「四国横断自動車道吉野川渡河部の環境保全対策(原案)」に対する意見を提出

四国横断自動車道 吉野川渡河部の環境保全に関する検討会に対して
2月24日付で、以下の4団体名で「四国横断自動車道吉野川渡河部の環境保全対策(原案)」に対する意見を提出しました。

NPO法人ラムサール・ネットワーク日本
公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン
公益財団法人 日本自然保護協会
公益財団法人 日本野鳥の会



南岸より紀伊水道から和歌山を望む
撮影:三宅武

意見:
四国横断自動車道吉野川渡河部の建設に対し、自然環境への影響ならびに事業の必要性の観点から、事業の見直しを強く求めます。河口域生態系は、河川と海洋の出会う場に形成される変化に富む生態系で、生物学的にも経済的にも高い価値を持つことが世界的に多くの研究から示されています。我が国では多くの河口生態系が改変されている中、吉野川河口は、自然環境が比較的良い状態に保たれ、生物多様性が高く、河口干潟としては国内でも有数の規模と景観を持っています。また、シギ・チドリ類をはじめとする渡り鳥の渡来地として、東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップによって「フライウェイ生息地ネットワーク」への参加を承認されている他、環境省によって「日本の重要湿地500」ならびに「ラムサール条約湿地潜在候補地」に選定されるなど、その自然環境の生物多様性の高さは国際的に認められています。四国横断自動車道吉野川渡河部の建設に関し、上記4団体は吉野川河口の生物多様性保全のために、以下の事項を実現するよう事業者に要望します。

  1. 四国横断自動車道吉野川渡河部建設の影響評価ならびに保全対策を、既存のしらさぎ大橋やマリンピア沖洲埋立地などの周辺の大規模人工構造物と関連づけて行うこと。
  2. 将来の人口減少などの社会状況の変化を加味し、事業の効果、必要性を再評価すること。

理由:
四国横断自動車道吉野川渡河部の建設は、1994年発行の『徳島東部都市計画道路1.3.2小松島鳴門線徳島東部都市計画道路1.3.3川内線環境影響評価書』に基づき事業の実施決定がなされています。しかしながら、評価からすでに20年が経過しており、その間、当該事業区域では徳島東環状線阿波しらさぎ大橋建設およびマリンピア沖洲第二期事業が実施され、周辺の自然環境は大きく変容しました。阿波しらさぎ大橋環境建設に伴う環境調査では、橋建設により鳥類の飛行パターンが変化するなど、事業の影響が観測されています。四国横断自動車道吉野川渡河部が建設された場合、吉野川河口域が空間的に分断され、鳥類の利用を妨げるなど、複合的な要因による影響が懸念されますが、本事業の検討会では考慮されていません。過去20年間の自然環境の変化を踏まえ、生物多様性や自然環境に対する影響を改めて評価すべきと考えます。また、日本の人口は今後急激に減少する予測を政府が2010年に発表しており(国土の長期展望に向けた検討の方向性について,国土交通省)、徳島市においても人口は1998年の270,436人(推計値)を最大として減少傾向にあります。それに伴い交通量の変化も予想されるなど、社会情勢も大きく変化しています。建設後数十年を経過した橋梁や道路などは老朽化が進み、根本的な補修が必要とされており、今後は、新たな建設よりも現在の橋梁・道路の十分な補修とメンテナンスが優先される時代になることは明らかです。したがって、本事業が当初の事業目的の達成に必用不可欠なのか、既存の交通インフラ等の利活用など、より効果的な方策が無いかの再検討を行う必要があると考えます。

以上