勇払原野・弁天沼の周辺で繁殖するチュウヒの環境選択と行動圏の季節変化

〇浦 達也1・4・酒井すみれ2・中山文仁3・北村 亘4
〈1.(公財)日本野鳥の会 2.酪農学園大・環境共生 3.(一財)自然環境研究センター 4.東京都市大・院・環境情報〉

チュウヒは近年その数が減少し、現在の国内繁殖数は90つがいとされる。2017年には国内希少野生動植物種に指定された。保護対策を進めるためには、営巣や採餌等の利用環境を知り、その維持や管理計画を立てる必要があるが、繁殖数が多い北海道のチュウヒの環境利用の情報は少なく、これまで具体的な対策が立てられてこなかった。

そこで発表者らは、チュウヒの利用環境を明らかにするため、2009年に北海道苫小牧の勇払原野でチュウヒ2個体(以下、A・B)にGPSアルゴス衛星送信器を装着し、環境利用等の調査を行った。

その結果、A、Bともに繁殖期を通してイワノガリヤス‐ツルスゲ群落、ホザキシモツケ群落、ヒルムシロクラスなど湿地性草本群落、そしてハンノキや畑雑草群落、開放水域が組み合わされる環境を重点的に利用していた。また、Aは行動圏サイズが季節により変化しており、繁殖期前期は川沿いの環境をよく利用していた。Bはサイズに季節変化がなく、どの季節も湿地性草本群落を利用していた。そのような多様で複合的な環境が繁殖期のチュウヒに特に重要であることが示唆された。