- 日本野鳥の会
- 当会の活動
- 自然保護
- 法制度の改善
- 海洋プラスチックごみから、海鳥を守ろう
- 連続ウェビナー・海洋プラスチックの問題を考えよう
- 連続ウェビナー第4回 プラスチックが引き起こす、海鳥と海洋生態系の危機
連続ウェビナー第4回 プラスチックが引き起こす、海鳥と海洋生態系の危機
本セミナーは終了しました。録画を公開しましたので、ご覧ください。
セミナー(録画)の視聴はこちら
絶滅の恐れが高い海鳥の多くが、海洋に流出したプラスチックごみを食物と間違えるなどして体に取り込んでいます。プラスチックの取り込みにより、消化器官が傷ついたり、必要な食物が十分に取れずに栄養不良になるほか、プラスチックに含まれる化学物質が海鳥の体内に蓄積し、海鳥の健康に影響を及ぼすこともわかってきています。
今回は東京農工大学の高田秀重先生から、プラスチックの海鳥や海洋生態系への影響の最新の知見をご紹介いただくとともに、プラスチックに頼らない社会の実現に向けて、一人ひとりにできることをご紹介いただきます。
連続ウェビナー・海洋プラスチックの問題を考えよう
第四回 プラスチックが引き起こす、海鳥と海洋生態系の危機

- 講師
- 高田秀重先生 (東京農工大学農学部教授)
- 日時
- 11月19日(金)19:00~20:30
- 開催方法
- オンライン会議システム形式「Zoom」を使用
- 参加費
- 無料
- 定員
- 300名(先着順)
- 申込
-
こちらから事前申込をお願いします。
お申込みいただいた方に、URL等の詳細をメールにてお知らせします。 - 主催
- (公財)日本野鳥の会
講師プロフィール

高田秀重(たかだ ひでしげ)
専門は環境中の人工化学物質の分布と輸送過程の解明。1998年からプラスチックと環境ホルモンの研究を開始し、2005年以来International Pellet Watchを主宰している。2012年から2019年まで、国連の海洋汚染専門家会議のマイクロプラスチックのワーキンググループのメンバー。東京農工大学プラスチック削減5Rキャンパスの推進者の一人。信条は、現場百ぺん、予防原則、No single-use plastic!
連続ウェビナー・海洋プラスチックの問題を考えよう について
日本野鳥の会では、海洋プラスチックの問題を多くの方に知っていただけるよう、年間6回の連続ウェビナーを計画しております。今後のウェビナーの予定は、随時日本野鳥の会のホームページに掲載します。
お問い合わせ:
(公財)日本野鳥の会 自然保護室
電話:03-5436-2633 E-mail: [email protected]
住所:〒141‐0031 東京都品川区西五反田3‐9‐23 丸和ビル
連続ウェビナー第3回 プラスチック製品「つくる責任」と「つかう責任」
本セミナーは終了しました。

私たちは日常生活の中で、安くて便利なプラスチック製品を大量に使用しています。プラスチックごみの問題を解決するには、消費者が便利な暮らしを見直す「つかう責任」に加えて、生産者側の「つくる責任」の見直しが不可欠です。
今回は、容器包装の3Rを進める全国ネットワーク運営委員長の中井八千代氏を講師に、プラスチック製品の製造からリサイクルまで、事業者が責任を持つ仕組みをテーマに、持続可能な循環型社会の実現に向けて必要なことを考えていきます。
連続ウェビナー・海洋プラスチックの問題を考えよう
第三回 プラスチック製品「つくる責任」と「つかう責任」
- 講師
- 中井八千代氏 (容器包装の3Rを進める全国ネットワーク運営委員長)
- 日時
- 2021年9月17日(金)18:00~19:10
- 開催方法
- オンライン会議システム形式「Zoom」を使用
- 参加費
- 無料
- 定員
- 100名(先着順)
- 申込
-
こちらから事前申込をお願いします。
お申込みいただいた方に、URL等の詳細をメールにてお知らせします。 - 主催
- (公財)日本野鳥の会
講師プロフィール

中井八千代(なかい やちよ) 容器包装の3Rを進める全国ネットワーク運営委員長
中央環境審議会循環型社会部会 容器包装の3Rに関する小委員会委員、 環境カウンセラー、廃棄物資源循環学会評議員・編集委員。
連続ウェビナー・海洋プラスチックの問題を考えよう について
日本野鳥の会では、海洋プラスチックの問題を多くの方に知っていただけるよう、年間6回の連続ウェビナーを計画しております。今後のウェビナーの予定は、随時日本野鳥の会のホームページに掲載します。
お問い合わせ:
(公財)日本野鳥の会 自然保護室
電話:03-5436-2633 E-mail: [email protected]
住所:〒141‐0031 東京都品川区西五反田3‐9‐23 丸和ビル
「海洋プラスチックごみについて考えよう」が消費者教育教材資料表彰・優秀賞を受賞しました

当会と、WWFジャパン、全国川ごみネットワーク、容器包装の3Rを進める全国ネットワークの4団体が協働で作成した教材「海洋プラスチックごみについて考えよう」が、消費者教育教材資料表彰2021の優秀賞を受賞しました。
消費者教育教材資料表彰は、(公財)消費者教育支援センターが、教育現場で役立つ教材を表彰することで、学校における消費者教育の充実・発展に寄与することを目的に実施しています。
6月28日に国立オリンピック記念青少年総合センターで開催された表彰式に出席し、賞状をいただきました。受賞教材は、今後、実際の教育現場で活用されます。
教材「海洋プラスチックごみについて考えよう」は、海洋プラスチックの問題を多くの方に知っていただけるように、2020年度に作成し、PDFで公開しております。学校教育やセミナーなどで、スライドプレゼンテーションとして使用したり、印刷して紙芝居のように使うことができます。詳細は、以下のリンクをご覧ください。

教材「海洋プラスチックごみについて考えよう」表紙
第9回 マイクロプラスチック汚染の脅威2 “化学物質による生物への影響”

生態系に流出したプラスチックはしだいに小さくなり、回収が困難な5mm以下の大きさの「マイクロプラスチック」となります。マイクロプラスチックは貝や小魚に取り込まれ、食物連鎖を通じて、生態系のより上位の生物の生体への残留性有機汚染物質(POPs)や化学添加剤の濃縮と蓄積が進んでいきます。今号では、プラスチックに含まれる有害化学物質が、どのように生物への影響を引き起こすのかについて紹介します。
文・高田秀重(東京農工大学 農学部 環境資源科学科)
PROFILE

高田秀重(たかだ・ひでしげ)
東京農工大学農学研究院環境資源科学科教授。専門は環境中の人工化学物質の分布と輸送過程の解明。1998年からプラスチックと環境ホルモンの研究を開始し、2005年以来、「International Pellet Watch」を主宰。2012年から19年まで、国連の海洋汚染専門家会議のマイクロプラスチックワーキンググループのメンバー。「現場百ぺん、予防原則、No single-use plastic!」を信条としている。
海中の有害化学物質を吸着し、体内に移行・蓄積する
沖縄で私たちが行なった調査の結果、プラスチックごみの多い砂浜のヤドカリでPOPsの一種ポリ塩化ビフェニル(PCBs)の吸収や蓄積が確認されています【図1】。

海を漂うプラスチック片は、海中に含まれている有害化学物質を引きつけ、吸着します。さらにマイクロプラスチックは長距離の移動が可能で、分解されにくい性質のため、世界中の海を移動しながら海中の有害物質を吸収し、環境汚染と生物濃縮を拡大していく可能性があります。
非常に低濃度ではありますが、海中には分解されにくい有害化学物質「残留性有機汚染物質(POPs)」が溶けています。このPOPsは、国際条約のストックホルム条約(※1)で規制されています。海中では低濃度ではあっても、POPsは食物連鎖により「生物濃縮」を起こし、生物の脂肪に蓄積されることがわかっています【図2】。

ベーリング海で混獲されたハシボソミズナギドリでは、胃の中のプラスチック量が多いほど、脂肪中の有害化学物質(PCBs)濃度が高くなる傾向が報告されました【図3】。またプラスチックに含有する添加剤を脂肪中に蓄積している個体も見つかりました。

プラスチックから海水に添加剤が溶けだすには何万年もかかるという研究もありますが、最近の研究では、海水には溶けだしにくくても、生物の消化液に含まれる油分に反応して溶け出し、化学物質が生物の体内に蓄積していくことがわかってきました。
プラスチックに含まれる化学物質(特に添加剤)の海鳥への蓄積
年間4億トンも生産されているプラスチックのうち7%(2800万トン)は、プラスチックの機能などを高めるために使用されている添加剤です。紫外線の吸収剤、加工しやすくする可塑(かそ)剤、燃えにくくするための難燃剤、劣化を防ぐための酸化防止剤など、さまざまな種類がありますが、この中に内分泌を攪乱(かくらん)することが疑われている化学物質が含まれています。
われわれの共同研究(※2)では、5種類の添加剤を野生の海鳥の胃から見つかる濃度と同程度に調整したものをプラスチック粒に添加し、その5粒を、国内の島で繁殖するオオミズナギドリのひなに投与して、自然界で起こっていることを再現する実験を行ないました。そして、投与したひなの肝臓、脂肪、および尾腺ワックスを分析したところ、これらの組織にプラスチック粒由来の添加剤が含まれていることがわかりました。
また、プラスチック粒を投与した海鳥の組織での添加剤の蓄積は、プラスチック粒を直接摂食しない場合の蓄積に比べ、91倍から12万倍にも達しました。このことは、プラスチックの摂食が海鳥の体内組織に添加剤を移行させ、添加剤が海鳥の組織に蓄積することの立証で、プラスチックが海鳥汚染の直接の原因になることを示しています。
さらに自然界での海鳥での実態をつかむため、ハワイ諸島の野生の海鳥6種類の尾腺ワックスを採取して分析しました。その結果、海水表面でのプラスチック摂取量の多いアホウドリ2種では尾腺ワックス中に添加剤が検出された一方、プラスチック摂食がほとんどない他の4種では検出されませんでした。つまり、海を漂う小さなプラスチック片は、生物の体内に有害化学物質を運び込む「運び屋」にもなっているのです。
これらの調査結果から実際の環境中では、海洋プラスチックによる海鳥の化学汚染はかなり進行しているものと考えられます。
健康被害は海鳥だけではない
プラスチックの添加剤による生物影響については、最近、添加剤によりビタミンや代謝に必要な成分が攻撃されることから、免疫機能の低下、あるいはアレルギーや肥満に影響することがわかってきました。また、人間の生殖機能を低下させる可能性についても指摘されています。
世界規模での海鳥調査により、少なくとも海鳥の40%にプラスチック添加剤の蓄積が確認されています。これらの化学物質による海鳥体内の物質代謝への悪影響が懸念されており、血中カルシウム濃度の減少や、尿酸の増加、中性脂肪の増加などが報告されており【図4】、これらによって健康が損なわれ、卵の殻が薄くなったり、個体群への影響が生じる可能性もあります。
海鳥の個体数は世界的に減少しており、海鳥全種の28%は絶滅危惧種ですが、プラスチック汚染によって、すでに減少している海鳥の絶滅の危機を加速させる懸念もあります。

魚や海鳥の問題ではなく私たち自身の問題として取り組もう
これまで述べてきたように、海洋のプラスチックは、海洋表層から深海まで、世界中のあらゆる海域に広がり見つかっています。プラスチックの添加剤は海洋生物だけではなく、プランクトン、魚や貝などを通して、人間の免疫系など、健康にも影響を与える可能性が大きく示唆されています。
石油を原料とするプラスチックの製造や焼却による廃棄は、資源の枯渇と気候変動を加速させます。海洋生物、そして私たちの健康を守っていくために、いますぐにできることとして、まずは私たち一人ひとりが意識して日常から、プラスチックの使用量を減らし、脱プラスチック生活を心がけることが大切です。
脱プラスチックに向けて当会のこれまでの取り組みとこれから
これまで全9回にわたり、「海洋プラスチック問題を考える」と題し、使い捨てのプラスチックが引き起こすさまざまな問題を取り上げてきました。
私たちの身の回りにあるプラスチックが、ごみとして自然界に流出し、海鳥をはじめとする海にくらす生きものにとって命を脅かす大きな脅威となっています。
当会では、2019年以降、他のNGOと共同でこの問題に取り組み、使い捨てプラスチック製品の生産や使用削減、自然界への流出をなくすための政策提言活動を行なっています。同時に、セミナーの開催や学習教材の開発などを行ない、この問題の普及・啓発に取り組んでいます。
今年度は、この問題を多くの方に知っていただけるよう、オンラインセミナー(ウェビナー)を6回開催予定です。また、海鳥への影響について研究機関の協力を得ながら科学的に調査を行なう予定です。
プラスチックは便利さと手軽さを持ち合わせているために、そこからの脱却は簡単なものではありません。海鳥を守るために、そして、私たちの健康を守るために、今一度、この連載を読み返していただき、ワンウェイ(使い捨て)のプラスチック使用を減らすこと、そして、脱プラスチック生活に向けてできることから少しずつでも取り組んでいただければと思います。
※1 「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」。環境中での残留性が高いPCB、DDT、ダイオキシン等のPOPs(Persistent Organic Pollutants、残留性有機汚染物質)については、一部の国々の取組のみでは地球環境汚染の防止には不十分であり、国際的に協調してPOPsの廃絶、削減等を行なう必要から、2001年5月、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」が採択された。(環境省HPより)
※2 東京農工大学 高田秀重教授、北海道大学 田中厚資博士研究員・石塚真由美教授・綿貫 豊教授、ハワイ・パシフィック大学等による国際共同研究チーム
会誌『野鳥』2021年7・8月号(No.853)より(会誌『野鳥』の詳細はこちら)
海洋プラスチックごみ問題 特別連載企画
- 第1回 プラスチックの大きな割合を占める容器包装と、容リ法の問題点
- 第2回 日本のリサイクル率と廃プラスチック処理の現状と課題
- 第3回 日本政府はなぜ、海洋プラスチック憲章に署名しなかったのか
- 第4回 サーキュラー・エコノミーに基づくプラスチックごみ問題の解決
- 第5回 バイオプラスチックは廃プラ問題の活路を開くのか?
- 第6回 代替品や熱回収より「総量削減・リユース」を!
- 第7回 脱プラスチック、どう進める?
- 第8回 マイクロプラスチック汚染の脅威1 “生態系汚染”
- 第9回 マイクロプラスチック汚染の脅威2“化学物質による生物への影響”
日本野鳥の会が、海洋プラスチック対策をはじめ、さまざまな自然保護活動を継続していくためには、みなさまのご支援が必要です。みなさまのあたたかなご支援をお待ちしております。
第8回 マイクロプラスチック汚染の脅威1 “生態系汚染”

毎年約4億トン生産されているプラスチックのうち、一部が適切に処理されずに海に流出して漂い、地球規模で大きな問題となっています。海に流出したプラスチックは、海洋生物が誤って食べ内臓が傷つくなどの影響のほか、細片化した「マイクロプラスチック」(5mm以下の大きさ)【写真1】となり、有害化学物質を吸着したり、あるいは添加されている化学物質によって海洋生物に悪影響を及ぼすことが、最近の研究で明らかになっています。本連載の最終章となる2号にわたり、特にマイクロプラスチックの弊害について取り上げます。
文・高田秀重(東京農工大学 農学部 環境資源科学科)
PROFILE

高田秀重(たかだ・ひでしげ)
東京農工大学農学研究院環境資源科学科教授。専門は環境中の人工化学物質の分布と輸送過程の解明。1998年からプラスチックと環境ホルモンの研究を開始し、2005年以来、「International Pellet Watch」を主宰。2012年から19年まで、国連の海洋汚染専門家会議のマイクロプラスチックワーキンググループのメンバー。「現場百ぺん、予防原則、No single-use plastic!」を信条としている。
海を汚染するプラスチック
誤飲などによる海洋生物被害の実態
世界中で推定27万トンとされる陸から海に流れ込んだプラスチックは、生物によって分解されにくい性質から、長期間ごみとして海洋を漂い、汚染しています。そして、多くの海洋生物がプラスチックをエサと間違えて誤食することで、生体に悪影響を及ぼしていることが明らかになっています。
一般にプラスチックは水面に浮くことが多く、比較的大きなプラスチック片は、ウミガメや大きな魚などの口から直接取り込まれます。鳥類では、アホウドリなどの海鳥が海面を漂うプラスチックをイカやクラゲと間違えて食べ、消化管を傷つけたり、さらにはヒナに与えることで胃に固形物として残留することで満腹感が生じ、最終的に栄養失調などの弊害が起きています【イラスト・写真2】。
また、マイクロプラスチックになると、小魚がプランクトンと間違えて食べています。プラスチックの加工時に使われる添加剤には内分泌撹乱(かくらん)作用を起こす疑いのある化学物質が含まれるため、影響が懸念されています(次号で掲載)。

写真1/日本列島から1,000km離れた太平洋上で、気象庁が採取したマイクロプラスチック(写真:高田秀重)

写真2/ミッドウェー島のコアホウドリのひなの死骸にはいっているプラスチック。死因は不明(写真:綿貫 豊)

プラスチックごみをエサと間違えて誤食したりヒナに与えることで、栄養失調などにより命を落とす
マイクロ化すれば回収不可能
海への流出防止のためには、まず削減
マイクロプラスチックの抱える問題のひとつは、いったん海に入ると回収が非常に困難になることでしょう。海水、砂や泥、プランクトンと混在したマイクロプラスチックを取り除くことは、ほぼ不可能です。
マイクロ化が起こるのは、河川や海岸で紫外線にさらされたり、波によって粉砕されることが主な原因と考えられていますが、最近では、陸上で微細化し、雨水と共に排水溝から河川、最終的に海へ流出している量も無視できないということがわかってきました【図1】。
海への流出を減らすためには、陸域で、川に入る前や、微細化する前に回収すること、海岸でのごみ清掃の活動等が有効ですが、より大切なことは、私たちが日常生活の中で出す、使い捨てプラスチックの量を削減することです。マイクロ化する前のプラスチックごみを回収することと、ふだんの私たちの暮らしの中で使われ、廃棄されているプラスチックを減らしていくだけでも、海洋汚染を抑えることができます。

世界中の海で観測
消費量が増えたころから蓄積
私は東京湾や多摩川で調査を行なっていますが、1970年代以降に河川などから海へ流出したマイクロプラスチックの多くが、東京湾の海底の泥に蓄積していると推定されています。
また、東京の皇居の濠(ほり)の泥のマイクロプラスチックの溜まり方を調べた結果、1950年代の泥からは微量でしたが、2000年にはその10倍の量が検出されました。このことはプラスチックによる汚染が消費量の急増と呼応していることを示しています【図2】。
現在、50兆個ものマイクロプラスチックが世界中の海を漂っているとされていますが、このまま手を打たなければ、海に流出するプラスチック量は年々増え、20年後には10倍になるという推定もあるほどです。
私が世界各地で採取した泥を分析した結果、タイのタイランド湾、マレーシアのジョホール海峡、南アフリカのダーバンなどでも観測されました。マイクロプラスチックによる汚染は世界規模で広がっています。

食物連鎖で蓄積する化学物質
数多くの生物から検出

東京湾の海岸で採取されたマイクロプラスチック
微細化したプラスチック片は、生物にとって取り込みがいっそう容易になります。
マイクロプラスチックは動物プランクトンにも摂取され、食物連鎖を通じて有害な化学物質が蓄積されて生態系全体に汚染が拡がる可能性が大きくなっています。
プランクトンに取り込まれたマイクロプラスチックは、二枚貝や小魚が摂食します。私たちが多摩川河口で行なった生物調査では、ハゼ、貝類、カニなど、生態系のさまざま生きものから検出されています。東京湾で捕獲されたカタクチイワシやサバからも見つかっており【図3・写真3】、イワシ類などを捕食する、より高次の生物種への移行が懸念されます。
また、海鳥の胃の中からのプラスチック検出頻度は年々増えてきており、現在までにすべての海鳥の78%でプラスチック摂取が確認されており、2050年までに99%に達するとも予測されています。
海鳥の個体数は世界的に減少しており、国際自然保護連合(IUCN)によれば、海鳥346種のうち約28%は絶滅危惧種であり、海洋プラスチックの地球規模、かつ長期的な影響は、これらの海鳥の危機をさらに加速させる可能性があります。

次回は、体内に取り込まれたプラスチックに含まれる有毒化学物質が生きものに与える影響について紹介します。
会誌『野鳥』2021年5・6月号(No.852)より(会誌『野鳥』の詳細はこちら)
海洋プラスチックごみ問題 特別連載企画
- 第1回 プラスチックの大きな割合を占める容器包装と、容リ法の問題点
- 第2回 日本のリサイクル率と廃プラスチック処理の現状と課題
- 第3回 日本政府はなぜ、海洋プラスチック憲章に署名しなかったのか
- 第4回 サーキュラー・エコノミーに基づくプラスチックごみ問題の解決
- 第5回 バイオプラスチックは廃プラ問題の活路を開くのか?
- 第6回 代替品や熱回収より「総量削減・リユース」を!
- 第7回 脱プラスチック、どう進める?
- 第8回 マイクロプラスチック汚染の脅威1 “生態系汚染”
- 第9回 マイクロプラスチック汚染の脅威2“化学物質による生物への影響”
日本野鳥の会が、海洋プラスチック対策をはじめ、さまざまな自然保護活動を継続していくためには、みなさまのご支援が必要です。みなさまのあたたかなご支援をお待ちしております。
第7回 脱プラスチック、どう進める?

2020年7月から、全国でレジ袋有料化が実施されました。この制度では、プラスチックのフイルム厚が50マイクロメートル以上のものや、海洋生分解性プラスチック配合率100%のもの、バイオマス素材の配合率25%以上のプラスチック製買い物袋や、紙袋などは有料化の対象外でした。今回は、それよりさらに一歩進み、プラスチック製レジ袋の提供禁止と、紙袋の有料化に踏み切った京都府亀岡市の事例について紹介します。
文・原田禎夫(大阪商業大学公共学部准教授/特定非営利活動法人プロジェクト保津川代表理事)
PROFILE

原田禎夫(はらだ・さだお)
1975年、京都府亀岡市生まれ。亀岡市などと共に「川と海つながり共創プロジェクト」を立ち上げ、「こども海ごみ探偵団」を結成して、川ごみや海ごみの現地調査も行なっている。
特定非営利活動法人プロジェクト保津川
京都府亀岡市内を流れる保津川(桂川)の環境保全を目的に、2007年に設立。以来、毎月開催している清掃活動は2021年2月で136回目を迎えた。ほかにも、学校と連携した環境教育や、地域住民とともに河川ごみの調査活動にも取り組む。また、1000年以上の歴史がありながら、半世紀前に途絶えた保津川の伝統的な筏流しの復活や海産天然遡上鮎の復活など、川の文化の伝承と再生にも取り組んでいる。
日本初、レジ袋提供禁止条例施行
2021年1月1日、日本で初めてとなるプラスチック製レジ袋(以下、レジ袋)提供禁止条例が、私の住む京都府亀岡市で施行されました。昨年7月1日より、全国でレジ袋有料化が始まりましたが、亀岡市の条例ではレジ袋の提供を禁止するだけではなく、国が無料配布を認めているバイオマスプラスチック25%以上配合のものも提供できず、紙袋でも有料が義務となります。また、生分解性プラスチック製のものについても、原則として提供が禁止されています。条例に違反し、市による立入調査や勧告などを経ても改善されなければ、6月以降は事業者名公表の手続きも始まりますが、市議会での議論を経て、施行後2か月の間はスタートアップ期間として、個人商店などの相談にも柔軟に対応することとなりました。
この条例の制定の背景には、亀岡市内を流れる保津川(桂川)のごみ問題があります。保津川は、保津川下りや嵯峨野トロッコ列車など年間150万人を超える観光客が訪れる、私たちの地域にとっては大切な観光資源でもあります。その保津川でも1990年代半ば以降、急激にプラスチックごみが増えました。保津川下りの船頭さんたちが始めた清掃活動はやがて町を挙げた取り組みになり、2018年12月には、「2030年までの使い捨てプラスチックごみゼロ」をめざす「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」が発表されました。今回の条例は、その一環として制定されたものです。

保津峡に流れ着いた大量のプラスチックごみ。険しい岩場での清掃活動は大きな危険を伴う
亀岡市のレジ袋禁止条例案のポイント
- 全ての事業者は、事業所においてプラスチック製のレジ袋を提供してはいけない。
- 土壌環境及び水環境において生分解可能な紙やバイオマスプラスチック製の袋も、無償で提供してはいけない。
- 市は、レジ袋禁止に関する市民及び事業者への啓発を行なうとともに、レジ袋禁止による効果を検証するために必要な調査を行なう。
- 市は事業者に対する指導や助言、立入調査、違反者に対する是正勧告、従わない場合の店名公表ができる。
- 市、市民及び事業者は、レジ袋禁止について互いに協力する。
大手企業から個人商店までいろいろなアイデアが形に
条例の施行に至るまでは、賛否両論、さまざまな意見もありましたが、議論が深まるにつれて、大手チェーンから個人商店まで、プラごみを減らすために興味深い取り組みが進められてきました。
たとえば、日本マクドナルドには、レジ袋に代えて有料で提供する紙袋を用意していただきました。これは全国2900店舗でも初めての取り組みです。くら寿司には、寿司おけを包む風呂敷を紙製の組み立て式持ち手に切り替えていただきました。ダイソーには、市内3店舗で紙袋も配布せず、マイバッグへの転換を呼びかけていただいています。はるやまやジョーシンは、国の有料化にあわせて石灰石とプラスチックからできたレジ袋に転換していましたが、亀岡市の条例ではこれも禁止となるため、配布を取りやめていただきました。
スーパー各社は、2019年8月からレジ袋有料化を先行して行なってきたこともあり、すでにマイバッグ持参率は90%近くに達していました。今回の条例施行に際しては、有料の紙袋に切り替えるだけではなく、大型商品を包むプラスチック製風呂敷も条例の趣旨を尊重して無償配布を取りやめていただきました。また、スーパーやホームセンターでは、商品の梱包に使われていた段ボールが無料提供され、たくさんの商品を持ち帰る時に利用されています。レジ袋の提供禁止にもっとも難色を示していたコンビニ各店でも、紙袋のみの提供となり、特に混乱は起きていません。
個人商店の取り組みも、興味深い事例がたくさんあります。たとえば、いくつかの洋菓子店では、早くからレジ袋の提供を取りやめ、ケーキを入れる紙箱も持ち手付きのものに戻されました。今では、タッパーなどの容器を持参されるお客さんも少なくありません。カフェや弁当販売店、キッチンカーでは、レジ袋の廃止だけではなく、紙製のテイクアウト容器も積極的に導入されています。
さらに、イベントでのリユース食器のレンタル事業も始まりました。昨年、亀岡駅前に完成したサンガスタジアムでのJリーグ京都サンガFCのホームゲームでは、リユース食器を全面導入したECOマルシェが開催され、人気を博しています。

亀岡市内のマクドナルド3店では、有料手提げ袋を用意。ドライブスルーももちろん同じ

くら寿司は寿司おけの持ち帰り用に、紙製の組み立て式持ち手を用意

お店やアーティストのみなさんとともにデザインした「共同購入紙袋」。繰り返し使える丈夫な作りにして、亀岡らしいメッセージをプリントした
個人の努力だけではなく社会の「仕組みづくり」を
プラスチック汚染は私たちの想像をはるかに超えるところまでおよびつつあります。最近では、「私たちは一週間に5gのプラスチックを摂取している」「妊婦の胎盤からマイクロプラスチックが見つかった」という研究結果も明らかになっています。もちろん、今すぐ私たちの健康に影響があるわけではありませんが、このまま汚染が進むと、どこかで臨界点を超えてしまい、取り返しのつかないことになるかもしれません。その臨界点がどこにあるのか「わからない」ことこそが、プラスチック汚染の真のリスクといえます。
たとえば、確率的にどんなことが起こるのかがわかれば、保険などの経済的な手段も含めて、何らかの対策を立てられるでしょう。そもそも微小なマイクロプラスチックに含まれる有害物質はごく微量ですが、それを長期にわたって摂取し続けることで、私たち人間も含めた生態系が蝕(むしば)まれてしまう「時限爆弾」のようなものです。
人の健康や環境に重大かつ不可逆的な影響をおよぼす恐れがある場合、科学的に因果関係が十分証明されていなくても規制措置をすべきとする制度や考え方のことを「予防原則」といいます。プラスチック汚染については、まだまだわからないこともたくさんあります。しかし、1992年の国連環境開発会議「リオ宣言」では、「深刻な、あるいは不可逆的な被害のおそれがある場合には、完全な科学的確実性の欠如が、環境悪化を防止するための費用対効果の大きい対策を延期する理由として使われてはならない」とし、科学的なデータの不備をもって対策を遅らせることがないよう要請しています。
亀岡市での条例制定にあたっても、プラスチック汚染が未解明なことが多いことを理由にした批判もありました。また、全国チェーンの企業からは亀岡市内だけ独自の対応をすることはできない、という意見もありました。そうした意見を無視するわけにはいきませんが、だからといって個人のモラルだけに任せたり、事業者の自主的な取り組みに委ねるだけではいつまで経っても問題の解決はできないでしょう。「条例」という社会のルールを作ったことで、市民にも企業にもより一層の取り組みを促したといえます。無関心な人や、あまり協力的ではない事業者も巻き込み、正直者がバカを見ないようにするためにも、法律や条例による社会の「仕組みづくり」は欠かせません。
会誌『野鳥』2021年3・4月号(No.851)より(会誌『野鳥』の詳細はこちら)
海洋プラスチックごみ問題 特別連載企画
- 第1回 プラスチックの大きな割合を占める容器包装と、容リ法の問題点
- 第2回 日本のリサイクル率と廃プラスチック処理の現状と課題
- 第3回 日本政府はなぜ、海洋プラスチック憲章に署名しなかったのか
- 第4回 サーキュラー・エコノミーに基づくプラスチックごみ問題の解決
- 第5回 バイオプラスチックは廃プラ問題の活路を開くのか?
- 第6回 代替品や熱回収より「総量削減・リユース」を!
- 第7回 脱プラスチック、どう進める?
- 第8回 マイクロプラスチック汚染の脅威1 “生態系汚染”
- 第9回 マイクロプラスチック汚染の脅威2“化学物質による生物への影響”
日本野鳥の会が、海洋プラスチック対策をはじめ、さまざまな自然保護活動を継続していくためには、みなさまのご支援が必要です。みなさまのあたたかなご支援をお待ちしております。
第6回 代替品や熱回収より「総量削減・リユース」を!

2020年10月、当会もメンバーとなっている「減プラスチック社会を実現するNGOネットワーク」(以下、「NGOネットワーク」)12団体と賛同8団体は、政府より9月に示された「今後のプラスチック資源循環施策の基本的方向性」(以下、「基本的方向性」)に対して、海洋プラスチック問題をより確実に解決できるようにNGOの意見をまとめた共同提言書を関係省庁や政党に提出しました。今回は、この提言書の内容について紹介します。
文・山本 裕((公財)日本野鳥の会自然保護室)
PROFILE

山本 裕(やまもと・ゆたか)
1991年入局。サンクチュアリ勤務を経て、2008年より自然保護室。モニタリングサイト1000や日本のマリーンIBA選定等を担当する。現在は海洋プラスチック問題、野外鳥類学論文集「Strix」の編集を担当している
減プラスチック社会を実現するNGOネットワーク
構成団体:特定非営利活動法人 OWS/国際環境NGO グリーンピース・ジャパン/さがみはら環境問題研究会/一般社団法人 JEAN/公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン/全国川ごみネットワーク/特定非営利活動法人 ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議/公益財団法人 日本自然保護協会/公益財団法人日本野鳥の会/特定非営利活動法人 パートナーシップオフィス/特定非営利活動法人 プラスチックフリージャパン/容器包装の3Rを進める全国ネットワーク賛同団体:特定非営利活動法人 アーキペラゴ/小山の環境を考える市民の会/環境問題を考える会/とくしま自然観察の会/Hamaumi-浜松の海を守る会/ふるさと清掃運動会/特定非営利活動法人 プロジェクト保津川/山梨マイクロプラスチック削減プロジェクト(五十音順)
政府へ共同提言書を提出した背景
2019年5月、政府より「プラスチック資源循環戦略」が公表されました。これは第四次循環型社会形成推進基本計画を踏まえ、3R+Renewable(再生可能な資源への代替)を基本原則としたプラスチックの資源循環を総合的に推進するための戦略です。同年6月には、G20大阪サミットで「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が合意され、2050年までにプラスチックごみの環境への排出をなくし、新たな汚染をゼロにすることをめざすことが決まりました。こうした政府の動きを受けて、マイバック、マイボトルの普及、分別回収や代替素材の開発などが進み、2020年7月からはレジ袋有料化が実施され、政府、地方公共団体、企業、私たち消費者も含めて、プラスチックの削減と環境への排出を減らす取り組みが進んでいます。
9月には、今後プラスチック資源循環戦略を進めていくうえで指針となる、政府の「基本的方向性」が示されましたが(※1)、より確実に環境中のプラスチックを減らし、野生生物への影響を軽減してプラスチック資源を循環させていくうえでは不十分な点がありました。そのため、グリーンピース・ジャパン、WWFジャパンが中心となって改善点を指摘し、NGOネットワーク構成団体で協議し、共同提言書として、とりまとめました。
日本の廃プラスチック処理の現状
第一に求めたのは、総量削減のための実効性のある政策の導入です。
日本で発生する廃プラスチックの量は、年間891万トン(※2)にもなります。このうち65%が温室効果ガスを発生させる焼却(熱回収503万トン、単純焼却73万トン)により処理されています。この他にマテリアルリサイクル208万トン(23%。うち海外輸出91万トン(※3))、ケミカルリサイクル39万トン(4%)、埋め立て68万トン(8%)となっています。こうした数値から、廃プラスチックのほとんどが燃やされており、リサイクルされている割合はごくわずかであることがわかります(第2回「日本のリサイクル率と廃プラスチック処理の現状と課題」参照)。
また、廃プラスチックの47%が使い捨て用途の容器包装・コンテナ類(以下、「容器包装」)であり、これには、私たちが日常生活で使用しているレジ袋やペットボトル、食品トレー、弁当容器等が含まれます。適切にリサイクルできる量を大幅に上回るプラスチック製品が使われている現状において、容器包装を中心にプラスチックの生産量と使用を大幅に削減していくことがとても重要です。しかし、政府の基本的方向性では、「リデュースの徹底」といった言葉は記述されていますが、代替品利用とリサイクルの推進、そして熱回収が解決案の中心となっています。
プラスチックの大量生産と熱回収、代替品の使用がもたらすもの
昨今の豪雨災害や夏場の高温、オーストラリアやアメリカで起きた山火事などは、地球温暖化に起因するものと考えられています。プラスチックの大量生産と焼却処理は、地球温暖化を加速させるCO2を発生させます。また紙製や、サトウキビやトウモロコシなどを原料としたバイオマス素材の代替品の使用を廃プラスチックの削減施策と結びつけてしまうと、代替品が過剰に生産され、原材料の栽培地の転換による生物多様性の消失と土壌の流出、貯蔵炭素の放出などの問題を新たに発生させる可能性があります。更にリサイクルは再利用する素材の品質低下を伴うため、現状では資源として循環していません。今後もプラスチックの大量生産を続けつつ、熱回収や代替品の使用を進めることは、プラスチック汚染問題の解決にはなりません。まずはリデュースで、代替品の使用はリデュースやリユースができない場合の補完として考えるべきです。
海の生きものへの影響の解消に向けて
海を漂うプラスチック素材の廃棄漁網や、釣り糸などの漁具は、長期にわたって海鳥を含む海の生物に大きな影響を与えています。混獲や誤飲のほか、漁網が巣材に使われ、親鳥やヒナが絡まる事例が報告されています。
この廃棄漁具の問題に対し、水産庁は今年5月、廃棄漁具の分別回収や保管、リサイクルの計画的処理を推進する指針を示し、環境省の漁業系廃棄物処理ガイドラインとも連携して対策を進めています。当会では海鳥保護の観点から、実態の把握の必要性と、更なる管理施策の強化を求めています。

1羽のアホウドリ成鳥が吐き出したプラスチック類(2016年11月30日、鳥島で拾得)。抱卵中、親鳥は絶食する。抱卵交代のあと、巣から離れた所でこれらをまとめて吐き出した(写真・文/長谷川 博)

足環装着時に、胃内容物を吐き出したアホウドリのヒナ(2015年4月24日、伊豆諸島鳥島)。合成ゴムの大きな塊(手前)とプラスチックの小片(ゴムの上と周り)が混じっていた(写真・文/長谷川 博)
脱プラスチック社会に向けて
「2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにする」という目標に向けて、政府の検討会では、容器包装だけでなくあらゆるプラスチック製品のリサイクルや、市町村による一括回収、企業の回収の法制度化など、回収のための制度設計やリサイクル、リユースに関する技術開発、リデュースを進めるために消費行動をどう変えるか等、多くのことが議論されています。
プラスチック問題の解決にはまだ課題が多く、長い道のりですが、当会はNGOネットワークの構成団体とともに、今後も機会あるごとに提言活動を行なっていきます。
3Rってなんのこと?
- Reduce〔リデュース〕
-
- 詰め替え製品や簡易包装の製品を選ぶ。
- 製品の設計時に、できるだけ少ない材料や部品等で構成されるようにし、長く使えるように工夫する。
- Reuse〔リユース〕
-
- 繰り返し使える容器に入った製品を選ぶ。
- フリーマーケットなどを利用し、不用品の再使用に努める。
- Recycle〔リサイクル〕
-
- 資源ごみの分別回収に努め、リサイクル製品を積極的に利用する。
- 製品の製造時に、リサイクルがしやすい設計にし、リサイクル原料の使用や、自社製品の回収とリサイクルに努める。
共同提言書で求めた6つのこと
次の6点を基本的方向性に取り入れることを求めました。
-
1.総量を削減するための実効性のある政策の早期導入
-
代替品への切替えを除いた、プラスチック製品の生産・流通総量のリデュース目標を設定した上で、レジ袋有料化に続けて、使い捨て用途のより幅広いプラスチック製品に対し、有料義務化や取り扱い禁止も含めた実効性のある具体的な政策を、早急に導入すること。
-
2.容器包装分野における、リユースを基本とした仕組みの導入
-
使い捨てプラスチック容器包装モデルの代替として、BtoC(※4)の容器包装分野におけるリユースの仕組みの大規模導入を推進すること。なお、ここで述べる「リユース」には、詰め替え用パウチ製品のように、新たに使い捨てプラスチックを発生させるものは含まない。
-
3.拡大生産者責任制度の確立
-
拡大生産者責任制度を全面的に導入し、事業者がライフサイクル全般(回収・リユース・リサイクル)にわたり責任を持ち、回収からリユース・リサイクルまでの全工程を確実に実施するよう義務付けること。
-
4.代替品の位置づけ見直しと、持続可能性の確保
-
安易に代替品の使用を推進せず、リデュースやリユース、リサイクルができないものについて、原料の持続可能性やリユースやリサイクルの可能性に十分配慮して導入すること。
-
5.漁具等、海域で使用するプラスチックの管理施策の促進
-
漁具等の不適切な管理による海洋への流出を抑えるとともに、流出漁具の回収と適正な処理を推進する、更なる政策を導入すること。
-
6.法的拘束力のある国際協定締結の推進
-
海洋プラスチック問題の解決に向け、包括的で法的拘束力のある国際協定の枠組みの早期発足を日本の政府が支持し、国連環境総会等の場で締結に向けた議論においてリーダーシップを発揮すること。
※1 https://www.env.go.jp/council/03recycle/0902pra3.pdf
※2 数字は「プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況」(プラスチック循環利用協会(2019))に基づく2018年実績
※3 実際には輸出された91万トンは、他国の廃プラ処理に任されている
※4 BtoC:Business to Consumer. 企業が一般消費者を対象に行うビジネス形態
会誌『野鳥』2021年1・2月号(No.850)より(会誌『野鳥』の詳細はこちら)
海洋プラスチックごみ問題 特別連載企画
- 第1回 プラスチックの大きな割合を占める容器包装と、容リ法の問題点
- 第2回 日本のリサイクル率と廃プラスチック処理の現状と課題
- 第3回 日本政府はなぜ、海洋プラスチック憲章に署名しなかったのか
- 第4回 サーキュラー・エコノミーに基づくプラスチックごみ問題の解決
- 第5回 バイオプラスチックは廃プラ問題の活路を開くのか?
- 第6回 代替品や熱回収より「総量削減・リユース」を!
- 第7回 脱プラスチック、どう進める?
- 第8回 マイクロプラスチック汚染の脅威1 “生態系汚染”
- 第9回 マイクロプラスチック汚染の脅威2“化学物質による生物への影響”
日本野鳥の会が、海洋プラスチック対策をはじめ、さまざまな自然保護活動を継続していくためには、みなさまのご支援が必要です。みなさまのあたたかなご支援をお待ちしております。
第5回 バイオプラスチックは廃プラ問題の活路を開くのか?

廃プラスチック問題の解決策のひとつとして、最近注目されているバイオプラスチック。しかし、なんとなくよさそうだというイメージが先行するばかりで、どういうものかを正しく理解している人はまだ多くありません。今回は、バイオプラスチックの特性を中心に紹介します。
文・横尾真介(日本バイオプラスチック協会事務局長)
PROFILE

横尾真介(よこお・しんすけ)
1980年早稲田大学卒業、三菱化成工業株式会社(当時)に入社。主に石化系樹脂の販売部門を歩む。2017年より現職。
日本バイオプラスチック協会
バイオプラスチックの普及促進、試験・評価制度の確立などを目的に、1989年に設立された民間団体。主な活動としては、識別表示制度の運営・国際規格ISOへの対応・JIS原案作成・バイオプラジャーナルの発行や展示会への出展等による啓発活動・会員への情報提供・行政への提言、協力など。当協会はバイオプラスチックの普及促進を通じて、持続的な循環型社会形成に寄与すべく取り組んでいます。英文名Japan BioPlastics Association(略称JBPA)。
ホームページ:日本バイオプラスチック協会
バイオプラスチックには2種類ある
「バイオプラスチック」は、「バイオマスプラスチック」と「生分解性プラスチック」の2つのプラスチックの総称です【図1】。

バイオマスプラスチックは、その名の通り、バイオマス(再生可能な有機資源)を由来としたプラスチックのことです。サトウキビやトウモロコシ、ヒマなどの原料からデンプンや糖、油脂を抽出し、発酵や合成により化合物のポリマーを作り出します。ただし、世の中に流通しているバイオマスプラスチックすべてが100%バイオマス由来とは限らず、石化由来の原料(※1)と併せて部分的に使われているのも多くあります。
一方、生分解性プラスチックはその名の通り、自然界の微生物によって分解されるプラスチックのことです。原材料は、「生物由来」のものと「石化由来」のものがあります。使用後は微生物の働きにより、水と二酸化炭素に分解されます【図2】。「土に還る」と思われていますが、これは誤解です。土になるわけではありません。

- バイオプラスチックとはバイオマスプラスチックと生分解性プラスチックの総称であること
- バイオマスプラスチックは原料がバイオマスを使ったプラスチックのことで生分解するかどうかは関係ない
- 生分解性プラスチックは生分解するという機能を持ったプラスチックのことであり、原料が石化由来かバイオマス由来であるかは関係ない
- バイオマスプラスチックのなかには生分解する機能を持ったものもある
となります。
少し複雑ですが、ここが、バイオプラスチックを理解するうえで重要なポイントになります。
環境問題への貢献の形がちがう
「バイオマス」と「生分解性」のそれぞれのプラスチックは、環境問題に対して果たす役割も違います。
-
1.バイオマスプラスチックは、地球温暖化の防止に役立つ
-
石化由来のプラスチックは、焼却処理の段階で地球温暖化効果ガス(CO2)を排出してしまい、地球温暖化促進が懸念されています。しかし、植物などを由来としたバイオマスプラスチックは、燃焼時に排出するCO2がゼロとしてカウントされます(それまで光合成によって吸収された分が排出されるという意味。カーボンニュートラルと言われる)。また、限りある化石資源の使用削減にも貢献します。
-
2.生分解性プラスチックは、廃棄時の環境負荷を軽減
-
生分解性プラスチックは、土中に埋めたり、きちんと分別したうえで回収され、コンポストで適切に処理されれば、水と二酸化炭素に分解され、そのまま自然に還ります。食品廃棄物などの有機物とも一緒に処理が可能なので、その後、農業用の堆肥として利用することもできます。バイオプラが土に還ると誤解を受けているのは、生分解性プラスチックは土に埋めることで分解の特性を発揮するというイメージからでしょうか。
- 第1回 プラスチックの大きな割合を占める容器包装と、容リ法の問題点
- 第2回 日本のリサイクル率と廃プラスチック処理の現状と課題
- 第3回 日本政府はなぜ、海洋プラスチック憲章に署名しなかったのか
- 第4回 サーキュラー・エコノミーに基づくプラスチックごみ問題の解決
- 第5回 バイオプラスチックは廃プラ問題の活路を開くのか?
- 第6回 代替品や熱回収より「総量削減・リユース」を!
- 第7回 脱プラスチック、どう進める?
- 第8回 マイクロプラスチック汚染の脅威1 “生態系汚染”
- 第9回 マイクロプラスチック汚染の脅威2“化学物質による生物への影響”
- 地球の再生産能力の限界内で推進され、SDGsの達成に真に貢献するものであること
- 経済的な成長のみを目的とせず、グリーン経済(※3)、効率性の向上、持続可能なライフスタイルへの転換などの視点が組み込まれていること
- ビジネス、市民社会、政府、消費者などすべてのステークホルダー(※4)の参加が、設計から実施段階に渡って組み込まれていること
- 政策の枠組みに、これを推進する仕組みが組み込まれていること
- イノベーションや新たなビジネスモデルを超えたものをもたらすこと
- 天然資源、素材や製品が、豊かな生態系維持のためのコスト、社会問題解決のためのコストを含めるように値づけされること
- 廃棄物と汚染の発生を、設計段階で排除する
- 製品や素材を使い続ける
- 自然のシステムを再生する
- 第1回 プラスチックの大きな割合を占める容器包装と、容リ法の問題点
- 第2回 日本のリサイクル率と廃プラスチック処理の現状と課題
- 第3回 日本政府はなぜ、海洋プラスチック憲章に署名しなかったのか
- 第4回 サーキュラー・エコノミーに基づくプラスチックごみ問題の解決
- 第5回 バイオプラスチックは廃プラ問題の活路を開くのか?
- 第6回 代替品や熱回収より「総量削減・リユース」を!
- 第7回 脱プラスチック、どう進める?
- 第8回 マイクロプラスチック汚染の脅威1 “生態系汚染”
- 第9回 マイクロプラスチック汚染の脅威2“化学物質による生物への影響”
- 第1回 プラスチックの大きな割合を占める容器包装と、容リ法の問題点
- 第2回 日本のリサイクル率と廃プラスチック処理の現状と課題
- 第3回 日本政府はなぜ、海洋プラスチック憲章に署名しなかったのか
- 第4回 サーキュラー・エコノミーに基づくプラスチックごみ問題の解決
- 第5回 バイオプラスチックは廃プラ問題の活路を開くのか?
- 第6回 代替品や熱回収より「総量削減・リユース」を!
- 第7回 脱プラスチック、どう進める?
- 第8回 マイクロプラスチック汚染の脅威1 “生態系汚染”
- 第9回 マイクロプラスチック汚染の脅威2“化学物質による生物への影響”
最適な用途と、価格を上回るメリット
従来の石化由来のプラスチックに比べ、価格が割高であるバイオプラスチックが使われているのはどのような分野なのか、その一部の例をご紹介します。
バイオマスプラスチックにはある程度の強度が期待できるため、買い物用のレジ袋やペットボトル、繊維に加工されて使われたり、中には電子製品の一部になっていたりします。
一方、生分解性プラスチックは、分解するという特性から、従来のプラスチックと同様の耐久性を求めることはできません。食料廃棄物を入れるためのコンポスト袋や、育苗ポットなどへの利用には非常に適しています。もっとも代表的なのは、農業用のマルチフィルムや農業資材のネットやロープで、使用後、不要になったら耕運機でそのまま土に漉(す)き込んでしまえるので、廃棄の手間が省けます。また、本来産業廃棄物として出す経費も削減できることから、高齢化が進んでいる農家にとって多少のコスト高を上回るメリットもあるようで、年々市場でのシェアが拡大しています。
なお、海洋プラスチック問題の解決にも期待されがちな生分解性プラスチックですが、海中(※2)では分解されにくく、今後の研究に期待されるところです。
生分解性プラスチックは、可燃ごみとして焼却されると生分解性という機能を発揮することができませんし、生分解するということでポイ捨てされてそのまま放置されるといった不適切な処理をされては、プラゴミを増やすことになりかねません。適切に管理された環境で機能を発揮するということに留意するべきです。
歴史は古くとも長く続く不遇の理由
従来の石化由来のプラスチックに比べて環境負荷が少ないバイオプラスチックですが、あまり利用されていないことには理由があります。
バイオプラスチックの研究の歴史は古く、1920~30年代より欧米で研究されてきました。これまでに何回か注目を集めることもありましたが、期待される性質や特性を発揮することができず、社会実装化は進みませんでした。
2018年以降、地球温暖化効果ガスの削減や海洋プラスチックごみの問題により、バイオプラスチックは社会の大きな関心を集めていますが、直近では、2005年に愛知県で開かれた「愛・地球博」の開催とともに高まった環境意識の向上により注目されました。
2005年ごろには多くの企業がバイオプラスチックの研究開発に参入していたのですが、コストや性能面で石化系プラスチックとの差は大きく、また、2008年にリーマンショックが起こったことで撤退する企業が相次ぎ、バイオプラスチック業界は低迷期に入ってしまいました。
しかし、今回は、世界的な環境意識の高まりによってバイオプラスチックが再認識されたものであり、一過性のものではないと考えています。
バイオマスプラスチックの原材料のサトウキビなどは、膨大な量の確保が必要ですが、海外のような大規模事業でないと量産できず、日本においては現在、ゼロ生産と言っても過言ではありません。2年前くらいから起きているバイオプラスチックブームはEUを中心に世界規模で拡大しているため、いくつかのバイオプラスチックによっては玉(原料)不足の状態が続いています。国内の市場におけるバイオプラスチックの使用量は5万トンに足りず、国内市場でのシェアはわずかに0.4%程度です。少しずつ割合は増えてきていますが、まだまだ存在感があるとは言えません。
バイオプラスチックは使い捨てにこそ利用されるべき
廃プラスチック問題は3R(※3)が大原則です。なるべく使わず、使った場合はリサイクルする。リサイクルも、マテリアルリサイクルがだめなら、ケミカルリサイクルでもいいでしょう。しかし、なかにはそこからこぼれおちてしまう使い捨ての製品などが出てきてしまいます。そこにバイオプラスチックを充てることで、環境負荷を少なくして、循環経済社会の一部を担うことができるのではないかと思います。
EUを中心に、需要が急激に伸びているバイオプラスチックですが、現在、世界で統一された認証規格はありません。昨年、経済産業省は海洋生分解性プラスチックについてわが国から国際標準規格(ISO)(※4)を提案し、制定するという計画を発表しました。日本におけるバイオプラスチック市場の拡大には、需要の高まり、つまり消費者の意識の高まりも大切な要因となります。みなさんの身の回りにも、日本バイオプラスチック協会の認証ロゴ【図1】のついた商品があるかもしれません。ぜひ、気にしてみてください。
※1 石油から作られた化学製品
※2 海洋生分解性を持つ製品として国際認証を得ているのは、世界でも数製品しかない。そのなかのひとつ、カネカ社製の植物由来生分解性ポリマーPHBHだけが、世界で唯一商業ベースで生産されている製品であり、ヨーロッパなどで容器として利用されている
※3 Reduce(リデュース)Reuse(リユース)Recycle (リサイクル)の3つのRの総称
※4 スイスのジュネーブに本部を置く非政府組織International Organization for Standardization(国際標準化機構)の略称。その目的は国際的な標準となる規格を制定することで、ISOが制定した規格を「ISO規格」と呼び、制定や改訂は日本を含む世界162か国の参加国の投票によって決定する
※5 2021 年7月より、グリーンプラという名称を廃止し、「生分解性プラ」に名称を変更。グリーンプラマークを廃止し、新たに「生分解性プラマーク」、「生分解性バイオマスプラマーク」の 2 種類が制定されました。詳しくは、以下のサイトをご覧ください。
・グリーンプラ識別表示制度の変更について
会誌『野鳥』2020年11・12月号(No.849)より(会誌『野鳥』の詳細はこちら)
海洋プラスチックごみ問題 特別連載企画
日本野鳥の会が、海洋プラスチック対策をはじめ、さまざまな自然保護活動を継続していくためには、みなさまのご支援が必要です。みなさまのあたたかなご支援をお待ちしております。
第4回 サーキュラー・エコノミーに基づくプラスチックごみ問題の解決

プラスチックの原料となる石油などの化石燃料も、地球上の限りある天然資源の一つです。天然資源の利用を含めて経済や社会全体を、従来の一方通行型(リニア)のものから、循環型(サーキュラー)なものへと転換していく「サーキュラー・エコノミー」というコンセプトが、ヨーロッパを中心に世界に普及しはじめています。これに基づいたプラスチックごみ問題の解決について考えてみましょう。
文・三沢行弘(WWFジャパン プラスチック政策マネージャー 兼 シーフード・マーケット・マネージャー)
PROFILE

三沢行弘(みさわ・ゆきひろ)
企業等で国内外の事業の企画・推進に携わった後に、WWFジャパンに入局。「2030年までに世界で自然界へのプラスチックの流入をゼロにする」というWWFのビジョン実現に向け、政策決定者や企業関係者に働きかけ、プラスチックの大幅削減を前提とした資源循環型社会の構築に向けて取り組む。また、水産サプライチェーンの改善を通じた国内外での持続可能な漁業・養殖業への転換も推進する。
WWF
約100か国で活動している環境保全団体。WWFとは「World Wide Fund for Nature(世界自然保護基金)」の略。地球上の生物多様性を守り、人の暮らしが自然環境や野生生物に与える負荷を小さくすることによって、人と自然が調和して生きられる未来をめざしている。
新たな資源採取をせず、循環(サーキュラー)を
世界の天然資源採取量は、1980年の400億トンから、2020年には820億トンへと倍増する見込みです。そしてプラスチックの原料となる化石燃料は、同期間に80億トンから150億トンへと増加します。(マンガ内表参照・※1)世界の人口の急激な増加に伴う需要の急増のためですが、一人当たりの需要量も増え続けていることに注意が必要です(1980年の9.1トンから2020年の10.6トンへと増加)。
天然資源も含めて、自然環境が私たちの経済活動や豊かな暮らしを支えています。このまま一次原料の使用拡大を前提に経済活動を続けていくと、限られた天然資源しかもたない地球は、持ちこたえることはできません。そこで、経済や社会の仕組みを広範にわたり大きく転換することが急務となっています。
そして近年、「サーキュラー・エコノミー」という概念が急速に注目を集めるようになってきました。「新たに採取した原料により製造し、使用後にそのまま廃棄する」という従来からの一方通行の仕組みに対して、サーキュラー・エコノミーは、天然資源利用と廃棄物の発生を最小化し、資源を長く維持する「循環型」の仕組みです。
この仕組みは、資源の生産性、効率性、部品や素材の追跡可能性(トレーサビリティ)、製品のライフサイクル後の再利用性をそれぞれ向上させます。共有(シェアリング)、リースやレンタル、リマニュファクチャリング(※2)、修理(リペア)、リサイクルなどの広がりは、このサーキュラー・エコノミーへの移行の一環と言えます。アイデア自体は目新しいものではありませんが、いよいよ本格的に推進しなければならない時代が来ています。
サーキュラー・エコノミーの原則
WWFでは、サーキュラー・エコノミーの推進が適切に行なわれるためには、以下の6つの原則が満たされる必要があると考えています。
次に、「サーキュラー・エコノミーへの移行を加速させること」をミッションに掲げ、世界でその推進をリードするイギリスのエレン・マッカーサー財団の3つの基本原則をご紹介します。
「1.設計段階での廃棄物と汚染発生の排除」が、特に大切です。これができないと、「2.製品や素材を資源として使い続ける」ことが不可能となり、結局、絶えず新たな資源を大量に投入し、大量発生したごみを廃棄し続けることになります。これにより、自然環境への負荷が増大することで「3.自然のシステムの再生」も実現できないという悪循環に陥ります。
繰り返しての利用が困難な製品を作って一旦流通させてしまえば、それは必ずごみとなり、その後で「さて、このごみをどう処理しようか」と考えても、すでに遅いのです。製品やサービスを設計する段階から課題解決を進める重要性を指摘しておきます。
WWFとエレン・マッカーサー財団いずれの原則においても、地球の再生産能力の限界内で機能する循環型の経済を構築することで、天然資源開発への需要を減少させ、汚染やごみを極力減らした健全な生活環境の実現につながることを示しています。
サーキュラー・エコノミーに基づくプラスチックごみ問題解決の視点
最後に、サーキュラー・エコノミーの考え方を、世界のプラスチックごみ問題の解決に適用していきます。
プラスチック廃棄物処理で最優先するのは、削減(リデュース)できるものはそもそも作らないことです。生産する場合は、再使用(リユース)、再生利用(リサイクル)、持続可能な代替品への切替え、熱回収(焼却後、発生する熱エネルギーの再利用)、単純焼却及び埋め立て、の順で進めるべきです。
世界で発生するプラスチックごみの47%が容器包装用(UNEP,2018)ですが、これらのほとんどが、使い捨てされています。【図1】は世界の容器包装用プラスチックのマテリアルフローです。

世界での生産の98%に新たな一次原料であるバージンプラスチックが使用され、生産後には、実に32%が自然界に流出してしまいます。つまり、処理が可能な能力を3割以上超過して生産されているとも言えるでしょう。
次に処理の内訳を見ていくと、埋め立てと焼却をあわせ54%となっていますが、これらの処理は前述の通り優先されるべきものではありません。生産された14%がリサイクル用に回収されますが、回収後に実際のリサイクルの対象となるのは10%です。さらに、プラスチックのリサイクルでは素材の品質が落ちる場合が多く、同様の質のものに生まれ変わるのは、全体のわずか2%です。このように、サーキュラー・エコノミーの実現からは程遠い現状なのです。
リユース・リサイクルを前提に設計段階から全体をデザイン
サーキュラー・エコノミーの観点から、複雑なプラスチックごみ問題の全体像をみるためには、システム思考を用いるのが有用です。システム思考とは、さまざまなレベルでものごとのつながりと全体像をみる、ものの見方です。(枝廣・小田,2010)。【図2】は、システム思考によるプラスチックごみ問題の解決アプローチです。

まず、必ずしも必要でないものは生産をしないことで、新たな化石燃料の投入を大幅に減少させることができます。次に、生産されたプラスチックがより長い間使用され、使用後にも長くリユース、リサイクルし続けるように、設計段階から、マテリアルフロー全体を見てデザインしていきます。これにより、新たな資源投入による生産量をさらに減らすことにもつながります。
そして、使用後も含めて長い間資源が循環し続けることで、ごみとなるプラスチックも大幅に減らすことができます。その上で、循環できない状況になってしまったごみを適切に処理することにより、自然界への流出をゼロに近づけることが可能になります。
前述の通りサーキュラー・エコノミーでは、廃棄物と汚染の発生を設計段階で排除することが重視されますが、プラスチックにおいても、商品を生産する前に、「そもそも、どうすれば無駄な生産を行なわないでビジネスができるか」を考えるところから始めるべきです。
さらに、リユースやそれが難しければリサイクルすることを前提に、商品やサービス、物流、回収方法、回収後の再利用まで、マテリアルフロー全体をデザインするのです。これが、サーキュラー・エコノミーに基づいた、プラスチックごみ問題の基本的な解決アプローチとなります。
サーキュラー・エコノミーを正しく理解し、プラスチックのマテリアルフロー全体に適用することで、深刻なプラスチックごみ問題の解決を加速させていくことが、社会全体に求められています。
※1 引用元「エレン・マッカーサー財団(2013)」
※2 使用された製品や部品を分解、洗浄、修理などを行なって、新品と同じ水準の製品として販売すること(小島,2014)
※3 環境問題にともなうリスクと生態系の損失を軽減しながら、人間の生活の質を改善し、社会の不平等を解決するための経済のあり方
※4 利害関係者
会誌『野鳥』2020年9・10月号(No.848)より(会誌『野鳥』の詳細はこちら)
海洋プラスチックごみ問題 特別連載企画
日本野鳥の会が、海洋プラスチック対策をはじめ、さまざまな自然保護活動を継続していくためには、みなさまのご支援が必要です。みなさまのあたたかなご支援をお待ちしております。
第3回 日本政府はなぜ、海洋プラスチック憲章に署名しなかったのか

2018年にカナダで開かれたG7で、プラスチックごみによる海洋汚染問題への各国の対策を促す文書「海洋プラスチック憲章」が採択されましたが、日本とアメリカの2国だけが署名しませんでした。プラスチックごみの年間排出量が多い(日本5位・アメリカ2位)2国のこの行動に対し、大きな批判が起きましたが、日本はどうして署名を見送ったのか、その背景について解説します。
文・井田徹治(共同通信社編集委員兼論説委員)
PROFILE

井田徹治(いだ・てつじ)
1959年東京生まれ、東京大学文学部卒、1983年に共同通信社に入社。2010年から同社編集委員兼論説委員。
環境と開発、エネルギー問題がライフワークで、30年以上にわたって国際会議の取材、発展途上国での環境破壊の現場取材を続けている。『霊長類』、『生物多様性とは何か』、『追いつめられる海』(いずれも岩波書店)など著書、訳書多数。
海洋プラスチック憲章への署名を拒否した日本
「私はこのようなものには署名しない。シンゾー、君もしないよな」。そう言って席を立つアメリカのトランプ大統領。安倍晋三首相は、返す言葉もなくそれを見送った。
深刻化する海のプラスチック汚染に取り組むため、2018年7月、カナダ東部シャルルボワで開かれた先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)で、「海洋プラスチック憲章」への署名をアメリカと日本は拒否した。複数の政府関係者によると、その時のようすはこんなものであったらしい。
欧州諸国とカナダが署名した憲章は「発生の抑制が、海洋ごみ問題への取り組みと対処を長期的に成功させるカギであることを認識する」と明言し、具体策の一つとして「不必要な使い捨てプラスチック製品を大幅に削減し、代替品の環境インパクトも考慮する」とうたった。さらに「2030年までにプラスチック製品をすべて再利用可能あるいはリサイクル可能、またどうしてもそれができない場合には、熱源利用などの用途への活用に転換する」「30年までに、プラスチック製品の再生素材利用率を50%以上にする」「プラスチック容器の再利用またはリサイクル率を2030年までに55%以上、2040年までには100%にする」など年限を限った具体的な数値目標を含む、先進国首脳による政治的な宣言としては画期的な内容だった。
「トランプ氏に議論をリードされた」「議長国カナダの提案が突然で、事前の根回しが不十分だった」などのコメントが政府関係者からは聞かれたが、署名拒否の真の理由は「具体的な数値目標や『製品の大幅削減』など、その内容が、日本国内の現状からして受け入れられるものではなかった」(環境省関係者)という点にある。当時、海洋プラスチック問題が深刻化し、重要な環境問題の一つとしてG7の場で議論されてきたにもかかわらず、使い捨てプラスチックの削減や用途規制はおろか、レジ袋の有料化や代替品の開発と利用の促進といった取り組み強化の議論は、日本国内ではほとんど進んでおらず、国際的な議論とのギャップはとても大きかった。具体的な数値目標や削減を盛り込んだ憲章への参加など、実際、望むべくもなかったのだ。
進んだかに見える対策その実態は
日本の署名拒否に、国内外で激しい批判が巻き起こった。政府関係者によると、安倍首相もこれほど厳しく批判されるとは考えていなかったようで、帰国直後から環境省などに海洋プラスチック対策を検討するよう指示が出された。視野にあったのは19年6月のG20大阪サミットだった。ダメージコントロールの一つとして打ち出されたのが「海洋プラスチックの排出量は中国など先進国以外の方が圧倒的に多いので、それに取り組むための枠組みはG7よりG20のほうがふさわしい」というロジックだった。
その結果、まず、国内対策としてまとめられたものが「プラスチック資源循環戦略」だった。戦略には「2030年までにワンウェイプラスチックの排出を累積で25%抑制する」「2030年までに容器包装の6割をリユース・リサイクルし、再生利用を倍増する」など、これまでにない数値目標が盛り込まれた。2006年に一度、決まりかけたが、コンビニ業界の反対で導入直前で見送られたレジ袋の有料化も決まった。
日本の海洋プラスチック対策が一歩前進したことは確かだが「25%削減」はG7憲章にあった「大幅削減」に比べれば見劣りするのは明らかだし、「政治的判断」(環境省関係者)によっていつの時点から、何を25%削減するのかが明記されていないのだから、数値目標の名には値しない。 G7憲章の内容には及ばないと言っていい。
一方、G20大阪サミットでは、国際交渉の結果、共通の世界のビジョンとして「2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減することをめざす」とした「大阪ブルーオーシャンビジョン」に各国が合意。サミットに先だって長野県で開かれた「G20持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚級会合」では、G20各国がそれぞれの経験や情報を持ち寄って、海洋プラスチック対策を進めるための国際的な「海洋プラスチックごみ対策実施枠組」を設置、動かしていくことでも合意した。将来的にはこの問題に関する国際条約の策定などをもにらんだもので、中国やインドなどの新興国を含めた取り組み強化の枠組みができたことは一定の評価に値する。その後、これにはG20以外の多くの国が賛同の意を示している。
だが「2050年排出ゼロ」目標は、使い捨てプラスチックの「削減」などの文言を盛り込むことに、終始、強く反対していたアメリカへの配慮の結果で、問題が深刻化し、対策が緊急を要することからすれば、明らかに物足りない。「プラスチック容器の再利用またはリサイクル率を40年までには100%にする」などの目標を掲げる憲章に比べれば、これも見劣りする内容だ。
世界標準に遅れをとる日本の取り組み
シャルルボワサミットからの一連の動きの中で明確になったのは、安倍晋三首相をトップとする現政権幹部の、この問題に関する認識の浅さと、日本の取り組みが世界標準に比べて大きく遅れていることに関する危機感の希薄さだった。
安倍首相はG20終了後の記者会見で「日本から大量の海洋プラスチックごみが海に出ているというのは、これは誤解であります」「かなり一部に日本から出ているものは限られている」と述べたが、これは明らかに事実に反する。太平洋北部にある海のごみだまりのなかの多くが、日本起源のものであることは多くの調査によって指摘されている。
世耕弘成経済産業相(当時)は会見で「2020年4月1日からレジ袋を有料化する」と胸を張ったが、世界の多くの国で有料化はおろか、使用禁止という規制が実施されており、日本の取り組みは世界に遅れをとっている。しかもその後の産業界などとの議論の中で、実施は7月1日に延期され、「厚さ0.05ミリ以上のもの」「バイオマスプラスチックを25%以上含むもの」など多くの例外が設けられた。金額や得られた資金の使途などは、すべて企業任せだということもあって、実施前から実効性に疑問の声が上がっている。
行き詰まる日本のプラスチックゴミ対策
レジ袋はプラスチックごみ全体の2%程度に過ぎず、その有料化は、海洋プラスチック汚染対策のほんの入り口でしかない。プラスチックごみの70%近くが焼却され、リサイクルされているものの多くが輸出されているため、国内で真にリサイクルされているプラスチックはほんの4%程度でしかない、という実態も変わっていない。海外への輸出はほとんど困難になり、地球温暖化対策の観点から二酸化炭素排出の大幅な削減が求められる中で、海外輸出と焼却に依存する日本のプラスチックごみ対策は完全に行き詰まり、根本的な見直しを迫られている。
真の問題解決には、不要な使い捨てプラスチック製品の生産と使用削減のための規制や数値目標づくり、代替品の開発と利用を進めるための仕組みづくりなどが欠かせない。プラスチック製品を生産する企業の責任や費用負担の仕組みが欠けている現行の容器包装リサイクル法の抜本的な改正も必要になると、多くの専門家が指摘しているのだが、政府部内にそのような動きは見られない。
シャルルボアサミットでの署名拒否とそれに対する批判をきっかけに、一定の前進はみられたものの、日本では当分の間、抜本的な改革の必要性から目をそらしたまま、その場しのぎの政策が続きそうだ。

会誌『野鳥』2020年8月号(No.847)より(会誌『野鳥』の詳細はこちら)
海洋プラスチックごみ問題 特別連載企画
日本野鳥の会が、海洋プラスチック対策をはじめ、さまざまな自然保護活動を継続していくためには、みなさまのご支援が必要です。みなさまのあたたかなご支援をお待ちしております。







