第6回 代替品や熱回収より「総量削減・リユース」を!

マンガ「プラスチック使用の削減とリユースを!」

2020年10月、当会もメンバーとなっている「減プラスチック社会を実現するNGOネットワーク」(以下、「NGOネットワーク」)12団体と賛同8団体は、政府より9月に示された「今後のプラスチック資源循環施策の基本的方向性」(以下、「基本的方向性」)に対して、海洋プラスチック問題をより確実に解決できるようにNGOの意見をまとめた共同提言書を関係省庁や政党に提出しました。今回は、この提言書の内容について紹介します。

文・山本 裕((公財)日本野鳥の会自然保護室)

PROFILE

山本 裕

山本 裕(やまもと・ゆたか)

1991年入局。サンクチュアリ勤務を経て、2008年より自然保護室。モニタリングサイト1000や日本のマリーンIBA選定等を担当する。現在は海洋プラスチック問題、野外鳥類学論文集「Strix」の編集を担当している

減プラスチック社会を実現するNGOネットワーク
構成団体:特定非営利活動法人 OWS/国際環境NGO グリーンピース・ジャパン/さがみはら環境問題研究会/一般社団法人 JEAN/公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン/全国川ごみネットワーク/特定非営利活動法人 ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議/公益財団法人 日本自然保護協会/公益財団法人日本野鳥の会/特定非営利活動法人 パートナーシップオフィス/特定非営利活動法人 プラスチックフリージャパン/容器包装の3Rを進める全国ネットワーク賛同団体:特定非営利活動法人 アーキペラゴ/小山の環境を考える市民の会/環境問題を考える会/とくしま自然観察の会/Hamaumi-浜松の海を守る会/ふるさと清掃運動会/特定非営利活動法人 プロジェクト保津川/山梨マイクロプラスチック削減プロジェクト(五十音順)


政府へ共同提言書を提出した背景

2019年5月、政府より「プラスチック資源循環戦略」が公表されました。これは第四次循環型社会形成推進基本計画を踏まえ、3R+Renewable(再生可能な資源への代替)を基本原則としたプラスチックの資源循環を総合的に推進するための戦略です。同年6月には、G20大阪サミットで「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が合意され、2050年までにプラスチックごみの環境への排出をなくし、新たな汚染をゼロにすることをめざすことが決まりました。こうした政府の動きを受けて、マイバック、マイボトルの普及、分別回収や代替素材の開発などが進み、2020年7月からはレジ袋有料化が実施され、政府、地方公共団体、企業、私たち消費者も含めて、プラスチックの削減と環境への排出を減らす取り組みが進んでいます。

9月には、今後プラスチック資源循環戦略を進めていくうえで指針となる、政府の「基本的方向性」が示されましたが(※1)、より確実に環境中のプラスチックを減らし、野生生物への影響を軽減してプラスチック資源を循環させていくうえでは不十分な点がありました。そのため、グリーンピース・ジャパン、WWFジャパンが中心となって改善点を指摘し、NGOネットワーク構成団体で協議し、共同提言書として、とりまとめました。

日本の廃プラスチック処理の現状

第一に求めたのは、総量削減のための実効性のある政策の導入です。

日本で発生する廃プラスチックの量は、年間891万トン(※2)にもなります。このうち65%が温室効果ガスを発生させる焼却(熱回収503万トン、単純焼却73万トン)により処理されています。この他にマテリアルリサイクル208万トン(23%。うち海外輸出91万トン(※3))、ケミカルリサイクル39万トン(4%)、埋め立て68万トン(8%)となっています。こうした数値から、廃プラスチックのほとんどが燃やされており、リサイクルされている割合はごくわずかであることがわかります(第2回「日本のリサイクル率と廃プラスチック処理の現状と課題」参照)。

また、廃プラスチックの47%が使い捨て用途の容器包装・コンテナ類(以下、「容器包装」)であり、これには、私たちが日常生活で使用しているレジ袋やペットボトル、食品トレー、弁当容器等が含まれます。適切にリサイクルできる量を大幅に上回るプラスチック製品が使われている現状において、容器包装を中心にプラスチックの生産量と使用を大幅に削減していくことがとても重要です。しかし、政府の基本的方向性では、「リデュースの徹底」といった言葉は記述されていますが、代替品利用とリサイクルの推進、そして熱回収が解決案の中心となっています。

プラスチックの大量生産と熱回収、代替品の使用がもたらすもの

昨今の豪雨災害や夏場の高温、オーストラリアやアメリカで起きた山火事などは、地球温暖化に起因するものと考えられています。プラスチックの大量生産と焼却処理は、地球温暖化を加速させるCO2を発生させます。また紙製や、サトウキビやトウモロコシなどを原料としたバイオマス素材の代替品の使用を廃プラスチックの削減施策と結びつけてしまうと、代替品が過剰に生産され、原材料の栽培地の転換による生物多様性の消失と土壌の流出、貯蔵炭素の放出などの問題を新たに発生させる可能性があります。更にリサイクルは再利用する素材の品質低下を伴うため、現状では資源として循環していません。今後もプラスチックの大量生産を続けつつ、熱回収や代替品の使用を進めることは、プラスチック汚染問題の解決にはなりません。まずはリデュースで、代替品の使用はリデュースやリユースができない場合の補完として考えるべきです。

海の生きものへの影響の解消に向けて

海を漂うプラスチック素材の廃棄漁網や、釣り糸などの漁具は、長期にわたって海鳥を含む海の生物に大きな影響を与えています。混獲や誤飲のほか、漁網が巣材に使われ、親鳥やヒナが絡まる事例が報告されています。

この廃棄漁具の問題に対し、水産庁は今年5月、廃棄漁具の分別回収や保管、リサイクルの計画的処理を推進する指針を示し、環境省の漁業系廃棄物処理ガイドラインとも連携して対策を進めています。当会では海鳥保護の観点から、実態の把握の必要性と、更なる管理施策の強化を求めています。

1羽のアホウドリ成鳥が吐き出したプラスチック類

1羽のアホウドリ成鳥が吐き出したプラスチック類(2016年11月30日、鳥島で拾得)。抱卵中、親鳥は絶食する。抱卵交代のあと、巣から離れた所でこれらをまとめて吐き出した(写真・文/長谷川 博)

胃内容物を吐き出したアホウドリのヒナ

足環装着時に、胃内容物を吐き出したアホウドリのヒナ(2015年4月24日、伊豆諸島鳥島)。合成ゴムの大きな塊(手前)とプラスチックの小片(ゴムの上と周り)が混じっていた(写真・文/長谷川 博)

脱プラスチック社会に向けて

「2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにする」という目標に向けて、政府の検討会では、容器包装だけでなくあらゆるプラスチック製品のリサイクルや、市町村による一括回収、企業の回収の法制度化など、回収のための制度設計やリサイクル、リユースに関する技術開発、リデュースを進めるために消費行動をどう変えるか等、多くのことが議論されています。

プラスチック問題の解決にはまだ課題が多く、長い道のりですが、当会はNGOネットワークの構成団体とともに、今後も機会あるごとに提言活動を行なっていきます。

3Rってなんのこと?

Reduce〔リデュース〕
  • 詰め替え製品や簡易包装の製品を選ぶ。
  • 製品の設計時に、できるだけ少ない材料や部品等で構成されるようにし、長く使えるように工夫する。
Reuse〔リユース〕
  • 繰り返し使える容器に入った製品を選ぶ。
  • フリーマーケットなどを利用し、不用品の再使用に努める。
Recycle〔リサイクル〕
  • 資源ごみの分別回収に努め、リサイクル製品を積極的に利用する。
  • 製品の製造時に、リサイクルがしやすい設計にし、リサイクル原料の使用や、自社製品の回収とリサイクルに努める。


共同提言書で求めた6つのこと
次の6点を基本的方向性に取り入れることを求めました。

1.総量を削減するための実効性のある政策の早期導入

代替品への切替えを除いた、プラスチック製品の生産・流通総量のリデュース目標を設定した上で、レジ袋有料化に続けて、使い捨て用途のより幅広いプラスチック製品に対し、有料義務化や取り扱い禁止も含めた実効性のある具体的な政策を、早急に導入すること。

2.容器包装分野における、リユースを基本とした仕組みの導入

使い捨てプラスチック容器包装モデルの代替として、BtoC(※4)の容器包装分野におけるリユースの仕組みの大規模導入を推進すること。なお、ここで述べる「リユース」には、詰め替え用パウチ製品のように、新たに使い捨てプラスチックを発生させるものは含まない。

3.拡大生産者責任制度の確立

拡大生産者責任制度を全面的に導入し、事業者がライフサイクル全般(回収・リユース・リサイクル)にわたり責任を持ち、回収からリユース・リサイクルまでの全工程を確実に実施するよう義務付けること。

4.代替品の位置づけ見直しと、持続可能性の確保

安易に代替品の使用を推進せず、リデュースやリユース、リサイクルができないものについて、原料の持続可能性やリユースやリサイクルの可能性に十分配慮して導入すること。

5.漁具等、海域で使用するプラスチックの管理施策の促進

漁具等の不適切な管理による海洋への流出を抑えるとともに、流出漁具の回収と適正な処理を推進する、更なる政策を導入すること。

6.法的拘束力のある国際協定締結の推進

海洋プラスチック問題の解決に向け、包括的で法的拘束力のある国際協定の枠組みの早期発足を日本の政府が支持し、国連環境総会等の場で締結に向けた議論においてリーダーシップを発揮すること。



※1 https://www.env.go.jp/council/03recycle/0902pra3.pdf

※2 数字は「プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況」(プラスチック循環利用協会(2019))に基づく2018年実績

※3 実際には輸出された91万トンは、他国の廃プラ処理に任されている

※4 BtoC:Business to Consumer. 企業が一般消費者を対象に行うビジネス形態

会誌『野鳥』2021年1・2月号(No.850)より(会誌『野鳥』の詳細はこちら

海洋プラスチックごみ問題 特別連載企画


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