プレスリリース 2012.02.29

2012年2月29日

豊田・岡崎地区研究開発施設用地造成事業環境影響評価書への見解書の公表について

愛知県野鳥保護連絡協議会
公益財団法人日本野鳥の会

愛知県野鳥保護連絡協議会及び日本野鳥の会は、当事業について愛知県企業庁に対し、事業計画地がサシバ、ミゾゴイ等の絶滅危惧種の生息地となっており、良好な里山環境が現時点では保たれていることから、代替地への回避を求めてきました。
しかし、地権者の了解を始め種々の社会状況から、事業の回避は困難な状況と判断し、事業による環境影響の最大限の低減と十分な環境保全措置の実施を実現させるため、改変面積の縮小やアクセス道路計画の中止、サシバの繁殖等への影響に関する代償措置を求めてきました。
2012年1月27日に公告、縦覧された環境影響評価書に対しても、上記の観点から次の見解書を送りました。

今後は、愛知県企業庁及びトヨタ自動車株式会社が設置を予定している環境監視委員会に、見解書における要請事項を実現させるために参加し、野鳥保護、自然保護の立場からの意見・提言を行っていく予定です。

日野鳥発第91号
平成24年2月29日

豊田・岡崎地区研究開発施設用地造成事業環境影響評価書への見解書

愛知県野鳥保護連絡協議会
議長 高橋伸夫
公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 佐藤 仁志

  1. 現在まで愛知県企業庁(事業者)及びトヨタ自動車株式会社と、当方ら自然保護団体との協議の中で再三指摘してきた、この立地でなければ実施できない事業であるかどうかについて、評価書の中で説明が尽くされていない。別途、説明が必要である。
  2. 事業による改変面積を、約410haから約270haに縮小したことは評価するが、より一層の縮小に努めることを要望する。
  3. 環境影響評価準備書に対して、当方が述べた意見のうち次の意見への対応について、対応姿勢は評価するが、より具体的な行動をもって対応することを要望する。
    ①意見1及びア~カ 「絶滅危惧種の鳥類の生息環境の保全・復元」に関して、事業者見解の中で「生息環境の変化がない又は小さいと予測されたヨタカ等についても、必要に応じ、専門家の指導及び助言を聞き、これらの生息環境をより適切に維持するよう努める」としたことは評価する。ただし、文言が具体的ではないので、環境監視委員会等において、当方の意見を尊重し、定量的な評価に基いて具体策を講じ、誠意を持って実行していただくことを要望する。
    ②意見2 「事後調査」に関しては、協議の席で当方に示された、14年間の調査を継続的に行い、かつ環境監視委員会として必要があると判断した場合にはその結果を検討するとの見解を、確実に実行することを要望する。
    ③意見3 「里山資源の循環的な活用」に関して、間伐材によるチップボイラーやペレットを燃料とした空調システムなどバイオマスエネルギーの導入や間伐材の建設資材の活用など現在の検討範囲より、一層の検討を行い、全国のモデルとなるようなものを提示することを要望する。
    ④意見4及びケ 「新規のアクセス道路中止」に対し、新東名高速道路からのアクセス道路建設の構想を中止したことを評価する。
    ⑤意見1及びウ 「サシバに対する環境保全措置」に関し、サシバ等における生息地減少分の代償措置の実行が保証されていないので、保証することを要望する。評価書では約270haの改変工事に対して、約660haの土地を確保しているので、緩衝及び保全緑地として390haを用意し、この中での休耕田管理などの環境復元で生息が可能としている。しかし、これが実現する保証はない。事業予定地以外で行う環境保全措置も含め、代償措置を事前に明確にすべきである。また、サシバをはじめ生物多様性保全と持続的農業を行うために、事業予定地以外の周辺の類似の生息環境において、有機米による水田耕作の取り組みをはじめていることは評価する。これを代償措置の中に明確に位置づけるべきである。
    ⑥意見5及びキ 「愛知県野鳥保護連絡協議会等のメンバーが参加した委員会を設置すること」に対し、環境監視委員会を設置し、愛知県野鳥保護連絡協議会及び日本野鳥の会のメンバーを入れる構想を樹立したことを評価する。
  4. 今後は、周辺地域を含めた環境保全措置の具体策について環境監視委員会などを通して当会が述べる意見、提言を真摯に受け止め、実行することを期待する。特に事業予定地は、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危惧種に指定されている日本固有種のミゾゴイの繁殖地である。個体数をはじめ未解明な生態も多くあり、この地がミゾゴイの調査、研究、保全の全国のモデルとなるような活動を期待する。
       また、建設予定の環境学習センターにおいては、調査研究、普及教育、環境保全の拠点となり、専門スタッフも配置し質の高い運営をするとともに市民に開放された施設となることを希望する。

参考1 環境影響評価準備書に対する愛知県野鳥保護連絡協議会の意見書の要旨

  1. 開発予定地の内および周辺地域において、鳥類では国県の絶滅危惧指定種であるミゾゴイ、ハチクマ、サシバ、ヨタカ、オオタカ、サンショウクイ及び県の絶滅危惧指定種であるヤマセミ、アカショウビン、ヤマシギ、アオシギ、ツツドリ、フクロウ、クロツグミ、コサメビタキ、サンコウチョウをはじめ、ここに生息する野鳥、その他全ての野生生物の生息環境の維持、復元を計っていただきたい。
  2. 事後調査・環境監視計画では全て施設完了後1年で終了することになっているが、それ以降の調査継続を約束していただきたい。
  3. 里山環境の循環的利用を促進すること。
  4. 新規のアクセス道路は作らないこと。
  5. 自然保護関係者の声を十分に取り入れる保証をし、自然環境の保全に万全を尽くすこと。

参考2 環境影響評価準備書に対する(公財)日本野鳥の会・日本野鳥の会愛知県支部からの意見書の要旨

ア.絶滅危惧種種を含む里山生態系の保全・復元を、定量的な評価に基づいて行うべきである。
イ.ミゾゴイの保全のため、林縁部の水田環境を含む行動圏調査及び広範囲における調査を行うべきである。
ウ.サシバに対する予測と環境保全措置を、定量的なデータに基づいて評価すべきである。
エ.オオタカ、アオシギ、ヤマセミ、アカショウビンの生息状況の評価を修正し、環境保全措置について再検討すべきである。
オ.ヨタカの予測結果の誤りを修正すべきである。
カ.コサメビタキの行動圏調査をするとともに環境保全措置について定量的に評価すべきである。
キ.事後調査・環境監視計画は透明で公正な委員会による評価を継続的に行うべきである。
ク.「新たな取り組み」における里山環境の保全管理活動について環境影響評価上の位置づけを明確にすべきである。
ケ.新規のアクセス道路は作るべきでない。

本見解書に関する連絡先

愛知県野鳥保護連絡協議会 議長 高橋伸夫
公益財団法人日本野鳥の会 自然保護室 葉山政治・古南(こみなみ)幸弘
同         サンクチュアリ室 大畑孝二

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