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- 世界初! 絶滅危惧種のカンムリウミスズメ人工巣での繁殖に成功
世界初! 絶滅危惧種のカンムリウミスズメ人工巣での繁殖に成功

①日本近海に固有のカンムリウミスズメ。前頭部に名前の由来となった「冠羽(かんう)」がある。
文=田尻浩伸・手嶋洋子 保全プロジェクト推進室
小さな海鳥カンムリウミスズメ、人工巣で5羽のヒナが誕生
カンムリウミスズメは、日本近海と韓国周辺にのみ生息する、ペンギンに似た全長24 ㎝ほどの小さな海鳥です。現在の生息数は5千~1万羽程度で、国の天然記念物、環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されています。繁殖地は、太平洋側では東京都・伊豆諸島から宮崎県・枇榔(びろう)島(国内最大の繁殖地)、日本海・東シナ海では石川県・七ッ島から鹿児島県・甑(こしき)島などの主に無人島や岩礁です。春の3か月ほどの繁殖シーズン以外は、1年のほとんどを洋上で暮らすため、生態については謎が多い鳥ですが、最新の調査によると、非繁殖期に太平洋沿岸を北上して、サハリンから東シナ海へと日本列島の近海をゆっくりと周回し、翌春に同じ繁殖地・烏帽子(えぼし)島(福岡県)に戻ってきた例が報告されています。
当会では、海洋生態系保全の象徴種として、2009年よりカンムリウミスズメを保護対象種とし、枇榔島に次ぐ規模の繁殖地である伊豆諸島で保護・調査活動を進めてきました。2010年からは保護増殖の試みとして、下田市・神子元(みこもと)島で人工巣の設置を開始。今春、6年間の試行錯誤の末、初めて繁殖に成功し、少なくとも5羽のヒナが巣立っていきました。これは世界で初めての快挙です。
繁殖環境の悪化と人工巣設置の取り組み
カンムリウミスズメは、早春に繁殖期を迎えると無人島に上陸して、急峻な崖の岩の隙間などに巣を作ります。しかし、近年はマリンレジャーで無人島に立ち入る人が増え、それとともに侵入したネズミや、放置されたゴミに誘引されたカラスに捕食されるなど、繁殖環境の悪化が進み、カンムリウミスズメの営巣数の減少が懸念されてきました。
当会では、その改善策として人工巣の設置を始めましたが、まったくの手探りからのスタートで、最初の3年間はほとんど成果が得られませんでした。始めは巣穴になるU字溝を地面に伏せ、周囲を石でカモフラージュしてみたものの利用した形跡はなく、次にはU 字溝を割って出入り口を狭くしたものを設置してみましたが、これも利用されることはありませんでした。
そこで、自然巣の出入り口の幅や巣の奥行き、産座を作る場所の状態などを詳しく調べ、使われなかった要因を検討し、改良を加えていきました。さらにセンサーカメラを使って確認したところ、カンムリウミスズメが人工巣の近くを通過していることや、カラスが人工巣や岩の隙間を頻繁に覗き込んでいること、ハシブトガラスがカンムリウミスズメを捕食していることなどが判明しました。そこで、2016年の繁殖シーズン前に、入り口にカラス除けのパイプなどを取りつけた人工巣を設置(写真④)したところ、3つの人工巣を使って3つがいが繁殖し、合計5羽が巣立ったことが確認できました(写真⑤)。
これまで、試行錯誤が続きましたが、今回の成功で人工巣を使った保護増殖の取り組みに可能性が見えてきました。今後は、繁殖に成功した人工巣のデータを集積して形状の定型化を図り、上陸が難しい繁殖地にも設置できるよう、運搬や組み立てが容易な人工巣を開発していく計画です。

②巣立ったヒナと親鳥。繁殖期以外は陸にあがることなく、ずっと洋上で暮らす。(写真:中村 豊)
③人工巣に向かう姿をセンサーカメラが捉えた。
④繁殖に成功した人工巣。U 字溝をL字に割り、入り口にカラス除けの工夫をし、石でカモフラージュしたもの。
⑤ヒナの鳴き声を確認した1か月後に、3つの人工巣内で合計5個の卵殻を確認。

人の暮らしと共にある、ツバメの子育てを見守ろう
ツバメの子育て状況調査 2013~2015年結果報告
文=荒 哲平 自然保護室

①はるか東南アジアから、繁殖のために、毎春、日本にやって来るツバメ。
都市部での巣立ちヒナの減少が明らかに
人家の軒先に巣を作り、子育てをするツバメは、日本人にはとても身近な野鳥です。しかし近年の人の暮らしの変化が、ツバメにも影響を与えていることがわかってきました。
2012年に当会が全国で行なった「わたしの町のツバメ情報調査」では、約4割の方が「ツバメが減っている」と感じていました。その原因を探るため、翌13 年から3年間、全国の皆さんにツバメの子育て状況を観察・記録していただく「ツバメの子育て状況調査」(※)を実施した結果、環境省が1970年代と90 年代に実施した調査と比較すると、今も全国各地でツバメは目撃されており、分布域自体の縮小はみられませんでした。しかし、「子育て状況調査」では、このままではツバメが減少していく可能性が高いことを示す結果が得られました。
ツバメは1年にほぼ2回子育てをします(1番子、2番子)。「子育て状況調査」では、1巣あたりの巣立ちヒナ数は、全国平均で1番子が4羽/巣、2番子が3羽/巣でした。さらに「都市部」と「郊外や農村部」に大別し、1番子の巣立ちヒナ数の平均を比較すると、都市部では約3.9 羽/ 巣、郊外や農村部では約4.3 羽/巣と、都市部のほうが巣立ち数が少ないことがわかりました(図1)。
過去の事例をもとに、将来のツバメの個体数の変化を予測すると、1・2番子ともに巣立ちヒナ数が4羽/巣の場合は、年数が経過すると個体数は増加していきます。一方、1・2番子ともに巣立ちヒナ数が3羽/巣だった場合、個体数は激減し、将来的に絶滅してしまいます。
今回の「巣立ちヒナは1番子が4羽、2番子が3羽」という全国平均数をこの計算式に当てはめると、個体数はゆるやかに減少するという予測になります。特に、都市部で1 番子の巣立ちヒナ数が4羽を下回る数値であることは、非常に危険な状態にあるといえます。

②天敵から卵やヒナを守るため、軒先、ガレージのひさしなど、人の出入りの多い場所で子育てをする。
③ツバメは、春から夏にかけてユーラシア大陸と北米の広い範囲で繁殖し、冬には東南アジアで越冬する。日本では害虫を食べる「益鳥」とされ、軒先に巣を作れば「商売繁盛」の兆しとして、「幸福の鳥」と考えられてきた。
(写真:佐藤信敏)
ツバメと人のつながりが消失しつつある
ツバメが子育てに失敗した原因では、天敵(カラス、ネコ、ヘビなど)に襲われた割合が30 %と最も高く、人間が巣を落としたり、巣を作らせなかったりしたケースが8%を占めました。さらにこれを土地区分別に見ると、郊外や農村部の1.5 %に対し、都市部は10 ・6%と約7倍もの数値となりました(図2)。「糞が汚い」などの理由で巣が落とされるケースが増えており、本来、天敵から守ってくれるはずの人間が、都市部では脅威の一つとなりつつあります。
過酷になってきた都市部での子育てに、必要な条件も調べてみました。東京23 区内では、川や池などエサとなる昆虫が生息する水辺の存在が最も重要であり、次いで巣作りに必要な土と草を採取できる緑地の存在が、重要であることがわかりました。一方、そういった環境が多い農村部でも過疎化が進み農業が衰退すると、巣をかける家屋やエサを得る田畑などが失われる恐れがあり、安泰であるとはいいきれません。
益鳥として親しまれてきたツバメと人とのつながりが、今、消えつつあります。地域の環境を改善していくには長い時間と労力が必要ですが、私たち一人ひとりが、毎年日本にやって来るツバメを温かく迎え、子育てを見守ることはできるはずです。当会は今後も市民参加による調査を継続し、日本のツバメの現状をより詳細に明らかにしていきます。
※ツバメの子育て状況調査… 2013年~ 15 年までの3年間にのべ約2千500名が参加、のべ5千巣以上の情報を収集
小冊子プレゼント! あなたも ツバメ子育て応援団 改訂版
ツバメの魅力や生態、子育てを見守るためのノウハウをまとめた小冊子をプレゼントいたします。最新の調査結果などを加えた改訂版です。
Toriino(トリーノ)2016年の発行号
第38号 2016年3月発行号

表紙:石踊達哉「源氏物語 蜻蛉」(部分)2015年
- 彩の章
- 写真:西川 孟
- 憶の章 -往-
- 写真:野町和嘉
- 憶の章 -還-
- 写真:川田喜久治
- 流の章
- 写真・文:藤原新也
- 響の章
- 写真:星野道夫
- 野鳥保護レポート
- 早急な法整備を!急増するメガソーラー施設
文:浦 達也 自然保護室
ここ最近、新聞紙上などで、大規模な太陽光発電施設(以下「メガソーラー」)の建設によるトラブルが報じられています。メガソーラーは、再生可能エネルギーの導入促進のために2012年に国が開始した「固定価格買取制度」以降、建設が急増しています。自然環境に与える影響としては①景観破壊②森林伐採③森林伐採による土砂災害の発生④土地利用の変化による動植物の生息地破壊等があります。一番の問題は、こうした影響が想定されるにもかかわらず、法的な規制がほとんどないことです。
第39号 2016年6月発行号

表紙:石踊達哉「幻花」(部分)2000年
- 彩の章
- 写真:西川 孟
- 憶の章 -往-
- 写真:奈良原一高
- 憶の章 -還-
- 写真:川田喜久治
- 流の章
- 写真・文:藤原新也
- 響の章
- 写真:星野道夫
- 野鳥保護レポート
- 人の暮らしと共にある、ツバメの子育てを見守ろう
ツバメの子育て状況調査 2013~2015年結果報告
文=荒 哲平 自然保護室
人家の軒先に巣を作り、子育てをするツバメは、日本人にはとても身近な野鳥です。しかし近年の人の暮らしの変化が、ツバメにも影響を与えていることがわかってきました。
2012年に当会が全国で行なった「わたしの町のツバメ情報調査」では、約4割の方が「ツバメが減っている」と感じていました。その原因を探るため、翌13 年から3年間、全国の皆さんにツバメの子育て状況を観察・記録していただく「ツバメの子育て状況調査」(※)を実施した結果、このままではツバメが減少していく可能性が高いことを示す結果が得られました。
第40号 2016年9月発行号

表紙:石踊達哉「堕ちれば花」2007年
- 彩の章
- 写真:西川 孟
- 憶の章 -往-
- 写真:小島一郎
- 憶の章 -還-
- 写真:川田喜久治
- 流の章
- 写真・文:藤原新也
- 響の章
- 写真:星野道夫
- 野鳥保護レポート
- 世界初! 絶滅危惧種のカンムリウミスズメ人工巣での繁殖に成功
文=田尻浩伸・手嶋洋子 保全プロジェクト推進室
カンムリウミスズメは、日本近海と韓国周辺にのみ生息する、ペンギンに似た全長24 ㎝ほどの小さな海鳥です。現在の生息数は5千~1万羽程度で、国の天然記念物、環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されています。当会では、2010年からは保護増殖の試みとして、下田市・神子元(みこもと)島で人工巣の設置を開始。今春、6年間の試行錯誤の末、初めて繁殖に成功し、少なくとも5羽のヒナが巣立っていきました。これは世界で初めての快挙です。
第41号 2016年12月発行号

表紙:石踊達哉 源氏物語「梅枝」の帖より白梅 1997年
- 彩の章
- 写真:西川 孟
- 憶の章 -往-
- 写真:川田喜久治
- 憶の章 -還-
- 写真:石元泰博
- 流の章
- 写真・文:藤原新也
- 響の章
- 写真:星野道夫
早急な法整備を!急増するメガソーラー施設
文=浦 達也 自然保護室



①メガソーラーの急増に、送電設備が追いつかず、生まれた電力が有効に活用されないという事態も起こり得る。
②高知県土佐清水市のメガソーラー反対運動ののぼり旗。自然災害によるパネルの破損などが懸念されている。(写真提供:環境エネルギー政策研究所)
表1 2012年の「固定価格買取制度」導入後、メガソーラーによる発電量は急増し、特に2013年は4月~7月の4か月で、制度導入以前の累計の2倍に近い発電量に達した。
メガソーラー建設ラッシュの背景
ここ最近、新聞紙上などで、大規模な太陽光発電施設(以下「メガソーラー」)の建設によるトラブルが報じられています。その内容は主に「近隣住民には事前に何も知らされず、ある日突然メガソーラーが建設されたことで、親しまれていた自然や景観が損なわれてしまった。森林伐採による土砂災害などへの不安、電磁波や気温の上昇からくる健康への不安が高まっている」などです。こうした状況が起こっている背景は、非常に複雑です。
メガソーラーは、再生可能エネルギーの導入促進のために2012年に国が開始した「固定価格買取制度」以降、建設が急増しています(表1)。この制度は「太陽光、風力等などの〈再生可能エネルギー〉で発電された電気を、一定期間、国が定めた固定価格で電力会社が買い取る」というものです。事業者はメガソーラーの建設が許可された時点の買取価格(1年ごとに見直し)で、20年という長期間、安定した収益を見込めるのです。この制度により、他の電源に比べて設置基準の規制が少なく、建設費用も安価なメガソーラーが、新規参入の事業者によって、次々と建設されるようになりました。
太陽光発電は天候に左右される不安定な電力です。1日のなかでも発電量の変動が大きいため、こうした不安定な電力を、安定的な火力発電等の電力と一緒に、遠方まで送電するには、一度蓄電設備に蓄えてから送電するシステムが必要です。しかし現状では、全国的にその設備は整備されておらず、各地域の大手電力会社では太陽光による電力の送電を拒否する場合もあり、作られた電力が使われないということもあり得る状態です。
またこれらのメガソーラーでは、当初国が想定していた国産の太陽光パネルではなく、より安価な外国産パネルが使われたため、国内の産業振興に結びつかなかったことや、国が目標としていた太陽光発電量のシェアを達成しつつあることから、太陽光発電の買取価格は年々引き下げられています(表2)。そのため、事業者側は値下がりした買取価格をカバーしようと事業規模を拡大するようになり、より面積の大きなメガソーラーが建設されるようになったのです。
「ゾーニング」や法整備で、適正な場所での建設を
メガソーラーが自然環境に与える影響としては①景観破壊②森林伐採③森林伐採による土砂災害の発生④土地利用の変化による動植物の生息地破壊等があります。一番の問題は、こうした影響が想定されるにもかかわらず、法的な規制がほとんどないことです。
風力発電施設ではバードストライクなどの影響から、環境アセスメントが法的に義務づけられ(「環境影響評価法」)、その費用も事業者が負担します。しかし、メガソーラーは同アセスメントの対象外であり、建設費用も数百万~数千万円と安いため、土地さえ確保できれば、簡易な手続きで建設することが可能です。
環境アセスメントの義務がないため、市民は建設計画を事前には知らされず、地域住民への説明会もありません。気がつけば森林が伐採され、3か月後にはメガソーラーができあがっていた、といった事態が起こります。自治体の情報公開や、こうした問題の顕在化もあって、現在は、建設予定地のあちこちで住民による反対運動も起きています(写真②)。地方自治体では、農地規制や景観保全関連の条例を整備し、無計画なメガソーラー建設を規制しようと対応を始めています。
太陽光発電の将来的な発電量の可能性は大きく、大きなビルや工場、一般家屋の屋上などに設置するならば、ぜひとも導入を進めてほしい電力です。メガソーラーを建設するなら、土砂採掘の跡地や自然が回復していない埋立地など、あらかじめ建設に適した土地を行政が示しておく「ゾーニング」という手法を取り入れるなど、施策が必要です。なにより、CO2削減を目的とする再生可能エネルギーを生産するために、CO2を吸収してくれる森林を伐採するのでは本末顛倒です。再生可能エネルギーと自然環境の保全の両立に向けて、早急に、法的な規制や基準を整備することが望まれます
参考資料:『NEDO再生可能エネルギー技術白書第2版』(森北出版)/『メガソーラー開発に伴うトラブル事例と制度的対応策について』(NPO法人環境エネルギー政策研究所2015年12月発行)
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ご希望の冊子・資料名をご明記の上、お名前(フリガナ)・郵便番号・ご住所・お電話番号・この冊子をお知りなった媒体名(webサイト・新聞・雑誌・番組等の名称)を以下までおしらせください。
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【FAX】03-5436-2635
日本野鳥の会 普及室 普及教育グループ
TEL:03-5436-2622
野鳥たちの声なき叫び
今も続く放射性物質の脅威
文=山本裕 自然保護室

①2014年11 月、福島県・飯舘村。除染廃棄物が行き場のないまま積まれている
②渡来直後に体内への放射性セシウムの蓄積が確認されたツバメの死体(2015 年4月南相馬市)
③放射性セシウムが検出されたサンコウチョウの巣
ツバメの体内への蓄積
当会は、東京電力福島第一原子力発電所の事故で漏出した放射性物質の野鳥への影響を調べるため、福島県内で定期的に調査を行なっています。その中で、2015年4月19 日に福島県南相馬市で拾得されたツバメの死体から、約425 Bq (ベクレル)/ kg と比較的高い放射性セシウムが検出されました。代謝量が高い小鳥類では生物学的半減期が短く、他国の越冬地で過ごす間に放射性セシウムは体内から排出されるため、このツバメは春先に渡来してから約1か月の間に、エサなどから環境中の放射性セシウムを取り込んだと考えられます。
巣材や卵への汚染
現在、人の居住地を中心に除染が進められていますが、周辺の森林の土壌の表層には、今も大量の放射性物質が蓄積しています。2014 年に福島市内の森林で、コケなどを材料とする小鳥類の巣材を分析したところ、カラ類の24 巣から平均17 万3千Bq / kg (4・9万~ 53 万Bq / kg )、オオルリの巣から14 万7千Bq / kg 、サンコウチョウの巣から7万Bq / kg と、いずれも指定廃棄物の数値8千Bq / kg を大きく超える放射性セシウムが検出されました(※)。また2015年の調査では、避難指示解除に向けて除染が進められている福島県・富岡町で採取されたヤマガラの巣材8巣から平均15 万1千Bq / kg 、未孵化卵から約275 Bq / kg の放射性セシウムが検出され、親鳥の体内から直接卵へと移行していることが明らかになりました。拡散した放射性物質は、野鳥の体内や巣材、次世代につながる卵にまでも蓄積し、人々の生活は放射能汚染と隣り合わせにあることが浮き彫りになりました。
当会は今後も、放射性物質による野鳥への影響をモニタリングし、情報を公開するとともに、野鳥たちの代弁者として、国や世論に対して原発依存のエネルギー施策からの脱却を求めていきます。

※放射線量は、線源から離れることで大幅に減少するため(距離の二乗に反比例)、通常の生活を営んでいる限り、人体に直ちに影響が出ることはありませんが、こうした巣には近づかない、触らないということが大切です。
リニア中央新幹線は、本当に必要か?
文=葉山政治 自然保護室
南アルプスの地下を貫く長大トンネル

①南アルプスに囲まれた長野県・大鹿村の直下にリニアが通る。奥は赤石岳

リニア中央新幹線のルート
黄色で示した部分が地上を走る区間。86%が地下トンネル
東京(品川)― 大阪間を走る「リニア中央新幹線」の本格的な工事(事業者:JR東海)が、年内にも着工されます。品川― 名古屋間を最短40分、品川― 大阪間を最短67分で結び、東海道新幹線「のぞみ」の半分以下の時間で走行します。車両を地上から10㎝浮上・推進させる「超電導磁気浮上方式」で超高速での走行が実現、この方式の世界初の実用化です。しかし実用化にあたっては、さまざまな問題が起こることが予想されます。そのひとつが、走行ルートとその工事に伴う環境破壊です。リニア中央新幹線は、東京―名古屋間の86%が地下トンネルです。その一部は、国内有数の原生環境を保ち、昨年「ユネスコエコパーク」にも登録された南アルプスの地下を25㎞にわたって貫きます。南アルプス一帯には、中央構造線と糸魚川―静岡構造線という大断層帯が通っているため、掘削には大変な困難が伴い、地下での湧水が起こりやすい地盤です。掘削で大量に発生する土砂の処分や、それが及ぼす動植物・生態系への影響も懸念されています。
水資源への影響
南アルプス一帯の地下水脈が分断されることで、地下水がトンネル内に湧出し、地下水や河川流量の減少・枯渇を招き、河川の生態系に影響が出ます。トンネル内で発生した湧水を放流するにも、周辺の河川にはヤマトイワナのような希少種が生息しているため、場所や水質、水温に配慮が必要です。
土砂の処分
東京―名古屋間の掘削だけでも5千680m³、東京ドーム45杯分の土砂が発生します。JR東海は発生土を公共事業などで利用するとしていますが、処分先が決定しているのは全体の2割で、かなりの土砂をどこかに仮置きせざるを得ません。仮置きの土砂が南アルプスの景観を損なうだけでなく、大雨で流出や土砂崩れを起こし、人の暮らしと環境に被害を与える懸念があります。
野鳥への影響
この工事の環境アセスメントで、リニア新幹線が通過するすべての県でオオタカの営巣が、山梨県、長野県でクマタカの営巣が、岐阜県でサシバの営巣が確認されています。その後、JR東海が地元知事の要請で行なった追加調査でも、ミゾゴイ、サンショウクイ、ブッポウソウ、イヌワシ、クマタカ、オオタカ、ノスリといった絶滅危惧種や、ミサゴ等環境の変化に敏感な猛禽類が確認されています。これらのアセスメントは工事で直接環境の改変が行なわれる場所だけの評価で、工事現場への道路や土砂の仮置き場は含まれておらず、10年にわたる広範囲な工事が、環境にどれだけの影響を与えるかは検証されていません。

②南アルプスの山中にも発生土の仮置き場が設置される。写真は、仮置き場の候補地
③山梨実験線を走行するリニア新幹線
④クマタカ/絶滅危惧ⅠB類。標高約300~1000mの発達した森林に生息
⑤ブッポウソウ/絶滅危惧ⅠB類。低~山地の林縁の里山環境に生息し、樹洞を利用して営巣
⑥ミゾゴイ/絶滅危惧Ⅱ類。繁殖地は日本のみ。低地の谷や沢沿いの広葉樹林と針広混交林に営巣
(④⑤⑥写真:石田光史)
環境アセスメントと合意形成が不十分
「次世代の高速鉄道」として1962年に始まったリニア開発は、国民が環境問題や地球温暖化に関心を持つ現代では、時代錯誤の感が否めません。このような巨大プロジェクトでは、計画段階で環境アセスメントを行ない、複数のプランを比較検討し、より環境に影響の少ない事業計画を検討する「戦略的環境アセスメント」が重要です。その際「事業を実施しない」という選択肢も必要です。しかし現在の日本では、事業計画が決定した後に環境アセスを行なうため、重大な影響があることが判明しても、事業の中止や大幅な変更は不可能です。また、地元住民との合意形成のないままに、計画が進められたことも大きな問題です。JR東海は、住民説明会で「環境や生活への影響は少ないと考える」と述べるのみで、住民側の不安の声や質問に明確な返答を避けています。「日本最後の秘境」として、環境省が国立公園の保護地域の拡張を計画している南アルプス一帯。事業計画が具体的になるに従って、さまざまな問題がさらに明らかになってくると思われます(別表参照)。当会では地元の支部やNGOと連携して、自然環境や鳥類への影響を回避できるように取り組んでいきたいと考えています。
リニア中央新幹線が環境におよぼす影響
環境影響評価に対する環境大臣意見より
[大気環境]
大気汚染/騒音/振動
[水環境]
湧水の発生/地下水位低下/河川流量減少
[土壌環境]
地盤沈下/土壌汚染
[動植物・生態系]
生息・生育環境の改変・消失/希少猛禽類の繁殖阻害
河川量減少による水生生物への影響/夜間照明による影響
[人と自然のふれあい]
工事による騒音・振動などが登山者などの利用の妨げに
[廃棄物]
発生土、発生土置き場
基地建設から 辺野古の海を守るために
文=葉山政治 自然保護室/安藤康弘 会員室
協力=(公財)日本自然保護協会(NACS-J)

①辺野古と大浦湾一帯。沿岸にサンゴ礁が広がる(写真/村山嘉昭)

5000種以上の生物がすむ豊かな海
現在、米軍の普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題で、同県名護市の辺野古崎及び大浦湾(以下「辺野古」)が、新基地建設地として埋め立てられようとしています。
辺野古一帯は、長い年月をかけて自然が作り上げた生物多様性に富む海域です。サンゴ礁だけでなくジュゴン(絶滅危惧Ⅰ類)が海草(うみくさ)を食(は)む藻場(もば)、砂場、泥場や岩礁など多様な環境があり、そこには絶滅危惧類262種を含む5千300種以上の海洋生物の生息が確認されています。この海域は、環境省の「ラムサール条約湿地潜在候補地」の一つに選定され、沖縄県の自然環境保全指針でも評価ランクⅠの「自然環境の厳正な保護を図る区域」とされており、まさに生物多様性のホット・スポットです。
国際自然保護連合(IUCN)は、辺野古での新基地建設計画を受けて、2000年の第二回世界大会で、日本政府に対して大浦湾を含む沖縄本島北部一帯の自然環境の保護、およびジュゴン、ノグチゲラ、ヤンバルクイナの保全を勧告しました(写真④⑤参照)。また04年の世界大会では、日米両政府に対し、再度、同内容の保護勧告を行なうとともに、新基地建設計画や米軍北部訓練場ヘリパッド建設計画について、専門家を交え、計画中止も含めた環境影響評価を行なうように勧告しました。IUCNのメンバーである当会も、05年に他のNGOと連携し、政府に対してIUCNの勧告の履行を求める要望書を提出しました。
14年11月には、ラムサール条約事務局が環境省に対し、環境影響評価に基づく保全措置と情報公開を求める書簡を送りました。これを追って、当会を含む国内NG0・NPO17団体は共同で、環境省、外務省、防衛省などに対し、ラムサール条約事務局の書簡への誠意ある回答を求める声明文を送りました。
しかし政府の対応は、「防衛省沖縄防衛局において、環境影響評価手続きはすでに終了し、当該評価に基づき保全措置を講じていく」また当該地域を重要な湿地として認識しているかという質問に対しては、「その範囲が明らかでないため回答できない」(14年11月17日の187回臨時国会)」との回答があるのみです。

②大浦湾に生息する、学術的にも重要なアオサンゴ群集(写真/中井達郎)
③沖縄島周辺海域のサンゴ群集が壊滅状態のなか、大浦湾のハマサンゴ群集は良好な状態で生き残っている(写真/中井達郎)
④⑤沖縄県北部やんばるの森に生息するノグチゲラ④とヤンバルクイナ⑤。やんばるの豊かな森から流れる水が、辺野古の多様な環境を形成している(写真/戸塚 学)
⑥海草のなかでくらすコブヒトデ。海草はジュゴンの餌になる(写真/NACS-J)
⑦辺野古で撮影されたジュゴンとウミガメ(写真/東恩納琢磨)
⑧鳥羽水族館にいるジュゴン。環境省レッドリストの絶滅危惧Ⅰ類(写真/NACS-J)
埋め立て作業中止を求め、緊急署名を展開中
今年3月には「ボーリング調査」が再開し、巨大なコンクリートブロックが海底に投下され、サンゴや海草が押しつぶされていることが確認されています。また、最大幅25m、長さ300mの調査用の巨大な「仮設岸壁」を建設する作業が進められ、政府は埋め立て工事を強行しようとしています。
これを受けて今年3月、当会を含む国内82団体、国外35団体は、日米両政府に対して作業の中止を求める声明を発表し、広く賛同の署名を集める「国際緊急署名」を展開しています。
地元沖縄では、「基地の県内移設反対」「辺野古の自然環境を残すべき」という主張に立って、長期にわたる反対運動が行なわれています。取材をすると、「辺野古の海はずっと昔から、私たちに海の恵みを与えてくれる穏やかで平和な場所でした」「ここ(キャンプ・シュワブ)にいる海兵隊は、明日には中東などの戦地に赴き、前線で戦わなければならない。基地があるということは、その行為に加担しているということ。私はそれに最も胸が痛む」と語ってくれました。
現在、政府は奄美大島からも大量の土砂を運び、辺野古の埋め立てに使おうとしています。島ごとに独自の進化を遂げ、固有な生態系や種を持つ土地の間で、大量の土砂を移動させ、豊かな海を埋め立ててもいいものでしょうか。署名へのご協力をお願いいたします。
国際緊急署名「いのちの海とサンゴ礁を守れ」
http://www.foejapan.org/aid/henoko/pr_150325.html
(問)国際環境NGO FoE Japan(エフ・オー・イー・ジャパン)
〒173-0037 東京都板橋区小茂根1-21-9
電話/03-6909-5983 Fax/03-6909-5986
◎すでに国内外からの10,783 筆の署名を、防衛省に提出しています(2015 年5月13日)。

辺野古の浜辺で行われる米軍海兵隊の演習(写真/安藤康弘)
「ツバメのねぐらマップ」(2022年4月改訂版)を配布中!

春から夏に人家の軒先などで子育てをするツバメ。子育てを終えた親ツバメや巣立ったあとのツバメは、河川敷のヨシ原などに集まり「ねぐら」をつくるようになります。その規模は、数千から数万羽にもなります。
当会では、「ツバメのねぐらマップ」(B2判 /裏表カラー、8つ折り)をご希望の方に無料でプレゼントしています。全国30か所のツバメのねぐらの場所やピークの時期、見どころのほか、ツバメの1年を通した生活史や、ツバメのねぐらについての解説も掲載しています。(2022年4月にねぐらの情報を更新した改訂版を発行しました。)
在庫がなくなりましたので、この冊子の配布は終了しました。

ご希望の方に『おやすみツバメ』無料でプレゼント!
ツバメの「集団ねぐら」についての解説や、「ねぐら入り」の見どころ、ねぐらとなるヨシ原の重要性をわかりやすく紹介しています。
ツバメのねぐら入り観察に、この一冊をぜひご活用ください。

日本野鳥の会と支部では、7月~9月のあいだ、全国各地でツバメのねぐら入り観察会を開催しています。
実際にツバメがねぐら入りするようすを体感してみませんか?
Toriino(トリーノ)2015年の発行号
第34号 2015年3月発行号

表紙:石踊達哉「林檎花」
(部分)1994年
- 彩の章
- 写真:西川 孟
- 憶の章 -往-
- 写真:川田喜久治
- 憶の章 -還-
- 写真:六田知弘
- 流の章
- 写真・文:藤原新也
- 響の章
- 写真:星野道夫
- 野鳥保護レポート
- 葛西臨海公園の保全が決定 オリンピック競技場建設計画が変更に
- 文:自然保護室 葉山政治
2014年11月、東京都議会「オリンピック・パラリンピック推進対策特別委員会」で、舛添要一東京都知事から「葛西臨海公園に整備するカヌースラローム会場については、公園整備の歴史的背景や公園の自然環境に配慮し、公園に隣接する都有地を活用して施設を配置する」との報告がありました。東京都が2020年の東京オリンピック開催にあたり、葛西臨海公園での競技場建設計画の変更を正式に公表した場面でした。
第35号 2015年6月発行号

表紙:石踊達哉「短夜」
(部分)1991年
- 彩の章
- 写真:西川 孟
- 憶の章 -往-
- 写真:東松照明
- 憶の章 -還-
- 写真:川田喜久治
- 流の章
- 写真・文:藤原新也
- 響の章
- 写真:星野道夫
- 野鳥保護レポート
- 基地建設から 辺野古の海を守るために
文:葉山政治 自然保護室/安藤康弘 会員室
協力:(公財)日本自然保護協会(NACS-J)
辺野古一帯は、長い年月をかけて自然が作り上げた生物多様性に富む海域です。国際自然保護連合(IUCN)は、辺野古での新基地建設計画を受けて、2000年の第二回世界大会で、日本政府に対して大浦湾を含む沖縄本島北部一帯の自然環境の保護、およびジュゴン、ノグチゲラ、ヤンバルクイナの保全を勧告しました。IUCNのメンバーである当会も、05年に他のNGOと連携し、政府に対してIUCNの勧告の履行を求める要望書を提出しました。
第36号 2015年9月発行号

表紙:石踊達哉「行く秋」
(部分)1994年
- 彩の章
- 写真:西川 孟
- 憶の章 -往-
- 写真:川田喜久治
- 憶の章 -還-
- 写真:土門 拳
- 流の章
- 写真・文:藤原新也
- 響の章
- 写真:星野道夫
- 野鳥保護レポート
- リニア中央新幹線は、本当に必要か?
文:葉山政治 自然保護室
東京(品川)― 大阪間を走る「リニア中央新幹線」の本格的な工事(事業者:JR東海)が、年内にも着工されます。リニア中央新幹線は、東京―名古屋間の86%が地下トンネルです。その一部は、国内有数の原生環境を保ち、昨年「ユネスコエコパーク」にも登録された南アルプスの地下を25㎞にわたって貫きます。掘削で大量に発生する土砂の処分や、それが及ぼす動植物・生態系への影響も懸念されています。
第37号 2015年12月発行号

表紙:石踊達哉「茜梅林図屏風」(部分)2011年
- 彩の章
- 写真:西川 孟
- 憶の章 -往-
- 写真:飯島幸永
- 憶の章 -還-
- 写真:川田喜久治
- 流の章
- 写真・文:藤原新也
- 響の章
- 写真:星野道夫
- 野鳥保護レポート
- 野鳥たちの声なき叫び
文:山本 裕 自然保護室
当会は、東京電力福島第一原子力発電所の事故で漏出した放射性物質の野鳥への影響を調べるため、福島県内で定期的に調査を行なっています。その中で、2015年4月19 日に福島県南相馬市で拾得されたツバメの死体から、約425 Bq (ベクレル)/ kg と比較的高い放射性セシウムが検出されました。代謝量が高い小鳥類では生物学的半減期が短く、他国の越冬地で過ごす間に放射性セシウムは体内から排出されるため、このツバメは春先に渡来してから約1か月の間に、エサなどから環境中の放射性セシウムを取り込んだと考えられます。








