対策を考えるということです。

6 今後の対応

海外から国内へのウイルスの侵入経路については野鳥の飛来ルートや生息状況などに関する情報、鶏舎へのウイルスの侵入経路については哺乳動物(マウスなど)に対するウイルス感受性、韓国等の海外の情報など情報を収集する.また人・物品・車両等に関する疫学情報ともあわせて総合的に精査する。

今回の発生について、さらに実施すべき情報収集および検討項目について、短い文章ですが、広範囲な内容が述べられています。

・海外の発生地と日本国内を結ぶ渡りルートや時期があるのか、その種は何かといった、野鳥の渡りについての基礎的な情報を収集する。
・鶏舎内にウイルスを持ち込む可能性のある野生生物には何があるか、つまりどの種がこのウイルスに感染する、あるいはウイルスを蓄積するのか、その期間がどのくらいかをできるかぎり調べる。
・海外、特に日本の隣接地での感染発生状況について野生生物とのかかわりも含めて情報を集める。
・もっとも警戒しなければならない、人為的なウイルス伝播の可能性(人・物品・車両等による)もさらに精査する。
・これらを加えて、総合的に報告をまとめる。

7 今後の高病原性鳥インフル工ンザ対策への提言
  現時点で想定される感染経路から今後とるべき対策は次のとおり。

ここは、長期的な対策についての提言です。

(1)野生生物に関する調査研究
  養鶏場とそれをとりまく環境に生息する様々な野生生物について、ウイルスに対する感受性を検査するとともに、それらの生息域や行動に関する情報の収集や調査研究を行うことが必要である。

養鶏場周辺に生息する野生生物がウイルスを伝播する可能性が実際どのくらいあるか判断するために必要と考えられることです。
・養鶏場周辺でどのような野生生物が生活しているか、それらは感染あるいはウイルスを保持するのかを確認し、伝播に関わる可能性のある野生生物を抽出する。
・伝播に関わる可能性のある野生生物が、養鶏場周辺でどのように生活しているか、その生態・行動について調査する。

(2)アジア地域の連携
  今後の国内における発生予測を図るため、本病の発生が確認されているアジア各国と連携して、本病の発生や流行に関する情報、日本-アジア地域や日本国内の野鳥の飛来ルートなどの調査研究の堆進が必要である。

日本と距離が近いアジア地域での発生情報について、家禽での発生状況だけでなく、発生地の野生生物(野鳥およびその食物など関係生物)も含めて情報を得るようにする、との方針です。

(3)農場における発生予防対策については、今後、次の事項について防疫指針の見直しを行うなど具体的できめ細やかな指導・点検を行うことにより万全を期すことが重要である。
 ・農場周囲のフェンスや鶏舎の防鳥ネットの張り方など鶏舎施設の保守・点検。
 ・作業や飼料・器材の運搬による人・物品・車両の動線や野生生物による伝播の可能性を踏まえた消毒の措置。
 ・衛生的な飼料や給与水を確保するための飼養衛生管理の徹底。
 ・鶏舎内外における衛生害虫(ネズミなど)の駆除。

とるべき防疫対策は、養鶏場での感染防止の徹底であることを改めて示したものです。具体的には、野鳥や野生動物の侵入防止対策、消毒・衛生管理の徹底を図るべきとしています。

(別紙)

疫学関連調査項目

各農場における主な調査項目は次のとおり。

I 一般情報
 ○発生農場
  農場の配置、農場内の飼料・冷水ライン・換気の流れ、鶏舎の構造、衛生対策の実施状洗(人・物品・車両の搬出入の消毒、防鳥ネット、ネズミ対策、飼料・水・器具の消毒、鶏舎内外の清掃・清毒、獣医師の指導状沈など)、作業管理状況、過去の疾病発生歴など。
 ○発生農場の周辺環境
  道路、川、湖沼、住宅、養鶏場、愛玩鳥飼養状況など。

II 疫学情報
 ○ヒナの導入元、鶏の出荷先、卵の出荷先、廃鶏の処理状況、鶏糞の処理状沈、飼料の搬入元、獣医師の動き、動物医薬品関係者の動き、野生生物(野鳥、ネズミ、イヌ、ネコ、タヌキ、イノシシ、シカなど)の生息状況、その他農場・鶏舎への人・物品・車両の出入りの動きなど。

 ○発生確認に関する情報
  発生までの経過、鶏舎内の感染の広がりの堆移など。

野鳥への感染は確認されず “環境省による鳥インフルエンザ・ウィルス検査結果”

2007年3月20日掲載
(2007年4月17日更新)

環境省は韓国および国内での強毒・高病原性鳥インフルエンザ(H5N1亜型)感染発生を受けて、2006年12月から渡り鳥の瀬測地や感染発生地周辺で、糞便の収集および野鳥の捕獲を行ってウイルス保持の検査を行いました。
これらの検査で、野鳥への感染は確認されませんでした。
この検査結果は、環境省のホームページに掲載されていますが、実施時期や場所など毎に幾つかの表に分かれていて、結果が一覧しにくくなっています。そのため環境省の許可を得て、渡り鳥生息地での検査結果、感染発生地周辺での検査結果の2つの表に整理しました。
この検査で糞便などのサンプル採取には、当会宮崎県支部、岡山県支部の会員が協力しています。

表1.渡り鳥の生息地における調査結果

  • 2006年12月:鳥取、山口、福岡、佐賀、長崎、熊本、鹿児島の各県18調査地点において採取したカラス類、カモ類、シギ類等の野鳥糞便の144検体(681個を採集場所ごとなどにまとめて検体とした)について検査した
    http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=7901

  • 2007年1月:鳥取、島根、福岡、佐賀、長崎、熊本、鹿児島の7県合計15地点で採取したカラス類、カモ類、シギ類等の野鳥の糞便644個分を、鳥取大学農学部付属鳥由来人獣共通感染症疫学研究センターにおいて検査
    http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=8018

  • 1月血液、粘膜等の調査:千葉県、山口県でカラス類、シギ・チドリ類等の野鳥の気管等の粘膜及び血液を検体として採取し、鳥取大学農学部付属鳥由来人獣共通感染症疫学研究センターにおいて検査
    http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=8052

  • 2007年2月:近畿地方以西の22府県合計46市町村で採取したカモ類等の野鳥の糞便2,563個分について、農林水産省動物医薬品検査所検査第一部、同省動物検疫所精密検査部、大阪府立大学大学院生命科学研究科及び鳥取大学農学部付属鳥由来人獣共通感染症疫学研究センターにおいて検査
    http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=8206

  • 2007年3月:近畿地方以西の22府県合計38市町村で採取したカモ類等の野鳥の糞便1,846個分について、鳥取大学農学部付属鳥由来人獣共通感染症疫学研究センター及び農林水産省動物医薬品検査所において検査
    http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=8256

表2.感染発生地周辺10km以内で行われた捕獲調査結果

調査結果のURL

鳥インフルエンザに対するバードライフ・インターナショナルからの声明(2007年2月9日)

2007年3月6日掲載

要点

トリインフルエンザウイルスには様々な系統が存在しますが、感染は野鳥の間で循環していて、しかも感染率が高いのは若い水鳥の一部だけです。こうしたウイルスは病原性が低く、発症しても、症状は軽いものです。家禽がこの「低毒のトリインフルエンザ」(LPAI)ウイルスに感染しても、大事には到りません。

しかし、高密度で集約的に営まれている家禽飼育場では、野鳥に由来するH5亜型やH7亜型ウイルスの変異株が強毒のトリインフルエンザ(HPAI)ウイルスに進化して、家禽の大量死を引き起こす可能性があります。つまり、強毒のH5N1亜型トリインフルエンザウイルスは家禽の病気なのです。現在のところ、強毒のトリインフルエンザウイルスが人間に感染する可能性はきわめて低いのですが、このウイルスが進化を遂げ、急速に人から人へ感染し、人命が失われる可能性が強く懸念されています。野鳥も強毒のトリインフルエンザウイルスに感染して死亡する可能性はありますが、個体群規模ではまれです。野鳥は、感染した家禽やそれらが飼育されている施設に接触することにより、ウイルスに感染していると思われます。

バードライフは、H5N1亜型の強毒のトリインフルエンザウイルスを生態系から完全に除去することを目指していますが、一方、このウイルスが定着してしまった地域もあるので、これが短期間では達成できないことも認識しています。バードライフは、トリインフルエンザにより人命が失われたこと、そして莫大な経済的損失が生じたことに対して、深く懸念しまた心を痛めています。さらに、トリインフルエンザが人間に大流行する可能性も認識しており、強い懸念を持っています。

H5N1ウイルスの感染経路は複数考えられるので、H5N1ウイルスを伝播させることがわかっている、あるいはその疑いが大きい活動を監視・規制することが不可欠です。感染した家禽や未処理の家禽の加工製品(フンも含む)の移動、衛生管理が不十分な輸送用器具の再使用、野鳥の商取引、野鳥の移動など、ウイルスを伝播させる可能性がある行動に対して、有効な対策を講じる必要があります。また、国連食料農業機関(FAO)が危険性の高い行為であると指摘していますが、感染の可能性がある家禽の排泄物(フン)を農業用肥料、養魚や養豚用の飼料として利用することについても、さらに調査する必要があります。

2006年にヨーロッパとイランで野鳥に発生したウイルス感染は、感染した野鳥がウイルスを新たな場所に広げる能力があることを示しています。ウイルスが野鳥に与える影響、野鳥間や野鳥と家禽間の感染力の程度(特に長距離の移動による感染)については、まだわかっていないことが多々あります(「野鳥の役割」の項を参照)。

一方、2006年にカメルーン、エジプト、インド、イスラエル、ヨルダン、ニジェール、ナイジェリア、ジブチ、ラオス、パキスタンで発生したウイルス感染は家禽飼育産業が感染源でした(「H5N1ウイルス大規模感染の要約」(2006年10月8日発表、英文))。2007年にハンガリー、韓国、日本、タイ、インドネシアなどで発生している最近のウイルス感染も家禽産業が関わっています。

H5N1ウイルスの感染事例の例にもれず、ここでも家禽やその加工製品の移動が感染源であることをを強く示す状況証拠があります。上記の国の多くでは、家禽のウイルス感染が複数の大規模家禽飼育施設を運営する企業内でほぼ同時に発生しています。このことは、渡り鳥は感染源ではありえないことを示しています。さらに、感染の発生した時期と場所は、渡り鳥の動きとは一致しません。

東南アジア諸国に関しては、最近実施されたウイルスの包括的な系統分析の結果から、国内外の家禽の移動がウイルス感染の再発の原因であり、「家禽間の感染がこの地域にH5N1ウイルス感染を繰り返し発生させている要因」です(チェンら、PNAS, 103: 2845-2850)。

2006年の初頭に香港で発見された「野鳥」の死亡個体と2007年にさらに発見された事例は、いずれも市街地で、本来の生息地から遠く離れているか、あるいは腐肉食性の種(「スカベンジャー種」訳注:他の動物の死体を食べるもの)でした。こうした死亡個体は、宗教的な理由で放鳥(訳注:日本でも「放生会」といった名称で仏教・神道の儀式として行われていた)された飼い鳥であることを強く示す状況証拠があります。こうした宗教がらみの野鳥は生きた動物を売買する市場(生鳥市場)で取引されることが多いですが、生鳥市場においてH5N1ウイルスが効率的に伝播するのはよく知られた事実です。生鳥市場でウイルス感染した野鳥を通じてH5N1ウイルスが国内に持ち込まれることが懸念されたため、2007年1月に欧州連合(EU)加盟国では、野外で捕獲された鳥の輸入を期限を定めず禁止する措置が取られました。さらに、香港でもそうした野鳥の輸入禁止を求める声が出ています。

H5N1ウイルスの大規模感染が続発しているので、実効性のある対応策を迅速かつ冷静に講じることが求められます。バードライフは以下のことを特に提言します。

  • 家禽飼育産業のあらゆる段階で、衛生管理を改善すること。
  • 家禽の排泄物(フン)を原料とした肥料や飼料を含め、家禽の加工製品の移動に対する規制を強化すること。
  • 感染地域を原産とする野鳥の商取引を一時停止すること。
  • 関連する獣医師、医師、農業や生態学の専門家による、国境を越えた積極的な取り組みや協力、情報の共有を欠かさないこと。
  • 政府や関連の行政機関、マスコミは偏りのない正確な情報を一般に公開することを心がけること。歪められた情報やセンセーショナルな情報はH5N1ウイルスに関して、いたずらに一般大衆の誤った感情を煽ることになります。
  • ウイルス感染の発生が確認された場合は、生態学的な情報収集に努めると共に、渡り鳥や留鳥の監視を強化すること(Data surveillance document(PDF 1.5 MB、英文)、Yasue et al., BioScience 56: 1-7(PDF 123 KB、英文)を参照)。そうした情報は結果の如何に関わらずすべて公開し、研究者が自由に利用できる環境を整えることが望ましいと、バードライフは考えています。
  • 宿主や系統に特異的なH5N1ウイルスの病原性、ウイルスが排出される範囲や期間、野鳥の感染経路に関する理解を深めるために、自然環境下のH5N1ウイルスの生態研究を促進すること。
  • 渡り鳥の死亡個体を迅速に見つけ出し、検査すること。野鳥の死亡はH5N1ウイルスの感染以外にも様々な原因で起きる(大量死が起きることもある)ので、社会的パニックの原因にならないようにすること。

H5N1ウイルスの感染防止策として、野鳥の駆除、生息地の破壊、繁殖地やねぐらからの追い出しを行なうことを提唱している政府もありますが、そのような方策は効果がないだけでなく、適切な対応策を講じる妨げとなり、状況を悪化させかねません。さらに、生息地の喪失ですでにストレスを受けている種に追い討ちをかける可能性もあります。

人間がH5N1ウイルスに感染する危険性はきわめて低いものです。人への感染例は、ほとんどが感染した家禽と頻繁に濃密に接触した結果です。しかし、特にアジアにおいて言えることですが、高頻度で家禽と接触を持つ人の数に比べると、知られている感染者の数は小さなものです。

トリインフルエンザの脅威に効果的に対処するためには、獣医師、家禽飼育産業、食料・農業・厚生・環境の各行政機関の協力が必要だと、バードライフは考えています。収集された情報を最大限に活用するためには、野鳥に発生したH5N1ウイルスの感染に鳥類学の専門知識を活かす必要があります。国連環境計画の「移動性野生動物の種の保全に関する条約(CMS、通称ボン条約)」が召集する、トリインフルエンザ対策委員会および欧州連合(EU)のORNIS委員会の会合にバードライフは積極的に参加しています。尚、この対策委員会は国連の4機関を含む9つの国際組織の研究者や環境保護関係者が構成委員を務めています。

2007年のH5N1亜型トリインフルエンザの感染発生について

2006年末と2007年始めに、家禽における新たなH5N1ウイルスの感染発生がベトナム(感染が速い速度で進行)、ナイジェリア、タイ(初めての感染発生から6ヶ月)、韓国、日本で報告されました。これらの国々ではこの感染発生に対応する野鳥の感染は発生していません。韓国と日本では、2004年以来、H5N1ウイルスは見つかっていませんでしたが、両国における感染発生の原因は、不明のまま残っています。
香港では、H5N1は中国から違法に輸入されたニワトリと、様々な種の少数の野鳥から確認されています。これらの野鳥は、状況証拠からいうと、いわゆる「放生会」のために捕獲され持ち込まれた個体(あるいはそれらを捕食した個体)ではないかと思われます。しかしこの仮説はまだ検証されていません。香港の事例を除いては、2006年8月以降、H5N1ウイルスは野鳥の間では確認されていません。
ごく最近のパキスタンにおける2つの感染発生が、2月7日に報道されました。1例は「土着種のニワトリ」、そしてもう1例は「裏庭で飼われる愛玩用家禽」(クジャク類、キジ類、ハト類、インコ類)です。国際獣疫事務局(OIE)の報告書は、ウイルスの起源は新しく野鳥が持ち込まれたことによるとしていますが、それらがどこから持ち込まれたかを明らかにしていません。
H5N1ウイルスが不運にして人に感染し死亡する事例は続いており、インドネシア、中国、エジプト、から、そしてナイジェリアでもこのほど初の死亡が報告されました。

ヨーロッパにおける2007年の感染発生

ハンガリーでは、1月24日にH5N1ウイルスが、南東部のCsongrádの1ヶ所の飼育場に飼われていた3,000羽を超えるガチョウにおいて確認されました。Csongrádは2006年半ばに発生した前回の感染発生地(主に農場のアヒルとガチョウが感染)に県境を接しています。ウイルスの遺伝子の詳細はまだ明らかではありませんが、初期の報告は、2006年の感染発生時のものとは大幅に異なるとしています。ハンガリーの感染発生の起源は分かっていません。

英国では、2月3日にH5N1ウイルスがイングランド東部のサフォーク州の大規模なシチメンチョウの閉鎖式の飼育場で確認されました。感染したシチメンチョウの数は159,000羽に上ります。英国の当局は目下、サフォーク州における感染発生の原因は、ハンガリーから輸送された家禽産物がウイルスに汚染されていたためである可能性が強いとしています。サフォーク州の飼育場を所有しているバーナード・マシューズ社は、SáGa Foodsという家禽肉加工のための子会社をハンガリーに所有しています。毎週、38トンものシチメンチョウの半加工された肉が、ハンガリーからサフォーク州の飼育場にある肉加工工場(感染発生が始まった飼育場の隣にある建物)に運び込まれていました。英国の報道機関は、サフォーク州で見つかったウイルスの遺伝子は、約10日前に見つかったハンガリーと同一であったと報じています。

ハンガリーでも英国でも、政府当局は欧州連合(EU)のウイルス管理に関する法令(強化改訂されたもの)のガイドラインに従って、速やかに家禽の処分と移動制限地域の設置を行いました。英国では数人の人が家禽の処分の後に体調を崩しましたが、H5N1ウイルスの検査結果は陰性でした。

ロシア政府当局は、1月末ごろにクラスノダール地域(ウクライナと黒海に近い)の3つの村落においてH5N1ウイルスの感染発生が生じたことを報告しました。しかしこれらの感染発生、及びH5N1亜型という鑑定結果については、まだ確認が取れていません。

野鳥の役割

一番最近のH5N1ウイルスの渡り性の野鳥への大規模な感染事例は、2006年8月にロシアとモンゴルの国境にあるウブス湖地域で起きており、弱った鳥や死亡した鳥が見つかりました。野鳥のサンプル調査は世界の各地で数多く行われてきていますが、健全な渡り鳥がH5N1ウイルスに陽性反応を示したという信頼できる記録はなく、このことを否定する主張は裏づけを欠いています(Feare & Yasue,Virology (ウイルス学) 3: 96-99を参照)。

ヨーロッパ

2006年の初頭に、ヨーロッパ各地で野鳥にウイルス感染が発生し、5月に突然終息しました(スペインでは、7月にカンムリカイツブリPodiceps cristatusの古い死体が報告されていますが、おそらく新たに感染が起こったのではないと思われます)。ほとんどの場合、感染した個体の数は比較的少数でした(10羽以下の場合が多い)。ドイツのリューゲン島での死亡事例では、H5N1ウイルスに対して陽性反応を示したのは200羽以上でしたが、全死亡数(数千羽)のうちのおよそ3%でした。

ヨーロッパで発生したこのような感染事例から、野鳥には感染後にウイルスを別の地域へ運ぶ能力があることはわかりました。しかしそのメカニズムはまだ解明されていません。ウイルスに感染した個体が死亡するまでのしばらくの間に移動し、別の鳥の群れにウイルスを移すことによって、馬跳び式にウイルスを広い地域に広めて行くという可能性はあります。また、H5N1ウイルスに対する耐性を持っていて、自身は重症になることなく、他の個体にウイルスを伝染させることができる種が存在するのかも知れません(Feare & Yasue,ウイルス学3: 96-99)。ヨーロッパで2月に発生したウイルス感染は、例年にない寒さに見舞われた野鳥が黒海とカスピ海地域から移動せざるを得なかったことに関連しています。当時、この地域では家禽の間にH5N1ウイルス感染が広まっており、衛生管理は徹底されていませんでした。

アフリカ

アフリカでも、2006年の初頭に家禽にウイルス感染が発生しました(ナイジェリアが感染源)。これはヨーロッパの場合と異なり、渡り鳥がH5N1ウイルスをアフリカに運んだ可能性は考えられません。政府機関による調査とかなり確実な状況証拠から、家禽およびその加工製品の移動がウイルス感染の原因であることが示唆されています。感染発生の時期や場所は、渡り鳥の動きと一致していません。さらに、ナイジェリアやエジプトなどの国では、複数の大規模家禽飼育施設を運営する企業内の各施設でほぼ同時に、ウイルス感染が発生しています。こうした状況は渡り鳥が感染源ではないことを示しています。特に、東アフリカではそれに先立って重要な湿地で感染の監視が行なわれていたので、H5N1ウイルスが野鳥によってアフリカへ運ばれたのあれば、ウイルス感染は発見されたはずです。

アジア

同様に、アジアでも、野鳥の移動はH5N1ウイルス感染の主な原因となってはいません。ウイルスは既に1996年に発見されているからです。2005年4月以前にはアジアでは、弱った、あるいは死亡した少数の野鳥からH5N1ウイルスが見つかっていましたが、それらの野鳥は、家禽飼育場や生きた動物を売る市場の付近で死体を食べていた、広域に分布する渡りをしない種(スカベンジャー種)か、捕獲された野鳥でした(表2を参照)。

しかし、2005年の4月から6月にかけて、中国北西部の青海湖とモンゴルのエルヘル湖で、渡りをする野鳥において、大量死が発生しました(青海湖:6,300羽、エルヘル湖:130羽)。死亡した個体の中には、H5N1感染の症状や、ウイルス検査で陽性反応を示したものもいます。青海湖付近には家禽飼育施設が存在しますが、エルヘル湖周辺には一ヶ所もないと言われているので、野鳥が遠く離れた地域にH5N1ウイルスを伝播することができるかどうかに関心が高まっています。

青海湖とエルヘル湖で野鳥がH5N1ウイルスに感染した経路は、まだ明らかになっていません。インドガンAnser indicusは、青海湖で最初にH5N1ウイルスに感染して大量死した種です。大量死は越冬地から飛来して数週間後に発生しているものの、H5N1ウイルスの感染源は青海湖周辺と思われています。インドガンの感染源は、どれと特定されていませんが家禽飼育場が原因である可能性があります。また、青海湖にあるインドガンの人工繁殖施設も感染源の可能性があります(バトラー 2006;H5N1ウイルス感染は公式には報告されていない)。この施設ではインドガンを家禽化するために、人工繁殖する一方、放鳥も行なっています。2006年に中国の北西部で報告のあったインドガンのウイルス感染は、すべてこうした放鳥場所近くで発生しています。インドガン以外の種ものちに青海湖でウイルスに感染しています。この感染で4つの異なるウイルスの系統が検出されましたが、インドガンから感染したのか、別の感染源から感染したのかは明らかになっていません(チェンら 2006)。ウイルス感染発生の範囲はきわめて狭く、青海湖周辺にある湿地ではインドガンやその他の野鳥の死亡は確認されていません。青海湖や他の野鳥に関するウイルス感染の詳細は、「野鳥のH5N1ウイルス感染(PDF 190 KB、英文)」を参照して下さい。

モンゴルのエルヘル湖で2005年7月に、H5N1ウイルスにより弱ったり死亡して見つかった個体は、主にインドガンとオオハクチョウCygnus
cygnusで、少数からウイルス感染が見つかりました。エルヘル湖のウイルス感染は青海湖のあとで発生しているので、調査者は、渡り鳥がウイルスをモンゴルへ運んだ可能性を疑いました。青海湖のウイルス感染でもインドガンとオオハクチョウが死亡しており、青海湖で検出されたH5N1ウイルスの4つの系統のうちの1つが、エルヘル湖でも検出されています。しかし、インドガンもオオハクチョウも、モンゴルにはウイルス感染が発生する数ヶ月前に繁殖のために到着していたはずです。また、感染が起きた時期は、換羽の終わり近い時期に当たりますが、換羽期にはこれらの種は移動は行わないのです(訳注 ガンやハクチョウは換羽の時期には飛べなくなるため)。したがって、両種が青海湖からエルヘル湖へウイルスを運んだとは考えられないのです。エルヘル湖から450キロメートル以内にある8ヶ所の湿地では、大量死事件が起きた兆候は全くありません。感染が発生した時期に、4,119羽の健全な野鳥に対しH5N1ウイルスの検査を実施したところ、すべてが陰性でした。エルヘル湖では野鳥の大量死は起きていますが、実際にウイルス検査で陽性を示した個体は数少なく、H5N1ウイルスに感染した鳥の割合は、生きている鳥と死亡した鳥の合計のわずか0~1%と推定されています。エルヘル湖におけるH5N1ウイルス感染は限定された地域内のみで発生しており、感染した野鳥がウイルスを別の地域へ伝播させることはなかったし、仲間同士でも大きな感染は起きなかったことをこうした事実は示しています。

2005年と2006年に、感染が発生したモンゴル、中国、ロシアの繁殖地と、南のアジア・太平洋地域の越冬地の間の渡り経路で、道状に渡り鳥の死体が発見されたという事実がないことは、渡り鳥が春と秋の渡りに際して大陸から大陸へウイルスを長距離運んではいないことを示しています。アジア・太平洋地域では、野鳥の監視を行なっていない国や地域があるので、野鳥の大量死が見過ごされてしまった可能性はあります。しかし、H5N1ウイルス感染の発生地域(東南アジアやシベリア)からの渡り経路上に位置する日本、韓国、フィリピン、オランダ、フィンランドなどの国では、最近、H5N1ウイルスの感染は発生していません。こうした国々では、主要なガンカモ類の越冬地や渡りの中継地で広範囲にわたる野鳥の監視を実施しています。日本と韓国では、2003年から2004年にかけて家禽とスカベンジャー種(カラス類)だけに発生したウイルス感染を、家禽の輸入停止措置を講じることにより防止した後は、感染発生は起きていませんでしたが、2007年の初頭に商業的な家禽飼育施設で再びウイルス感染が発生しました。少数の例外を除き、家禽間の伝播の時期やパターンと、野鳥の渡りとの間に、相関関係はほとんど認められていません。

黒海・カスピ海

それにもかかわらず、2005年の秋に黒海とカスピ海で発生したウイルス感染の時期と場所は、南西の渡り経路に沿っていると主張する関係機関もあります。黒海とカスピ海で発生したウイルス感染は、2005年の夏に、ロシアの家禽とロシア南西部の野生のガンカモ類でH5N1ウイルスが検出されたあとのことですが、渡り経路上では野鳥の死体は発見されていないようです。野鳥の死亡が起きたのは狭い地域に限定されています。少なくともある事例では、大きな群れの中の数個体が死亡したに過ぎません。野鳥が関わっていることを示す証拠は状況証拠の域を出ていません。2005年の後半にトリインフルエンザが西の方へ広まった原因として、家禽やその加工製品の移動説も同様に有力です(「家禽と家禽からの生産物の移動」の項を参照)。さらに、2006年の春の渡りの時期に、ウイルス感染の再発はありませんでした。

H5N1ウイルスの感染拡大に野鳥が果す役割でよくわかっていないことのひとつは、感染した野鳥が発症せずに、ウイルスを運び、伝播させることができるかどうかという点です。渡り鳥はウイルスに感染しても発症しないことを立証したと称される研究報告は、今のところ、中国のポーヤン湖で行なわれた検査に基づくものだけです。研究報告によると、13,000羽を超える野鳥を検査して、陽性反応を示した個体は6羽だけでした。検査を行なった研究者は十分に詳細な鳥類学的なデータや生態学的なデータ(陽性反応を示した鳥類種、捕獲場所、サンプリングの方法など)を発表していないので、この結果の普遍性を評価するためには、さらに研究が必要です(データ・サーベイランス論、英文と、MB, Yasue et al,BioScience 56: 1-7、英文を参照)。

ヨーロッパ、アフリカ、アジアで、これまでに検査された健全な野鳥は何千羽にも上りますが、H5N1ウイルスは検出されていません。しかし、この結果を解釈するときには、慎重を期す必要もあります。感染率が非常に低いと、無症候性の感染を検出するためには、もっと多くのサンプリングを必要とするかも知れないからです。さらに、最近の調査(Fouchier et al. 2006 トリインフルエンザに関する国連食料農業機関会議)は、H5N1ウイルスを実験的に感染させた水面採食ガモには、フンと一緒にウイルスを排泄せず、発症もしない種がいることを示しています。気管の方がウイルスを検出できる可能性が高いのですが、気管ではなく排泄物や排泄口を綿棒で拭き取る方式がH5N1ウイルスの検査の主流です。したがって、こうした検査では、H5N1ウイルスが検出されない種がいる可能性があります。今後は、気管を拭き取る方式を用いるべきでしょう。H5N1ウイルス感染の空間的時間的発生パターンを解明するためには、野生のガンカモ類の個体群で、種に特異的な病原性に関する調査をさらに行なうことがきわめて重要です。

野鳥のH5N1ウイルスの疫学的理解やウイルスの挙動の解明は、未だにきわめて不十分です。H5N1ウイルスの研究は大部分が実験室の家畜・家禽で行なわれてきました。重要でも解明されていないことに、感染した野鳥から他のガンカモ類や家禽へウイルスが移る感染のしやすさの問題があります。しかし、2006年の初頭にヨーロッパで、小規模ですが、こうした感染は起きたようです。感染した個体が長距離の渡りを行なえるかどうかに関する情報は皆無ですが、渡りを行なっている間は、病気に対する耐性が抑制される可能性があることを示唆する証拠が蓄積されつつあります。宿主の種やウイルスの系統によって、感染率や病原性はきわめて変異に富むことを示唆する証拠は少ないがあります。

感染の一般的な発生パターン、感染経路、渡り鳥の個体群に及ぼす可能性のある影響を理解するためには、質の高い情報の収集や公開がきわめて重要です。こうした情報は、不測の事態対応の集中化、将来の感染の発生予測、トリインフルエンザの経済や環境保全への影響を低減する有効な政策の策定に利用できるからです。

強毒のH5N1亜型ウイルスの感染拡大の防止に努める方々のために、監視データや検査データをすべて公開して、研究者が自由に利用できる環境を整えることが望ましいと、バ-ドライフは考えています。

家禽と家禽からの生産物の移動

東南アジアで発生したウイルス感染の大半は、家禽および家禽の排泄物(フン)や加工製品の移動や、水、藁、車両に付着した泥、衣服、靴など、ウイルスに汚染された物質が家禽飼育場から不用意に持ち出されたことと関連があります。世界的には規制のない家禽の移動が未だに重要な感染源となっています。「アジアにおけるH5N1インフルエンザ・ウイルスの多亜系の特定:流行防止の展望」(国立科学院報告、2006年2月21日)と題する論文で、チェンらはウイルスの系統を分析し、東南アジアで発生した大規模感染の原因は家禽の移動であるという結論を下しています。

国連食料農業機関(FAO)、国際獣疫事務局(OIE)および世界保健機関(WHO)によると、東南アジアで発生したウイルス感染に大きな役割を果したのは、生きた動物の市場(「生鳥市場」)と思われます。1997年に香港の家禽飼育場で発生したH5N1ウイルス感染の感染源として、生きた動物の市場が特定されました。生鳥市場のニワトリの20%がウイルスに感染していて、ベトナムも状況は同じでした。2004年に家禽飼育場で大規模感染が発生しましたが、その3年前にハノイの市場のガチョウがH5N1ウイルスに感染していたことが報告されています(トリインフルエンザおよび人の健康に関するFAO/OIE/WHOの諮問:アジアにおける動物の増殖、売買および同居の危険削減策、クアラルンプール、マレーシア、2005年7月)。

さらに、家禽に関しては、違法なものも含め、大規模な国際取引が存在します。合法的な取引では、家禽が文字通り、何百万羽単位で世界各地へ輸送されています。具体例を挙げると、ウイルスの大規模感染が発生する前のエジプトは、年に1億8千万羽の1日齢のヒナ鳥と50万羽の成鳥を輸出していました。2004年にウクライナはニワトリを1,200万羽、ルーマニアは1,600万羽、輸入しています。トルコでは一ヶ所の農場で、年に1億個以上の孵化卵を生産することができ、主に東欧と中東に輸出されています。2006年にインド、ナイジェリア、エジプトで発生した大規模感染は家禽産業がその感染源で、家禽およびその加工製品の移動が感染を広めた疑いが強いのです。2007年にタイ、韓国および日本でウイルス感染が再び発生しましたが、その感染も家禽飼育施設でおきています。

当然のことながら、家禽の違法取引に関する情報は入手困難ですが、2006年の2月と7月に、家禽の肉がアジアからアメリカへ違法に輸出されていたことが判明しました。2005年10月に、中国から密輸された3,000羽のニワトリがイタリア当局に押収されました。2005年11月には、おそらく何百万トンにも上ると思われますが、大量のニワトリの肉が中国から密輸されたことを英国当局が明らかにしました。国内の食品製造業者に売り渡す前に、ラベルが不正に張り替えられていました。また、2006年2月には、中国から密輸された20キロのニワトリの舌がリオデジャネイロで、ブラジル当局に摘発されました。さらに、中国から密輸された21トンの家禽の肉がスペインの南部で押収されました。中国とベトナムでは陸路経由で大規模な家禽の密輸が行なわれているという報告が多数あります。密輸される家禽の多くは健康状態が不良です。2006年12月にベトナムの中部で実施された検査では、75%に上る家禽がウイルスに対して陽性反応を示しました。このことは、感染の危険性が広く公表さているにもかかわらず、国境の取り締りがまだ十分でないことを示しています。中央アジアでは違法な家禽の輸送が横行していると、報告されています。2005年のウクライナの獣医学局の発表によると、第3国から輸入された肉が違法にロシアに再輸出されているケースがかなりあるようです。

ニワトリやアヒルなどの家禽の排泄物(フン)やその他の家禽の副産物(例えば、死亡した鳥や羽など)が農業や水産養殖で肥料や飼料として、未処理のまま広く利用されていますが、こうした方面も精査を行なう必要があります。H5N1ウイルスに感染した家禽はウイルスをフンと一緒に排泄します。トリインフルエンザウイルスは、排泄物などの有機物質の中では数週間、活動を停止している可能性があるので、感染した鳥のフンを未処理のまま養魚池や畑に撒くと、新たな感染源になる可能性があります。こうした危険性は1988年にすでに認識されていたにもかかわらず、これまでほとんど調査されていません。2006年の後半にヨーロッパで発生した唯一のH5N1ウイルス感染は、飼われていたコクチョウCygnus atratus(オーストラリアの種)における発生です。このコクチョウは8月にドレスデンの動物園で死亡しましたが、2006年4月に孵化して、観賞用の池で飼われていました。池で使用されていた人工の餌が感染源のひとつとして考えられています。

ロシアや東欧、東南アジアでは、ニワトリの排泄物が水産養殖場で飼料として利用されています。家禽の排泄物は農地にも撒かれていますが、撒かれた排泄物は必ず河川に流れ込みます。未処理の家禽のフンを集めて、輸送すると、きわめて効率よくウイルスが広まります。「トリインフルエンザを経験した国や危険のある国では、たとえ熱処理を施し、適切に堆肥にしたり、サイロに貯蔵したりしても、家禽の排泄物や家禽飼育場で使用したわらなどを飼料として利用することは禁止することが望ましい」と、国連食料農業機関(FAO)は提言しています。

詳細は2006年3月のバードライフ報告、「養魚とトリインフルエンザ拡散の危険性」(BirdLife’s March 2006 report, Fish farming and the risk of spread of avian influenza;PDF, 200 KB、英文)を参照して下さい。

飼い鳥の違法取引

飼い鳥の違法取引の横行により、H5N1ウイルスに感染した鳥が遠い地域にまで運ばれています。例を挙げると、台湾当局はこれまでに、感染した鳥が中国本土から密輸されるのを2度押さえています。英国の鳥類検疫所で発生したH5N1ウイルスの感染も合法的に見せかけて、違法に輸入された鳥が感染源と考えられます。問題の鳥(ゴシキソウシチョウLeiothrix argentauris)は台湾原産ではないからです。2004年にタイからベルギーに手荷物として密輸されたクマタカSpizaetus nipalensisのつがいがウイルスに感染していることが判明しました。飼い鳥の感染源はアジアの生鳥市場である可能性が最も高いのです。家禽や捕獲された野鳥は、狭いところに押し込められて売られているので、排泄物で相互に汚染し合う危険性が高いからです。2006年と2007年の初頭に、香港で発見された死亡した「野鳥」はウイルスに感染していましたが、感染源はおそらく生鳥市場でしょう。香港には宗教的な理由で放鳥される捕獲された野鳥の大規模な商取引(2005年だけで、少なくとも50万羽と言われている)が存在しますが、このウイルスに感染した鳥はその一部であることを示す証拠があります。

予防と規制

H5N1ウイルスの感染を予防するためには、家禽の監視と検査、家禽とその加工製品および飼い鳥の移動や売買の規制、農業や水産養殖における家禽の排泄物の使用規制、家禽およびその加工製品や捕獲された野鳥の不法取引の取り締り強化など、総合的な安全管理を徹底することが重要です。特に、監視の対象にアヒルを含めるのが望ましいです。アヒルはウイルスに感染しても無症状でいられることが知られていて、感染が見落とされやすいからです。感染経路、感染率、ウイルスの生存率に関する実験室の実験結果から、H5N1ウイルスの挙動は他のトリインフルエンザウイルスとは大きく異なることが強く示唆されるようになりました。これはH5N1ウイルスが野鳥ではなく、家禽の置かれた環境に適応した結果であることが関係していると思われます。家禽産業が現在の強毒のH5N1ウイルスを生み出し、感染拡大に大きな役割を果しているのです。野鳥だけを考えるのは誤りであり、費用や労力を無駄にするおそれがあります。

屋内飼育や(家禽への)予防接種などの問題に関しては、獣医師の指導に従うことが望ましいことです。十分な抗原が含まれていれば、予防接種は効果が期待できますが、質の劣るワクチンは病気の発症を押さえるものの、ウイルスの増殖、感染、進化を許してしまいます。予防接種の利点に関して、ウイルスの研究者、獣医師、政治家の間で議論が続けられています(予防接種に関する議論の詳細は国連食料農業機関のウェブサイトやネイチャー誌を参照して下さい)。

H5N1ウイルスが家禽や人に感染する危険を減らすために、2005年と2006年に、野鳥の駆除や生息地からの締め出し、生息地の破壊や巣落としを提唱した政府高官がいましたが、世界保健機関(WHO)、国連食料農業機関(FAO)および国際獣疫事務局(OIE)は、野鳥の駆除によるトリインフルエンザの防止は現実的でないという意見で一致しています。駆除や放逐を試みると、かえって野鳥が移動することによりウイルスをより広い範囲へ伝播させるおそれがあり、事態を悪化させてしまいます。野鳥における疫学的監視強化や、野鳥の個体群におけるウイルスの挙動に関する詳細な調査を実施することがきわめて重要です。国によっては死亡した野鳥やH5N1ウイルス感染を発見し、報告できる態勢を整えることが急務な場合もあります。

人への危険

H5N1ウイルスは人に重大な病気を引き起こす可能性はあるものの、感染力は弱いものです。鳥から人へはまだ感染しにくい状態です。通常は長時間にわたり濃密に接触しなければ、感染しません。今のところ、人から人への感染は、もしあったとしてもきわめてまれであると考えられます。一方、こうした人から人への接触感染が北スマトラで起きたと考えられており、H5N1ウイルス感染により家族6名が死亡しています。人から人へたやすく感染して、大流行を引き起こす型に進化する可能性が懸念されています。

この100年の間に、A型のインフルエンザが少なくとも3回大流行し、世界中で多くの人命が失われました。こうした危険なウイルスの系統の起源は特定されていませんが、少なくとも2つの系統は、おそらくブタを介してと思われますが、鳥と人のインフルエンザウイルスが出会い、遺伝物質を入れ替えたときに、生まれたと考えられています。H5N1ウイルスは中間宿主を介さずに、家禽から直接人間に感染できる、めずらしい系統なので、H5N1ウイルスの感染が後を絶たないと、こうした進化が再び起こる確率が高まります。

人への感染は、ほとんどが家禽と濃密な接触を持つ人の間で起きています。家禽や野生のガンカモ類で発生した感染の規模や範囲を考えると、人の感染件数は比較的少ないです(世界保健機関の統計によると、2007年1月15日現在、261件の感染が確認されており、死亡者数は161人)。これは、ウイルスが家禽から人へ感染する能力がまだ低いことを示しています。

バードウォッチングに行ったり、庭に餌台を設置したりしても感染することはありません。しかし、野鳥の死体にはさわらない、餌台の清掃や餌出しを行なったあとは、石鹸で手を洗うなど、常識的な注意事項を守る必要はあります。いずれにしても、こうした注意事項を守ることは望ましいことです。野鳥はH5N1ウイルスに限らず、人体に害を及ぼす危険性のある病原体を持っている可能性があるからです。H5N1ウイルス感染が発生した地域、とりわけ水域に近い地域では、獣医師の指示に従って、適切な検疫期間を設けるのが望ましいことです。トリインフルエンザウイルスには水や排泄物の中では長期間、生存できる能力があるからです(水中ではpH、塩分濃度、温度などによるが、100日までは生存可能)。また、感染が起きている水域では遊泳しないことです。

H5N1ウイルス感染が発生した国では、家禽や他の飼い鳥を取り扱う人に対しては、予防措置を徹底させ、鳥にウイルスを感染させないようにする必要があります。野鳥や野鳥が利用する池などの水に直接接触することをできるだけ避けるのが望ましいことです。

野鳥への影響と保全対策

絶滅が危惧されている種や数ヶ所の地域だけに集まる種に対して、H5N1ウイルスは大きな被害を及ぼす可能性があります。世界的に絶滅が危惧されている鳥が少なくとも2種、すでに影響を受けています。野鳥に発生したウイルス感染の報告の多くは感染種を特定していないので、感染が気付かれていない絶滅危惧種が他にもいる可能性があります。2006年2月にギリシャで、アオガンBanta
ruficollisの死亡個体からH5N1ウイルスが検出されましたが、これは重大な問題です。全世界の個体数(88,000羽)の90%が集まるのがルーマニアとブルガリアの5ヶ所のねぐらなのですが、この2国ではウイルス感染が発生しているからです。さらに、2005年の夏に中国北西部の青海湖で発生したウイルス感染で、世界的に絶滅が危惧されているオグロヅルGrus nigricollisが死亡しています(チェンら、2006)。また、飼育下の個体がどのくらい入っていたのかは不明ですが、2005年の春に青海湖で死亡が確認されたインドガンは、全世界の個体数の5%~10%に相当すると推定されています。2006年5月には、中国北西部の青海湖と西蔵地方(チベット自治区)で、600羽を超えるインドガンがH5N1ウイルスに感染して死亡したと言われています。

しかし、これまでにウイルスに感染した野鳥の個体数は少ないです。家禽飼育施設での感染率の高さとは対照的に、自然界で野鳥に感染する力はまだ弱いと思われます。毎年、インフルエンザウイルス以外の一般的な病気で死亡する個体の方がはるかに多いです。例えば、ドイツ北部のニーダーザクセン州の報告によると、今年、検査のために持ち込まれた7,000羽の死亡個体のうち、H5N1ウイルスに感染していたのは0.1%に満たないものでした。

H5N1ウイルスの感染を防止するために、政府や一般大衆が行なう誤った駆除や生息地の破壊行為の方が野生生物にとっては、ウイルス感染による死亡よりも大きな脅威でしょう。野鳥がマスコミで悪者扱いされています。政治家がハンターに、渡ってくる鳥を1羽残らず打ち落とすように要請した国もあります。水鳥の飛来地と繁殖地をなくすという口実のもとに、湿地の干拓計画を復活させた政府もあると報じられています。トリインフルエンザの感染防止に役立つという誤った思い込みから、人間の近くで繁殖しているツバメHirundo rusticaやイワツバメDelichon urbicaなどの野鳥の巣落しが行なわれていますが、こうした行為は野鳥を含めた生物の多様性を損なう危険性があります。

先にも述たようにバードライフ・インターナショナルはトリインフルエンザ対策委員会の委員を務めています。本委員会はウイルス感染の原因に関して、詳細なデータや情報を求めるとともに、トリインフルエンザの発生の早期報告と監視体制の確立に尽力しています。トリインフルエンザに関する最新情報を分析し、解明の進んでいない部分を特定して、トリインフルエンザが社会や経済、環境に及ぼす影響の削減策を提言するために、2006年の4月上旬に、生態学、鳥類学、ウイルス学、獣医学の分野の専門家が会合を開きました(www.cms.int/avianflu/conclusions rec ai seminar.pdfを参照)。
トリインフルエンザ対策委員会は「トリインフルエンザと野鳥」に関する小冊子を最近発行しました(www.cms.int/avianflu/cms ai brochure sep06.pdfを参照)。

2006年の5月下旬にバードライフインターナショナルは、国連食料農業機関(FAO)および国際獣疫事務局(OIE)による「トリインフルエンザ会議」にも出席しました。野鳥のトリインフルエンザに関するデータの質と量を高めるために、会議では「世界トリインフルエンザ監視ネットワーク(GAINS)」の設立が決定されました。バードライフは「GAINS」のパートナーとして、重要湿地(重要野鳥生息地)で病気や死亡した野鳥の個体数に関する基礎データを現在収集しています。

以上

原典:http://www.birdlife.org/action/science/species/avian_flu/index.html (c)BirdLife International.
(バードライフ・インターナショナルの許可を得て翻訳。なお、この声明の翻訳にあたっては、黒沢隆さん、黒沢玲子さんにお世話になりました。記して感謝します。訳文の文責は(財)日本野鳥の会にあります。(財)日本野鳥の会)

野鳥が持つ鳥インフルエンザとは別の病気です(2004年3月19日更新)

2006年2月6日掲載

今、問題となっているのは高病原性鳥インフルエンザと呼ばれるものです。この病気は自然界にもともとある、ほとんど病原性の無い鳥インフルエンザウイルスが、ニワトリなどの家禽に感染したのち変異を起こして発生すると考えられていまして、野鳥が持つ鳥インフルエンザとは別の病気です。そのため高病原性鳥インフルエンザの発生を防ぐには、まず病原性の無い鳥インフルエンザの家禽への感染を防ぐ必要があります。

鳥から人へはほとんど感染しません

鳥インフルエンザは通常では人に感染しないとされます。これは、ウイルスに適合性のあるタンパク質が鳥特有の物だからです。国外での感染例は、病気にかかった家禽の糞の粉を吸い込むなどして、大量のウイルスを取り込んだためと考えられています。高病原性鳥インフルエンザが野鳥から直接人に感染した例はありません。
したがって、野鳥が近くにいるからといって怖がることはありません。

*高原性鳥インフルエンザについて詳しくは、下記国立感染症研究所感染症情報センターのホームページを参照してください。
http://idsc.nih.go.jp/disease/avian_influenza/index.html

渡り鳥よりも人間活動を注意すべきです

ガンカモ類など越冬にやってくる水鳥類は、鳥インフルエンザのウイルスを持っているものが多いとされますが、これは病原性が無いウイルスです。
アジアで高病原性鳥インフルエンザが広域的に感染が広がった12月末から1月は、渡り鳥の移動が少ない時期です。高病原性鳥インフルエンザのウイルスはニワトリなど家禽で発生したのち、家禽や家禽をあつかう人の靴や衣服、車に付いて拡大していることが多いと考えられます。韓国での感染拡大では、堆肥用に鶏舎から出た廃棄物を運搬する車がウイルスの運び屋となったと考えられています。
自然状態では、水鳥類がニワトリなど家禽と接することはほとんどありません。水鳥類を捕獲して持ち帰るというような人間活動により、家禽までウイルスが持ち込まれ高病原性のウイルスが発生したことが考えられます。

養鶏場などでの衛生管理を徹底すべきです

養鶏場などでは、第一に作業着や靴の衛生管理を行って、ウイルスを人間が持ち込まないようにする必要があります。また鶏舎内に餌を求めて、スズメなど小鳥類が入り込まないような構造にすることも必要です。

野鳥の病気一般についても注意すべきです

自然界には、ウイルスやバクテリアを初めとして、様々な微生物が存在します。これらの微生物は野生の動物には問題なくとも、何らかの原因で家禽やペットに感染すると病気を起こしてしまうものがいることは確かです。野生の生き物と家禽や人とが一定の距離を置き、自然界の微生物を持ち込まないようにすることが重要です。これが、ひいては高病原性鳥インフルエンザの発生を防ぐことにもなります。
そのためには、以下のことに注意すべきです。

  1. 野鳥の捕獲を控える
    野鳥を獲ったり飼ったりすることは、自然界の微生物を持ち込む可能性の高い行為です。野鳥の捕獲を控えるべきですし、野生の生き物は、ペットとして飼育すべきではありません。
  2. 野鳥の国際貿易を禁止する
    日本には外国から多くの野鳥が輸入され、ペットとして売られています。これは海外の微生物を持ち込む可能性の高い行為です。野生の生き物を国際取り引きすべきではありません。

    *現在、農水省により高病原性鳥インフルエンザが発生した国からの鳥類の輸入はペットも含めて一切禁止されています。
    http://www.maff.go.jp/www/press/cont/20040126press_8.htm
    3月17日現在、以下の国・地域が鳥インフルエンザの防止のため鳥類の輸入禁止措
    置がとられています。
    韓国、中国、香港、マカオ、台湾、ベトナム、タイ、カンボジア、ラオス、インド
    ネシア、パキスタン、イタリア、オランダ、アメリカ、カナダ

  3. 野鳥へ給餌場所で糞などを注意する
    ハクチョウやカモが餌付けされている場所では、ハクチョウやカモたちが陸上に上がって糞をし、そこを観光客やペットの犬などが歩き回ったりしている状況があります。このような場所では、糞から野生動物が持っている微生物が付着する可能性があります。このような場所を訪れた時は、手洗いやうがいを行うだけでなく、靴を洗ったり、ペットを歩き回らせないように注意しなければいけません。
    庭などへ餌台をおく場合には、掃除をしたり餌の量を調節して、餌台のまわりに糞がたまらないよう注意しなければなりません。
  4. 野鳥の病気を監視する
    野鳥が保護された場合など、病変の有無について調査し、野生状態での病気を監視する体制を作る必要があります。
  5. 病気の発生と拡散には、なんらかの人為的な原因があると考えられます。日本野鳥の会は、高病原性鳥インフルエンザの流行の人為的原因を明らかにして、対応方法を考えるべきと考えます。
    家禽に深刻な病気が発生すると、逆にそれが野鳥に感染し大きな影響を及ぼす可能性があります。野生の生き物たちは、きびしい自然の中で精一杯暮らしています。自然環境条件が悪化して自然の食物が不足するなどすると、水鳥など野鳥が条件のより良い特定の場所に集中し過密化することがあります。こういったところでは病気が発生する確率が高くなりますし、感染が急速に拡大するおそれがあります。野鳥たちが自然な生活ができるような環境を整えることが、最良の対策といえます。

野鳥を怖がる必要はありません -カラスの高病原性鳥インフルエンザ感染について-

2004年3月12日発表

3月8日から11日にかけて、京都府丹波町・園部町と大阪府茨木市で高病原性鳥インフルエンザに感染していたハシブトガラスの報告がありました。そのため、カラスが鳥インフルエンザを身近なところへ広げていくのではないか、さらには他の野鳥にも鳥インフルエンザが広がって、人へも感染させるのではないかという不安を持っている人もいるようです。
でも、そんな心配はいりません。自然の中で精一杯生きている野鳥たちを、暖かく見守ってあげてください。

  1. 野鳥から人への感染例はありません
    野鳥の中では、カモ類など水鳥が鳥インフルエンザを持っていることがありますが、野外で生活している野鳥から人へ鳥インフルエンザが感染した例はありません。鳥インフルエンザは、高病原性のものであっても人へは感染しないのです。これは、ウイルスへの適合性があるたんぱく質の種類が鳥と人では違うためです。
    この冬はアジアの広い地域で鳥インフルエンザが発生しましたが、人が感染したのはタイやベトナムでのごく少数でした。これらの感染例は、飼っていたニワトリの糞の粉塵を吸い込むなど、ウイルスを多量に取り込んでしまった特殊な例と考えられています。
    カラス類など野鳥は身近な場所に住んでいても、飼い鳥と人とのような密接な関係ではないので、鳥インフルエンザをうつされることはまずありません。
  2. カラスは養鶏場で感染したと考えられます
    丹波町・園部町、茨木市ともに3月5日に保護されたり、死体が拾われたりしています。したがってこれらの鳥は、丹波町の養鶏場でニワトリが大量に死んでいた2月26日前後に感染したと推定されます。園部町は丹波町から9kmですが、茨木市は丹波町から約30kmの距離にあります。
    カラス類は冬の間特定の場所に集団ねぐらを作り、そこから10kmくらいを行動圏としている個体が多いと考えられています。しかし、中には40km以上出かけるものがいたという研究例もありますし、ねぐらを代える場合もあります。したがって感染が見つかったカラスたちは、丹波町の鳥インフルエンザが発生した養鶏場で感染した可能性が高いと考えられます。
    なお、人への感染はまず考えなくて良いのですが、野鳥から飼っている鳥への感染は注意が必要です。また、飼い鳥の病気を野鳥にうつさない注意もいります。養鶏場では、鶏舎に野鳥が入り込まないようにすることと同時に、死んだニワトリやフンを放置しておかないことが必要です。ペットとして飼っている鳥にも同様の注意が必要です。
  3. 感染は終息していくと思われます
    今回は不幸にして、養鶏場で発生した高病原性鳥インフルエンザはハシブトガラスという自然界への2次感染を起こしてしまいました。これまで、野鳥たちの間で高病原性鳥インフルエンザはほとんど知られていません。また、カラス類や小鳥類では、鳥インフルエンザそのものの保有率が低いことが分かっています。
    今回感染したカラスたちは、ウイルスが充満した養鶏場近くで感染してしまったと思われます。野鳥たちは鳥インフルエンザに感染しても、ウイルスの活動に耐えることができれば、体の中に抗体が出来てウイルスを消滅させます。これは、人がインフルエンザにかかった時と同じです。
    これからの季節、鳥たちの大部分は集団生活を解消し、縄張りを作って夫婦で暮らすようになります。そうなると、鳥から鳥へウイルスをうつす機会も少なくなります。
  4. 飼い鳥を捨てないでください
    鳥インフルエンザが怖いからといって、飼っていた鳥を捨ててしまうことが多発しています。これは自然の生態系をこわす外来種を増やすことになりかねませんし、動物愛護法違反で罰せられることでもあります。厳に慎んでください。

※参考サイト