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プレスリリース:オーストラリアで大規模森林火災を引き起こした異常気象により北海道内のオオジシギの繁殖数が推定で42%減少したことを確認(3.5万羽→2.0万羽に!?)

2020年7月3日

2020年5月に道内5地域で調査実施

オオジシギ(Gallinago hardwickii)
オオジシギ(Gallinago hardwickii)全長約30cm/シギ科/環境省のレッドリストで準絶滅危惧種 NT

(公財)日本野鳥の会(事務局:東京)は、個体数の減少が懸念されている「オオジシギ(準絶滅危惧種NT)」の保護調査活動を行なっています。オオジシギは春から夏に主に北海道で繁殖し、秋から冬の越冬期をオーストラリア東部で過ごす渡り鳥です。

当会では、2019年秋から2020年春にかけての、オーストラリアで大規模森林火災を引き起こした異常気象(乾燥、高温)が、オオジシギの個体数を減少させたかどうかを把握するため、2018年5月の調査で観測個体数が多かった北海道の5地域(サロベツ原野、宗谷東部、勇払原野、釧路湿原、根室)において、2020年5月に2018年と同じ方法で個体数調査を実施しました。

■2018年との比較で個体数が42%減

その結果、5地域すべてで個体数が減少しており、2018年と比較した場合、個体数は平均で42%減少していました。また、5地域にある全調査地36か所のうち24か所(66%)で、個体数の減少がみられました。

2019年から2020年にかけて、北海道全域または各調査地域でオオジシギの個体数が急に減少するような要因はみられなかったことから、オーストラリアでの高温や乾燥などの異常気象が越冬環境に影響を与えたことで、繁殖地である北海道でこのような個体数の急激な減少をもたらしたと結論づけました。

■来年以降の個体数の動向を注視

当会は北海道内におけるオオジシギの個体数について、2018年に3万5千羽であると推定しましたが、今回のことで2万羽程度に減少したのではないかと推測しています。

オオジシギの生態は未解明な部分が多く、今年減少した個体数が来年以降にすぐに回復するものかどうか予想できませんが、今後モニタリングを続けてもしばらく個体数の回復がみられない場合は、それ以上の個体数を減らさないように、北海道での繁殖環境やオーストラリアでの越冬環境の保護、またそれに伴う国際的な連携など、これまで以上の保全策を講じていかなければならないと考えています。

*調査の詳しいレポートを提供いたします。下記担当にお問合せください。

■オオジシギの生息地

オオジシギ(Gallinago hardwickii)
シドニーの南西、首都キャンベラにある越冬地「ジェラボンベラ湿地」でのオオジシギ。2017年撮影。


●ジェラボンベラ湿地の変化

(1)2017年1月、(2)2020年1月。2020年では湿地の水が干上がり、地面がひび割れている。


報道関係者様 問い合わせ先:

■公益財団法人 日本野鳥の会
自然保護室 浦(うら)
保全プロジェクト推進室 田尻(たじり)
TEL:03-5436-2633(浦)/ 03-5436-2634(田尻)
E-mail:[email protected](浦)/ [email protected](田尻)


※掲載いただけます場合には、お手数ですが上記担当までご連絡くださいますようお願い致します。

※オオジシギの画像、調査の詳細レポートを提供いたします。お問い合わせ下さい。


〈別紙詳細資料〉 公益財団法人日本野鳥の会プレスリリース(2020年7月3日)

■道民には身近? オオジシギとはどんな鳥

オオジシギ

オオジシギは、北海道を主な繁殖地とし、本州や九州、サハリンやロシア極東域の一部でも繁殖するシギの仲間です。夏の終わりころ南半球のオーストラリアまで7,000km近くを移動して越冬し、春になるとまた北海道へ戻ってきます。全長は約30cmとハトより一回り小さい程度の大きさで、体重は170gほどです。

北海道には4月中旬頃にやって来て、主に畑や牧草地、草原などの身近な環境に生息しています。4~6月頃、求愛のために草原や湿原の上空で「ザザザザザーッ」と大きな音を鳴らしながら急降下を繰り返すディスプレイ飛行が特徴的で、別名「カミナリシギ」とも呼ばれています。オオジシギという名前を知らなくても、そのディスプレイを見たことのある人は多いかもしれません。アイヌ語では「チピヤクカムイ」と呼ばれ、古くから親しまれてきました。しかし、身近な鳥であった彼らも、いつの間にか数が減っています。

環境省版レッドリストでは、本州中部で生息地が減少しているという理由から準絶滅危惧種(NT)となっています。当会の2017年の調査では、苫小牧市の勇払原野で17年前(2000年)と比較して個体数が3割も減少したことがわかっています。オーストラリアでも最近の調査により、湿地など生息環境の減少で越冬する個体数が減っているとされています。

■日本野鳥の会のオオジシギ保護調査プロジェクト

日本野鳥の会は、事業のひとつとして、野鳥とその生息地の保護を通じた生物多様性の保全を進めています。そのなかで「ウトナイ湖と北海道の自然保護に役立ててほしい」という意志のご遺贈があったことをきっかけに、オオジシギを保護するプロジェクトを2016年度より開始しました。

オオジシギを対象とした理由は、①世界的に見ても繁殖期の分布域がほぼ北海道のみと非常に狭い、②近年個体数の減少が著しいと言われており、絶滅危惧種となる可能性が高い、③草原・原野環境に生息する他の鳥類の保護につながる指標種にもなりうる、④生息地が開発行為等によって失われやすい、⑤ウトナイ湖周辺が非常に重要な生息地である、ためです。

このプロジェクトでは、明らかになっていないことの多いオオジシギの生態について、オーストラリアの研究者との連携もはかりつつ、各種調査を行ない、その結果をもちいて、普及活動や生息地の保全を進めています。

■日本野鳥の会 組織概要

組織名:公益財団法人 日本野鳥の会(会員・サポーター約5万人)
代表者:理事長 遠藤孝一
所在地:〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
URL: https://www.wbsj.org/

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