ウトナイ湖サンクチュアリネイチャーセンター

1981年に日本野鳥の会が設置したサンクチュアリの第一号が「ウトナイ湖サンクチュアリ」です。これは日本で初めてのサンクチュアリでもあります。地域の皆さんとともにラムサール条約湿地への登録や自然への影響が大きい開発事業のストップなど、様々な成果を上げてきました。現在もネイチャーポジティブの実現を目指して、生物多様性の劣化を起こさないように企業や行政への働きかけを行い、また生物多様性の向上のため環境改善に向けた取り組みを続けています。
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野鳥と人が共に生きる未来をつくる
- HP:ウトナイ湖サンクチュアリネイチャーセンター
- HP(EN):Lake Utonai Sanctuary
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- ウトナイ湖サンクチュアリ自然観察路 ストリートビュー
ウトナイ湖周辺の自然を守る、これからの保護活動

個体数が増加しつつあるタンチョウとシマフクロウ。タンチョウは1920年代に釧路で再発見された十数羽に始まり、道東から道北、近年では道央圏まで生息地が広がっています。現在、給餌に依存しない個体を安定的に増やすことを目標に、繁殖地と越冬地を分散させる取り組みを進めています。
シマフクロウにおいても、約100つがいまで個体数が回復してきましたが、巣箱や給餌に依存しているのが現状です。またシマフクロウのつがいの多くが知床に集中していることから、遺伝的多様性の劣化が危惧されています。実際に、限られた生息地内で個体数が少ないことによる近親交配の事例が、生息つがいの10%以上で発生しています。シマフクロウの生息地の拡大を図るためには、主要な生息地の間に新たな生息地を整備することで生息地間の連結性を高め、自然分散を促進することが重要となっています。
両種が北海道内で少しずつ生息地を広げる中で、道南地方への分散を隔てている要因のひとつに農地や居住地が広がる石狩低地帯があげられます。現在、支笏湖の西側にはシマフクロウの生息ポテンシャルのある森が存在していますが、西側への分散においては、森が貧弱な石狩低地帯が移動の障壁となっています。
ウトナイ湖も石狩低地帯の南部にあり、ウトナイ湖周辺は常に都市開発と隣り合わせでもあります。タンチョウやシマフクロウの分散が可能になるよう、ウトナイ湖周辺の自然環境を守り、整備することが重要です。
未来のために保全すべき4つの重点ゾーン
ウトナイ湖周辺の自然環境を守るためには、それぞれの自然環境を「点」として守るのではなく、川や森など生態系が連続する形で流域一帯を守っていくことが重要です。そこで、ウトナイ湖サンクチュアリでは、これまでの調査結果をもとに希少鳥類が利用しているエリアや、今後利用が期待されるエリアなど生物多様性の保全上、重要度が高いエリアを「重点ゾーン」として定めています。

01.美々川ゾーン/指標種:タンチョウ(湿原~水辺)

全国でも珍しい原始の姿を残す美々川とカヌーツアー

美々川を利用するタンチョウ
ウトナイ湖に注ぐ主要河川「美々川」。タンチョウの越冬地・ねぐらであるとともに、新たな繁殖地としての期待が高まっています。上流部の開発による水質・水量への影響が強く懸念されており、ウトナイ湖サンクチュアリのレンジャーがサポーターの皆さんと水質調査や鳥類調査を行っています。
02.勇払弁天沼周辺ゾーン/指標種:チュウヒ(草原~湿原)

弁天沼
勇払原野を舞うチュウヒ
弁天沼周辺は、広い範囲が工業地域に設定されているものの広大な湿原・草原環境が残っており、チュウヒやタンチョウが繁殖しています。弁天沼周辺の一部区域は北海道の河道内調整地の整備が進められており、当会ではこの区域内のラムサール条約登録を行政に訴えています。河道内調整地外については昨今、開発計画の数が非常に多いエリアですが、地域産業発展と自然環境保全の共生・両立を図るため、より多くの自然環境が残るように事業者等と調整を進めています。
- 日本野鳥の会が北海道苫小牧市周辺の勇払原野の保全構想を策定(2006年5月9日)
- 勇払原野での繁殖期希少鳥類調査の結果(2012年~2021年)
- (仮称)苫東厚真風力発電事業の中止と当会が目指す社会(2025年9月4日)
03.ウトナイ湖ゾーン/指標種:ガンカモ類 (川や湖)

初夏のウトナイ湖

渡りの時期には、マガンやヒシクイなど多くの鳥たちの休息の場にもなっている
ウトナイ湖は、マガンやヒシクイ、ハクチョウ類や多くのカモ類が飛来する国際的に重要なラムサール条約湿地に登録されています。継続的なモニタリングと保全が不可欠な中核エリアとなっています。
04.勇払川上流ゾーン/指標種:シマフクロウ(河畔~森林)

シマフクロウが利用できる環境を目指す

勇払川上流部の河畔林
勇払川は、支笏湖付近の山から流れるウトナイ湖への重要な流入河川です。上流部は河畔林が発達し、下流部は湿原が広がっており、今後のシマフクロウの分布拡大経路としての潜在性が高い地域です。
ウトナイ湖サンクチュアリの歴史
| 1981年 | 5月にウトナイ湖ネイチャーセンターがオープン。 |
| 1982年 | 英国エジンバラ公が視察。 |
| 1984年 | 1981年に発生した洪水がもとで、千歳川放水路計画案が公表される。 |
| 1989年 | 北海道教育委員会より、ネイチャーセンターが博物館相当施設に指定される。 |
| 1991年 | 国内4番目のラムサール条約湿地に登録。 |
| 1993年 |
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| 1997年 | ナホトカ号重油流出事故で保護された海鳥をリハビリし勇払海岸に放鳥する活動を実施。 |
| 1998年 | 賛助会「ウトナイ湖ファンクラブ」設立。 |
| 1999年 | 国が千歳川放水路計画の中止を表明。 |
| 2000年 |
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| 2001年 | ウトナイ湖サンクチュアリの開設20周年シンポジウム(苫小牧市民会館)で、千歳川放水路中止後の勇払原野を保全対象とすることを発表。 |
| 2002年 | 環境省と苫小牧市の共同管理施設、ウトナイ湖野生鳥獣保護センターがオープン。 |
| 2003年 |
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| 2006年 |
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| 2008年 | 弁天沼周辺や安平川湿原の土地利用に関する要望書を道知事宛に提出、保全を訴える。 |
| 2012年 | 勇払原野での繁殖期希少鳥類調査の結果をプレスリリース発表。(~2021年までの10年間) |
| 2014年 | 安平川河道内調整池の範囲950haが決定し保全されることになる。 |
| 2016年 |
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| 2017年 | ウトナイ湖に流入する美々川の保全に関する要望書を道知事宛に提出。 |
| 2020年 |
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| 2021年 |
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| 2025年 | (仮称)苫東厚真風力発電事業の取り止めが決定。 |
| 2026年 |
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レンジャーの想い
多くの想いと支援が築いたサンクチュアリへの感謝と責任(初代レンジャー 安西 英明)

初代レンジャー 安西 英明
沖縄のノグチゲラを守るための募金が野鳥保護基金の前身ですが、当時学生だった私はお金を出せなかったので、募金の集計などを手伝っていました。茶封筒に数百円が送られてきて「僕は野鳥を守りたいので、お小遣いを貯めて寄付します」と書かれていた手紙を忘れられません。探鳥会で募金を呼び掛けてくれた支部、結婚祝いや香典返しを寄付してくださった会員もおられました。
サンクチュアリ第一号がウトナイ湖周辺と決まった頃は民間企業に勤務していて、ネイチャーセンターの外壁として焼き丸太を作るなどのボランティアキャンプ(1980年)には休みがとれず参加できませんでしたが、後に野鳥の会東京支部からの推薦もあって、初代レンジャーとして開設前(1981年春)にネイチャーセンターに住み込み、地元苫小牧支部の方々と展示物、展示資料の作成などを間に合わせました。
やがて支援や協力は札幌支部、室蘭支部と広がり、会誌『野鳥』での呼びかけに応じて全国からボランティアも集まるようになりました(鳥や動植物の調査、環境管理、来訪者のご案内、展示物の作成、傷病鳥の世話などを手伝ってくれた方々には、後に野鳥の会の役職員になったり、地元支部や鳥学会などで活躍されている方も少なくありません)。
当会直営サンクチュアリは皆さまの会費、寄付、当会からの販売物購入などによって支えられています。様々なご支援、ご協力に感謝し、皆さまとともに誇りや責任を感じて関わり続けたいと思っています。
次世代へつなぐ、自然と産業の共生(チーフレンジャー 松本 潤慶)

チーフレンジャー 松本 潤慶
1981年にオープンしたウトナイ湖サンクチュアリは、これまで45年にわたり多くの皆さまに支えられてきました。環境省や苫小牧市、北海道といった行政の尽力に加え、地域の自然保護団体やボランティアの方々の熱意に支えられ、歴代レンジャーはウトナイ湖から安平川流域に至る豊かな自然を守り続けています。
今、自然環境保全は産業との共生を図る新たな時代です。半導体産業の誘致が進むなか、当会は行政や地域と意見を交わし、納得できる着地点を模索しています。私たちの視点も、ウトナイ湖という点から、美々川や勇払川の源流から安平川を経て弁天沼へ至る広域的な流域保全へと広がりました。2026年1月には、希少鳥類を指標とした新たな保全指針も策定しています。
豊かな自然と先端産業が同居するこの地域は、全国的に見ても稀有な存在です。だからこそ、私たちは先駆的な共生の形を追求しなければなりません。これからもウトナイ湖サンクチュアリは、市民、産業界、行政を繋ぐ架け橋となり、北海道の豊かな自然を次世代へ手渡していきます。







