トップメッセージ 2024年1月

2024年1月15日 更新

日本野鳥の会 会長 上田恵介

新年のご挨拶 創立90周年を迎えて

あけましておめでとうございます。

1月1日に発生した能登半島地震により、被災された皆さま、ご家族、関係者の方々に心よりお見舞い申し上げます。被害の甚大な石川県をはじめ、富山県、新潟県、福井県など近隣の県でも大きな被害が出ています。避難された方々も、寒さの中、大変な避難生活を送っておられると思います。どうか一日も早く通常の生活に戻れますよう、復興を心よりお祈りいたします。

日本野鳥の会90年の足跡

さて日本野鳥の会は今年、創立90周年を迎えます。自然保護団体の“老舗”を誇るわけではありませんが、「野鳥」という言葉もなく、鳥は飼育か狩猟の対象であった時代に、中西悟堂による日本野鳥の会の発足は日本の社会にとって、画期的な出来事でした。

一時、戦争によって中断された時期はあったにせよ、その後、かすみ網の禁止、ガン類を狩猟鳥から外し一気に天然記念物に格上げさせたこと、北海道のウトナイ湖や東京港野鳥園をはじめとする多くのサンクチュアリを設立し運営していること、シマフクロウやタンチョウの保護のために全国ですでに4000ヘクタールに及ぶトラスト地を取得したことなど、私たちの会は日本の野鳥保護、自然保護に大きな足跡を残し、今では日本最大の自然保護団体として、名実ともに社会に大きな影響力を及ぼしています。

未来は懐かしい風景の中にある

今、この時点でも全国の支部・連携団体の皆さんが、各地で探鳥会を開催して野鳥や自然に対する国民の関心を広げ、自然を破壊する乱開発にブレーキをかける活動に地道に取り組んでいます。前会長の柳生博さんは「未来は懐かしい風景の中にある」という言葉を残されました。私はこの言葉が大好きです。未来は鉄とコンクリートに囲まれた殺風景な風景の中にあるのではありません。科学が発展し、教育や社会福祉が充実し、ハード面でもソフト面でも国民生活に本当に必要なインフラが整備された未来社会は、おそらく現在より確実に懐かしい風景の中にあるはずです。私たちの活動は、そうした未来を子供たちに残す活動です。

今年も全国の会員の皆さんと手を携えて、野鳥や自然を守る活動に取り組もうと決意しているところです。

近郊の越生の山にて

近郊の越生の山にて


過去のメッセージ

プロフィール

日本野鳥の会 理事長 遠藤孝一

新年のご挨拶 創立90周年を迎えて

心休まる小鳥たちの姿

2024年の年頭にあたり、新年のご挨拶を申し上げます。

まずは、元日に発生しました能登半島地震により、被災された多くの皆さまに心よりお見舞いを申し上げるとともに、亡くなられた方々に謹んでお悔やみを申し上げます。

さて、今年のお正月、私は家の周りで野鳥たちを見て過ごしました。我が家は雑木林や田畑に囲まれた里山の中にあるので、冬にはいろいろな野鳥たちが庭先までやってきます。

エナガは、10羽ほどの群れで毎日のように梅の木にやってきます。小さな虫でもいるのでしょうか。盛んに枝先や幹をつついて何かを食べています。時には、その群れの中にシジュウカラやコゲラが混じっていることもあります。ジョウビタキは、薪割りをしていると薪の中から出てくるカミキリムシの幼虫を目当てに、本当に手の届くようなところまでやってきます。

こんな野鳥たちの姿を見ていると、心が癒され、不安な気持ちも不思議と落ち着いてきます。

エナガ
エナガ
コゲラ
コゲラ


シジュウカラ
シジュウカラ
ジョウビタキ
ジョウビタキ


家の周りの里山で野鳥を観察する

野鳥を保護することは、人間の健全な暮らしを守ること

話題はかわりますが、今年、日本野鳥の会は設立90周年を迎えます。

文学者であり僧侶でもあった初代会長・中西悟堂が、「野の鳥は野に」を旗印に、「鳥の科学と芸術の融合」をめざして会を設立したのが1934年。それから90年、全国に広がる支部や会員、支援者に支えられ、また、他の団体、企業、行政と力をあわせて、「野鳥も人も地球のなかま」をキーフレーズに、生物多様性豊かで自然や資源が枯渇せず、次世代が自然の恩恵を受けられるような未来をめざして活動してきました。

野鳥は生態系の中で高次消費者の性格を持ち、多くの野鳥が生息することは、そこに豊かな自然が存在することを意味しています。したがって、野鳥を保護することは、生物多様性豊かな自然を保護することにつながります。さらに、自然界の一員でもある人間の健全な暮しを守ることにもなります。

これからも当会は、野鳥を中心とした生物多様性保全を進め、持続可能な社会づくりに貢献していきます。皆さまからの力強いご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。


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