ナベヅル・マナヅルの越冬地保全の取り組み

ナベヅル・マナヅルは、20世紀はじめまで日本全国の里地で越冬していましたが、現在は西日本の一部の地域でしか見られなくなってしまいました。また、鹿児島県出地方に世界の8~9割のナベヅル、5割前後のマナヅルが集中しているため、伝染病が発生した場合に病気が一気に蔓延し、そのまま絶滅につながってしまうことも危惧されます。
日本野鳥の会ではナベヅル、マナヅルの越冬地の分散と生息環境である農地の生物多様性の保全のため、越冬環境の保全・復元事業を行っています。
更新情報
- 2025/02/12 今年も玉名市横島小学校3年生のツル学習に協力しました(熊本県玉名市)
- 2023/01/12 玉名市立横島小学校3年生のツル学習に協力しました(熊本県玉名市)
- 2021/03/30 第1回「西予市ツル・コウノトリと共生するまちづくり計画策定委員会」に出席しました(愛媛県西予市)
- 2021/03/25 ツル・コウノトリの保全とまちづくりに関する展示を開催しています(愛媛県西予市)
- 2021/02/22 2020年度の普及活動と越冬状況について(熊本県玉名市)
- 2020/12/24 「令和2年ナベヅル・マナヅルの全国飛来状況調査」を実施します
- 2020/03/31 ツル・コウノトリと共生するまちづくりに向けて取り組んでいます(愛媛県西予市)
- 2020/02/20 生きものもすみやすい田んぼづくり(ナベヅルのえさば)の様子(徳島県 阿南市・小松島市)
- 2020/02/13 小学校で人の暮らしとツルのつながりを学ぶ授業を開催しました(熊本県玉名市)
- 2020/01/29 「令和元年 ナベヅル、マナヅルの全国飛来状況調査」を実施します
- 2019/12/05 水田の生物多様性を保全する取り組み -より良い制度に-(徳島県)
チュウヒの保全に向けた調査

チュウヒは、ヨシ原やササ原などの広い面積を有する原野にくらすタカの仲間です。生態系の頂点に位置するためその存在は「湿原・草原の生物多様性の豊かさの象徴」といえます。
しかし、そんなチュウヒは、日本国内で繁殖するタカの仲間の中でもっとも少ないとされており絶滅が心配されています。国内最大級の繁殖地である北海道の「サロベツ原野」と「勇払原野」では、多くのチュウヒは、民有地のササ原やヨシ原で繁殖をしています。このような場所は、再生可能エネルギーの発電施設の建設や工場誘致などを目的に開発されやすく、また放置されたままだと植生の遷移により樹林化し、生息環境の悪化を招いてしまいます。
当会は、2024年に「チュウヒ保護プロジェクト」をスタートさせました。本プロジェクトでは、サロベツ原野と勇払原野で保護を進めていくため、現地にある拠点やネットワークなどと協力しながら、調査や普及、野鳥保護区の設置などの保護活動を進めていき、国内で繁殖するチュウヒのつがい数の維持、または増加に貢献していきます。

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チュウヒについて知りたい
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当会監修のチュウヒの資料集
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タンチョウ保護の取り組み

開発で森は消失し湿原も荒廃してしまい、湿原の生物多様性も危機にさらされています。
日本野鳥の会では、タンチョウを湿原の生物多様性保護のシンボルとして、その保護活動に取り組んでいます。
保護活動の最新情報
- 環境省レッドリストでタンチョウが絶滅危惧種から脱しました(2026年3月17日)
タンチョウとは
日本で最大級の野鳥

タンチョウは日本の野鳥の中では最大級で、全長は1m40cm、翼を広げると2m40cmもあります。生息地は北海道東部が中心で、本州などではほとんど見ることができません。日本では7種類のツルが観察されていますが、国内で繁殖するのはタンチョウ1種類です。
巣は湿原のヨシ原の中で、ヨシを直径1mほどの大きさに積み上げて作ります。卵は2個産み、雌雄が交代で温めて約1か月でふ化します。ヒナはふ化するとすぐに歩くことができ、両親と一緒に湿原の中で餌を探しながら育ちます。子別れは翌年の冬が終わる頃です。
大陸ではロシアや中国の東北部にも生息しています。大陸のタンチョウは渡りをし、冬は朝鮮半島や中国南部に移動しますが、現在の日本のタンチョウは渡りをしません。
タンチョウは漢字で「丹頂」と書きます。「丹」は赤い、「頂」はてっぺんという意味で、頭のてっぺんが赤いためこの名前がつきました。頭の赤いところには羽がなく、ニワトリのとさかのようになっています。
明治時代には絶滅!?

写真:鶴居村立幌呂小学校
江戸時代までは北海道各地にたくさんいて、関東地方でも見られたようです。しかし明治時代になると乱獲され、さらに生息地である湿原の開発により激減してしまいました。そしてまったく見られなくなったため、大正時代には絶滅したと思われていました。
しかし大正時代末期の1924年に、北海道東部の釧路湿原で十数羽が再発見されました。その後、1935年に天然記念物、1952年には特別天然記念物に指定され、国や自治体による保護施策が講じられるようになりました。当初は、ドジョウの放流やセリなどの植物の移植などが行なわれましたが、なかなか数が増えませんでした。
1950年頃の猛吹雪の日、数羽のタンチョウが畑に置かれた冬の保存用トウモロコシを食べにきました。これをきっかけに給餌がうまくいき、各地で給餌活動が行なわれるようになったことで現在は約1800羽に数が回復しています。
減少する湿原、給餌に依存

個体数が回復したことは良い傾向ですが、しかし依然として北海道東部を中心とした分布で、昔のように広く見られることはありません。生息地である湿原の面積は減少する一方で、残されている湿原も保護指定がなされていないところも多く、いつ開発されてもおかしくない現状です。
湿原の減少に加え、周辺の森林の多くも伐採されてしまいました。森が無くなると湧水が少なくなるので、冬になると川が凍ってしまいます。凍ってしまうと餌を採ることができないため、冬は人からの給餌に依存し生き延びている状況です。
近年では道路に出てきて交通事故にあうタンチョウもいます。また列車や電線への衝突事故もあります。
数が増えてきているとはいえ、決して安心できる状態ではありません。
当会の活動の経過
鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ

日本野鳥の会では1987年に北海道阿寒郡鶴居村に「鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ」を開設し職員を常駐させました。ここは故・伊藤良孝氏の所有地で、元々、伊藤氏が個人で給餌をしていた場所です。伊藤氏と協定を結ぶことで、サンクチュアリとなり、伊藤氏が亡くなられた後も、協定はご遺族に引き継いでいただき、サンチュアリは継続しています。
サンクチュアリでは、伊藤氏の活動を引き継いだ冬期のタンチョウへの給餌活動のほか、生息する湿原の保全や調査、普及教育やボランティアの受け入れなどさまざまな活動を行なっています。
鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリについて詳しくはこちら
故 伊藤良孝氏(1919~2000)

伊藤良孝氏は、鶴居村で酪農の傍ら1966年(昭和41年)よりタンチョウに給餌を始め、その後北海道の委嘱でタンチョウ給餌人(1968年~1996年)、タンチョウ監視人(1981年~2000年)を務め、タンチョウ保護を支えられました。
サンクチュアリがオープンした1987年以降は、サンクチュアリのタンチョウ・レンジャーとして後進の指導、育成にもあたられ、タンチョウへの給餌の方法や採餌環境の整備などさまざまな知識が現在のレンジャーへ受け継がれています。
伊藤良孝氏について詳しくはこちら
繁殖環境の保全
野鳥保護区の設置

1987年に北海道根室市でタンチョウが営巣する湿原約8haを買い上げ、民間としては初めての野鳥保護区を設置しました。その後も湿原を買い取るなどして保護区化を進めた結果、現在では24か所、約2,799.8haをタンチョウの生息地として保護しており、そこにタンチョウ31つがいが生息しています。
これらの野鳥保護区は当会のレンジャーが定期的に巡回し、タンチョウの生息状況や環境の変化、侵入者などの監視なども行なっています。
野鳥保護区について詳しくはこちら
営巣環境の復元

鶴居村の早瀬野鳥保護区温根内では、周辺の森林の開発により湿原に土砂が流れ込むことで、ヨシ原にハンノキが繁茂し、1994年以降、タンチョウが繁殖できない環境になってしまいました。1999年からハンノキを伐採し、ヨシ原を復元する事業を進めてきた結果、2002年から再び繁殖がはじまりました。環境が悪化してしまった場合には、それを復元する環境管理を行なっています。
越冬環境の保全
冬期自然採食地の保全


現在、タンチョウの生息数は千羽を超え、極めて危険な状態は脱しました。しかし冬の採食場所はまだ少なく、給餌に依存して越冬している状況は改善されていません。
その原因のひとつは、明治時代以降の森林伐採で土地の保水力が不足し、湧水が減少してしまったことです。湧水が豊富に流れ込む川は厳冬期でも凍結しない水面が残り、タンチョウが餌をとれます。また湿原を乾燥化させて農地などにしたため、やはり冬に凍らない水面がほとんど無くなり、湿原でも餌を探せなくなっています。
このため、現在では冬の採餌環境(冬期自然採食地)を増やしたり、復元する活動を進めています。2009年には、サンクチュアリ内に、冬も凍らない水路を作り、タンチョウが利用しやすいように樹木の間伐を行ないました。すでに、最大20羽にもなるタンチョウが冬に利用しています。
2014年までに、鶴居村内の農家への協力を得て、樹木に覆われた水路などを整備した自然採食地を村内に15か所造成しました。現在は、タンチョウが継続して利用できるよう管理作業を進めたり、新たな採食地を整備しています。
冬期の給餌活動

現状では、冬の給餌を行なわないと生息数は10分の1にまで減るといわれています。11月~3月までの冬期、餌不足を解消するため、サンクチュアリの給餌場で飼料用トウモロコシ(デントコーン)を給餌しています。
サンクチュアリの給餌場は約13haの面積があり、タンチョウが来ない春~秋の間は、牧草の採草地として地元の酪農家に活用されています。採草地に使われていることで、管理コストをかけずに給餌場に適した草地環境を維持することができています。
給餌量はこれまで長年の経験によって決めてきましたが、科学的な根拠のもとに適正な給餌を行なうため、2007年からタンチョウ1羽あたりの採餌量を調査しました。その結果、1羽あたりデントコーンを1日に約千粒(300g)食べることが分かりました。
環境省は、タンチョウの生息地分散を目指して、2015年から年に1割ずつ給餌量を削減する取り組みを進めています。この給餌量削減により、タンチョウの個体数の減少や、分散したタンチョウによる営農被害の心配もあるため、タンチョウの動向を注視しています。
普及教育活動
タンチョウ・ティーチャーズガイド

タンチョウ・ティーチャーズガイド(TTG)は、タンチョウとその生息環境について学べる当会制作の環境教育プログラム集です。学校での授業やイベントでこのプログラムを使って普及したり、学校の先生やネイチャーガイドを対象にTTGの講習会を開催し、タンチョウとその保護の重要性について普及できる人材の育成をしています。
TTGについて詳しくはこちら
ネイチャーセンター

10月~3月の間は、鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリのネイチャーセンターを開館しており、どなたでも無料でご利用いただけます。センターではタンチョウの生態や保全状況などさまざまな情報をご提供しています。
そのほか、フォトコンテストや写真展などを全国で開催したり、環境イベントにブース出展してタンチョウの現状について広く伝えています。また、タンチョウが生息する地域の子どもたちを対象に、タンチョウイラスト展を実施しています。
センターの利用案内はこちら
活動へのご支援
タンチョウの繁殖環境や冬期自然採餌環境の保全、鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリの運営は、日本野鳥の会への会費や寄付を財源に進めています。タンチョウと湿原の生物多様性保護のため、どうぞご支援をお願いします。詳細は以下からご覧ください。
やんばる奥間野鳥保護区(やんばるおくまやちょうほごく)
ノグチゲラ保護のための野鳥保護区
沖縄県国頭村 3.1ヘクタール
1993年、ノグチゲラの重要な生息地である「やんばるの森」を、ゼネラル石油株式会社(現:エクソンモービル・ジャパングループ)からのご寄付で買い取った。沖縄の北部に残された森林であり、ノグチゲラをはじめとする野鳥が多数生息する。

やんばるの森は、昼間でも薄暗い。
小鷲頭山野鳥保護区(こわしずやまやちょうほごく)
静岡県沼津市 2.3ヘクタール

会員の矢崎武男氏より、土地の寄贈を受け1986年に野鳥保護区とする。駿河湾を望む斜面であり、上部はウバメガシの林となっている。小鷲頭山の稜線は、沼津アルプスと呼ばれる登山道が通っており、駿河湾や富士山、遠くは南アルプスが望める。
エクソンモービル野鳥保護区イーハトーブ盛岡
イヌワシ保護のための野鳥保護区
岩手県盛岡市 8.4ヘクタール
1996年、イヌワシの重要な生息地である森林をゼネラル石油株式会社(現:エクソンモービル・ジャパングループ)からのご寄付を元に買い取った。イヌワシの餌場として利用されている植林地であり、日本野鳥の会もりおか、東北地域環境計画研究会、岩手大学野鳥の会が構成するイーハトーブ盛岡保全管理協議会が管理を行なっている。

イヌワシの餌場となっている林。
仏沼野鳥保護区 (ほとけぬまやちょうほごく)
オオセッカ保護のための野鳥保護区
青森県三沢市 3.5ヘクタール
1992年、オオセッカの重要な生息地である仏沼干拓地のヨシ原を、チャリティイベント「バードソン1992」で集まった募金で買い取った。仏沼干拓地は面積約250ヘクタール、1964~71年に水田として干拓されたが減反で使われず、現在は国内のオオセッカの約半数が繁殖する他、サンカノゴイやチュウヒなども生息する貴重な湿原となっている。野鳥保護区の面積は小さいが、当会が所有していることで干拓地全体の保全を促す効果があり、干拓地の法的な保護指定を求める活動を続けてきた。それにより、2005年11月にラムサール条約に登録された。仏沼干拓地では地元の「NPO法人おおせっからんど」が保全活動を行っており、当会もこのNPOの活動に協力している。

仏沼干拓地の広大なヨシ原でのオオセッカ調査
(NPO法人おおせっからんど実施調査)
保護区への行き方
- 野鳥保護区は広大な仏沼干拓地のヨシ原の中にあり、道もありませんので保護区自体へは立ち入りできません。
- 三沢空港から、県道170号線を六ヶ所村方向に車で約30分で仏沼干拓地の入り口。干拓地内を南北方向と東西方向に横断する、車の通れる道があります。
- ネイチャーセンターなどの施設はありません。トイレは駐車場に設置された仮設トイレが利用できます。食事などは、県道170号線で三沢市街方向に約4km離れた「道の駅みさわ」をご利用ください。

仏沼干拓地での自然観察会(NPO法人おおせっからんど主催)
持田野鳥保護区シマフクロウ日高第1(もちだやちょうほごくシマフクロウひだかだい1)
シマフクロウ保護のための野鳥保護区
持田野鳥保護区シマフクロウ日高第1
北海道日高地域 124.5ヘクタール(一部持ち分あり)

シマフクロウを対象とした日高地域では最初の野鳥保護区。日高地域は、国内のシマフクロウ分布の南限であり、北海道の西部へ分布を拡大して行く上で重要な場所である。2007年、この地域周辺で民有林の伐採が行なわれだしたため、会員持田勝郎氏からのご寄付を元に買い取りを行ない、野鳥保護区を設置した。その後の追加購入により、対象民有地の約60%を含む124.5ヘクタールの森林を保全している。
「持田野鳥保護区シマフクロウ日高第1」を含む地域では、シマフクロウ1つがいの生息が確認され、繁殖を行なっている。
環境省はじめ関係行政や専門家と連携して、当会職員が、調査や管理、巡回監視に当たっている。なお、シマフクロウは、カメラマンや観察者からの影響を受けやすいため、保護区の場所についての表記は控えさせていただきます。
早瀬野鳥保護区温根内(はやせやちょうほごくおんねない)
タンチョウ保護のための野鳥保護区
北海道鶴居村 19.5ヘクタール
1990年、釧路湿原国立公園に隣接していながら法的な指定がなされていなかった湿原を、早瀬廣司・富氏からのご寄付をもとに買い取った。ヨシ原とまばらなハンノキ林からなり、1993年まではタンチョウが繁殖していたが、ハンノキが繁茂したため繁殖しなくなった。1999年より、ヨシ原の復元事業を進めた結果、2002年から再び繁殖をはじめた。
隣接地には、「野鳥保護区古山温根内」がある。

多くのボランティアの力を借りて、タンチョウの生息環境を復元している。
野鳥保護区古山温根内(やちょうほごくこやまおんねない)
タンチョウ保護のための野鳥保護区
北海道鶴居村 12.9ヘクタール
協定により1992年に設置した「古山野鳥保護区温根内」の土地を、地権者からの申し出により2022年に購入し、保護区の名称を「野鳥保護区古山温根内」に変更した。当会のタンチョウ保護区としては3番目に古く、30年にわたり協定を継続していただいたことに敬意を表し、野鳥保護区の新名称に地権者のお名前を冠した。
隣接する「早瀬野鳥保護区温根内」や、オンネナイ川の流域に沿って近接する「渡邊野鳥保護区温根内」と合わせた一帯は、タンチョウの生息環境として評価され、2011年の区域拡大の際に釧路湿原国立公園に指定された。







