クロツラヘラサギ世界一斉センサス集計結果(2025年)

2025年4月7日

2025年クロツラヘラサギ世界一斉センサスの集計結果

日本クロツラヘラサギネットワーク・(公財)日本野鳥の会

東アジアの国々と地域が協力して毎年1月に実施している「クロツラヘラサギ世界一斉センサス」(主催:香港バードウォッチング協会(HKBWS))の、2025年の調査結果がまとまりましたのでお知らせ致します。

この調査は、絶滅が危惧されているクロツラヘラサギの越冬個体数と分布を把握するために、日本、韓国、中国、台湾、香港、ベトナム、タイ、フィリピンなど東アジアの自然保護団体が参加し、毎年実施しています。2025年の調査は1月17日~19日にかけて行われました。

クロツラヘラサギの国内での越冬地は、九州や沖縄など西日本が中心です。2025年の調査は、日本クロツラヘラサギネットワーク、日本野鳥の会の会員を中心に1都1府8県77か所において、計66名の協力者を得て行われました。

1. 2025年クロツラヘラサギ世界一斉センサス調査結果の概要

2025年クロツラヘラサギ世界一斉センサスは1月17日~19日にかけて行われ、各国の150地域からの報告に基づき、香港バードウォッチング協会(HKBWS)が取りまとめました。
その結果、2025年の調査では、東アジア全体で前年より93羽増えて、7,081羽が確認され(前年比1.3%増)、史上最多を記録しました。

東アジア地域での主要な越冬地は台湾です。4,169羽が観察され、全世界の個体数の約59%を占めています。
2025年に観察個体数が増加した地域は、台湾の4,169羽(0.8%増)をはじめ、中国本土1,671羽(2.5%増)、日本716羽(2.0%増)、ベトナム112羽(30.2%増)、韓国52羽(33.3%増)、フィリピン17羽(142.9%増)、マカオ16羽(23.1%増)です。日本とベトナムでは過去最高の個体数が記録され、クロツラヘラサギの生存には、分散した複数の安全で管理された越冬地が重要であることを示しています。特定の地域に個体が集中しすぎると、生息地の消失や鳥インフルエンザなどのまん延により、個体群が大きな影響を受ける可能性があります。そのため、今後も複数の越冬地を確保し、長期的な保全を進める必要があります。

一方、減少傾向が見られたのは、后海湾328羽(12.5%減)でした。この他、タイ、カンボジア、マレーシアでは一斉センサス期間中には生息が確認されませんでした。
后海湾は2023年の激減後、昨年は個体数が増加しましたが、今年は減少しており、依然として越冬するクロツラヘラサギにとっては不利な環境であり、さらなる保護と生息地の管理が必要と考えられます。

クロツラヘラサギの全世界の観察個体数は、2019年に4,000羽、2021年に5,000羽、2022年には6,000羽を超えました。2025年の一斉センサスで7年連続の個体数増加となり、着実に個体数が回復してきているといえます。しかしながら、その増加率はこれまでの調査結果よりも低くなっており、特に台湾、中国本土、日本といった主要な越冬地では増加率が0.6%~2.5%と少なめでした。

(HKBWSによる2025年世界一斉センサスの集計をもとに作成)

表1. 地域別のクロツラヘラサギの記録数
場所 2016年
調査
2017年
調査
2018年
調査
2021年
調査
2022年
調査
2023年
調査
2024年
調査
2025年
調査
前年比
(2025年-2024年.
羽数)
前年比
(2025年/2024年.
%)
台湾 2,060 2,601 2,195 3,132 3,824 4,228 4,135 4,169 34 +0.8
后海湾
(香港、深セン)
371 375 350 336 369 299 375 328 -47 -12.5
中国本土 434 397 744 1,022 1,136 1,307 1,630 1,671 41 +2.5
日本 383 433 508 570 683 640 702 716 14 +2.0
ベトナム 9 62 65 82 88 80 86 112 26 +30.2
マカオ 61 44 50 45 22 21 13 16 3 +23.1
韓国 38 29 26 34 37 54 39 52 13 +33.3
タイ 0 0 0 0 1 0 1 0 -1 -100.0
カンボジア 0 0 0 0 0 0 0 0 0
フィリピン 0 3 1 0 4 7 17 10 +142.9
マレーシア 0 3 0 2 0 0 0 0
合計 3,356 3,941 3,944 5,222 6,162 6,633 6,988 7,081 93 +1.3

(HKBWSの報告に基づく)

2. 日本におけるクロツラヘラサギ一斉センサス調査の結果

日本クロツラヘラサギネットワーク・(公財)日本野鳥の会

2025年、国内では昨年より14羽多い、計716羽が確認されました(2.0%増)。最も多かったのは熊本県で207羽が観察され、次いで、福岡県152羽、鹿児島県98羽、佐賀県89羽、山口県57羽、大分県・宮崎県41羽、沖縄県18羽が観察されました。西日本以外では、東京6羽、大阪府で7羽が観察され、以前より東側の地域でも生息確認が増えています。

図1. 日本におけるクロツラヘラサギの記録数の推移
図1. 日本におけるクロツラヘラサギの記録数の推移

図2. クロツラヘラサギの県別記録数の推移
図2. クロツラヘラサギの県別記録数の推移

表2. 県別に見たクロツラヘラサギの記録数の推移
表2. 県別に見たクロツラヘラサギの記録数の推移
(画像クリックで拡大)

シマフクロウとの共存ルール

シマフクロウは絶滅危惧種であり、国の保護対象種です。生息環境の悪化により、20世紀後半には絶滅寸前まで個体数が減少しました。しかし、環境省や保護関係者、関係機関による数十年にわたる地道な保護活動により、生息数はじょじょに回復しています。

しかし、まだ絶滅の危機を完全に脱したわけではなく、生息環境の保全や再生に向けた取り組みを継続することが必要です。また、野生のシマフクロウの観察を積極的に推奨できる状況ではありません。

近年、シマフクロウの繁殖地付近でのむやみな接近や立ち入りによって、採餌や繁殖が妨害される事例が確認されています。人間の行動による生息環境の悪化を防ぐため、次のルールを守ってください。

おどかさないよう、そっと離れてください

シマフクロウを見つけたときは

  • 大声を出したり、近づいたりせず、生活をさまたげないようにしましょう。
  • 長時間の観察は避け、そっと離れてください。
  • 「逃げないから大丈夫」ではありません。 人がいる間はずっと警戒し、緊張している可能性があります。

観察や撮影はシマフクロウにストレスを与える可能性があります。

光をあてないでください

撮影時の注意点

  • フラッシュを使った撮影は禁止です。
  • サーチライトや懐中電灯などで照らさないでください。

夜行性のシマフクロウに強い光を当てると、視力に悪影響をおよぼし、ストレスの原因になります。

巣やヒナ、幼鳥には近づかないでください

繁殖をさまたげないために

  • 巣を探したり、巣のある木の周辺に近づいたりしない。
  • ヒナや幼鳥に近づいて写真を撮らない。
  • 人間が近づくと親鳥が警戒し、営巣・産卵・抱卵・育雛を放棄する可能性があります。
  • 天敵(キタキツネ・エゾクロテン)を誘引する原因になることがあります。

シマフクロウの繁殖成功率は低く、1回の繁殖が極めて重要です。

もし偶然、巣やヒナを見つけた場合

  • すぐにその場から離れてください。

目撃地点の情報や巣の場所を拡散しないでください

SNSやブログ投稿の注意点

  • 巣や幼鳥の写真を公開しない。
  • 「この森でシマフクロウを見た!」といった生息情報を発信しない。
  • 位置情報のついた写真を投稿しない。

生息情報が拡散されると、観察者やカメラマンが押し寄せ、シマフクロウの繁殖や採餌をさまたげる恐れがあります。

餌付けしないでください

餌付けのリスク

  • 野生本来の生態が乱れ、自力で餌を取る能力が低下します。
  • 天敵(キタキツネ・エゾクロテン)を誘引し、シマフクロウが襲われる危険性があります。
  • 人慣れすると事故に遭いやすくなります。

一部の観光事業者による餌付けは、環境省が認めたものではありません。
保護増殖事業における給餌は、科学的根拠に基づき、必要最小限の範囲で行われています。

巣箱を設置しないでください

勝手な巣箱設置のリスク

  • 天敵による捕食を招く可能性があります。
  • シマフクロウの生息環境に悪影響を与える恐れがあります。

環境省の保護増殖事業では、専門家の監修のもと、計画的に巣箱の設置・管理を行っています。

シマフクロウの未来を守るために

環境省や関係者は、これらのルールを守りながら生息状況調査や環境保全に取り組んでいます。
皆さまのご理解とご協力が、シマフクロウの安心できる未来につながります。

もしルール違反を見聞きした場合

環境省までお知らせください。

  • 環境省北海道地方環境事務所
    TEL:011-299-1954
  • 環境省釧路自然環境事務所
    TEL:0154-32-7500

立入禁止区域や私有地への無断立ち入りは絶対にやめてください。

職員・監視員へのご協力をお願いします

国立公園、鳥獣保護区、国有林では、環境省や林野庁の職員、委嘱を受けた監視員が巡視を行っています。

現地で指示を受けた場合は、必ず従ってください。

シマフクロウが見られる動物園

現在、保護増殖事業の一環として、いくつかの動物園でシマフクロウが飼育されています。
繁殖が成功した場合、ヒナを見ることもできます。
シマフクロウを観察したい方は、ぜひ動物園へ足を運んでください。

まとめ

シマフクロウと共存するために、次のことを守りましょう!

  • むやみに近づかない・観察しすぎない
  • 光を当てない
  • 巣やヒナには絶対に近づかない
  • 生息地の情報を拡散しない
  • 餌付けをしない
  • 勝手に巣箱を設置しない

シマフクロウの未来を守るため、皆さまのご協力をよろしくお願いいたします。

シマフクロウとの共存ルールについて


出典:「シマフクロウとの共存ルール」(環境省ホームページ)を加工して作成

シマフクロウとの共存ルールについて

イラスト/Haruki

北海道に生息するシマフクロウは、環境省のレッドリストで絶滅危惧IA類に指定されている希少種です。かつて個体数が激減し、絶滅寸前にまで追い込まれましたが、環境省や保護団体、関係機関による数十年にわたる地道な保護活動の結果、生息数はじょじょに回復しつつあります。

現在、シマフクロウの生息域は、かつての知床半島や釧路・根室地域、日高地域を中心とした範囲から、道北や道央圏へと少しずつ広がっています。しかし、確認されている個体数はわずか100つがい程度で、依然として絶滅の危機を脱したとはいえない状況です。

「シマフクロウとの共存ルール」を見る

シマフクロウを守るために

生息域が広がるにつれ、人の生活圏でも目撃例が増えることが予想されます。しかし、それにともない、以下のような問題が発生する恐れがあります。

  • 抱卵や子育てを妨げる過度な観察・撮影行為
  • 餌付けによる自然な生態のかく乱

こうした影響を考慮し、現在のところ野生のシマフクロウを積極的に観察することは推奨されていません。

かつてアイヌ民族の人々から「コタン・コロ・カムイ(村の守り神)」として親しまれていたシマフクロウを、再び私たちの身近な存在にするためには、適切な距離を保ち、自然の中でそっと見守ることが大切です。

「シマフクロウとの共存ルール」の策定

そこで、2024年度に環境省を中心に当会も関わり「シマフクロウとの共存ルール」が策定されました。
北海道を訪れる際や、近隣でシマフクロウの姿を見かけた際には、以下のルールを守るようご協力をお願いいたします。

シマフクロウを見られる場所

なお、シマフクロウは、北海道内の動物園および本州の一部の動物園で飼育されており、観察することが可能です。

北海道内の動物園

本州の動物園

個体数が十分に回復し、自然の中で普通に見られる日が来るまで、皆さんとともに温かく見守っていければ幸いです。
シマフクロウの未来を守るため、皆さまのご理解とご協力をよろしくお願いいたします。

地域にとって望ましい再生可能エネルギー・チェックリスト―太陽光・陸上風力

2025年3月11日

地域にとって望ましい再生可能エネルギー・チェックリスト 表紙

2020年から環境エネルギー政策研究所(ISEP)が中心となり、地域主体の再生可能エネルギー事業や自然保護に関する専門家・有識者が参加し、地域や自然環境になるべく影響を与えない再生エネルギーの導入について議論する「地域にとって望ましい再エネ研究会」を開催しています。当会もメンバーとして加わっています。

このたび、研究会が『地域にとって望ましい再生可能エネルギー・チェックリスト―太陽光・陸上風力 ver. 1.0』を策定し、広く公開することになりました。

このチェックリストは、再エネ事業者のみならず、自治体、地域住民、金融機関、電力需要家、専門家、自然・環境保護団体、中間支援団体など、さまざまなステークホルダー(利害関係者)が、より望ましい再生可能エネルギー事業を議論していくためのコミュニケーションツールです。ぜひ、皆さまにご活用いただきたく、当ホームページでも公開いたします。

まだ不十分な点があるかとは思いますが、それらについては今後のバージョンアップの中で適宜追加・修正していければと思います。

渡邊野鳥保護区シマフクロウ根室第3(わたなべやちょうほごくシマフクロウねむろだいさん)

シマフクロウ保護のための野鳥保護区
北海道根室地域 1.3ヘクタール

写真

シマフクロウを対象とする野鳥保護区。1河川に3つがいが利用する生息地の一部。流域の生息地の大部分は民有地で法的保全がなされておらず、生息森林の消失や分断が危惧されるため、周辺の河畔林を購入して野鳥保護区を設定しました。

注)土地の所在等は希少種保護の観点から非公表とさせていただきます。

産業用地民間開発募集エリアから曽根干潟後背地を除外することを求める要望書

福岡県北九州市 曽根干潟

福岡県北九州市は現在、環境省が選定する「日本の重要湿地500」に選ばれている「曽根干潟」の後背地を「産業用地民間開発募集エリア」に指定し、企業誘致を進めています。しかし、曽根干潟とその後背地には多くの鳥類が生息しており、これまで300種近い鳥類が確認されています。さらに絶滅危惧種等の重要種は100種に近く、まさに、北九州市の生物多様性を象徴する場所となっています。

そのため当会は「日本野鳥の会北九州支部」および「日本カブトガニを守る会福岡支部」と連名し、北九州市長宛に「産業用地民間開発募集エリアから曽根干潟後背地を除外することを求める要望書」を提出いたしました。


令和7年2月5日、北九州市長から「周辺住民や環境、農林水産業への影響を勘案し、地域社会との調和を図れるよう協議する、可能な限り自然環境への影響を低減できるよう配慮し、環境関係法令を遵守するよう協議する」という回答をいただきました。

野鳥の生息地としても重要な湿地環境は、長期にわたり水分を保持することができる後背湿地からの水分供給により成り立っているという側面があります。しかし、都市化や開発により後背湿地は次々と減少しています。ラムサール条約登録湿地になるだけの性質を持つ曽根干潟を保護するためには、この後背湿地の存在が重要なことから、当会は今回の要望書を提出するに至りました。
北九州市長からの回答については、 具体性に乏しく、開発に含みを持たせた内容になっています。「可能な限り自然環境に影響を与えないよう配慮……」という言葉に偽りがないことを期待しつつ、今後も北九州市の動向を注視していきたいと思います。

令和7年1月20日

北九州市長 武内 和久 様

日本野鳥の会北九州支部 支部長 川﨑 実

公益財団法人 日本野鳥の会 理事長 遠藤 孝一
東京都品川区西五反田3丁目9番23号丸和ビル

日本カブトガニを守る会福岡支部 支部長 髙橋 俊吾

<賛同団体>
日本野鳥の会筑豊支部 支部長 梶原剛二
日本野鳥の会福岡支部 支部長 小野 仁
日本野鳥の会筑後支部 支部長 松富士将和
ラムサールネットワーク日本 代表 原野好正
北九州インタープリテーション研究会 代表 原賀いずみ
ジオ&バイオ研究会 会長 杉野広利
ウエットランドフォーラム 代表 松本 悟

産業用地民間開発募集エリアから
曽根干潟後背地を除外することを求める要望書

時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
武内市長におかれましては、ご就任以来の精力的なご活動に敬意を表したいと思います。

さて、小倉南区の曽根干潟は、1999年に北九州市が「曽根干潟保全利用計画」を策定し、その後2010年から現在まで、市の「生物多様性戦略」において重要な湿地であることが掲げられています。また、2001年に環境省の「日本の重要湿地500」の一つに選定され、現在では「生物多様性の観点から重要度の高い湿地(略称『重要湿地』)」としても選定されています。曽根干潟が自他ともに認める重要な自然環境であることを、まずはじめに申し上げておきます。

市長もご承知のように、曽根干潟とその後背地では多くの鳥類が生息しており、これまで300種近い鳥類が確認されています。さらに絶滅危惧種等の重要種は100種に近く、まさに、北九州市の生物多様性を象徴する場所となっています。ギラヴァンツ北九州の「ギラン」こと、絶滅危惧種のズグロカモメも後背地を回遊し、採餌しています。

曽根干潟に飛来する多くの鳥類にとって、後背地は満潮時の休息地や採餌場所としての役割を果たし、その後背地では多くのカモ類や、天然記念物のマガン、ヒシクイの大型ガン類も越冬地として干潟と後背地を利用しています。また、種の保存法指定種であるチュウヒの採餌場所であり、マナヅル、ナベヅル、そして、ハクチョウ類などの重要種も飛来しています。さらに、世界的希少種のクロツラヘラサギも休息地として利用しています。

このような鳥類にとって、曽根干潟後背地の田んぼや畑は満潮時の休息地・採餌場所の役割を果たしているため、産業用地民間開発募集エリアから除外することが必要です。

曽根海岸においては、517ヘクタールの干潟部分が注目され重要視されていますが、それと同じように後背地の曽根新田は、人や車が往来するエリアと干潟との緩衝エリアとして重要です。
また、曽根干潟には広範囲にわたって湧水が見られ、生態系が支えられているものの、大きな流入河川がない曽根干潟において、用排水路を通じた曽根新田経由の流水が現在の干潟を保つ上で大きな役割を果たし、飛来する鳥類と、300種以上といわれる底生生物を豊富にしているといわれています。「生きた化石」と呼ばれるカブトガニが曽根干潟の河口部で産卵しているのも、後背地がある程度健全に保たれてきたからと言えるでしょう。後背地が開発され、決して大きくない4つの河川による流水だけでは河口付近でしか生態系を維持できません。(一部引用:九州国際大学経営経済論集22巻1号より)

現状においては、曽根干潟を分断する漁業用仮設道と、新設された都市計画道路6号線によって、曽根干潟と後背地の鳥類や底生生物への影響が起きていると推測でき、その上に、この度の産業用地開発は計り知れない影響を与え、北九州市の生物多様性戦略に汚点を残す結果となるでしょう。
まさに、北九州市の生物多様性戦略における、「第1の危機(開発など人間による危機)」を北九州市自らが行おうとしていることは看過できません。

産業用地民間開発募集エリアから曽根干潟の後背地を除外することは、生物多様性戦略に叶うことです。武内市長の賢明なご判断を求めます。

なお、本要望書に対する武内市長のご回答を2025年1月末日までに頂ければ幸いです。

以上

<参考資料>
「曽根干潟と後背地の鳥類記録リスト」
「曽根干潟と後背地の鳥類重要種」

※個人情報に該当する箇所は非表示となっております。

本件に関する問い合わせ先:
(公財)日本野鳥の会 自然保護室 浦(うら)
TEL: 03-5436-2633
E-mail: [email protected]

ダイシャクシギ
ダイシャクシギ
ツクシガモ
ツクシガモ
クロツラヘラサギ
クロツラヘラサギ
ズグロカモメ
ズグロカモメ

写真/日本野鳥の会北九州支部 髙橋俊吾


九州の重要野鳥生息地(IBA, Important Bird and Biodiversity Areas)
JP135 曽根干潟(そねひがた)

カラスQ&A

都市地域では、カラスによる生活被害 (ゴミを散らかす・うるさい・襲われる)が起きています。
東京の都心部では、 特にハシブトガラスが増加し、人との共存生活においてさまざまな問題が生じています。
ここでは、よくある質問をもとにQ&A方式でカラスに関するあらゆることを解説していきます。

カラスとの付き合い方Q&A

Q01:ケガをしているカラスやヒナを拾った。どうしたらいいの?

野生動物には人ができるだけ手を出さないのが原則です。もし手を出すとしたら、ケガをしている場合には、各都道府県の鳥獣保護関係の部署に連絡をし、指示に従って下さい。

各都道府県の野生鳥獣担当機関の連絡先リスト
※ただし、自治体によってはカラスの保護を実施していない自治体もあります。

ヒナを拾った場合には、ネコなどの捕食を防ぐために高いところに置きその場を離れて下さい。巣立ち直後のヒナはうまく飛べず地面にいることがありますが、ケガをしているわけではなく、人が離れていると親鳥が餌を運んできます。

野鳥の子育て応援キャンペーン

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Q02:近所でカラスに餌をやる人がいて困ります。どうしたらいいの?

カラスへの給餌は避けるべきです。お住いの地域の自治体や土地管理者(住民相談窓口や公園課など)に相談し、餌をやる人に、餌やりの問題点について理解していただけるよう働きかけてもらって下さい。

人とカラスの間には一定の距離を保つことが大切です。カラスは給餌をすると、人が食べ物をくれるものと思い、人を恐れなくなり、追い払いをしても逃げなくなります。また、人が餌を与えることによってカラスがその場所に集まり、他の生きものを捕食するなど影響をおよぼします。

自治体担当者のためのカラス対策マニュアル(環境省ホームページ)

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Q03:カラスが小鳥を襲っている。どうしたらいいの?

カラスが、子育てをするスズメ、ツバメ、ヒヨドリなどの巣を襲い、卵やヒナを食べたり、小鳥のヒナを持ち去り、自分のヒナに与えることがあります。

カラスも生態系を構成する一員で、生活するために、「食う、食われる」といった食物連鎖に組み込まれています。大きな動物が小さな動物を捕まえて食べることは、自然界の「おきて」ですので、かわいそうだと感じても、ぐっとこらえて手を出さないのが原則です。

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Q04:カラスが集団で集まっていてこわい

カラスは、群れて餌を食べたり、非繁殖期に群れてねぐらを取る習性があります。しかし、人を襲うために集まることはありません。

ねぐら入りの際には、数百羽もの群れになることがあり、空に舞う姿を恐ろしく感じることがあるかもしれません。カラスは群れることで捕食者を発見したり、警戒や防衛をしやすくなります。また、1羽あたりが捕食されるリスクも減ります。

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Q05:東京のカラスは増えているの?

東京都の都心部(23区)のカラスは以前に比べて減っています。
日本野鳥の会が都の委託を受けて実施した調査によると、1970年代は、低地に少なく台地や丘陵地に多かったハシブトガラスの繁殖地は、1990年代になると分布が広がり、東京都全域で見られるようになりました。2001年12月~2002年3月に実施したねぐら調査では約3万7千羽と推定されています。

しかし、その後の都によるカラス対策により、都心のカラスの生息数は、2001年には36,416羽になり、約20年後の2021年には13,058羽と約65%、2023年には8,328羽と約78%減少したことが報告されています。

出典:「生息数等の推移(取組状況)」(東京都環境局ウェブサイト)2024年10月7日閲覧

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Q06:カラスの捕獲や巣の撤去はどうする?

巣の撤去は営巣場所の土地管理者が行いますので、まずは土地管理者にご相談下さい。

ご自身の土地にある巣の場合、産卵前の巣は撤去できますが、産卵後の卵の採取やヒナの捕獲には許可をうけるための手続きが必要になります。カラスを含む野生鳥獣は「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(=「鳥獣保護管理法」)により、原則として捕獲(卵の採取を含む)が禁止されていますので、捕獲等を行う際には当該地域の自治体にご相談下さい。

あなたの住む町のカラスの状況や、ごみ被害の対策はどうなっているでしょうか。改めてカラスの生活と私たちのくらしとの関わりに目を向けて、カラスとの付き合い方を考えてみてはいかがでしょうか。

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カラスとその仲間について

カラスはスズメ目カラス科に分類されている野鳥です。世界では約120種類のカラス科の鳥が知られています。

カラスとその仲間たちは世界中に広く分布しています。いわゆる「カラス」と総称されるのはカラス属(Corvus属)で40種。この他にカケス属、オナガ属、カササギ属、ホシガラス属などがあり、ヤマムスメ、サンジャク、カササギ、オナガ、ホシガラスなどの鳥が70種余りいます。

カラスってどんな鳥?

カラスは、餌として利用できるものであれば何でも食べる雑食性で、果実(カキ、ビワなど)などの植物質や昆虫、小動物、他の鳥の卵やヒナなどを捕食し、動物の死骸、生ごみ、腐肉なども食べるスカベンジャーでもあります。春には動物質が多く、秋には果実などの植物質を食べる割合が増えます。また、カケスやホシガラスなどは餌が少ない時期の食べ物を補うため、貯食行動も行います。

繁殖期は3月~7月です。繁殖期になると、親鳥は縄張りを確保し、巣作りに取りかかります。巣は、森林の高木、街路樹、電柱などに作り、3月中には巣作りを終え、4月上旬頃に産卵し、巣立ちまでには約1ヶ月かかります。

巣立ち時期は5月下旬から6月中旬頃です。巣立ちは十分に飛べないままに行われ、巣から飛び出たヒナは、路上や街路樹の間など人の生活する空間でしばらく過ごします。この時期に親鳥は巣立ったヒナを守り、近づく人に対して威嚇するため、人とのトラブルが集中して発生します。

カラスとその仲間たち

ここでは、日本で見られる種類について紹介します。

日本で見られるカラスの仲間は、ハシブトガラス、ハシボソガラス、カケスなど11種で、このうちカラス属は6種です。がっしりとしたくちばしを持ち、採食に足を使い、食物を貯食する習性があり、学習能力が高く、環境にうまく適応しているとされています。

ハシブトガラス

ハシブトガラス(写真提供:石田光史)

全長:56.5cm
艶やかな黒い体と、大きく湾曲した太いくちばしが特徴。額が出っぱっている。ハシボソガラスよりやや大きい。幼鳥は羽に光沢がなく、口の中が赤い。
インドからサハリンまでのユーラシア大陸南東部、フィリピン、ボルネオなどに留鳥として分布し、国内では、小笠原諸島を除く日本全土に生息する。森林から市街地、農耕地、海岸など多様な環境で見られる。雑食性で、一腹卵数は3~5個。抱卵期間は約20日で、巣立ちまでは30~35日。繁殖期の親鳥は攻撃性が強い。繁殖が終わると、集団でねぐらをとる。国内にすむ4亜種のうち、南西諸島南部に生息する亜種オサハシブトガラスは体が小さく、くちばしの湾曲が小さい。「カー、カー」と澄んだ声で鳴くが、「アー、アー」、「アワッ、アワッ」といった声で鳴くこともある。

ハシボソガラス

ハシボソガラス(写真提供:石田光史)

全長:50cm
ハシブトガラスよりやや小さく、ミヤマガラスよりは大きい。くちばしはハシブトガラスより細く、湾曲はゆるやか。額のでっぱりは少ない。幼鳥は口の中が赤い。
熱帯と寒帯を除き、ユーラシア大陸のほぼ全域に留鳥として分布する。国内では、九州以北で留鳥。沖縄ではまれな冬鳥。農耕地や河川敷などの開けた環境を好み、地上を歩きながら餌をとる。一腹卵数は3~5個。抱卵期間は約20日で、巣立ちまでは30~35日。貝を落として割る行動や、クルミを車にひかせて割る行動が知られている。ハシブトガラスの澄んだ声とは異なり、尾羽を開き、頭を上下に動かし「ガアー、ガアー」と濁った声で鳴く。

ミヤマガラス

ミヤマガラス(写真提供:石田光史)

全長:47cm
ハシボソガラスよりやや小さい。くちばしは細くとがり、つけ根の灰白色が特徴。額が高く、頭頂は平ら。若鳥のくちばしのつけ根は黒い羽毛で覆われており、ハシボソガラスとの区別は難しい。
ユーラシア大陸の中緯度帯に広く分布し、北方のものは冬に南下する。以前は九州など西日本に多く渡来していたが、1980年代以降、分布が拡がり、北海道南部や東北地方などでも見られるようになった。農耕地や河原などで大きな群れを作り、地面に落ちている穀類や昆虫などを食べる。繁殖期は3~6月。樹上にお椀状の巣を作り、複数のペアが集まって繁殖する。一腹卵数は3~5個。尾羽を開き、頭部を前に出し「カララ、カララ」と鳴くほか、「ガァー」、「グワァー」などと鳴く。

コクマルガラス

コクマルガラス(写真提供:石田光史)

全長:33cm
ハトくらいの大きさで、くちばしは短く、細い。全身黒色の暗色型のほか、後頭部から頸、胸、腹にかけて白い淡色型、中間型が見られる。モンゴル、アムール、ウスリー、朝鮮半島、中国などユーラシア大陸に広く分布しており、冬には南に移動する。国内では、冬に九州を中心に渡来し、農耕地や干拓地などで、ミヤマガラスの群れに混じり、行動をともにする。「キョン、キョン」、または「キョ、キョ」などと鳴く。

ワタリガラス

ワタリガラス(写真提供:石田光史)

全長:61cm
北半球の温帯から寒帯にかけて、留鳥として広く分布する。国内では、冬鳥として北海道東部や北部に少数が渡来する。カラス科の中では最大で、くちばしは太く長い。飛ぶと、翼が長く、くさび形の尾羽が特徴。海岸から山地の森林、岩礁地などに生息する。警戒心が強く人にはあまり近づかない。非繁殖期には群れで生活し、動物の死がいや果実、穀物などのほか、流氷上でワシ類が食べ残した魚などを食べることもある。「カポ、カポ」、「グアグアグア」などと鳴く。

カケス

カケス(写真提供:石田光史)

全長:33cm
頭部は白と黒のごま塩模様で、翼の大雨覆・中雨覆には青と黒と白の縞模様がある。腰は白色。ユーラシア大陸の中緯度帯、東南アジア、北アフリカに分布し、国内では、屋久島以北の森林に留鳥として生息する。秋に渡りをし、冬には低地の緑地でも見られる。「ジャーッ」といった声で鳴き、他の鳥の声や機械的な音もまねる。国内にすむ4亜種のうち、北海道の亜種ミヤマカケスは頭部が赤褐色で目の色はブドウ色。

ルリカケス

ルリカケス(写真提供:石田光史)

全長:38cm
群青色の頭部、胸部、翼、尾羽、赤茶色の体上面と腹部が特徴で、尾羽の先端には白斑がある。奄美諸島の奄美大島、加計呂麻島、請島に留鳥として生息する。常緑広葉樹林や農耕地などで見られ、「シャー、シャー」、「ガー、ガー」といった声で鳴く。日本固有種で、国指定天然記念物。鹿児島県の県鳥。

オナガ

オナガ(写真提供:石田光史)

全長:36cm
黒い頭部と、青味がかった翼、水色の長い尾が特徴。幼鳥は頭部に白い羽毛が混じり、尾が短い。モンゴル北部、アムール、ウスリー、朝鮮半島などアジア東部とイベリア半島に留鳥として分布する。国内では、本州中部、北部の山林や人家付近で留鳥として生息する。群れで生活し、繁殖期も数つがいが比較的近くに集まり営巣する。「ゲェーイ、キュイキュイ」と鳴き、春には「ピューイピリピリピリ…」といった声も出す。

カササギ

カササギ(写真提供:石田光史)

全長:45cm
頭部から胸部、背中は黒色。肩羽や腹部は白色で、長いくさび形の尾羽が特徴。ユーラシア大陸の中緯度帯、北アフリカ、北アメリカ西部に留鳥として分布する。国内では、17世紀に朝鮮半島から移入されたものが佐賀平野を中心に生息し、近年、北海道や北陸の一部でも記録されている。球形の大きな巣を樹上に作り、電柱に営巣することも多い。「カシャ、カシャ」といった声で鳴く。カササギ生息地は、国指定天然記念物。佐賀県の県鳥。

ホシガラス

ホシガラス(写真提供:石田光史)

全長:34.5cm
体は黒褐色で、各羽の先端に白い斑がある。くちばしは黒くて細長い。スカンジナビアからカムチャッカまでのユーラシア大陸の冷帯及びヒマラヤ周辺に生息する。国内では、四国以北の亜高山帯から高山帯にかけて、ハイマツ、シラビソなどの針葉樹林に生息し、冬はやや低地に移動する。針葉樹の種子を貯食する習性がある。「ガーッ、ガーッ」、「ケケッ」などと鳴く。

これらのほかに、本来はヨーロッパから中央アジアで繁殖するニシコクマルガラスが迷鳥として、北海道(天売島、浜中町)、熊本県で記録されている。また、外来鳥類として、ヤマムスメが兵庫県で繁殖が確認されているほか、近年、逃げ出したサンジャクが愛媛県、香川県、高知県で繁殖し、生態系への影響が懸念されている。

カラス―都市におけるカラス問題―

カラス―都市におけるカラス問題―

カラスは昔から人々によく知られている身近な鳥です。一方で、人々とのあつれきもあり、農村部では農作物への被害、都市部ではごみを散らかす、繁殖期に人を威嚇や攻撃するなどの被害が発生しています。ねぐらの近くでは、たくさんのカラスが集まるために鳴き声や糞による被害もあります。人とカラスの生活空間が重なることで起こる摩擦と考えられます。当会ではカラス問題について、さまざまな取り組みを行ってきました。

ここでは、カラス問題とは何か、カラスとの共存に向けて私たちが留意すべきこと、そして、カラスとその仲間について紹介します。

カラス問題と共存
  • カラス問題とは何か
  • カラスとの共存に向けて
カラスとの付き合い方Q&A
カラスとその仲間について
  • カラスってどんな鳥?
  • カラスとその仲間たち

カラスに関する参考図書・文献

当会のこれまでのカラス問題への取り組み

当会では都市部でのカラスの被害(ごみを散らかす・うるさい・襲われるなど)に対して、支部と協力し、カラスの生態やごみ散乱などの被害との関係を調べ、生態系の中でのカラスの役割を把握につとめています。シンポジウムの開催や『自治体担当者のためのカラス対策マニュアル』の作成など、人と共存を図るためには何が必要なのかを考えつつ、この問題に取り組んできました。

1997年
井の頭恩賜公園の調査(東京都建設局からの委託)
1999年
シンポジウム「とうきょうのカラスをどうすべきか I」(日本野鳥の会東京支部主催)
2000年
「都会のカラス~その被害と私たちにできること~」を策定(環境省の委託)
都市におけるカラス被害対策モデル事業(環境省の委託)を行い、その結果を「カラスフォーラム2001」で発表
2001年
「自治体担当者のためのカラス対策マニュアル」を策定(環境省の委託)
都会のカラス~その被害と私たちにできること~(表紙)
都会のカラス
~その被害と私たちにできること~

(環境省ホームページ)
※無料ダウンロード可
自治体担当者のためのカラス対策マニュアル(表紙)
自治体担当者のためのカラス対策
マニュアル

(環境省ホームページ)
※無料ダウンロード可


東京都のカラス対策への参加・協力

当会は、2001年9月に東京都が臨時に編成した「カラス対策プロジェクトチーム」が施策のための報告書をまとめた際に、プロジェクトチームメンバーに対して専門的な立場から講義を行いました。
また報告書に対して、提言をまとめて申し入れました。

カラスフォーラム

東京都「カラス対策プロジェクトチーム」に対する意見書

(財)日本野鳥の会(会長 小杉隆;会員数5万5千人)は、2001年10月24日に東京都知事本部政策課が意見を募集している「カラス対策プロジェクトチーム報告書」に対して、都市におけるカラス問題はごみ問題解決の起爆剤という観点に立ち、東京のカラスを減らすための対策として以下のような意見書を提出しました。


日野鳥発第91号
2001年10月24日

東京都知事 石原慎太郎様

財団法人 日本野鳥の会
会 長 小杉 隆

東京都「カラス対策プロジェクトチーム報告書」に対する意見書

 拝啓 時下益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。知事におかれては東京都の環境行政に日夜ご尽力のこと、誠に感謝に堪えません。

 さて、知事本部政策課が9月28日に公表された「カラス対策プロジェクトチーム報告書」への意見を募集について、下記のとおり意見を申し述べますのでご査収ください。

敬具

―東京においてカラスと人との軋轢を減らすための都知事への提言―

  1. 都市のカラス対策に関する(財)日本野鳥の会の基本的な視点

     はじめに、昨年来、都知事がカラス被害問題を重視され、全庁を挙げてこの問題に取り組まれていることに対し敬意を表します。首都圏市街地においてカラス(特にハシブトガラス)は自然環境下には見られないほど高い密度で生息するようになってきており、これによって人とカラスの間に多くの軋轢が生じています。「野鳥と人との共存」を活動の目的として掲げる小会もこの現状を憂慮しており、現在よりも低いカラスの生息密度が望ましいと考えております。

     「カラス対策プロジェクトチーム報告書」でも指摘されているとおり、私たちも、東京都においてカラスが増加したのは、人の出す大量の生ごみが路上等に放置され、カラスがこれを食物として十分な栄養を得て多くのひなを育てて数を増やした結果ではないかと考えています。そして、その増加したカラスが人との間で軋轢を起こしているのです。つまりカラスが増えたのは人の振る舞いの結果です。都市におけるカラス問題とは、都市問題の結果であって原因ではありません。
     従ってその対策としては、カラスの増えた一番の原因を無くす、すなわちカラスの食べる生ごみを減らすのが基本です。具体的にはリサイクルなどの促進により生ごみの量を減らす、あるいはごみ収集方法の改善によって生ごみとカラスを遮断することによって、カラスの食物量をコントロールするのが最も早く効果的な対策と考えられます。

     カラスの被害が大きくなり都民からの苦情が急増し、マスコミにも頻繁に取り上げられている目下の状況は、カラス対策としてのゴミ対策に取り組む上ではかえって好機といえます。それは、上述の生ごみ対策を実行するにおいて最も要となる個人の行動、つまり生ごみ減量やごみ出しマナーの向上といった都民ひとりひとりの行動の向上を訴えるための格好のPR材料とすることができるからです。この機会を利用して都知事がリーダーシップを取られ、広く都民に学習と行動を促し、また市区町村や企業、研究者などと連携してカラス対策のモデルとなるような施策を実施され、同時にごみ対策を実行されれば、ごみとカラスにあふれていた街の様相は一変し、千客万来の街並みが実現するものと確信します。

  2. 捕獲策を優先させないほうがよい理由

     カラス対策について同報告書で緊急対策として「トラップによる捕獲」によって半年程度でカラスを数千羽減少させるとされている部分は、その効果において大いに疑問があります。現在、東京都にいるハシブトガラスの個体数はおよそ3万5~6千羽、また都心から半径約50km圏内ではおよそ8万羽と考えられています。
     一般に鳥類は、経験が浅いその年生まれの個体は冬を乗り越えることができなくて死亡する場合が非常に多いことが知られています。捕獲檻などのトラップにかかるのもこうした若鳥が多いことが上野公園や自然教育園などの例からわかっています。東京での問題点の一つに冬でも食物が十分にあるため、生き延びることができる若鳥の数が多いことが考えられます。また、カラスの個体数が増加するのは、繁殖期に生まれるひなの巣立ち率が親鳥の数を上回る時におこります。食物が十分あって親鳥の栄養状態がよければ、繁殖期に生まれるひなの数も多くなります。こうした理由から、カラスなどの個体数を見るときには、冬の個体数と繁殖期を過ぎての個体数の違いを見る必要があり、一年のサイクルを念頭におく必要があります。
     さらに、捕獲檻の管理は人手がかかり、周辺の住民には臭い、騒音、教育上の配慮などを考慮して設置場所を考慮しなければなりません。こうして見ると、莫大な費用と労力をかけて、毎年、駆除しつづけても、食料を減らさなければ、実際に個体数を削減することには結びつきません。実際、日本でも滋賀県のカワウ駆除、川崎市や都知事が言及されている千葉県のカラス駆除などの例をみても、毎年続けるだけで、個体数を減らすのに成功した例は海外を含めてほとんどありません。
     また、カラスの行動範囲として、通常半径10km程度が知られていますから、カラスの食物対策を十分に行わないままに捕獲を行っても、周辺都市からの流入を招くだけとなってしまうでしょう。これは、ドバトを駆除で減らすことには失敗したスイスのバーゼル市が、餌やりを断って数の削減に成功したの事例でも明らかです。このように捕獲により急激に数を減らそうとしても、結局は税金の無駄遣いに終わる可能性が高いわけです。

     行政が行う捕獲策が大きくクローズアップされることにより、多くの都民の意識がそちらに奪われ、ごみ対策に自らの責任を感じなくなることも考えられます。昨年度、一昨年度の労働経済局による緊急捕獲モデル事業の結果、電話1本で安易な駆除依頼を行う人が増えているということを担当の部署の方からはお聞きしております。捕獲を都内各所で大々的に行えば、カラスが多いのは自らの生活のつけである、ということを都民自身が学習する機会が奪われ、反面「カラスは行政に殺してもらえばよいのだ」という短絡的な依存心を育ててしまうでしょう。これは、究極のカラス対策であるごみ対策を行うにあたって、マイナスにこそなれ、推進力になるものではありません。また、東京の将来を担う子どもたちに命を軽視するようなこの対策をどのように説明し、教育上の配慮をとっていくのかが、まだ示されていないことも危惧を抱く事情になります。

  3. 究極のカラス対策:ごみ対策への提案

     カラスの研究者の多くが指摘する究極のカラス対策は、やはりカラスの食物、すなわち生ごみを戸外に出さない、残さないことです。出す場合は、簡単に取られないように、人が工夫することです。本会の調査では、幸いなことに東京都下の区市町村においてすでに、カラス対策にも有効なごみ回収方法の模索が始まっています。
     品川区では駅前繁華街では早朝収集、ポリバケツの貸与を行ない、また区内の業者と共同で折畳式ごみ集積所ケースを開発して使用しました。またモデル事業として、ごみの収集車が来る時間を表示して、それに合わせてごみを出してもらう時間別収集も試行しています。さらに、2001年9月にはモデル事業として、一部の住宅街で3か月の個別収集実験を行っています。初期段階で、すでに2割ていどのごみ減量効果がみられたといいます。
     世田谷区では、ごみ集積所の管理者にネットを無償で貸与する対策を1997年(平成9年)より始め、5年間で区内の7割の集積所にネットを普及することを計画しました。また2000年冬には、環境省のモデル事業に協力してチェーン付きネットを試用しました。使用した住民にアンケートをとった結果、ほとんどの住民が散乱を防止できたと満足していました。
     三鷹市では、従来戸別にごみ収集を行なっていましたが、駅前繁華街ではごみの量が多く、散乱もひどかったので、夜間・早朝収集を試行しました。メリットとしては、ごみ収集の効率が上がる、ごみがなくなり、散乱もしないので街がきれいになることがあげられる一方、デメリットとして、夜中の清掃車の騒音、人件費の増加、マンションのごみ出し体制の変更をする必要性などがありました。市のごみ対策課でデメリットを一つ一つ解決していき、本格実施をしてアンケートをとった所、ごみの散乱がほとんどなくなり、住民の満足度は高いという結果が出ました。
     日野市では、ごみのリサイクル率を上げて、ごみ減量を行なうために、それまでのダストボックスを廃止して有料化に踏み切り、戸別収集を始めました。結果として、ポリ袋にして出しても中のごみの量が少ないため、カラスにあらされることも少なくなりました。さらにごみ散乱防止のために、環境省のモデル事業でチェーン付きネット、分別用折畳みボックスなどを業者と開発して市民に試用してもらったところ、ごみの散乱防止に効果ありとして住民に好評でした。
     こうした取り組みは、現在のところ個々に行われています。また体系的な検証や専門家の協力は部分的なものにとどまっています。しかし、東京都が広域自治体の立場で、区市町村の情報を共有し、都内の企業やカラスの研究者、ごみ減量の専門家、マスメディアといった異なる分野の人々の間で協働の場を用意し、有効な施策を開発し促進してゆけば、短期間で飛躍的な前進が可能ではないでしょうか。
     都県境を越えて移動可能なカラスに対し広域的な対策をとる上で、周辺自治体との協力は中長期的には不可欠となってきますが、生ごみ減量とカラス被害は首都圏の他都市にも共通する悩みでもあります。そこで東京都がリーダーシップを発揮してカラスとごみという大きな都市問題を同時に解決するモデルをいち早く打ち立てれば、7都県市首脳会議といった場を通じて近隣自治体との間に広範な協力体制を敷くことも可能かと考えます。

  4. 具体的な対策案

     以上を踏まえ、以下いくつかの具体策を提案します。私どもはこうした提案を実行するにあたって都の施策に協力を惜しまぬ所存です。

    ●緊急対策(年度内に達成可能なこと):
    • 「カラス・生ごみブレイン会議」の召集(カラス研究者とごみ・リサイクル対策の専門家の力を結集する)
    • 区市町村のごみ対策フォーラムを開催(基礎自治体の連携の基盤を用意する)
    • 公園・緑地・駅前広場などでごみと餌やりの徹底管理(雇用の促進、都市環境の整備、生態系の知識を徹底する)
    • 繁華街などのモデル地区で新規ごみ収集方法の実験(夜間収集や効果のある回収方法の徹底的な実施)
    • 対策前調査、モニタリング調査(効果測定のため)
    ●中期対策(2~3年度内に達成可能なこと):
    • カラス被害の実態分析(ごみ散乱、人への攻撃)
    • カラスの基礎生態の研究(対象をよく知るための;ねぐら調査、生息密度調査、行動圏調査、個体群動態と増加要因の解析等)
    • ごみ収集方法の開発・実施促進(補助金制度など)
    • 継続的な効果測定(モニタリング)
    • カラスとごみ対策のための普及・教育プログラム(マスメディア、出版、学校における総合学習など)
    • 地域におけるごみ減量モニターや調査ボランティア制度
    • ごみ出し方法検討委員会(市民参加でアイディアを募る)
    • 七都県市による「ごみ・カラスサミット」の開催(広域連携)
    ●長期対策(数年以上をかけて実現していくこと):
    • 生ごみリサイクル促進(補助金制度、プラント建設、農家との提携など)
    • 都立野生生物保護管理センター(仮称)を設置(普及・教育・調査の拠点施設)

以上