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三宅島で大幅なサンゴの減少を確認
2025年6月26日
主催:三宅島自然ふれあいセンター・アカコッコ館
共催:コーラル・ネットワーク
1. 三宅島でのリーフチェックの経緯と調査方法
三宅島では1998年よりリーフチェックを開始し、2000年の雄山噴火に伴う全島避難で一時調査を中断した。2005年の帰島以後は、2007年以外毎年実施し、今回の調査は22回目となる。今回はコーラル・ネットワークのリーフチェックコーディネーター1名、駒沢大学応用地理研究所所員1名、島内のダイビングショップインストラクターおよびスタッフ3名、日本野鳥の会の職員でアカコッコ館のスタッフ1名で富賀浜と伊ヶ谷のカタン崎を調査した。
世界共通の調査方法に準じ、サンゴ群集上にメジャーで100mのラインを設置し、ライン直下の構成種を造礁サンゴ、海藻、砂床など10種に分類し記録した。あわせて、ライン周辺の魚やエビ、ウニなど世界共通の対象種および三宅島独自対象種の生きものの数を記録した。
※リーフチェックとは
サンゴ礁の健康度を測るために世界同一基準で用いられているモニタリング調査で1997年に始まった。アメリカ・カリフォルニアに本部を置く民間団体が推進している。調査は科学者とボランティアダイバーでチームを編成し、サンゴ、魚類、海底の生物など国際基準の調査項目を潜水して調査し、調査結果をインターネットを通じて本部に送る。各地の結果は毎年本部で取りまとめられ、ホームページなどを通じて公表される。
2. 調査結果
(1)富賀浜
富賀浜では、今年海底の1.3%がサンゴにおおわれていた。昨年度は、23%程度が造礁サンゴにおおわれていたが、それらのサンゴの白化率※が100%であり、白化したサンゴがそのまま死亡したために、サンゴの割合が大幅に減少したものと考えられる。本海域で優占的に生息していた卓状クシハダミドリイシ群生は、全滅しており、死亡したサンゴの表面を藻類がおおっている状態であった。
調査区域内ではオニヒトデや他のサンゴ食生物による食痕もみられていない。調査ライン周辺の魚類についてはおおよそ例年通りの魚種を確認した。無脊椎動物においては昨年多く見られたガンガゼ類が大幅に減少した。2019年から見られていた漁網くずが今年も数カ所で見られた。
※白化率(%)の算出方法 (白化サンゴ+白化による死サンゴ)/(生存サンゴ+白化サンゴ+白化による死サンゴ)×100



調査の様子(富賀浜)
(2)カタン崎
今年のカタン崎では、海底の10.6%が造礁サンゴにおおわれていた。昨年は、24%程度がサンゴにおおわれ、そのうち89.4%のサンゴが白化していた。今年の結果は、昨年の調査時に白化したサンゴの大半がそのまま死亡し、サンゴの割合が減少したものと考えられる。なお、今年の調査時に、測線上で白化したサンゴは認められなかった。
サンゴ食の生きものではサンゴ食の巻貝等は認められなかった。オニヒトデは確認されていない。サンゴ周辺の生きものでは、調査対象の魚類には目立った変化がなかったが、昨年多く認められたガンガゼ類が激減した。


調査の様子(カタン崎)
3. 総評(駒沢大学応用地理研究所 鈴木倫太郎 博士 コメント)
2024年は、世界的にサンゴの白化現象が確認された。三宅島周辺海域においても、これまでに記録したことが無いほどの大規模な白化現象が確認された。
今年の調査は、昨年の造礁サンゴの広範囲におよぶ白化現象後の初の調査であった。調査の結果は、富賀浜では2023年には海底の69%がサンゴにおおわれていたが、昨年の白化現象を経て1.3%にまで減少した。カタン崎においても、2023年43%であった造礁サンゴの割合が、昨年の夏を経て10.6%にまで減少した。これらの結果から、三宅島周辺海域の造礁サンゴ類は、昨年夏季の高海水温により、結果として大きくその数が減少したことが明らかとなった。伊豆諸島最大と呼ばれた富賀浜の卓状クシハダミドリイシの大群生は、すべてが死滅し表面を藻類がおおっている状態であった。三宅島における昨夏の白化現象は、8月初旬に確認され始めた。これは、三宅島の周辺海域の海水温が8月以降に高い状態となったことと関連している。
海底を自由に動くことができないサンゴは、その海域の水温などの影響を強く受けるために、海域環境の指標ともされる生きものである。昨夏の三宅島におけるサンゴの大規模白化は、三宅島の周辺海域において、これまでに経験したことが無い高水温の状況が継続した影響であると考えられる。その結果、今年の調査において、調査を開始した1998年以降、サンゴの割合が最も低い状況となった。今後、三宅島周辺海域の状況を、引き続きモニタリングする必要がある。
調査メンバー