稚内大沼での高病原性鳥インフルエンザウイルスの確認について

2010年11月17日掲載

北海道稚内大沼で鳥インフルエンザウイルスがカモの糞の中から見つかりましたが、野鳥の大量死は起きていません。今注意が必要なことは、水辺の野鳥の糞からウイルスを養鶏場などに持ち込まないことです。
通常、鳥インフルエンザが人に感染することはなく、野鳥を恐れる必要はありません。バードウォッチングをお楽しみください。
万一、野鳥の大量死を発見した場合は、手を触れずに。保健所等に通報してください。

稚内大沼で強毒性鳥インフルエンザウイルスが確認されました

10月14日に北海道稚内市大沼で、回収されたカモの糞便から、強毒性の高病原性鳥インフルエンザウイルス確認されました。北海道大学が独自に行なっている調査で、採取された183検体の内、2検体から見つかったものです。10月26日に環境省から公表されました。
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=13069

*強毒性:
ニワトリへ感染すると発症して死にいたるものを言う。ニワトリ以外では発症しない場合がある。
*高病原性鳥インフルエンザ・ウイルス:
A型インフルエンザ・ウイルスのうち、家畜衛生伝染病予防法で定義されている、強毒性になる可能性のあるH5亜型およびH7亜型のウイルス

野鳥では異常は認められません

強毒性ウイルスの検出を受けて、環境省および地元自治体は、大沼周辺で、野鳥に異常がないかの監視を行っていますが、今までのところ鳥インフルエンザが原因と考えられる野鳥の死亡は確認されていません。また、全国的にも監視体制が強化されていますが、現在のところ野鳥の異常な大量死の情報はありません。

人への感染を恐れる必要はありません

鳥インフルエンザは、感染した鳥との濃密に接触する等の特殊な場合をのぞいて、通常人には感染しないと考えられています。現在、稚内大沼周辺は立ち入りが規制されていますが、これは靴底や車などに糞便が付着して、ウイルスがニワトリ等の家禽へ広まることを避ける措置です。
世界的に見ても、野鳥から人へ鳥インフルエンザが感染した例はこれまでにありません。鳥インフルエンザは、「強毒性」であっても人へ簡単には感染しないのです。これは、ウイルスへの適合性があるたんぱく質の種類が鳥と人では違うためです。
アジアでは、鳥インフルエンザが家禽から人へ感染して尊い人命が失われています。これらの感染例は、飼っていたニワトリのフンの粉塵を吸い込んだり、食用に処理する時に鳥の血液がかかるなどして、ウイルスを大量に取り込んでしまった、特殊な例と考えられています。
川や池のカモ、ベランダのハト、庭の餌台に来る小鳥、ゴミ置き場のカラスなど野鳥は身近にいますが、普通に人と野鳥が接している限り、感染につながる大量のインフルエンザウイルスの取り込みはまず考えられません。そのため、世界的にも野鳥から人への感染は発生していないのです。

今、注意しなければならないこと

鳥インフルエンザへの対応で気をつけなければならないことは、アヒルやニワトリなどの家禽への感染です。家禽は狭い場所で高密度に飼育されているため、急速に感染を繰り返し、大量死につながることがあります。また、発生が起こった鶏舎などでは、法律によって家禽が処分されるため、経済的な影響も大きくなってしまいます。
もともとカモ類は鳥インフルエンザに対して耐性がありウイルスを持っていても発症しない場合が多いと考えられます。冬の渡りの初期に当たる現時点で、カモ類の糞便から強毒性の鳥インフルエンザウイルスが見つかったことから、日本全国の水辺に強毒性のウイルスを持ったカモが飛来する可能性があります。
家禽への感染で最も懸念されるのは、人間によるウイルスの運搬です。これを防ぐために、カモ類など水鳥の糞が多量に蓄積しているような場所には、立ち入らないこと、糞を踏んだ場合は、靴底を水洗いするなどの配慮が必要です。
一方で、適度な距離をおいて水鳥を観察するのは、問題ありません。

死んでいる野鳥を見つけたときは

もしたくさんの野鳥が死んでいるのを見つけたときは、死体には触らないで、お近くの警察、家畜保健衛生所、保健所に連絡してください。

野鳥は、食物にありつけなかったり、悪天候というような環境の変化でも死んでしまいます。これは自然の中で起こる普通のことですから、野鳥の死体を発見したからといって、ただちに鳥インフルエンザを疑う必要はありません。
しかし、野鳥が一ヶ所でたくさん死んでいたら、それは何か特別な原因の可能性があります。国内でもこれまでに、農薬などの薬物によるものや、汚れた餌や水による食中毒による大量死のケースが知られています。鳥インフルエンザが発症しやすい鳥が感染した場合には死亡することがありますから、念のため注意してください。