「鳥のいる日本の風景」

2018年8月1日~9月3日まで、東京・品川のキヤノンオープンギャラリーで、日本野鳥の会写真展「鳥のいる日本の風景」が開催されました。全国の支部から作品を募集したところ、それぞれの地域ならではの「鳥のいる風景」をとらえた作品が寄せられました。
私たちが次世代に残していきたい風景として、全作品をご紹介します。
※無断転載禁止

作品名:厳寒のオアシス

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:城石 一徹
支部名:オホーツク支部
鳥名:シノリガモ

冬季になるとオホーツク海へ流れ込む流氷と、その中を航行する「流氷観光砕氷船おーろら2」をバックに、わずかに開けた水面で休息をとるシノリガモを撮りました。オホーツク・網走では毎年繰り返される風景でありながら、他では決して見られない、当地ならではの風景であると思います。

作品名:意気投合

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:増子 礼子
支部名:十勝支部
鳥名:オジロワシ

浦幌川の堤防を車でゆっくり走っていると、4羽のオジロワシが鳴きながら飛んでいました。車を停めて観察していると、番(つがい)と思われるオジロワシが近くのエゾノキヌヤナギにとまり、他のオジロワシを威嚇するかのように鳴きかわしていました。

作品名:旅立ち

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:山口 健一
支部名:道南檜山
鳥名:ヒヨドリ

越冬のため、北海道最南端の白神岬から対岸の津軽半島竜飛岬をめざして早朝から一つのヒヨドリの群れが動き出した。他の群れも加わり千羽を越える大群を形成し、ハヤブサの襲撃を避けるため海面すれすれまで急降下。時折、山に引き返しながら行ったり来たり、いっせいに対岸を目指して命がけの渡りに挑む。

作品名:晩秋の湖

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:宮 彰男
支部名:青森県支部
鳥名:ユリカモメ

11月に入り秋も深まってくると、朝の冷え込みも一段と増し、小川原湖に朝霧が立ち込めるようになる。風も波も無く、静寂な湖に立ち込める朝霧は、なにもかも包み込み、白い世界に変えてしまう。霧が薄くなると、朝日を浴びた風景は、まるで水墨画のような幻想的な顔をみせた。その美しさに、ただ見とれるばかりであった。

作品名:友達

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:久保田 賢一
支部名:もりおか
鳥名:キジ(オス)

田植えが終わり、農家の方が補植を行っているそばで何気なくキジがのんびりしており、お互い気心が知れているのか、ほのぼのした雰囲気を感じて撮影したものです。普通、野鳥であるキジは人が近づくと逃げるものですが、距離が近いにも関わらず、互いに気にするような雰囲気ではなかったので、タイトルを「友達」としました。
※補植とは、稲の苗を補って植えること。

作品名:新雪からのハクガンの飛び立ち

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:工藤 浩一
支部名:秋田県支部
鳥名:ハクガン

一晩で積もった新雪で一面真っ白になった雪原の中の白いハクガンたちは、ひときわ白さが引き立ちます。見た目には美しいこの光景も、ハクガンたちにとっては、餌を採ることが難しくなり、さらなる南下の判断を迫られる厳しい状況であることも、私たちは忘れてはなりません。

作品名:里に生きる

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:戸邉 進
支部名:白河支部
鳥名:ホオジロ(オス)

調査で行った南会津。山間の集落。小さな畑の傍らには傾いた納屋があり、日本の原風景的な雰囲気が醸し出されていました。そしてそこには、つつましくも自然との共生を何よりとする暮らしがあるようで、心なしかホオジロの表情も「里山の人々ともうまくやっているよ」と言っているかのように映り、心穏やかに帰途につくことができました。

作品名:おいしい実を狙って

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:山根 靖正
支部名:茨城県
鳥名:キビタキ(オス)

通い始めて15年以上経つ、とある林道沿い。以前はアカマツ林もあり生きた林地だったが、今は放棄され荒れている。しかしアカメガシワとイヌザンショウが実をつけるので、ヒタキ類が南へ帰る体力作りの場所となっている。アカメガシワの実が終わるころ、イヌザンショウの近くで身を隠し、一瞬をキャッチした。

作品名:早春の渡良瀬遊水地で

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:小堀 脩男
支部名:栃木県支部
鳥名:ハイイロチュウヒ(オス)

2011年3月初めのこと、遊水池の土手上を飛ぶハイイロチュウヒのオスが、咲きほこる菜の花の陰に隠れてネズミに忍び寄り、狩りをしていました。写真撮影を試みるも、画像を見直すと陽炎に揺れていて、なかなか満足のいく写真が撮れませんでした。この作品は、その後何度か通って、3月末に撮った1枚です。土手上を通る自転車には目もくれずに、ネズミをつかんで飛びさる後を、メスが追いかけたりする姿も観察できました。

作品名:ササゴイ/生きるために

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:大林 秀仁
支部名:東京
鳥名:ササゴイ

清流の岩の上で身動きもせず水面を見続けるササゴイ。水中ではオイカワの群れが産卵のため遡上している。岩から水に飛び込み、一瞬でオイカワをキャッチ。少し距離があったので羽を広げた。瀬の不規則な渦の中に0.1秒で獲物を認識・捕獲する瞬間の美しさ。生きるための両者の真剣勝負だ。

作品名:光の中で

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:名執 修二
支部名:奥多摩支部
鳥名:メジロ

紅葉の中でメジロが食べ物を探しながら動き回っていました。光に透かされた紅葉はとても美しく見えました。「君はこんなに美しい世界で生きていることに気づいている?」そんなことを考えながら撮影しました。

作品名:厳冬の雪国渓谷に生きるクマタカ

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:岡田 成弘
支部名:新潟県
鳥名:クマタカ

厳冬期、大陸から吹き降ろす冷たい風が日本海を吹き抜け、水蒸気を雪に変えて越後の山々に多量の積雪をもたらす。1年を通して同じ場所に生息するクマタカは、木々の葉が落ちて見通しがきくようになる厳冬の山地渓谷で、夜明けから雪上を動く中小の動物を狙い、吹雪のなか、複雑な地形に獲物をさがして飛ぶ。

作品名:くつろぎ

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:長尾 俊一
支部名:佐渡支部
鳥名:トキ

2008年に野生放鳥されたトキ。その時から、この地区に飛んで来て棲みついています。現在では、20羽程が生息し、毎年、数ペアが子育てをしています。集落近くの森で子育てをしているトキは、農家の方々に暖かく見守られています。写真は、のどかな稲刈り風景を見学しながら、くつろぐ2羽のトキを写したものです。邪魔者にされず、また、住民も邪魔者扱いしないで共存している風景です。

作品名:アトリの群れ

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:高畑 晃
支部名:富山
鳥名:アトリ

うっすらと雪が積もった2月。田んぼに鳥の群れが少し見えたので観察していると、何かに驚いたのかいっせいに飛び立った。それは、予想をはるかに超えた数のアトリだった。

作品名:白山とコハクチョウ

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:矢田 新平
支部名:石川
鳥名:コハクチョウ

今年の北陸は、何十年ぶりかの豪雪に見舞われました。飛翔するコハクチョウの背後には、真っ白に冠雪した霊峰白山が浮かび上がっていました。

作品名:みどり響く朝

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:福井 強志
支部名:岐阜
鳥名:ツツドリ

朝のビオトープからツツドリの声がする。近くで鳴いているため、いつもと違い腹に響くような迫力。声のするほうへそっと近づいてみると、枝の間から姿が見えた。一生懸命に鳴きながらも、時折桜の木についた毛虫を食べ、また鳴き始める。渡りの途中の休憩に、しばし付き合う。

作品名:田んぼのマガモ

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:水越 文孝
支部名:富士山麓支部
鳥名:マガモ(オス)

撮影地は富士吉田市農村公園です。水田・畑・クレソン畑・果樹園などいろいろな耕作地があります。富士山麓支部では毎年ここで春と冬に探鳥会を行なっています。チュウサギやアマサギがそろそろ飛来する時期で、それを探しているときにこのマガモを見つけ撮影しました。

作品名:北帰行

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:前田 史隆
支部名:南伊豆
鳥名:ヒメウ、オオミズナギドリ

ヒメウの顔が赤く夏羽に変わる、蚯蚓出(みみずいずる)頃。いつもは一羽、一羽で大海に飛び出していく単独行動のヒメウたちが、今日は5羽そろって北に向かって飛んで行きます。繁殖のため、北海道に帰るところなのでしょう。オオミズナギドリが1羽、別れを惜しむかのように一緒に飛翔しているように見えます。

作品名:さえずりのオオルリ

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:小花 博
支部名:沼津支部
鳥名:オオルリ(オス)

南より渡って来たばかりのオオルリ。高らかに縄張り宣言をしている、さえずりのシーンです。

作品名:アオバト

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:津久井 克美
支部名:遠江
鳥名:アオバト

夏になると、アサリ採りの小舟をバックに、汽水湖の浜名湖へ海水を飲みに数百羽のアオバトがやって来る。
※アオバトは、初夏から秋に海水を飲む習性がある。

作品名:賑やかな田園

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:矢田 和子
支部名:愛知県支部
鳥名:カルガモ、キジ(オス)

田んぼのあぜ道を、カルガモ達が一列に並んで、にぎやかに歩いているのを発見。数えてみると、母親らしき1羽と子どもたち16羽の総勢17羽にビックリ!そこへ反対側からキジが歩いてきて、どうなることかと見守っていたら、突然キジは高く飛び上がり、カルガモ親子の頭上をひとっ飛び!カルガモ達は更に大騒ぎで楽しそうだった。

作品名:干潟に集うミヤコドリ

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:今井 光昌
支部名:三重
鳥名:ミヤコドリ、オナガガモ、マガモほか

干潮時には干潟が広がりすぎて鳥が分散し、満潮近くなると干潟が狭くなりすぎて飛んで行く。撮影できるタイミングは意外と少ないが、ミヤコドリが群れ遊ぶ光景を見るだけでホッとする。騒ぐミヤコドリと静かに泳ぐカモたち、干潟ならではの動と静が印象的だった。

作品名:琵琶湖の冬景色

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:大塚 祐二
支部名:滋賀
鳥名:キンクロハジロ、スズガモほか

毎月開催される琵琶湖南部の探鳥会では、四季折々の琵琶湖の景色と、旅鳥や留鳥のくらしにふれることができます。厳冬期、湖西(琵琶湖の西側地域)の山々は雪に覆われ、「比叡おろし」と言われる厳しい北風に耐えながら、水鳥たちは越冬します。滋賀県のバードウォッチャーにはお馴染みの風景を切り取りました。

作品名:となりは海

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:野村 浩作
支部名:大阪支部
鳥名:カワウ、ダイサギ

風が少し強い日でしたでしょうか、船がカワウたちの前を通過した一瞬を切り取った写真です。カワウたちの色んなリラックスした姿が観察されました。望遠レンズで撮影したので手前にある干潟は写っていませんが、ここは野鳥たちの貴重な楽園です。

作品名:コハクチョウと大山

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:桐原 佳介
支部名:鳥取県支部
鳥名:コハクチョウ

中国地方最高峰の大山は、西側からの景観が特に美しく、伯耆富士(ほうきふじ)と呼ばれます。雪化粧の大山を背景に、コハクチョウが田んぼで採食している風景は、鳥取県西部を象徴する鳥風景です。しかし、冬の山陰はいつも曇天で、鮮明な大山はなかなか見られません。

作品名:コミミズク

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:渡辺 健三
支部名:広島県支部
鳥名:コミミズク

瀬戸内海に造成されたこの広大な干拓地は、山陽地方の数少ないコミミズクの越冬地です。残照の耕地をコミミズクが飛ぶこのような風景を、いつまでも残しておきたいものです。

作品名:満濃池のオシドリ

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:木谷 重信
支部名:香川県支部
鳥名:オシドリ

これまでオシドリ撮影のロケーションにいろいろと出会って来ましたが、この日は、これまでにない瞬間に出会い、構図も構わずシャッタ ーを切りました。お気に入りの画像です。

作品名:九州へ渡るヒヨドリ

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:亀嶋 一哉
支部名:愛媛
鳥名:ヒヨドリ

毎年10月に、この地でヒヨドリの渡りを撮影しています。この先の島に集結し、ハヤブサやタカなど猛禽類の恐怖を克服し、九州 へ渡って行くさまは、いつ見ても感動物です。いつまでも、この場所が変わらない事を願ってやみません。

作品名:冬色

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:野村 芳宏
支部名:筑豊支部
鳥名:オシドリ

雪が降っている時にオシドリを撮ってみたいと思っていた。そのチャンスが、来た。北部九州の平野部では珍しく積雪15センチ。オシドリは警戒心が強いので、車を池の縁にそっと着け、しばらく待っていると、だんだんと近づいて来た。何かに驚いたのだろうか、いっせいに飛び立った。すかさずシャッターを切った。

作品名:漁師とシギチドリ

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:中村 さやか
支部名:佐賀県支部
鳥名:ハマシギ、ダイゼンなど

潮が引くと、有明海には日本一の面積を誇る広大な干潟が現れる。ガタスキーに乗った漁師が、ムツゴロウを獲る伝統漁「タカッポ漁」を行なっていた。まわりでゴカイなどの餌を探すシギ・チドリたちは、まったく気に留めないようだ。人間も鳥たちも、みんな有明海の恵みで今日も生きている。
※ガタスキーとは、スキー板のような道具で、これに乗り、泥状の干潟の上を片足で蹴って移動します。

作品名:冬枯れの蓮田に優美な舞

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:福島 健二
支部名:熊本県支部
鳥名:ソリハシセイタカシギ

冬枯れの蓮田に、めったに出会えない「ソリハシセイタカシギ」が2羽降り立ち、採餌していました。その姿は白黒の単純な色合いにも関わらず舞っているようで優美さを感じました。彼らが渡りの途中に立ち寄ってくれる幸運に出会えたのも、蓮田があるお陰です。
※蓮田とは、ハスを栽培する田。

作品名:帰れる

鳥のいる日本の風景写真

撮影者:小林 孝
支部名:石垣島支部
鳥名:カンムリワシ(幼鳥)

国内では、八重山だけに生息するカンムリワシは、八重山の象徴でもある。近年、輪禍(交通事故)によって死亡したり、負傷して保護される個体が増えている。写真の幼鳥も交通事故に遭って保護され、リハビリテーションの後に放鳥された。