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事業報告2025(令和7)年度
日本野鳥の会は、日本で最も歴史のある、国内最大の自然保護NGOとして、創立以来91年間にわたり、日本の自然と野鳥の保護に積極的に取り組んできました。それもすべて、当会の活動を支えてくださる会員、サポーターの皆さまのお力添えがあってこそです。深く感謝するとともに、2025年度の活動をご報告します。
このコンテンツの内容は、以下のPDFファイルでもご覧いただけます。
※『野鳥』誌2026年7・8月号より抜粋
会長挨拶

新緑のバードウォッチング
今この原稿を書いているのは新緑の季節、近くの里山では、エゴノキの花が満開です。
花がないとどこにあるのかわからないエゴノキですが、花が咲くと、真っ白な花が新緑のなかで存在感を主張しています。エゴノキは梅雨が近いことを知らせる季節の花です。
さて私事ですが、わたくし、昨年、後期高齢者の仲間入りをし、シニア大学の仕事からもフリーになったので、久しぶりに遠出のバードウォッチングを楽しんでいました。4月には有明海(東よか干潟や荒尾干潟)のシギ・チドリ、5月には九州・久住連山や戸隠の夏鳥たちに会いに行って来ました。なかには50年振り、60年振り(!)に訪れた場所もあります。時が流れ、自然環境も変わっていくのは仕方がありませんが、中学生の頃に支部の一泊探鳥会で訪れた長野・夜間瀬川のチョウゲンボウ繁殖地にはもうチョウゲンボウの姿はなく、イソシギが繁殖していた河川敷にニセアカシアが繁茂している光景には、ちょっと寂しさを感じました。
エゴノキの花
有明海のハマシギの群れ
ホルムズ海峡とプラスチック
ところで皆さんはプラスチックが主に石油から作られていることは知っておられますね。植物由来のバイオプラスチックもありますが、プラスチックのほとんどは石油から精製したエチレンなどの分子を化学反応で多数くっつけてポリマーをつくり、これが容器や包装、そのほか私たちが生活のなかで目にするさまざまなプラスチック製品に加工されるわけです。
現在、そのプラスチックの供給不足が心配されています。なぜかというと3月にアメリカとイスラエルがイランに対して攻撃を行い、それによって中東の石油の輸送経路であったホルムズ海峡が封鎖され、日本への石油の供給、ひいてはプラスチックの生産に大きな影響をあたえているからです。
戦争が1日も早く終わって、貴重な人命が失われることのない平和な世界を望んでいるのは当然ですが、ホルムズ海峡封鎖という今回の事態が、プラスチックにどっぷりつかった私たちの生活を見直すいい機会だと言ったら、叱られるでしょうか?
そもそも石油も石炭も、今から数億年前に地球上に生息していた生物が作り出したものです。石油は海に生息していた植物プランクトンの遺骸が深海に堆積して、さらに地殻中に取りこまれ、高温高圧下で何億年もの時を経て生成されたものです。石炭も3億年前の古生代の陸上植物が地中に埋もれて、熱と圧力の元で形成されたものです。大気のなかに存在していた二酸化炭素を地中に炭素化合物として蓄積している、これらの埋蔵資源を掘り出して燃焼させ、空気中に二酸化炭素を戻していくことがつづいていくならば、地球環境はどうなっていくのか、深刻に考えざるを得ません。
海洋プラスチックの問題
日本野鳥の会が、現在、重点的に取り組んでいる活動のひとつが海洋プラスチックの問題です。海洋に漂うペットボトルやポリ袋、浮きや網などの廃棄漁具は、アホウドリやウミガメなどによる誤食や絡まりの問題を抱えていますが、さらに深刻なのは、海洋に流れ出たプラスチックごみが紫外線などで劣化してどんどん細かくなり、プランクトンと一緒に海洋生物の体内に取り込まれてしまうことです。マイクロプラスチックよりさらに微小なナノプラスチックにいたってはウイルスのサイズにまで細かくなっており、一部は魚やプランクトンの細胞にまで(ひいては私たち人間の細胞にまで)取り込まれていることがわかっています。
最近の研究では、微小化したプラスチックが海面を覆うことで、植物プランクトンの光合成量を低下させ、海洋の二酸化炭素吸収量を大きく減少させていることも分かってきています。当会が東京農工大学と共同で行った研究でも、オーストンウミツバメからプラスチックへの添加剤が検出されています。プラスチックごみの投棄・拡散、また焼却による熱回収は、私たちへの健康被害も含め、地球温暖化を加速する要因の一つになっているのです。
この問題は一朝一夕では解決できませんが、製造者責任の導入などの法改正も含めて、国や世界レベルでの解決を求めていく活動、身近なところでは、マイボトルやマイバッグを使うなど、なるべく使い捨てプラスチックを使わない生活、探鳥会に合わせて浜辺でのプラゴミ拾い、当会主催のウェビナーに参加いただくなどの活動から、この問題を多くの人に知ってもらうことが大切だと感じています。
私たちの理念
鳥たちに優しい社会は、人にも優しい社会です。野鳥を保護することは、この国の豊かな自然を保護することです。それは自然界の一員でもある人間の健全な暮らしを守ることにもつながっています。未来を生きる子どもたちのためにも、私たちに負わされた責任は大きいと考えています。
日本野鳥の会会長 上田恵介

1950年大阪府生まれ。理学博士。動物生態学者。立教大学名誉教授。鳥類を中心とした動植物全般の進化生態学、行動生態学を専門とするかたわら、環境問題の研究にも取り組む。野鳥や自然に関する一般書の執筆、テレビ・ラジオ出演では、柔らかく、わかりやすい解説に定評がある。1963年の小学生の頃から、日本野鳥の会会員。2015年6月に日本野鳥の会副会長に就任。2019年6月より会長に就任







