伊万里市・長浜干拓地のナベヅル・マナヅル飛来状況 2011-2012 年越冬期

10月7日~8日 マナヅル成鳥1羽が飛来しました。
10月7日夕方、長浜干拓地内でマナヅルの成鳥1羽が飛来しているのが今季初めて確認されました。昨年の長浜干拓地へのツルの飛来より21日早く、2003年の観察開始以来最も早い飛来になりました。このマナヅルには左足に「M91」、右足にカラーリング(上から水色・白)が装着されていました。この個体は翌10月8日朝に長浜干拓地を飛去しました。同日夕方に鹿児島県出水市で確認されたため、移動途中で長浜干拓地に立ち寄ったものと思われます。


(写真:伊万里市提供)

10月7日補足
この足環付きマナヅルがどこで放されたのかについて、(財)山階鳥類研究所に問い合わせたところ、1995年1月29日に鹿児島県出水市で放鳥されたもの(その年生まれの幼鳥)とわかりました。
なおこの個体は、飛翔中、右足が少し下がっていて、異常があります。同研究所によりますと、すでに2009年3月にはこうした足の異常が見られたことが、韓国からの報告でわかっているそうです。
「恐らく右足は指関節の少し上で一旦骨折し、自然治癒していると思われます。左足指にも異常が見られ、骨折等を伴っているでしょう。両足にこのような異常が見られているのは、足環装着に起因するのではなく、何かに挟まったとか、飛翔中に電線への衝突したとかいう、何らかのアクシデントがあったと思われます。」とのことでした。

10月26日 マナヅル成鳥2羽が飛来しました。
10月26日、長浜干拓地にマナヅル成鳥2羽が新たに飛来しました。長浜干拓地に飛来してすぐに非常に慣れた様子で田んぼをついばむ様子などから、毎年飛来しているペアではないかと考えられています。昨年の飛来が10月28日でしたので、2日早い飛来となります。


(写真:伊万里市提供)

10月31日 ナベヅル1羽が一時飛来しました。
10月31日8時30分頃、ナベヅル成鳥1羽が飛来しました。しかし、10時頃に飛去しました。
11月1日 ナベヅル幼鳥3羽が飛来しました。
11月1日16時55分頃、ナベヅルの幼鳥3羽が飛来しました。10月26日に飛来したマナヅル2羽と一緒にネグラをとっており、昼間も近くで行動する姿が観察されています。


10月26日に飛来したマナヅル2羽と飛来したナベヅル3羽
(写真:伊万里市提供)

11月2日 マナヅル3羽(成鳥2羽、幼鳥1羽)が確認されました。
11月1日夕方にツル類と思われる3羽が長浜干拓地に飛来しました。暗かったため種類の確認ができませんでしたが、翌2日早朝にマナヅル3羽と確認されました。しかし、10月2日夜の確認を最後に、以降は観察はされていません。


(写真:伊万里市提供)

現在、長浜干拓地には、10月26日に飛来したマナヅル2羽と、11月1日に飛来したナベヅル3羽の計5羽のツル類が滞在しています。
【ツル滞在数5羽】

11月6日 ナベヅル7羽(成鳥5羽、幼鳥2羽)が飛来、飛去しました。
11月6日朝、ナベヅル7羽(成鳥5羽、幼鳥2羽)の群が飛来しました。しかし、11時頃に、10月26日から滞在しているマナヅル2羽に追われて、飛去しました。


左の2羽が今年生まれの幼鳥。幼鳥は額に赤い部分がなく、顔から首にかけてやや茶色がかっています。
(写真:伊万里市提供)

11月11日 ナベヅル6羽(成鳥5羽、幼鳥1羽)が飛来しました。
11月11日15時頃、ナベヅル6羽(成鳥5羽、幼鳥1羽)が飛来しました。干拓地内におりてすぐは、10月26日から滞在しているマナヅル2羽に追いかけられましたが、その後は分かれて、翌12日まで干拓地内に滞在しました。


(写真:伊万里鶴の会 一ノ瀬秀春さん提供)

11月12日 ナベヅル9羽が飛去しました。
11月12日7時40分に、11月1日に飛来したナベヅル3羽(幼鳥3羽)と、11月11日に飛来したナベヅル6羽(成鳥5羽、幼鳥1羽)が一緒に飛去しました。
11月12日 ナベヅル28羽が長浜干拓地上空を通過しました。
11月12日12時頃、長浜干拓地上空をナベヅル28羽が通過しました。これらの個体は鹿児島県出水市へ越冬のために向かう個体が上空を通過したものと思われます。


(写真:伊万里鶴の会 一ノ瀬秀春さん提供)

11月14日 マナヅル1羽(幼鳥)が飛来しました。
11月14日8時40分に、新たにマナヅルの幼鳥1羽が飛来しました。10月26日から滞在しているマナヅル2羽に近づくと、追われてしまうため、2羽とは距離を置きながら干拓地内に滞在しています。この様子は、当日午後に行ったデコイの設置作業の後にも、よく観察することができました。
この幼鳥は初めての越冬ですので、先に滞在しているマナヅル2羽が受け入れて、長浜干拓地で越冬してくれるように、地元の方々は見守っています。


(写真:伊万里鶴の会 一ノ瀬秀春さん提供)

12月17日 マナヅル4羽(成鳥2羽、幼鳥2羽)が飛来しました。
12月17日16時25分にマナヅル4羽(成鳥2羽、幼鳥2羽)が飛来しましたが、10月26日から滞在しているマナヅル成鳥2羽に追われ、翌日の18日8時47分に飛去しました。


(写真:伊万里鶴の会 一ノ瀬秀春さん提供)

長浜干拓地には現在、10月26日から滞在しているマナヅル成鳥2羽と11月14日から滞在している幼鳥1羽の合計3羽が滞在しています。
【ツル滞在数3羽】

1月18日 マナヅル6羽(成鳥4羽、幼鳥2羽)が飛来しました。
1月18日15時頃、マナヅル6羽(成鳥4羽、幼鳥2羽)が飛来しました。干拓地内では成鳥2羽、幼鳥1羽にそれぞれ分かれて2グループで行動していることから、2家族と見られています。


(写真:伊万里市提供)

長浜干拓地には現在、10月26日から滞在しているマナヅル成鳥2羽と、11月14日から滞在している幼鳥1羽と、今回飛来した6羽の合計9羽が滞在しています。
【ツル滞在数9羽】

1月21日 マナヅル6羽が飛去し、新たにマナヅル6羽(成鳥4羽、幼鳥2羽)が飛来しました。
1月21日11時頃、1月18日に飛来したマナヅル6羽(成鳥4羽、幼鳥2羽)が飛去しました。その後、12時15分にマナヅル3羽(成鳥2羽、幼鳥1羽)が飛来し、さらに13時10分にマナヅル3羽(成鳥2羽、幼鳥1羽)が飛来しました。飛来当初は飛去した6羽が戻ってきたものと思われましたが、観察を続けたところ干拓地内での行動や家族同士の様子から別個体と考えられています。
1月31日 マナヅル2羽(成鳥1羽、幼鳥1羽)が飛来しました。
1月31日9時22分にマナヅル2羽(成鳥1羽、幼鳥1羽)が飛来しました。日本最大のツルの越冬地である鹿児島県出水市では1月30日にマナヅルの北帰行が始まったことが確認されており、この2羽は出水市からの北帰行の途中で長浜干拓地に立ち寄ったものと考えられています。


(写真:伊万里市提供)

長浜干拓地には現在、10月26日から滞在しているマナヅル成鳥2羽と、11月14日から滞在している幼鳥1羽と、1月21日に飛来した6羽(成鳥4羽、幼鳥2羽)と今回飛来した2羽(成鳥1羽、幼鳥1)の合計11羽(成鳥7羽、幼鳥4羽)のマナヅルが滞在しています。
【ツル滞在数11羽】

2月11日 マナヅル5羽(成鳥4羽、幼鳥1羽)が飛来しました。
2月11日14時20分頃、マナヅル成鳥2羽が飛来しました。その後、16時30分頃にマナヅル3羽(成鳥3羽、幼鳥1羽)が飛来しました。
しかし、翌12日10時30分頃に、この5羽と、1月21日に飛来した内の3羽(成鳥2羽、幼鳥1羽)、1月31日に飛来した2羽(成鳥1羽、幼鳥1羽)の計10羽が飛去しました。
長浜干拓地には現在、10月26日から滞在しているマナヅル成鳥2羽、11月14日から滞在している幼鳥1羽、1月21日に飛来した3羽(成鳥2羽、幼鳥1羽)の計6羽が滞在しています。
【ツル滞在数6羽】

3月10日 マナヅル6羽が飛去しました。
3月10日9時過ぎに、長浜干拓地に残っていたマナヅル6羽が飛び立ち、滞在していたツルはすべて北帰しました。
この6羽の内訳は、10月26日に飛来した成鳥2羽、11月14日に飛来した幼鳥1羽、1月21日に飛来した成鳥2羽、幼鳥1羽の3組です。2月12日に10羽が飛去して以降、干拓地に滞在していました。
この6羽は3月10日までに、合計6回、飛去しようとしては戻ってくることを繰り返しており、6回めの3月3日は10:00に飛び立って3月4日の朝までは不在でしたが、3月5日の14:00頃に戻ってきているところが確認されていました。6回も飛び立っては戻ることを繰り返した理由は、曇りで視界が悪かったり、北からの風が強かったりしたことが理由として考えられますが、はっきりとは分かっていません。

10月26日から滞在していた2羽のマナヅルの滞在日数は136日間で、2007年度と2010年度に記録した112日間を抜いて、過去最長の滞在日数となりました。
【ツル滞在数0羽】

2011年-2012年越冬期まとめ

  • 2011年10月から2012年3月までの期間に、長浜干拓地にはマナヅル30羽(成鳥20羽、幼鳥10羽)とナベヅル17羽(成鳥11羽、幼鳥6羽)の計47羽のツル類が飛来し、28羽のナベヅルが上空を通過しました。
  • 10月26日から3月10日までの136日間滞在したマナヅル成鳥2羽と、11月14日から3月10日までの117日間滞在したマナヅル幼鳥1羽の滞在日数は、2007年度と2010年度に記録した112日間を抜いて過去一番目と二番目の滞在日数となりました。

今年度もツルを見守ってくださった東山代土地改良区のみなさんをはじめとする農家の皆さん、伊万里市民の皆さん、ツルたちの観察記録をとってくださった伊万里鶴の会の皆さん、日本野鳥の会佐賀県支部の皆さん、そして伊万里市役所の皆さんに心から感謝申し上げます。