ご支援の御礼(事業報告2024(令和6)年度)

このコンテンツの内容は、以下のPDFファイルでもご覧いただけます。
※『野鳥』誌2025年7・8月号より抜粋

事業報告2024(令和6)年度(PDF:1.7MB)

このページのもくじ:
力強いご支援を、ありがとうございます!個人・法人の皆さまからのご支援法人特別会員

力強いご支援を、ありがとうございます!

鳥にも人にも優しい社会をめざす仲間が、日本野鳥の会の活動を支えています。
昨年度もたくさんの個人・法人の皆さまから、ご寄付や協賛をはじめ、物資のご提供、ボランティア活動など、さまざまなご支援をいただきました。

ご寄付の総額は、6億1,661万3,873円にのぼります。

心より感謝申し上げます。


バードメイトのピンバッジ
「コゲラ」

ご寄付へのお礼として、野鳥の応援団「バードメイト」のピンバッジをはじめ、オリジナルの野鳥グッズをご希望の方へプレゼントしています。

2024年度は、日本野鳥の会の創立90周年を記念した特別デザインもご用意しました。

皆さまの応援で「バードメイト」の輪が大きく広がりました

連携団体からの応援コメント


日本野鳥の会東京 副代表
行徳自然ほごくらぶ 理事
石亀 明 氏

日本野鳥の会東京の探鳥会で、バードメイトの寄付を募っています。
集めた寄付金は、そのまま財団へお送りしています。

探鳥会が終わった後、さっと帰られる方も多いのですが、参加者の皆さんともう少し鳥に関する雑談ができればと思い、そのきっかけとして20種類ほどを集めて寄付を募るようになりました。そうすると、参加者の皆さんもその時の思い出の品が欲しくなるのか、バードメイトの鳥に関する質問などが多く出て、良いコミュニケーションのきっかけになっています。

毎回お会いするたびに寄付いただける方や、一気に数種類分の寄付いただける方もおられ、帽子などにバードメイトのピンバッジがずらりと並んでいるようすが目にとまると、話題のきっかけになっています。

2025年度のバードメイトは「スズメ2025」です!

バードメイトは2025年度からリニューアル。
どうか引き続きよろしくお願いします。

詳しくはこちら
「バードメイト」リニューアルのお知らせ

個人・法人の皆さまからのご支援

昨年度もたくさんの個人・法人の皆さまから、ご寄付や協賛をはじめ、物資のご提供、ボランティア活動などさまざまなご支援をいただきました。厚く御礼申し上げます。

個人の方からのご支援(敬称略・五十音順)

おもなご寄付

(金額:円)
一般ご寄付
会費・通販代金支払い時に加えて振り込んでいただいた寄付金などを含む
34,797,891
募金箱へのご寄付 467,988
バードメイト、ブローチ等を通してのご寄付 51,849,000
生涯会員のご寄付 13,420,000
タンチョウふぁんクラブ賛助会費 2,850,000
鶴居サンクチュアリ募金箱他へのご寄付 1,114,484
ウトナイ湖ファンクラブ賛助会費 940,000
ウトナイ湖サンクチュアリ募金箱他へのご寄付 175,202
〈企業との提携によるご寄付〉
「野鳥と緑の信託」を通じたご寄附
三菱UFJ信託銀行に信託された財産の収益金のご寄附
1,135,882
「日本野鳥の会カード」を通じたご寄付
オリエントコーポレーションからクレジットカードご利用金額の0.5%と、
利用者からのお申し出によるポイントのご寄付
8,194,160

個人からのご寄付(のべ件数)

10万円以上
生涯会員寄付を除く
90件
100万円以上
遺贈・相続財産寄付を含む
27件

個人との協定による野鳥保護区設置へのご協力

  • 永野貴浩氏
  • 石澤元勝氏
  • 工藤俊弥氏

法人・団体からのご支援(五十音順・敬称略)

法人・団体からのご寄付(10万円以上)、物資提供、協賛、技術支援、野鳥保護区管理などへのご支援

  • あいおいニッセイ同和損害保険(株)
  • 旭山動物園
  • 「インクカートリッジ里帰りプロジェクト」
  • (特非)SOS総合相談グループ
  • (株)キングジム
  • (株)佐々木建設
  • (株)ササキ工芸
  • (一社)炭素会計アドバイザー協会
  • (株)ツルヤ
  • 東京システムズ(株)
  • 日本製紙(株)
  • (株)バリューブックス
  • 富士通(株)
  • ホースト・スプレンガ―・アンド・アースプロダクツ(株)
  • NPO法人北海道シマフクロウの会
  • 三菱電機(株)
  • 三菱UFJ信託銀行(株)
  • 三菱UFJニコス(株)
  • (株)もりもと
  • モンベルクラブ
  • 八ヶ岳倶楽部
  • (株)ワークスロケーションクルー

ボランティア

野鳥生息地の環境整備活動など、ボランティアでのご支援

  • アイシン北海道(株)
  • 勇建設(株)
  • (株)三五北海道 
  • 日本航空(株)
  • (一社)日本旅行業協会
  • 鶴居村タンチョウ愛護会
  • フィールド・アシスタント・ネットワーク 
  • ヨコハマタイヤリトレッド(株) 北海道事業所
  • ボランティアサークル「ゆのみ」

調査・イベント開催

調査や一般の方に向けたイベント開催への協賛や物資提供などのご支援

  • カールツァイス(株)
  • (株)キングジム
  • 興和オプトロニクス(株)
  • サントリーホールディングス(株)
  • (株)ニコンイメージングジャパン
  • (株)ニコンビジョン
  • (株)ニチモク林産北海道
  • 日軽金アクト(株)
  • 日本軽金属(株)
  • 日本製紙(株)
  • (株)不二家
  • 明治ホールディングス(株)
  • 山崎製パン(株)

小冊子制作

一般の方へ配布する小冊子制作への協賛や用紙提供などのご支援

  • 株木建設(株)
  • (株)キングジム
  • 東亜建設工業(株)
  • 丸和油脂(株)
  • 三菱製紙(株)
  • 山崎製パン(株)
  • 横浜ゴム(株)

募金箱設置

募金箱設置へのご協力

  • 個人 69件
  • 法人 76件

下記法人さまには、複数の店舗に募金箱を設置していただいています。

  • (株)モンベル

「野鳥の子育て応援(ヒナを拾わないで)」キャンペーン2024年 ご協賛

(株)アシスト わんわん倶楽部/アトム(株)/カールツァイス(株)/学研グループ/株木建設(株)/カロラータ(株)/(株)キングジム/サントリーホールディングス(株)
神宮司庁/東亜建設工業(株)/(株)ニコンイメージングジャパン/(株)日本フードエコロジーセンター/日本野鳥の会茨城県/(株)フジナガ/(公財)ホシザキグリーン財団
丸和油脂(株)/三菱製紙(株)/(株)メール/モリトジャパン(株)/(株)モンベル/八ヶ岳倶楽部/横浜ゴム(株)/リコーリース(株)/リズム(株)

eBird Japan ご協賛

カールツァイス(株)/サントリーホールディングス(株)

各種助成金

サロベツ原野におけるチュウヒ・サンカノゴイの繁殖状況調査費用の一部 公益信託 経団連自然保護基金
カンムリウミスズメ用GPSロガーの購入費の一部 一般社団法人 昭和会館
野外鳥類学論文集『Strix』の発行費用の一部 一般社団法人 霞会館
美々川保全活動費の一部 公益財団法人 北海道環境財団

法人特別会員

当会の活動をおもに資金面でご支援いただいています。

2025年6月1日現在、94社

五十音順。
株式会社は(株)、有限会社は(有)などと略記

凡例
40年 会員継続40年以上
30年 会員継続30~39年
20年 会員継続20~29年
10年 会員継続10~19年
5年 会員継続5~9年
会員継続5年未満
2024年7月以降新規入会
アーク循環器クリニック 10年
(株)アイシン 10年
(株)アシスト わんわん倶楽部 10年
アトム(株) 10年
(株)R.project 5年
(株)植松商会
(株)エス・ピーパック 10年
NCD(株) 5年
MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス(株) 40年
OMデジタルソリューションズ(株)
小川珈琲(株) 10年
奥霧島温泉郷(株) [協定旅館]
(株)オリエントコーポレーション 30年
カールツァイス(株) 30年
花王(株) 30年
株木建設(株) 40年
(株)カメラのキタムラ 10年
カロラータ(株) 20年
(株)かんぽ生命保険
キヤノン(株) 30年
(株)キャメル珈琲 5年
(株)キュービック・アイ 10年
極東鋼弦コンクリート振興(株) 10年
(株)キングジム 20年
京浜急行電鉄(株) 40年
(株)ケンコー・トキナー
(株)晃伸製機
興和オプトロニクス(株) 30年
(公社)国土緑化推進機構 10年
サントリーホールディングス(株) 40年
(株)シモン 20年
(株)小学館 40年
(株)湘南カントリークラブ 10年
神宮司庁 20年
(株)シンサナミ 30年
新日本印刷(株) 5年
住商フーズ(株) 10年
住友化学(株) 40年
(株)Swallow Design Studio
宗教法人「生長の家」 10年
SONIDORI
ソニーマーケティング(株) 5年
大同特殊鋼(株) 10年
(株)タキ・リビング
(株)田代コンサルティング
(有)大洋商事 5年
中国電力(株) 40年
中電環境テクノス(株) 10年
(株)テクノ中部 20年
電源開発(株) 30年
東京システムズ(株) 10年
(株)東光 10年
苫小牧漁業協同組合 30年
苫小牧港開発(株) 40年
トヨタ自動車(株) 20年
トヨタ紡織(株)
とりす工法研究会 10年
中江産業(株) 20年
(株)新潟システムソリューション 5年
(株)ニコンイメージングジャパン 40年
(株)日経ナショナル ジオグラフィック 30年
(株)日清製粉グループ本社 30年
日本製紙(株) 30年
(公社)日本ナショナル・トラスト協会 20年
ニューウェルブランズ・ジャパン合同会社コールマン事業部 10年
農林中央金庫 30年
司法書士法人野崎合同事務所 5年
野村ホールディングス(株) 40年
ハクバ写真産業(株)
(株)はな
(株)阪急交通社 30年
(医社)翡翠会 上平内科クリニック 10年
(有)フィールドワーク
(医)福重会 レディースクリニック しげまつ 5年
富士通(株) 10年
(株)フジナガ 10年
(株)不二家 5年
ポスタリア(株) 20年
丸和油脂(株) 10年
三菱製紙(株) 20年
三菱電機(株)
三菱UFJ信託銀行(株) 40年
光村印刷(株) 20年
未来工業(株) 5年
ミレー・マウンテン・グループ・ジャパン(株)
明治ホールディングス(株) 10年
(株)メール 10年
モリトジャパン(株) 5年
(有)八ヶ岳プランニング(八ヶ岳倶楽部) 10年
山崎製パン(株) 10年
横浜ゴム(株) 10年
(株)良品計画 30年
レンティオ(株)
(医社)和敬会 みきやまリハビリテーション病院 10年

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事業報告2024(令和6)年度

2024年3月11日、日本野鳥の会は創立90周年を迎えました。
皆さまのご支援のもと、野鳥と人が共に生きる社会を目指して、1世紀弱にわたって自然保護に取り組み続けています。新たにスタートした90周年記念事業をはじめ、2024年度の活動をご報告します。

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※『野鳥』誌2025年7・8月号より抜粋

事業報告2024(令和6)年度(PDF:1.7MB)

会長挨拶

「野の鳥は野に」の理念を社会に定着させるために

日本野鳥の会(以下、当会)は創立90周年を迎えました。日本で最も歴史のある、そしていまや国内最大の自然保護NGOです。会が創立されたのは昭和9年、それ以来90年間、当会は日本の自然と野鳥の保護に取り組んできました。

たとえば、絶滅が危惧されている北海道のシマフクロウやタンチョウの保護活動では、生息地の買い上げによる独自の野鳥保護区の設置やシマフクロウの巣箱かけ、タンチョウの生息環境の整備などです。

私たちが保護に取り組んでいるのはシマフクロウやタンチョウだけではありません。これらの鳥以外は北海道ではシマアオジとチュウヒそしてサンカノゴイ、伊豆諸島ではアカコッコとカンムリウミスズメを対象に、サンクチュアリのレンジャーと地元の連携団体が参加、協力して、地元自治体や住民と一緒に保護活動を繰り広げています。世間ではほとんど注目されていない鳥たちも、種類によっては個体数を減らし、絶滅の危険を抱えているのです。

海洋プラスチックの問題

当会が現在、重点的に取り組んでいるのは海洋プラスチックの問題です。海洋に漂うペットボトルやポリ袋、浮きや網といったプラスチック製の廃棄漁具などが、アホウドリやウミガメなどにからまることや、誤食の問題を抱えていますが、さらに深刻なのはマイクロプラスチックなのです。紫外線などで劣化して、どんどん細かくなり、プランクトンと一緒に海洋生物が体内に取り込んでしまっています。この問題は一朝一夕で解決はできませんが、拡大生産者責任の徹底などの法改正も含めて国レベルでの解決を求めています。身近なくらしで使い捨てプラスチック製品をなるべく使わない、探鳥会に合わせてごみ拾いをするなどの活動からも、この問題を多くの人に知ってもらうことが大切だと感じています。

生きものと共生できる風発を!

上田会長の写真
勇払原野で地元紙に
取材を受ける上田会長

当会は原発にかわる自然エネルギーの導入・推進に賛成しています。では自然エネルギーのための風力発電はどうなのかという問題が出てきます。私たちは風力発電すべてに反対という立場はとっていません。ワシ類やハクチョウ・ガン類、夜間に渡る小鳥類などの、頻繁な衝突が予測される地点に設置される風力発電施設には反対するという立場です。

4月に、当会のウトナイ湖サンクチュアリ(北海道苫小牧市)に行ってきました。サンクチュアリのレンジャーたちとの交流と、ウトナイ湖を囲むタンチョウやチュウヒが生息する勇払原野に計画されている風力発電施設について、現地の保護団体の方々からの意見聴取と現地視察が目的でした。

風力発電施設の建設が計画されているのは勇払原野の東側にある厚真町浜厚真地区です。ここはウトナイ湖サンクチュアリに近接し、自然度の高い湿原、草原、湖沼等がまとまって存在し、多数の希少動植物が生息・生育しているエリアです。雪が溶け、枯れたヨシが一面に広がっている早春の勇払の湿原には、真っ黒になった夏羽のノビタキのオスたちがあちこちにとまっていて、その上をチュウヒが悠然と滑空していました。オオジシギは到着したばかりのようで、盛んにディスプレイフライトを繰り返していました。最大6羽ものオオジシギが「ズビーヤク、ズビーヤク」と鳴きながら空中でもつれあっているのは圧巻の光景でした。海沿いに出ると、2羽のオジロワシが悠然と舞ってくれました。ビーヤク、ズビーヤク」と鳴きながら空中でもつれあっているのは圧巻の光景でした。海沿いに出ると、2羽のオジロワシが悠然と舞ってくれました。

この湿原ではタンチョウの繁殖も確認されています。2017年に最初のつがいが営巣してヒナを育て、それ以降、定着して繁殖を繰り返しています。これを地元むかわ町の「ネイチャー研究会inむかわ」や当会の苫小牧支部、一般社団法人タンチョウ研究所、ウトナイ湖サンクチュアリのレンジャーたちがずっと見守っています。

もしここに風力発電施設が建設されたら、この地域の生態系や生物多様性に大きな影響をおよぼすことが予想されます。現在、この事業は環境大臣や北海道知事、関連市町の首長、地元住民からの厳しい意見を受け、事業者は当初計画の10基のうち、タンチョウやチュウヒが営巣する海沿いに設置が計画されていた5基の建設を断念しました。しかし風車の数の削減によって、希少鳥類の生息環境の消失やワシ類およびガン類の渡りへの影響の懸念が、払拭されたわけではありません。残る5基の周辺にも同様の環境が広がっていることから、とくにチュウヒやワシ類の衝突の危険が予測されます。海沿いの5基だけでなく、残り5基についても、影響がないように中止を含めた建設計画の再考を求めるとともに、関係機関に対して当該地域における希少鳥類の生息環境保全を訴えていきたいと思っています。この湿原ではタンチョウの繁殖も確認されています。2017年に最初のつがいが営巣してヒナを育て、それ以降、定着して
繁殖を繰り返しています。これを地元むかわ町の「ネイチャー研究会inむかわ」や当会の苫小牧支部、一般社団法人タンチョウ研究所、ウトナイ湖サンクチュアリのレンジャーたちがずっと見守っています。

もしここに風力発電施設が建設されたら、この地域の生態系や生物多様性に大きな影響をおよぼすことが予想されます。現在、この事業は環境大臣や北海道知事、関連市町の首長、地元住民からの厳しい意見を受け、事業者は当初計画の10基のうち、タンチョウやチュウヒが営巣する海沿いに設置が計画されていた5基の建設を断念しました。
しかし風車の数の削減によって、希少鳥類の生息環境の消失やワシ類およびガン類の渡りへの影響の懸念が、払拭されたわけではありません。残る5基の周辺にも同様の環境が広がっていることから、とくにチュウヒやワシ類の衝突の危険が予測されます。
海沿いの5基だけでなく、残り5基についても、影響がないように中止を含めた建設計画の再考を求めるとともに、関係機関に対して当該地域における希少鳥類の生息環境保全を訴えていきたいと思っています。

私たちの理念

地域で探鳥会を開催し、さまざまなイベントを企画し、「野の鳥は野に」という私たちの理念を社会に定着させるために、全国の連携団体の皆さんが日々奮闘しておられます。いつも思うことですが、こうした全国津々浦々における皆さんの活動が、私たち日本野鳥の会の力の源泉になっています。現在までに紆余曲折はありましたが、私は当会の90年という歴史は重いと思っています。そして私たちに負わされた責任は大きいと考えています。

鳥たちに優しい社会は、人にも優しい社会です。野鳥を保護することは、この国の豊かな自然を保護することにつながります。さらにそれは自然界の一員でもある人間の健全なくらしを守ることにつながります。未来の子供たちのために、新たな活動に踏み出していきましょう。

日本野鳥の会会長 上田恵介

日本野鳥の会会長 上田恵介

1950年大阪府生まれ。理学博士。動物生態学者。立教大学名誉教授。鳥類を中心とした動植物全般の進化生態学、行動生態学を専門とするかたわら、環境問題の研究にも取り組む。野鳥や自然に関する一般書の執筆、テレビ・ラジオ出演では、柔らかく、わかりやすい解説に定評がある。1963年の小学生の頃から、日本野鳥の会会員。2015年6月に日本野鳥の会副会長に就任。2019年6月より会長に就任

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当会の取り組み(事業報告2024(令和6)年度)

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※『野鳥』誌2025年7・8月号より抜粋

事業報告2024(令和6)年度(PDF:1.68MB)

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自然保護事業普及事業

自然保護事業

自然エネルギー対策事業


風車建設前(赤線)と
建設後(青線)の調査結果では、移動ルートが変化

2024年度も、北海道北部に建設された複数の風力発電施設で、ガン・ハクチョウ類の渡り鳥が風車を避けて飛ぶ“障壁影響”が、発生しているかを確認する調査を春と秋に実施。実際に障壁影響(移動ルートの変化)が発生していること、また、移動ルートの変化のしかたが昨年度の結果とは違うことを確認しました。これらの調査結果を、本誌の他に日本鳥学会やいくつかの講演で紹介しました。この調査は、2025年度も継続します。また、9月にフランスで行われる、風力発電が野生動物に与える影響に関する国際学会(CWW2025)でも、障壁影響調査の結果を発表する予定です。

また、連携団体の皆さんと協力しながら、意見書・要望書をのべ21件提出しました。そのほか、行政機関が主催する各種の協議会や検討会に委員、オブザーバー、専門家ヒアリング対象者として参加し、行政機関や事業者に対して直接提言を行いました。

関連リンク:自然エネルギーとの共生

チュウヒ保護事業


ほろのべ名林公園祭りでの
ブース出展

2020年から北海道北部のサロベツ原野で、2021年からは北海道中央部の勇払原野でチュウヒの繁殖状況調査を実施しています。2024年度は、サロベツ原野の営巣密度が高い民有地で9つがいを対象に、勇払原野では弁天沼から風力発電事業計画地で7つがいを対象に調査しました。繁殖成功率は、サロベツで約55%、勇払原野で約43%でした。

サロベツ原野にある幌延(ほろのべ)町でチュウヒ観察会や勉強会を開催し、ほろのべ名林公園祭りにブース出展をし普及活動を行いました。ウトナイ湖サンクチュアリネイチャーセンターでは、サポーター向けの観察会を開催しました。なお、サロベツ湿原センターとウトナイ湖サンクチュアリネイチャーセンターでは、昨年に続き、チュウヒの生態や保護活動を解説するパネル展示を行いました。

関連リンク:チュウヒの保全に向けた調査

eBirdの運営と利用促進

コーネル大学鳥類学研究室と協働で、世界最大の野鳥観察データベース「eBird」の日本語版「eBird Japan」を運営。愛鳥週間とバードウォッチングウィークを中心に、バードウォッチングの記録をeBirdに投稿するキャンペーンを実施しました。あわせて、オンラインセミナーを開催し、eBirdと野鳥識別アプリ「Merlin」の楽しみ方を紹介。5月10日のグローバル・ビッグデー(世界一斉野鳥カウント)には、都立東京港野鳥公園で「東京港野鳥公園ビッグデー」を開催し、eBirdの使い方を解説して投稿を呼びかけました。eBirdを初めて使う方には、ガイド『これを読めばわかる!eBird&Merlinの使い方』を発行し、PDFと印刷物で配布しました。

また、日本鳥学会でeBirdの利用状況とデータの活用事例をポスター発表し、eBirdに蓄積されたデータの調査研究への活用を呼びかけました。こうした活動を通じて、eBird Japanの利用者は約9千400人、観察記録は約25万件に達しました。


東京港野鳥公園ビッグデーのようす


『これを読めばわかる!eBird&Merlinの使い方』

関連リンク:eBird Japanこれを読めばわかる!eBird&Merlinの使い方

海洋プラスチック対策事業


エサと間違え弁当に使われる
バランをつつくオオバン

プラスチック汚染の地球環境への影響や、国際条約の動向を多くの方に知ってもらえるよう、オンラインセミナーを4回開催し、後日視聴を含め約2千人以上の参加がありました。そのうち1回は夏休みに親子・家族を対象に行い、プラスチックの削減や流出を防ぐために自分たちにできることを考えました。

また、減プラスチック社会を実現するNGOネットワークの一員として、マイクロプラスチックの発生源となる人工芝への助成金の見直し要望書を提出したほか、WWFジャパンとともに国際プラスチック条約の政府間交渉委員会に向けて政府との対話を行うなど、政策提言活動を行いました。

このほか、オーストンウミツバメを対象に、プラスチックによる海鳥への影響を把握するための調査を研究機関と共同で実施。会員や一般に呼びかけて、プラスチック類の野鳥への被害状況について情報収集を行い、計52件の報告がありました。

関連リンク:海洋プラスチックごみから、海鳥を守ろう

タンチョウ保護事業


整備した自然採食地を利用するタンチョウの親子

タンチョウの給餌への依存度を下げるために、北海道鶴居村の冬期自然採食地で、首都圏の大学生や地元のボランティア、企業のCSR活動により、タンチョウのエサとなるエゾアカガエルなどの生きものを増やす整備を行いました。冬に行った餌資源量調査では、エゾアカガエルを含む16科20種の生きものを確認。また自動撮影カメラの画像解析により、タンチョウが同所を安定して利用していることが確認できました。このほか、鶴居村主催の「タンチョウ再発見から100年フォーラム」では、タンチョウ保護に貢献した団体として、地域の保護関係者や団体とともに当会も鶴居村より感謝状をいただきました。

関連リンク:タンチョウ保護の取り組み

カンムリウミスズメ保護事業


GPSロガーを用いた
夜間調査のようす

カンムリウミスズメの営巣数を増やすため、静岡県の神子元(みこもと)島と福岡県の烏帽子(えぼし)島で人工巣を設置しました。これまでの平置きだけでなく、両島に2階建ての人工巣を設置し、上段の人工巣においてもカンムリウミスズメの出入りが確認できました。利用数も増え、安定して利用されるようになっています。また、神子元島がある下田市教育委員会主催の連続歴史講座において、カンムリウミスズメの保護活動について講演したほか、帝京科学大学と共にGPSロガーを用いた利用海域調査も実施しました。

関連リンク:カンムリウミスズメ保護の取り組み

オオジシギ保護調査/ツル分散事業

気候変動対策と生物多様性保全は同時に解決する必要があり、両者間のトレードオフ解消が重要です。オオジシギ生息地と太陽光発電所建設適地の重複、ツル類が越冬する水田地帯での秋耕の影響軽減などを調べ、政策提言等を行いました。

関連リンク:オオジシギ保護調査プロジェクトナベヅル・マナヅルの越冬地保全の取り組み

アカコッコ保護事業


アカコッコの森づくりの参加者

伊豆諸島の三宅島で、生息状況を把握するための個体数調査を島民15名の参加を得て実施。推定個体数は約9千600羽でした。また、アカコッコの利用地域を把握するため、GPSロガーを用いた調査を継続して行い、今回は2つが回収できました。オスの成鳥が越冬期に島内の山の中腹に行くことがわかったため、11月に現地を確認するなど、越冬期の環境についても情報収集を行いました。3月には林内の環境を整備するイベント「森づくり」を開催したほか、協定旅館の協力で島内のアシタバ畑に水場を設置しました。

関連リンク:アカコッコ保護事業

シマフクロウ保護事業


標識再捕獲のための印を
捕獲した魚につける

根室地域でシマフクロウの生息地1.3haを購入し、野鳥保護区を拡大しました。また、日高・根室地域の給餌場には合計160㎏の魚を追加し、釧路・根室地域に設置している4基の巣箱を維持管理しました。モニタリング調査として、日高地域の給餌を実施している近くの河川の支流において通年で餌資源量の調査を行い、春や秋の魚類遡上期には資源量が多くなる一方、冬季から初夏にかけての繁殖期には資源が少ない状況であることがわかりました。また、釧路地域の日本製紙株式会社社有林では、鳥類スポットセンサスによる継続的な調査を実施し、個体数や種の変化を把握しました。

普及活動としては、シマフクロウに関するオンライン講演やイベント出展、地域の子どもたちとの植樹などを通じて野鳥保護の重要性を広く発信し、市民の理解と関心を高める活動に力を入れました。

関連リンク:シマフクロウ保護の取り組み

サンクチュアリへの来訪者が好調


東京港野鳥公園では絶滅危惧種のサンカノゴイが人気を集めた

当会が運営に関わるサンクチュアリへの来訪者数が、ここ10年で最多を記録しました。コロナ禍の2020~2021年度には極端に減っていた来訪者が、前年度から回復し始め、直営の鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリでは過去最高の8千人弱を記録。また受託型の都立東京港野鳥公園では、19年ぶりに5万人を超え、根室市春国岱原生野鳥公園でも14年ぶりに1万人を超えました。今後とも、野鳥の生息地を保全しつつ、多くの方に自然の大切さを体感してもらうよう、運営していきます。

関連リンク:自然系施設の運営

普及事業

ツバメの子育てを見守る団体に感謝状を贈呈


ツバメの巣を見守る「東武鉄道株式会社 高坂駅・森林公園駅」(埼玉県)へ感謝状を贈呈

ツバメと人との共生が続くことを願い、ツバメの子育てをあたたかく見守ってくれている企業や団体に対して、感謝状を贈呈しています。2024年度は、支部から贈呈先の推薦を受け、あわせて20都府県31の団体に感謝状を贈呈しました。各団体の取り組みは、当会ホームページで紹介したほか、各地の地方紙等でも取り上げられました。

関連リンク:ツバメをみまもっている団体や企業のご紹介

初心者向けバードウォッチングを全国の支部と開催

バードウォッチングを通して野鳥や自然に親しむ方を増やすため、全国の支部と共催で「初心者向けバードウォッチング」を開催しています。双眼鏡の貸出や丁寧な解説などの工夫をし、初めての方も楽しく参加できる探鳥会です。1年間、全国22の支部で計83回開催し、のべ2千3百人が参加しました。

関連リンク:初心者向けバードウォッチングのご案内

バリアフリー探鳥会への取り組み

だれもがバードウォッチングを楽しめるよう、探鳥会のバリアフリー化に関する取り組みをすすめています。2024年度は、視覚障害者も参加できるバードリスニング講座や、個別支援学級の中学生たちとの野鳥観察などを行いました。また、横浜自然観察の森で車椅子利用者の利便性を考えるため職員向けのワークショップも開催しました。活動を通して、参考となる情報や手法を集積しました。

ポスター『日本を彩る美しい鳥』を発行


『日本を彩る美しい鳥』。
羽根の色をテーマに野鳥を楽しむヒントを提供したポスター

「羽根の色」に注目し、日本で見られるカラフルな鳥たちを、色ごとにグラデーションで並べたポスターを制作しました。保護色や構造色など、羽根の色に関する豆知識も紹介し、色の美しさやおもしろさを通して野鳥に興味を持ってもらえればと企画しました。2月から年度内に約5500部を配布しました。

関連リンク:色とりどりの野鳥を楽しめるポスター『日本を彩る美しい鳥』プレゼント!

野鳥に関するオンラインイベントを開催


オンライン探鳥会では
現地の野鳥のようすをリアルタイムで画面越しに紹介

全国の会員や支援者の方、野鳥に興味を持つ方を対象に、さまざまなオンラインイベントを開催しています。2024年度は、「オンライン探鳥会」や、「初心者のための安西さんのオンライン野鳥講座」など、年26回のイベントを開催し、約2万3千人の方が視聴しました。

関連リンク:オンラインイベントのご案内

高音域がクリアに聞こえる集音器「探聴サポート」を商品化


探聴サポート

年齢を重ね、高音域の音が聞こえにくくなった方にも、野鳥の声を楽しんでほしいとの想いから、バードウォッチング用の集音機の商品化に取り組んできました。試行錯誤の末に商品化にこぎつけ、利用した方からは、「世界が変わった」「ヤブサメの声が聞こえた」などと喜びの声をもらいました。

関連リンク:探聴サポート(バードショップオンライン「Wild Bird」のページ)

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事業報告・決算概要(事業報告2024(令和6)年度)

会長挨拶―「野の鳥は野に」の理念を社会に定着させるために 全文を読む

このコンテンツの内容は、以下のPDFファイルでもご覧いただけます。
※『野鳥』誌2025年7・8月号より抜粋

事業報告2024(令和6)年度(PDF:1.7MB)

このページのもくじ:
2024年度事業を振り返って2024年度決算のご報告

2024年度事業を振り返って

1934年に初代会長である中西悟堂が創立して以来、日本野鳥の会(以下、当会)は全国の支部等連携団体(以下、支部)や会員、支援者に支えられ、また、他の団体、企業、行政などと力をあわせて、人と自然が共存する社会の実現を目指して活動してきました。ご支援、ご協力いただいた皆さまに心よりお礼を申し上げます。


創立90周年記念のバナー

さて、2024年度は、2024年3月11日で創立90年を迎えたことから、『野鳥』誌7・8月号を創立90周年記念特集号とするとともに、ウェブサイトに特設ページを設け、当会の歴史を振り返り、未来について考える機会としました。

また、記念事業として原野を象徴する種であるチュウヒを取り上げ、5カ年計画の「チュウヒ保護プロジェクト」をスタートさせました。これらの周年事業に加えて、全国85の支部と協働しながら、野鳥を中心にした生物多様性の保全活動や政策提言、野鳥や自然を愛する活動を広げるための普及活動等に取り組みました。以下に、その成果を報告します。

日本野鳥の会理事長 遠藤孝一

日本野鳥の会理事長 遠藤孝一

1958年生まれ。当会理事長。日本野鳥の会栃木県支部副支部長、NPO法人オオタカ保護基金代表。長年、栃木県を中心に自然保護や環境教育、猛禽類の保護や研究に取り組む。現在、里山で生きものを育む農林業を営みながら「サシバの里自然学校」を運営。
著書に、『オオタカの生態と保全』(共編著、日本森林技術協会)、『日本のタカ学』(分担執筆、東京大学出版会)など

自然保護事業

絶滅のおそれのある種の保護については、これまで取り組んできたタンチョウ(湿原)、シマフクロウ(森林)、カンムリウミスズメ(海洋)に加え、上述したように新たにチュウヒ(原野)を取り上げ、各種の保護事業を積極的に展開しました。また、クロツラヘラサギに関する情報収集やマナヅル、ナベヅルの越冬地分散事業、アカコッコやオオジシギの保護活動も継続しました。

野鳥保護区のイメージ写真
当会の野鳥保護区は4千ヘクタールに

シマフクロウについては、3つがいのシマフクロウが利用する流域にある1.3ヘクタールの土地を購入し、新しい野鳥保護区を設置しました。これによって、当会の野鳥保護区は、4千ヘクタールを越えました。チュウヒについては、国内最大の繁殖地であるサロベツ原野とそれにつぐ繁殖地の勇払原野において、繁殖状況を調べました。また、地域の大規模イベントへの参加、勉強会や観察会の開催を通じて、地域での保護機運の普及・醸成に努めました。

風力発電や大規模太陽光発電等が、立地によっては野鳥の衝突事故や生息環境の消滅につながることから、自然エネルギーの問題にも取り組みました。環境省等による5件の検討委員会に委員として参加して提言を行うとともに、問題のある自然エネルギー発電事業計画に対しては、20件の意見書および要望書を支部等と連名で提出しました。

「プラスチック汚染から海鳥をまもろう」プロジェクト
海洋プラスチックごみ問題の特設ページ

海鳥への影響が懸念される海洋プラスチックごみの問題については、使い捨てプラスチックの削減や持続可能な社会の実現に向けて普及啓発するために、一般向けオンラインセミナーを3回開催し346名の参加がありました。親子向けには対面講座やオンライン講座を各1回行い61名の参加がありました。
さらに、プラスチックによる海鳥や海洋生態系への影響を把握するための調査を、研究機関と共同で行うとともに、会員や一般にも呼びかけて、プラスチック類の野鳥への被害状況について情報収集を行い、52件の報告を得ました。

市民科学としての野鳥観察の促進とデータの活用を進めるために、コーネル大学と共同で運営している「eBird Japan」については、参加者拡大を目指して愛鳥週間やバードウォッチングウィーク、Global Big Day に、キャンペーンやイベントを行い、合わせて約千人の参加がありました。また、識別アプリ「Merlin」を紹介するウェビナーを2回行い、約200名の参加がありました。

普及事業

野鳥や自然の素晴らしさや大切さを広める普及活動は、自然保護活動とともに重要な活動です。

その活動の中心は、全国各地の支部によって開催されている探鳥会です。今年度の全国の探鳥会の年間参加者は約6万9千人になり、ほぼコロナ禍前の水準に戻りました。また近年ではオンラインイベントも人気があり、当会主催で開催した26回の講座には、年間で約2万3千人が参加しました。

ツバメの巣を見守る企業・団体を表彰する事業では、19支部の推薦等により20都府県の31の企業・団体に対して感謝状を贈呈しました。この模様は全国25の新聞・テレビ等で報道され、当会のPRにも貢献しています。野生動物との関わり方について考える機会を提供する「野鳥の子育て応援(ヒナを拾わないで!)」キャンペーンも、日本鳥類保護連盟や野生動物救護獣医師協会とともに継続し、ポスターを11万枚制作して全国の学校や施設等に配布しました。

ツバメの巣を見守る企業・団体に感謝状を贈呈

財政

当会は国や地方自治体からの補助金等に依存せず、運営財源の大半を会費や寄付金、受託事業や収益事業として行う物販事業による収入によってまかなっているNGO(非政府組織)です。

下図に示すように、2024年度について年間約6億5千万円規模の公益活動を行いました。これらの活動費は、 ①入会金および会費 ②寄付および寄付を特定資産化した資産の取崩収入 ③受託収入等の自然保護・普及事業収入 ④収益事業からの繰入金、の4つのおもな財源からなっています。

2024年度は、会員からの会費が約1億1千万円、会員も含む支援者からいただいたご遺贈やご寄付は約6億1千7百万円にのぼりました。収益事業からの繰入金も1千2百万円となり、それぞれの収入が当会の公益活動を支える大きな財源となっています。

2024年度決算のご報告

この決算報告では、当会の「公益活動に関する決算数値」を、支援者の皆さまにわかりやすいよう、一部集計し直しております。公益法人会計基準に従った財務諸表等は、事業報告・決算をご覧ください。

事業活動収入

2024(令和6)年度決算の事業活動収入合計額は、11億1,481万円でした。入会金及び会費は前年度比で微減傾向が続いております。
今年度は、特にご遺贈や大口寄付をはじめ、沢山のご寄付によるご支援をいただき、大幅に収入が増えました。
※特定資産取崩収入は、特定の目的のための積立資産(主に過年度のご寄付)を、目的に沿って支出するために取り崩したものです。

事業活動収入計1,114,812千円(100%)の内訳を示す円グラフ。入会金及び会費110,202千円(10%)。寄付616,614千円(55%)。特定資産取崩収入※141,961千円(13%)。自然保護事業収入192,838千円(17%)。普及事業収入28,034千円(3%)。収益事業からの繰入金12,151千円(1%)。補助金3,300千円(0%)。その他9,712千円(1%)。

自然保護事業収入内訳
絶滅危惧種の保護活動 2,445千円 1%
野鳥生息地の保護・保全活動 25,859千円 14%
直営サンクチュアリ・受託施設を拠点とする地域の自然環境保全活動 164,534千円 85%
合計 192,838千円

事業活動支出

事業活動支出の合計額は、11億5,239万円でした。希少種やその生息地を守る自然保護活動やオンラインや各施設における普及活動等を積極的に展開いたしました。今年度いただいたご寄付の多くを次年度以降の資産として積み立てたため、特定資産取得支出が増えました。
※特定資産取得支出は、次年度以降特定の目的のために使用する資産を積み立てたものです。

事業活動支出計1,152,388千円(100%)の内訳を示す円グラフ。自然保護事業413,403千円(36%)。普及事業238,485千円(21%)。特定資産取得支出※466,076千円(40%)。固定資産取得支出11,319千円(1%)。管理費23,105千円(2%)。

自然保護事業内訳
絶滅危惧種の保護活動 45,625千円 11%
野鳥生息地の保護・保全活動 119,846千円 60%
直営サンクチュアリ・受託施設を拠点とする地域の自然環境保全活動 247,932千円 29%
合計 413,403千円
普及事業内訳
普及・教育・啓発活動 213,465千円 90%
広報・出版活動 20,811千円 9%
その他 4,209千円 2%
合計 238,485千円

今後も、こうした皆さまからの付託にこたえられるよう、野鳥を通して自然に親しみ自然を守る運動を推進してまいります。引き続きご支援くださいますよう、よろしくお願いいたします。

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よくある質問

野鳥に関する質問

バードウォッチングに関する質問

ショッピングや商品などについて

  • 会員でなくても商品は購入できますか?
  • どなたでもご購入いただけます。
  • 商品を海外へ発送してもらえますか?
  • 申し訳ありませんが、海外への発送は行なっておりません。

野鳥の写真や発行物に関する質問

  • 掲載されている、野鳥の絵や写真を貸してもらえませんか?
  • 当会では、野鳥の写真や絵は所有しておらず、お貸しできるものがありません。
    当会の発行物(出版物、パンフレットなど)やHPに掲載の作品には、個々に著作権が存在するため、当会から貸し出すことはできません。
    ●問い合わせ→共生推進企画室 広報グループ(TEL03-5436-2632)まで
  • 『野鳥』誌は、書店で購入できますか?
  • 会員向けの会誌ですので、書店では購入できませんが、1冊700円(送料込み)でお分けしています。
  • 『野鳥』誌のバックナンバーは入手できますか?
  • 在庫があるものは、1冊700円(送料込み)でお届けできます。
     詳しくは、http://www.wbsj.org/join/join-and-changes/yacho/ でご確認ください。

入会や会費に関する質問

  • 入会の方法を教えてください。
  • 入会のお申し込みには、3つの方法があります。
     (1) 当会ホームページからのオンライン入会
     (2) お申込書の郵送
     (3) バードショップ(当会の事務局内のショップ)での受付
     詳しくは、http://www.wbsj.org/join/join-and-changes/personal/admission/ へ。
  • 支部には何歳まで所属できますか?
  • 何歳まででも所属できます。
    また、会員期間の途中からでも、支部に入会できます。
    その場合、年会費は月割額で申し受けます。
  • いちど納めた会費の返金は可能でしょうか?
  • 年会費としていただいておりますので、途中退会の場合でも、原則返金はしておりません。

寄付や寄付控除に関する質問

  • 寄付金は免税になりますか?
  • 公益財団法人日本野鳥の会へのご寄付は、「所得税」「相続税」「一部自治体の個人住民税」について寄付金控除が受けられます。
    当会が発行する領収証を添えて、確定申告を行なっていただく必要があります。
    ※「相続税」に関しては、申告期限内に所定の手続きが必要です。詳しくは最寄りの税務署にご確認ください。
    ※支部へのご寄付は、任意団体への寄付となり、寄付金控除の対象にはなりません
    詳細はこちらでご確認ください。(寄付金控除のしくみ・個人)
  • 会費は寄付金控除を受けられますか?
  • 個人特別会員の本部年会費1万円分のみ対象となります。
  • ゆうちょ銀行に備え付けの振替用紙で、寄付ができますか?
  • はい、可能です。以下の情報をご記入のうえ、お振込みください。
    【郵便振替口座】 00140-5-740256
    【加入者名】 公益財団法人日本野鳥の会寄付

    ※通信欄にご寄付の内容と内訳をご記入ください。
    ※窓口でのお振込みのみ、手数料が免除となります。その際、「手数料免除の口座です」とお知らせいただくか、払込用紙の「備考」欄にあらかじめ「免」とご記入ください。

第 III 章 日本野鳥の会の活動と基本方針

1.日本野鳥の会の自然保護活動

 日本野鳥の会は、自然保護の重要性を理解する全国各地の会員・支部・支援者がそれぞれの立場で力を合わせ、野鳥を通して自然保護の推進を図る民間の団体である。活動の組織的な基盤は、全国各地の会員によって構成される支部と、役職員などによって構成される本部である。この両者の活動を有機的、民主的に結合し、総合的に保護活動を推進していく。活動の多くは、ボランティアとしての会員の参加を得て展開される。
 日本野鳥の会の自然保護活動は、次の5項目を柱に広範多岐にわたって展開される。人々の幅広い支援・協力を得て、具体的な保護策の推進や保護政策の検討・提言、保護対策を実現するためのキャンペーン展開を行なう「自然保護の社会的活動」、一人でも多くの人に野鳥や自然と親しみ、理解してもらうために、その美しさ、愛らしさ、素晴らしさへの感動を直接経験できるふれあいの場を設け、社会に対して日本野鳥の会の自然保護の考え方を広め、自然を守ることの理解者や支援者、会員を増やす「普及活動」、また、活動を客観的に進めるための自然および社会科学的データを収集する「調査研究活動」、そしてこれらの活動を支える財政基盤を作る「企画事業活動」や組織を強化するための「総務活動」である。これら諸活動は、日本野鳥の会の目的を達成するための重要な構成要素であり、それぞれが互いに密接に結び付けられている。
 普及活動と自然保護の社会的活動は、活動内容の捉え方がやや類似する場合もある。しかし、普及活動は、人々に自然保護の考え方を正しく理解してもらい、幅広い保護の支援者層を作ることが最終目的である。自然保護の社会的活動は、重要な野鳥生息地を保全し希少鳥類などを保護するような具体的な保護施策の実現などが最終目的となる点で、内容が異なっている。
 自然保護活動を責任をもって進める上で必要な資金は、日本野鳥の会では基本的には会内外の募金や収益事業などを行なって独自に調達するものとする。つまり、財政的に自主独立の「自立主義」を貫くこととする。これは、日本野鳥の会が自然保護のために自由で忌憚のない発言と制約されることのない独自の活動を続けていく上で、必要なことである。
 各々の活動内容は本部事務局各部の組織的な役割分担とは必ずしも一致しないことに留意して、ここではそれぞれの活動の基本的な方針を次に述べる。

2.自然保護の社会的活動

(1) 目的
   野鳥は生態系の中で高次消費者の性格を持ち、多くの野鳥が生息することは、そこに豊かな自然が存在することを意味している。従って、野鳥を保護することは、豊かで多様な自然を保護することにつながる。さらに、自然界の有機的共同体の一員である人間の健全な暮しを守ることになる。
 一方、自然保護が制度として十分に取り入れられていない状況では、保護活動の一端として社会及び諸制度を変革しないと、自然環境の破壊を防ぎ自然保護を積極的に進めることは困難である。
 日本野鳥の会は、個人と組織の力によって、少しでも多くの自然が守られるような社会体制を作り、野鳥や他の多くの野生生物の住む生息地や生態系を守ること、また、改変破壊された自然の回復にも積極的に関わること、そして、野鳥と自然と人間とのよりよい状況を実現することを自然保護の社会的活動の目的とする。
(2) 地域的範囲
   基本的には日本を中心とする地域である。この地域には、日本の渡り鳥が渡って行くロシア極東やアジア各地が含まれている。実際、日本で繁殖する多くの鳥が非繁殖期を過ごすアジア諸国での自然破壊が激しいこと、日本で越冬する冬鳥の繁殖地ロシア極東・シベリアも開発されていくこと、また、それらの破壊に日本などの先進国が深く関わっていること、さらに、地球規模の環境問題は一国の力では解決出来ないことなどから、国際的に保護活動を展開する必要性が高まり、会の保護活動の地域的範囲もその必要性と判断に応じて関係諸国に拡大される。
(3) 基本方針
   『日本野鳥の会は、自然を尊び守り賢明に利用することが人類の存続と幸福にとって不可欠であるとの認識にたち、野鳥を通して自然に親しみ自然を守る運動を、社会の信頼を得て発展させることによって、自然と人間が共存する豊かな環境をつくることに貢献する。』
1) 分かりやすい自然保護を進める
   地球規模に達した環境問題に人々の関心が高まり、今まで以上に様々な分野から多くの人々が自然環境保全のための活動に参加している。一方では、問題解決のためにかなり専門的な知識も要求される。このように不特定多数の人々が参画する状況下で効果的に運動を進め、成果を挙げるために、だれにでも分かりやすい自然保護を進めることが基本になる。そのために、一つ一つの保護活動を計画する初期の段階から将来を見通して、十分に保護計画の検討を行うこと、活動の展開理由や意義などの基本的な考え方、運動の目的や進め方などを一貫してはっきりと分かりやすく示し、参画する人々に正確に伝えること、そして、専門的な内容も分かりやすく広報して理解を深めるように努める。
2) 開かれた自然保護運動とする
  開かれた自然保護運動とする 日本野鳥の会の保護活動は、ウトナイ湖サンクチュアリの設置・運営やカスミ網の法規制運動などでも示されるように、全国の会員や多くの支援者などに支えられて成果を挙げているのが大きな特徴である。従って、いつでもより多くの人々の積極的な参画が得られるように、だれでもが参加しやすい運動の組み立てを常に計ること。
 また、全国の会員を中心として世論を起こし、広く社会に呼び掛け、自然保護の全国運動を展開して広範な保護問題を解決するために、賛同するだれもが自由に参画出来る運動であること。
 さらに、自然保護の団体間でも上述の趣旨を活動方針とし、日本やアジアの自然保護関係団体が協力し会えるように、その運動がいつでも、どこでも、どの団体に対しても開かれていることを原則とする。
3) 対話を重視する自然保護を進める
   自然保護の問題は、個人や企業などの思惑や利益と直接に関係するものも多く、関係者全員が納得するような解決方法を見いだすことは困難な場合が多い。保護を目指すものと開発を指向するものの意見が食い違うのは、ある意味では当然のことである。保護を目指す人々の運動論には多様性があってしかるべきであるが、日本野鳥の会では対話を重視する姿勢で自然保護を進める。つまり、あらゆる人々に自然保護を考え、会の主張を説明してもらう機会を提供する意味で、まずは話し合いの席に着き、会の主張を説明して公に広めること、そして出来る限り自然保護のために建設的な解決を見るように努力することを基本的な姿勢とする。
4) 責任ある自然保護活動を展開する
   日本野鳥の会は、保護活動の展開にあたって、社会からの正当な批判は謙虚に受け止め、また自らは責任ある発言をし、行動する。自然を守れ、守ろうと主張するときには、主張する内容に責任を持ち、また決着が着くまで継続的に保護活動を展開することに責任を持つべきであると考える。
5) 問題解決へ積極的に貢献する
   日本で最初に環境問題が注目された1970年代は、保護に関する問題点の指摘がまさに保護団体の重要な役割であった。それにより、社会に環境問題の存在そのものを気付かせる必要があったからである。今日では、環境問題については行政や企業なども相当の関心を示してはいるが、専門の保護団体がその解決方法に関して何ら発言しないのであれば、望ましい解決は期待し難い。従って、日本野鳥の会は、問題指摘のみではなく、問題解決のため積極的に貢献することを保護活動の基本方針とする。場合によっては、計画に真っ向から反対せざるを得ない場合もあるだろうが、解決策が考えられた場合にはそれを単に提案するだけではなく、自らが募金などにより資金を集めたり、知識・技術・労力などを提供したりして、解決に向けて極力貢献する。
6) 科学的資料に基づく論理的な展開を図る
   野鳥や自然の保護を遅らせた原因の一つに、政治的、経済的な判断やその力だけが先行し、判断の基礎となる野鳥や自然に関する科学的なデータの不足が挙げられる。自然保護の対策や施策を適切に進める場合、自然の現状、社会的や経済的な状況、そして心情的な問題などを総合して極力論理的に判断が下されなければならない。日本野鳥の会は自然保護の判断や決定が自然科学的・社会科学的な資料に基づき、論理的に行なわれるよう努力すること、また、会の保護運動は常にこれら科学的な資料を指針として推進する。
7) 現地主義をとる
   地域の自然保護運動については、地元の保護関係者の考え方を尊重する現地主義を採ることを基本方針とする。この際、地元と会の意見が異なる場合には、極力話し合いにより双方の理解と納得で活動を進める。国際協力においても同様で、それぞれの国の状況や考え方に応じて活動の内容や進め方を決定する。
8) 自然保護に貢献しない地域振興には参画しない
   地域振興には、自然環境を著しく破壊する場合もあれば、その地域の自然環境の特性を最大限生かして自然と人間との共存を目指すものもある。日本野鳥の会は、自然保護に貢献しないと判断される地域振興には、参画しない。
9) 行政や立法府へ積極的に働きかける
   日本野鳥の会は、その活動が特定の政治的な、或は行政的な判断や圧力などで歪められることなく、自主性を保って活動を進める。行政とは、必要とあらば対立もあり得るが、常には協力する柔軟性をもって対応する。保護施策の推進は、最終的には行政に対して実施を要請することが多くなるため、行政機構に対して自然保護の推進を積極的に働きかける。また、立法府に対しても、政治的には中立の立場から積極的に対応し、立法府の中に自然保護の理解が深められ、具体的な施策の推進が図られるような活動をすることとする。
10) 企業との協力関係は会の目的に照らして判断する
   日本野鳥の会は、会の目的に合致した場合には、特定の企業に偏ることなく、企業との協力関係を持つ。それらの企業が支援、協力と引き換えに会の目的に反する企業活動を行ったり、会の活動に圧力を加える意図の判明した場合などには、はっきりと発言し、保護の立場を貫くこと。
11) 国内団体間の連携を進める
   自然保護という困難な目的を達成するためには、自然保護や環境問題への積極的な貢献を図ろうと活動している多くの団体間で、経験の交流や連携活動が必要である。従って、日本野鳥の会は、それぞれの団体がお互いの個性を尊重し、立場の違う主張も相互理解のもとに、必要に応じて保護の共通の目的のために連携して行動する。
12)  環境問題が地球規模で論じられ、また、その早急な解決が望まれていることから、日本野鳥の会が保護活動を進めるに当たっては、国内の保護団体のみならず、広く国際的な機関団体と密接な連携を保つこととする。
 日本と渡り鳥を通じて結ばれ、歴史的文化的に密接な関係にあるアジア諸国の保護団体などとは、特に連携・協力の強化に努力する。
(4) 内容
1) 自然保護の社会的活動に関する全体の方針策定
   当面解決を迫られる保護問題の取り組みと同時に、長期的且つ全国的国際的な視点から、保護活動を展開するのに必要な基本方針を策定する。
2) 自然保護に関する資料と情報の分析
  調査研究活動によって収集、蓄積された資料・情報を分析する。その判断結果を保護活動に活用する。
3) 保護活動戦略の策定
(a) 活動対象の抽出
  保護活動を長期の視点で効果的に実施していくために、優先的に保護すべき種や地域、優先的に取り組むべき保護問題を全国レベルで総合的、体系的、計画的に抽出する。
(b) 保護活動の効果的な展開方法の検討
  保護運動の展開にはさまざまな方法が考えられるが、具体的な目標を設定し、限られた人材、物資、資金、情報、時間などの範囲内でより効果的な活動方法を明かにする。
4) 具体的活動の推進
(a) 活動実施のための体制作り
  具体的な保護運動や保護事業に関わる、人材、物資、資金、情報を含めた体制を作る。
(b) 独自の運動を展開する
  サンクチュアリの設置や土地の買い上げなど、日本野鳥の会の総力をあげて独自の活動を展開する。
(c) 社会への働きかけ
  運動が広い支持を得て進展するよう、直接またはマスコミなどを通じて社会へ働きかける。
(d) 行政、立法府などへの働きかけ
  運動の内容によっては、行政や立法府などへも働きかける。
5) 活動の結果と将来展望
(a) 評価
  保護活動が一段落する毎にその評価を行い、それを基にその後の展望を検討する。
(b) 報告と謝意
  日本野鳥の会の保護活動は多くの方々の支援協力を得て進められるため、運動の節目節目にはお世話になった関係者に報告とお礼をする。
(c) フォローアップ
  環境管理、監視追跡など、目標を達成した後のフォローアップを続ける。
(d) 広報
  保護活動の成果を報告書などで記録に残し、また機関誌、マスコミなどを通じて運動の意義を含めて広報する。

3.普及活動

(1) 目的
   普及活動の目的は、人々が野鳥を通して自然の素晴らしさに接し、自然のしくみに興味関心を示し、人間と自然との関わりを尊重する人々を増やすことである。さらに、自然保護問題や環境問題を考え、それを人間自身の問題として捉えて自然を守ろうと動機づけられる幅広い層の人々を増やすことも、重要な目的である。究極的には、「野鳥も人も地球のなかま」で表現されるような考え方を広め、そのために行動する人々が増えることにつながる。
 消費活動などで人々が少しづつ環境に与える影響の蓄積が大規模な環境汚染や自然破壊を起こしてきた実情から、私たち一人ひとりのライフスタイルの在り方が大きく問われている。これを本会の普及活動の目的に照らした場合、野鳥を通しての環境教育により、個人の段階で実行できるライフスタイルの変革に取り組む人を増やすことを意味する。
(2) 対象
   国民一般を基本的な対象とする。さらに、海外については、それぞれの国の保護団体や政府などを対象として、普及活動を間接的に支援する。
(3) 地域的範囲
   日本を基本として普及活動を展開する。しかし、国境を越えて自由に行き来する渡り鳥の保護には国際協力が不可欠であり、国際的に日本の役割が大きく期待されていることから、渡り鳥を通じて日本と関わりのある総ての国、特にアジア諸国、極東地域を重視する。但し、必要に応じてその他の国、地域に対象地域を拡大する。
(4) 内容
1) 野鳥や自然に接し親しむことを普及するための基本的な内容として
(a) 人々が自然のすばらしさに気付き、感銘すること
(b) 人間は自然と一体不可分のものとして存在すること
(c) 人々が生まれながらに持っている自然性を取り戻すこと
2) 野鳥や自然に関する知識を普及する基本的な内容として
(a) 野鳥を始めとしたいろいろの生物は、相互に、そして空気や水、土などの無機的な環境とも関わり合いながら存在していること
(b) 人間もそうした地球生態系の一員であること
3) 野鳥や自然を守る理由や方法を普及する内容として
(a) 会の理念が意味するものや会の自然保護の考え方、また個人個人が力を合わせて行動しなければならないことの理解を深めること
(5) 方法
   上述の内容を普及させるためには、人々が野鳥や自然の素晴しさ大切さに共感し、だれもが参加して自然保護活動の出来るような、機会や場を提供すること。また、自然と人間が共存するというコンセプトを共有する人々を増やしたり、会の活動に関連する知識や情報を提供することが挙げられる。そのための方法は時代とともに発展、改革されていくであろうが、会の創設以来各地で続けられている探鳥会のように、野外で実際にその機会や場を設定したり、サンクチュアリでの自然解説を実施したり、会誌「野鳥」などの出版物、視聴覚教材、イベントなどを通して行うのが基本である。
 普及活動の目的を達成するにあたっては環境教育の視点を重視する。野鳥を通しての環境教育のプロセスは、個人が野鳥に親しむことに始まり、野鳥を通してまわりの生きものとのつながりを観ること、そして自然界の相互関係を読んで、自然環境への興味を増していくことである。さらに、そうした自然への人間活動の影響にも関心を持つようになり、自然保護・地球環境問題への理解も深まり個人として「守ろう」と行動を起こす気持になること、である。この一連のプロセスには、野鳥とそれをとりまく総ての生きものや環境の問題が含まれるため、人々に広い視点と関心を持ってもらうことができる。従って、会の活動として地球環境のあらゆる問題に全般的に取り組まなくとも、個人個人の関心のレベルに応じて地球規模での環境問題にも取り組んでみようとする人を増やしていくことになる。野鳥を通した環境問題に積極的に理解と関心を示して行動する人が増えれば、環境に配慮したライフスタイルをとる人や地球環境の問題にも理解をもって行動を起こす人も増え、それは自然と人間との共存を目指す会の目的とも合致するのである。
 さらに、普及活動を広域的かつ継続的に進めるために、野鳥を通した環境教育の視点に着目して指導出来るリーダーの育成が重要である。また、サンクチュアリなどのフィールドを活用して得られる自然観察や解説の成果の一般化、教材化を行い、普及活動の内容や手法を一層充実させることが必要である。

4.調査研究活動

(1) 目的
   野鳥は、食物連鎖の頂点近くに位置する生態系内の高次消費者の性格を持つ。従って、野鳥が自然な生活を営める環境を保護するための調査研究は、多様な動植物が生息する自然環境を保護することに貢献する。そのような保護に役立つ調査研究が、日本野鳥の会の自然保護活動を進めるにあたっての基礎となる。自然科学による分析が、自然保護活動の目標を設定したり、具体的な対策を実施したりするために不可欠なのである。
 一方、自然保護活動は、社会活動として地域住民や広く一般の人々からの支持がなければ成功できない。従って、効果的に活動を進めるためには、地域や社会一般の価値観を形づくっている政治や経済、歴史、文化、民俗などについての調査、分析も必要である。
 日本野鳥の会の調査研究は、自然保護活動を行うにあたって、その目標設定や具体的な保護対策立案の基礎となる野鳥や自然環境についての自然科学的な資料や、野鳥と自然と人間活動との関係などについての人文・社会・文化的な資料を収集、分析、活用し、野鳥と自然と人間とのよりよい在り方を探ることを目的とする。
(2) 地域的範囲
   日本国内のほか、渡り鳥を中心に日本の野鳥保護との関わりや、日本との経済・文化活動などとの関係が深いアジア、太平洋地域を主な活動範囲とする。ただし、調査研究手法の開発などで必要があれば、さらに広い地域をも含めて活動する。
(3) 基本方針
   野鳥や自然環境及び社会環境の動静を把握し、人間活動が野鳥や自然に及ぼす保護上の問題点を整理、分析して、問題解決のための対策を立案すると同時に、保護活動の効果を評価する。自然保護活動の基礎となるこのような調査研究は、全国各地で必要とされている。このため、日本野鳥の会は、全国の支部や会員が積極的に調査研究活動を行えるような体制を整え、そのもとに会員参加による調査研究も展開する。また、関係各機関との共同研究も積極的に行う。
 調査研究の成果はいろいろな機会を利用して世に報告し、関連の問題が生じている場所で活用していく。
(4) 内容
  上記の方針に基づき、主として以下に述べる調査研究活動、調査研究体制の整備、報告を行う。
(1) 調査研究
1)‐1 自然科学的な調査研究
(a) 鳥類の重要生息地の監視
  鳥類の繁殖や越冬、渡りの中継地として重要になっている森林や湿地などの生息地について、鳥類の生息状況と環境の現況について継続的に調査し、変化傾向を把握する。環境については、地形や植生、水質など、その地域の環境特性を特徴づける諸条件を中心になるべく広く把握する。重要生息地としては、原生環境や大規模生息地、稀少種の生息地に加えて、開発が進行して相対的に重要となった大都市周辺の緑地なども含む。
(b) 鳥類と環境との相互関係に関する研究
  各地の事例の分析や各種鳥類の生態や行動、渡りなどの情報から、鳥と環境との諸関係を調べ、鳥の個体群や群集が維持されるのに必要な環境の諸条件を明らかにする。
(c) 希少種など生息状況の保全が必要な種の生態や行動に関する研究
  個体数の減少が著しく絶滅の恐れのある種や、開発などによる環境変化で生息状況に影響を受けている種について、分布や個体数、食物や採食行動、繁殖行動、社会構造、渡りなどを調べ、各種が生存のために必要とする諸条件を明らかにする。
(d) 鳥類の生息状況の保全のための研究と技術開発
  上記(b)および(c)の結果から、植生や地形など鳥類の生息環境保全のために必要な環境の維持方法や、都市地域などで喪失した自然環境の復元に関する理論や技術を研究開発する。また、保護区の設計計画や環境管理計画の立案などに協力しながら、生息環境保全のための実験も行う。
(e) その他、目的を達成するために必要とされる調査研究を行う。
1)‐2 社会・人文・文化的な調査研究
(a) 野鳥や自然と人間との関わりについての調査研究
  自然保護のためには、野鳥や自然と人間との関わりの基本的原理を認識し、理解することが大切である。従って、自然の価値・質の認識と評価、自然とのつきあい方、自然と人間との共存の在り方などについて調査研究する。
(b) 野鳥や自然の保護の課題に関する調査研究
  保護の問題や課題に関して取り組む際の考え方、方針、活動展開を明確にするため、問題の経緯や内容を整理分析する。この分野には、埋め立て、開発などの人間の自然への干渉、野鳥の減少や絶滅の原因、人為的な野生生物の移入や帰化生物、狩猟のあり方や制度、野鳥の商取引、野鳥による被害問題、給餌のあり方など、多岐にわたるものが含まれる。
(c) 自然保護の制度や体制に関する調査研究
  法律改正などの積極的な提言を行って基本的、長期的な自然保護活動の基礎を固めるため、現行の法体系及び立法行政の在り方について、外国の事例なども含めて調査研究を行う。
(d) 自然環境を保護するための社会学的調査研究
  自然科学的な調査研究の結果と密接に結び付いて、自然環境を守るための具体的事項に関し社会的な側面から調査研究を行う。例として、保護区、サンクチュアリなどの在り方、設計、管理運営;自然環境管理の手法や計画;その実施に伴う社会、経済、政治的側面の調査研究;国・地方自治体の定める土地利用計画や開発の実施状況の把握と将来計画の予測などがある。
(e) 野鳥や自然にやさしい技術開発の調査研究
  野鳥にやさしい環境作りや保護のための具体的な技術開発を進める調査研究を行う。これには、建造物のガラスの反射による野鳥への影響防止、野鳥による種々の被害防除、ミニサンクチュアリの設置や管理、人工給餌や植栽管理、音声やデコイなどによる野生生物の誘致、夜間照明の影響防止、航空機や高速車両などとの衝突防止、野生生物にやさしいU字溝の設置など問題解決への技術的側面の調査研究が主となる。
(f) 自然保護活動の方針、戦略に関わる調査研究
  日本野鳥の会としての自然保護活動に関して広く長期的な観点からその方針や戦略を立てるのに必要な調査研究を行う。国際・国内の人口・経済・政治・文化・生活水準などの推移、自然資源の消費・保全・管理レベル、世論の動き、政策内容と決定過程の研究、保護関連法律の検討、政財界・企業の動向、一般の人々の嗜好傾向など、広範な分野を取り上げ、情報を分析して会の方針、戦略の策定に役立てられる。
(g) 自然保護活動の進め方、運動論に関する調査研究
  自然保護活動を効果的に、効率的に進めるために必要な調査研究を行う。これには、探鳥会などの催しの企画運営や野外指導技術、野鳥を通した環境教育の在り方と普及、会員増加と退会防止、組織運営、活動資金の確保、マーケットリサーチと商品開発、活動成果の評価と広報などが含まれる。
(h) 自然保護思想や自然保護運動の歴史に関する調査研究
  自然保護の思想や運動などを分析、評価し、将来のより効果的な自然保護活動に生かすための調査研究を行う。
(i) その他、目的を達成するために必要とされる調査研究を行う。
2) 調査研究体制の整備
   各地で会員や支部などによる調査研究が活発に行われるように、人材育成のための研修会などを実施して、調査方法や解析方法を広めたり、内外の文献や資料を整理し、過去に行われた調査研究や他地域との比較を行なうため以下のことを実施する。
(a) 人材の養成
  個人や支部で調査研究を行うことのできる人材を育成する研修会を全国各地で実施し、調査研究法の普及を図る。また、大学院生や大学生など、現在調査研究に従事している若い研究者を対象とした、研修、指導の機会をもうける
(b) 文献資料の収集管理
  国内外の鳥類や生態学、自然保護に関係する学術雑誌や報告書、研究書、また社会科学分野の関連文献などを収集整理し、調査研究やその普及に活用する。
(c) 鳥類の生息状況と生息環境、保護活動のデ-タベ-ス作成
  本会が実施した調査結果や会員からの報告をまとめ、保護活動や調査研究活動に必要なデ-タベ-スを作成する。
3) 報告
   会員や職員の研究成果を公表できる機会を充実させたり、自然保護や環境保全関連の団体や研究者などに研究成果を広く伝えるために、以下のことを行なう。
(a) 研究誌の発行
  日本野鳥の会の事務局や支部、会員などが実施した調査研究の成果を公表するために、研究誌「Strix」などを発行する。それらに収録する論文は、鳥の生態にかかわるものや、自然保護活動の必要性や実施例について述べたものなど、会の調査研究の目的を達成する内容とする。
(b) 学会などでの発表
  鳥類学関係者や自然保護、環境保全に従事する研究者や技術者に広く成果を知らせるために、鳥類学、生態学、環境保全学、環境教育に関連する学会の大会などに参加し、また、学会誌などに論文の成果を発表する。
(c) その他の報告
  日本野鳥の会の会員に対しては、会の会誌を通して報告する。社会一般に対しては、調査研究の成果をわかりやすく広めるため、雑誌や新聞の記事、原稿や取材依頼、講演会の講師依頼などに協力する。

5.企画事業活動

(1) 目的
   自然保護団体の諸活動を進めるに当たって、理念や方法論を充分に検討しなければならないことは当然であるが、これと並んで重要なことはその活動を実施するに当たっての資金確保の方法論と活動である。従って、日本野鳥の会は企画事業活動を会の主要な活動の一つとして位置付け、会の自然保護の諸活動や組織運営の資金を調達すること、また、商品およびその販売などを通じて普及活動を側面から支援することをその目的とする。
(2) 対象
  会員及び広く一般を対象とする。
(3) 地域的範囲
  活動の地域的範囲は特に定めない。日本と、保護団体の企画事業活動支援を目的としてアジア諸国を主な活動範囲とする。
(4) 基本方針
   日本野鳥の会は自然保護団体であるから、一般の営利企業と異なる明確な方針と方法論が必要である。つまり、野鳥や自然に関する書物、物品の販売、様々なイベントなどの企画は自由に考えるべきであるが、それがいかに収益につながる可能性があっても、趣旨目的が自然保護と対立するものは会として実施しない。また、販売物やイベントの多くは野鳥や自然保護に関わるものであるため、それらに自然保護に関するメッセージや入会促進などを可能な限り積極的に取入れたりして、販売物やイベントそのものに自然保護の普及活動の視点を活かした企画事業を進める。
(5) 内容
1) 野鳥や自然保護に関する出版物の企画、発行、販売
2) 野鳥や自然保護に関する物品の製作、販売
3) 保護活動の募金などキャンペーンの企画、実施
4) その他

6.総務活動

(1) 目的
   自然保護の社会的活動、普及活動、研究活動、企画事業活動という日本野鳥の会の自然保護活動を効果的に進めるには、自己研鑽を奨励し、優れた人材を育成すると共に、その人材が活躍出来る組織を確立する必要がある。従って、日本野鳥の会の総務活動は、上述の4活動を支え、会の活動が効率よく円滑に進むように活動の取りまとめや調整を図り、また全国の支部・会員との連絡調整を行う。さらに、会の活動が正しく理解されるための広報を行い、また活動が効率的に進むよう関係団体などとの日常的な連絡調整を目的とする。
(2) 対象
  主な対象は役員、職員、支部、会員などであるが、内容によっては一般、他団体も対象となる。
(3) 地域的範囲
  特に定めない。
(4) 内容
1) 役員との連絡調整
2) 支部、会員との連絡調整
3) 事務局内の総合的な調整
4) 職員研修
5) 関係団体との連絡調整
6) 情報収集、広報サービス
7) その他

1992.9.11.完

第 II 章 日本野鳥の会の目的と性格

1.日本野鳥の会の目的

 理念と自然保護の考え方に基づいた日本野鳥の会の基本的な目的は、人間と自然との一体的な共存を図ることである。
一体的共存へ向けて日本野鳥の会の具体的な目的は、次のものである。
(1) 野鳥を通して自然の素晴らしさに接し、自然のしくみや人間活動との関わりに興味関心を覚え、自然を守っていこうとする人を増やす。
(2) 自然に親しみ保護する支援者の組織的な力を基に、野鳥や他の野生生物の生息する多様な生態系を守り、また、地域の自然の復元に積極的に関わり、自然と人間とのよりよい共存を実現する。
(3) 野鳥の生態、野鳥と環境とのかかわり、野鳥と人間との関わり等を明らかにして自然保護、環境保全のための自然科学的また人文・社会・文化的資料を蓄積、活用し、また、その成果を人間と野鳥と自然とのよりよい関係を築き上げる思想形成に資する。

2.日本野鳥の会の性格と役割

 日本野鳥の会の活動は、野鳥に親しみ、野鳥や他の多くの生きものたちの住む自然を保護することに重点を置いている。それは「野鳥にとって良い環境を守ることが、人間にとっても必要な暮しよい環境をつくることにつながる」との考えに立つからである。「あなたの自然との新たなつきあいが、自然環境を守ります」という呼びかけによって、大方の支援と広い視点をもって多様な自然環境を守り、最終的には自然と人間との共存をめざす団体である。
 日本野鳥の会は、会員や社会の幅広い層に支持されて活動する全国組織の民間自然保護団体である。会の名称だけからみると、野鳥好きの趣味の会、珍鳥を探し求める会など野鳥だけに目をむける集団あるいは野鳥研究学術団体というイメージが一般に強い。しかし、会は、野鳥にまず接し、野鳥に親しみ、野鳥から他の野生の生きものたちへと視野をひろげ、それらの生活する舞台である自然の素晴らしさを発見し、自然の美しさや神秘さに感動したい、そういう人たちの団体を目指している。自然にやさしい気持ちで「美しい自然・すばらしい野鳥たちの世界」に接し、その自然を大切にしようとする人たちの会なのである。従って、会員は野鳥そのものに強い関心を持っている人たちだけではなく、会の理念に賛同する人は誰でも参加・入会できる団体である。
 「野鳥・自然・地球」、「親しむ・知る・守る」をキイワードとして同じ目的に向かって活動する際に、年齢、性別、職業などにこだわり無く、会員だれもが自由に参加できる団体である。会員に一つ共通していることは、会員同士が、野鳥や自然への想い、心で結ばれている点である。日本野鳥の会の理念を根底としたバードウォッチングという知的で健全な活動に参加する人の情緒的な心の絆をも大切に考えている団体である。
 「あなたが会員でいることが、自然を守る力となっています」という表現で示されるように、バードウォッチングに出かけなくとも会の活動に参加しなくとも、「会員を続けることだけでも自然を保護する力となって会の活動を支えている」という考えの会員も増えており、こうした会員をも含めて多くの人の力によって保護活動を進めるため、特定な思想や過激な行動に偏ることなく、世論の支持を得るなかで野鳥とそれを取り巻く自然を守っていくのである。
 日本野鳥の会の活動には、やりがいを感知した会員誰もがその意志と力量に応じて、責任あるボランティアとして参画できる。力になる人を捜す会員、汗を流す会員、知恵を出す会員、資金を工面する会員などがおり、各地域の支部の諸活動やその運営に携わるのも会員である。一方、フルタイムで保護を進める本部事務局があって、支部の役員幹事やリーダーが中心となって地道に進める地域の幅広い活動を、全国的に支援している。
 各地域の活動は主に全国の会員や支部の力を中心に展開され、全国的あるいは国際的な活動は本部事務局を核として進展するのである。日本野鳥の会は、地域・全国・国際的な保護問題を会員、支部、本部の連携ネットワークによって取り組み、自然を守る活動を推進する財団法人である。従って、その活動は、支部、本部ともに社会一般にも強く働きかけていくものである。
 上記の性格を持つ日本野鳥の会は、次に述べる役割を担うものでる。
(1) 基本的役割
1) 日本野鳥の会は、人間に自らの意志を伝える術を持たない、人間社会からとかく無視されがちな野鳥や他の生きものたちを代弁し、人間による環境破壊から彼らの生息地を守る役割を担っている。
2) 自然環境の保全に対し、より理解ある社会へと社会自体を変えていく役割が、日本野鳥の会に課せられている。
3) 日本野鳥の会は、会員、支部、一般の人々などの支援、協力のもとに、財団法人として自然を守る公益的な事業を全国的国際的に展開する。
(2) 社会的役割
1) 日本野鳥の会は、直接の活動対象は野鳥であり自然であるが、その活動は人間との関連を抜きにして語ることは出来ない。自然環境の保全と人間諸活動とが調和の取れるよう、野鳥や自然と人間社会との橋渡し役としての、社会的役割と責任に応えていく。
2) 自然を守る活動は、公益性の高いものであり、政治、経済、文化など社会の諸活動と遊離しては効果が上がらない。日本野鳥の会は、野鳥と自然に親しみ、守るために関連する政治、経済、文化的な諸分野へ積極的に働きかけ、野鳥への愛と自然保護への関心を社会に浸透させ、その活動の成果を社会に還元する。
3) 日本野鳥の会が自然と人間との共存に向かって活動を続けるなかで、その活動が究極的に目指す意義を、常に社会に問いかけていかねばならない。それは、探鳥会などを通した会員個人個人の自然体験の域を越え、野鳥や自然を通しての社会を改革する運動の一環として社会に浸透させ、発展させていくことである。
4) 日本野鳥の会の活動には、自然との絆を肌で感じさせることによって、現代社会の人々がとかく忘れがちな人間も自然に強く依存した生きものであるという実感を呼び覚ます願いが、根底に流れている。物質的、金銭的な価値を追う人の多い昨今、自然から受ける、とかく薄れがちな人間の精神的、情緒的な価値を、自然と接する機会を通して培い高める大切な役割を担っているのである。日本野鳥の会は、野鳥や自然を通してより豊かな文化的、精神的な人間啓発の機会を増やすことによって、社会に貢献するのである。
5) 活動に参加する場が自然の中であっても室内であっても、会員同士はもちろん更に一般参加者との交流の場となり、日々の社会生活に潤滑油のような目に見えない大切な役割を担っている。
6) 人間社会の国境問題をよそに、渡り鳥は自由に行き来する。その野鳥たちを共通の活動対象とするとき、それに携わる人々の間に、国境や国家の主義主張の違いを越えて、協調協力の精神がみなぎる。この精神に基づき、日本野鳥の会の活動は、日本国内のみならず国際協力の分野でも積極的に展開され、その先駆的役割を果たしていくことになる。

第 I 章 日本野鳥の会の考え方

1.「野鳥も人も地球のなかま」

 人類は、誕生以来、さまざまな生きものと共に生きてきた。この長い歴史の中で、人間が自然と切り離しては存在し得ない基本的な関わりが形成された。その後、農業や工業を発達させることによって自然を破壊するという他の生きものにみられない力や技術を人間は行使してきた。しかし、進化の歴史の中で培われた自然への想いは、自然破壊が進む中でそれを抑止する効果として大きく関わってきたのではないかと考えられる。人間の自然に対するこの基本的な関わりは、今日までわれわれの心に脈々と生きている。そのため個々のケースでその表れ方は異なっても、時代を越えて自然保護の思想形成や自然を守る原動力となっているものと考える。
 第一次産業は自然との調和の中で安定して続けられていたが、近代国家へと脱皮成長するとともに、その安定に破綻をきたしていった。この過程は、欧米の産業革命にみられるように、無尽蔵とも思えた自然資源の過度の利用を引き起こし、その結果、自然の破壊に対する反省から自然を守るべきだとする近代的自然保護の考え方が出てきた。
 我が国では明治維新後、封建領主により守られていた大型の鳥獣類が乱獲により激減した。さらに、人間活動の拡大により自然環境の破壊も進行していった。今日の自然保護の考え方を述べる時欠かせないのは、一つの先駆的な動きとして1930年代から始まった野鳥に対するものである。当時、野の鳥を捕ったり、飼ったり、撃ったり、食べたりするのが、社会一般の風潮であった。これに対して野の鳥を自然にあるがままに親しもうと、1934年に創設者中西悟堂によって日本野鳥の会が設立された。この考えは、野鳥が第一次産業に有益であるというよりは、むしろ野鳥や自然に対する感性的な関わりを指向したものである。
 日本の自然環境は、戦後復興の経済優先政策によって大規模に荒廃していった。それにともない、野鳥の生息地が急速に失われていった。そのため、野鳥を守るにはまずその生息地である自然を守るという考え方が発展し、自然保護の考え方の重要な柱の一つとなっていった。そうした中で保護の活動を強化するために、日本野鳥の会は財団化され、社会的な役割をより強く担う組織へとなったのである。
 相次ぐ大規模開発計画などにより生活環境の悪化は人体への脅威とさえなり、公害や自然破壊が顕著となった。1970年頃から深刻な公害を契機として環境全般に対する関心が高まり、一般市民の参加する自然保護が芽生えた。学術的な価値は少なくとも、人間の生存に基本的に必要な環境として身近な自然を守ろうとする考え方が強まっていった。身近な環境問題としての自然保護の声は、自然破壊に対応してますます大きくなっていった。
 さらに1970年代のエコロジー運動の世界的な展開の中で、身近な問題から発展してより包括的な環境という共通の認識と理解がもたれるようになった。一方、宇宙から人間が初めて見た「ひとつの地球」を実感し、「かけがえのない地球」の世界的なコンセンサスも得られていった。つまり、自然保護から身近な環境問題、さらに地球規模での環境問題まで相互に関連しているという認識のもとで、自然と人間との関係をいかにより良いレベルで保つかという意識が不可欠となっていったのである。
 野鳥も人も「ひとつの地球」の仲間なのである。この考え方は、日本野鳥の会の創設当時の精神に通ずるもので、今日の保護運動の根底に受け継がれ、地球環境時代の自然保護の考え方として顕在化したものと考えられる。すなわち、人間と自然の長い関わりの歴史が形成した一体感を基礎に、地球規模の視点を持ちつつ人間を主体として判断し、自然と人間とが一体となって共存できる豊かな環境づくりを目指す考え方が、21世紀を越えて続けられるのであろう。

2.日本野鳥の会の理念

(1) 理念の明文化に際して
   日本野鳥の会は、1934年の発足当初から、創設者中西悟堂が唱えた「野の鳥は野に」という自然を本来のままに保護する主張を一貫して掲げてきている。以来、探鳥会をはじめ野鳥とその生息地を守る幅広い運動の実践には、自然の中で野の鳥と親しむことこそ野生の生きものと人間の関係における本来の姿であるという基本的な考えが、脈々と流れている。地球規模での自然環境問題に対しても、日本野鳥の会の根本的な主張はいささかもその輝きを失ってはいない。
人類の将来がかかっている自然との共存という今日的かつ永遠の命題に対して、会員や支部の役員・リーダーの皆さんの理解と協力を得て、日本野鳥の会の活動はますます発展し社会に対する重要性を増して、その責任はさらに重くなってきている。また、本会の活動を支援する層は年々厚くなり、関係者も多様化してきた。そこで、日本野鳥の会の発足当時の考え方やこれまで会として主張してきたことを集約し表現しなおして、本会の活動がどんな思想哲学に基づいて展開されているのかを誰の目にもわかるようにまとめて明文化したのが、以下の理念である。
(2) 理念の全文
   人間を含むすべての生きものは、過去40億年の進化の所産であり、この地球上で等しく生存する権利をもっている。私たち人間は、同じ地球環境に生きる一員としてこれら諸生物の生命を尊重しなければならない。自然は、人間の判断を超越して善悪虚偽のない、あるがままの姿で存在している。そこに自然のもつ根源的な価値があり、それ故にこそ、自然は人間が人間らしく生きるために大切な心の糧の源泉となっている。一方、自然界は、いろいろな生物とそれをとり巻く無機環境との複雑で微妙な相互関係の上に成り立っている。人間の無謀な環境破壊によってその相互関係を乱せば、自然界全体のバランスを大きくくずし、ひいては私たち人間自身の生存をもおびやかすことになる。人間は、適切な価値判断に基づき、自然を賢明に、永続的に保護し利用することによって、諸生物を含めた自然との共存をはかるべきである。
以上の基本的な認識にたち、日本野鳥の会は、野鳥を通して自然に親しみ自然を守る運動を展開していく。数ある生きものの中でも、野鳥はとりわけ人の目をひきやすく、いつでもどこでも老若男女の別なく人々の関心を呼び起こしやすい。国境を越えて渡り、大空を自由に翔ぶ鳥の姿は、万人の認める自由のシンボルである。また、野鳥は、姿や鳴き声、生態の千変万化によって人の心を和ませ、人間文化の創造の源ともなっている。野の鳥を野に守ることは、ほかの多くの生きものや、それらが生きる自然環境を守り、さらには私たち人間が安らかに暮らせる環境をつくり出すことにもつながる。日本野鳥の会は、このような考えと活動を世に広め、多くの賛同者を得て、自然と人間が共存する豊かな環境をつくることに貢献する。
(3) 理念の要旨(理念を一文で端的に表現して使う場合)
   『日本野鳥の会は、自然を尊び守り賢明に利用することが人類の存続と幸福にとって不可欠であるとの認識にたち、野鳥を通して自然に親しみ自然を守る運動を、社会の信頼を得て発展させることによって、自然と人間が共存する豊かな環境をつくることに貢献する。』
(4) 理念の解説
   日本野鳥の会の総ての活動が根源的にはどのような思想哲学に基づいているのかを述べたものが、理念である。その意味するところを共通のものとして認識できるように、以下に、理念の本文を追って解説することとしたい。
1) 生命の尊重
   生態系の重要な構成要素である生きものは、この地球上で40億年もの間、進化の流れのなかで歴史的に一体となって存続してきている。いかなる生命も、生命ひとつに軽い重いの違いはない。限りある地球上で、すべての生きとし生けるものが共に等しく生きる権利をもっているのである。自然界の一部であり、動物界の一員である私たち人間は、あらゆる生物の生命を大切にすべきである。
(a) 生命についての基本的な認識が、理念で最初に取り上げられている。それは、生命あるもの総てを尊重するということである。しかし、人間が生存するために一獣一鳥一虫たりとも捕ってはいけないということではなく、無闇に殺生してはいけないということである。
(b) 理念から展開されるものに、自然の中で捕食されたり傷ついたりしている生きものを、どう考え扱ったらよいかがある。日本野鳥の会は、自然界では、ひとつの生命が他の生命を育てていく食物連鎖が現実の姿である点を認識し、この生きとし生けるものの生と死の日々の生きざまをありのままに直視することが、ひとつの生命への基本的な態度とするものである。その上で、かわいそうだと思う憐れみの情、人間の自然な感情についても充分に配慮すべきである。
(c) 日本野鳥の会では、総ての生命を基本的に尊重するのであるが、野鳥を始めとしたあらゆる種を、特に人為的に絶滅へと追い込むことから守っていく。
2) 自然そのものの価値の認識
   自然は自然そのものであり、あるがままの姿で存在している。その自然には、人間の知識や感情での判断や解釈を超えた世界がある。人間自身が左右し得ない次元でのこれら自然がそのままに存在していることにこそ、自然の醸しだす根源的な無形の価値を認めることができる。その無形の価値は、いつのまにか、おそらく人間の進化のレベルでの長い関わりの結果、人間と自然とが一体化して、人間にとって欠かすことのできないものとして産み出されてきたものである。
 人間が人間らしく生きることは誰しも望むものである。そのためにも、心の健康は不可欠である。幼児の成長過程においても、また、人間が充実した生活を送るためにも必要とされる情緒的精神的な心の糧の大部分は、自然そのものに親しみ、心の琴線に触れることによって培われる。それは人工的な環境からは得にくいものだけに、この無形の価値を生みだす自然そのものを大切にしなければならない。
 日本野鳥の会は、これら人間のつくり出し得ない価値を産み出すあるがままの自然を、いつまでも大切に守るべきであると考える。
3) 自然には謙虚に
  地球上では、あらゆる生物同士が、また無機環境と、相互に複雑に関連し微妙な均衡を保って生存している。人間も例外ではなく、その生存と生活を自然に依存している。
 諸生物が、人間には無い、または人間が及ばない能力を秘めている一方、人間は他の動物に見られない畏敬の念、精神性や美意識、能力や技術などを持ちあわせている。科学技術の高度な発達により、人間は、自然や自らの生活環境すら改変し破壊する能力を手中にしている。さらに、人間は、他の生物を移植したり、遺伝子操作や核融合をしたり、宇宙空間に飛び出したり、自然界では起こり得ない実験を可能にしたりする技術力を持つようになった。これら人間のみが持つ力を欲しいままにして自然を破壊すれば、自然界全体のバランスを大きくくずし、自然資源ベースや生活環境を悪化させ、ひいては私たち人間自身の生存をも脅かすことになる。
(a) 地球の生態系そのものが宇宙からの影響を受けており、宇宙無くして地球の自然は語れない。しかし、理念では、地球そのものを、生態系の概念でも、人間の活動の場としても、一つの現実的な“有意の単位” として捉えている。
(b) 人間の英知、科学の力で知り得た自然は、自然界のわずかな部分と見るべきである。日本野鳥の会は、「自然の征服」といった不遜な表現とは無縁な、謙虚な態度で未知の世界が多く残されている自然に接すべきであると考える。
(c) 科学技術の進歩は、少なくとも一面では人間の生活にとっては有利な結果をもたらすことは否定し得ないが、科学技術をもって地球の限りある自然を無謀に破壊すれば、自然と人類の未来にとって、計り知れないマイナスの結果をもたらす恐れがある。日本野鳥の会は、人間のみが持つ能力を行使する責任を自覚し、自然を破壊や汚染から守り、自然の「健康管理」に最大限の注意と関心を払うべきであると考える。
(d) 自然環境をひとたび破壊したら、バランスのとれた複雑な生態系を本来の姿として再現させることは、高度の科学技術や限りなき時間と労力と資金などをつぎこんでも、極めて困難である。しかし、環境破壊が地球規模で急速に進むなかで、日本野鳥の会は、可能な限りの「自然」を復元する努力を払う必要があると考える。
4) 自然の賢明な活用
  他の生物と同様、人間も生活の場と生存のための資源を自然に依存しており、自らを自然から切り離しては生存し得ない。従って、人間や他の生きもののために、私たちはまず第一に自然の原状を維持するよう努めるべきである。その上で、心に傷みを感じる生物としての人間の適切な価値判断に基づき、感謝の気持ちを忘れないで、自然と自然資源を賢明に、永続的に活用させてもらうのである。
 日本野鳥の会は、科学的な、客観的な、また心を込めた適切な価値判断の域を越えて、無秩序にまた無制限に自然を改変、破壊してはならないと考える。自然保護団体として、常に自然を守る立場から発言、行動するものである。限られた狭い国土で次々と進む止めどなき開発に対し、「これ以上の開発はやめるべきである」を前提とし、地球規模での新しい環境倫理と経済秩序を目指すべきと考える。
 開発などによる自然改変の度合を計り知る尺度とするためにも、原生の姿をとどめる自然、質量ともに十分な代表的な生態系のサンプルとなる自然が確保されている必要がある。また、生態系の復元を可能にする知識や技術をより高いレベルへ引き上げるためにも、自然の構造や機能を解明する本来の自然が残されていなければならない。「まず自然ありき」を認識し、改変された自然環境を復元によって少しでも取り戻すための自然本来の機能を活用する方策も重要であると考える。
5) 自然と人間との共存
人間は諸生物を含めた自然との一体となった共存を図るべきである。
 地球上の生物の共存には、共生、寄生など間接、直接のかかわり合いから無関係に共存する場合まで多様な関係がある。自然との一体となった共存は、40億年の自然の歴史のなかで培われてきた諸生物や水や空気などすべてのものとの調和のとれた不可分な関係を保つことである。
6) 野鳥を通して地球を見る
  これまでに述べた基本的な認識に立って、日本野鳥の会は、野鳥を通して自然に親しみ、自然を守る運動を展開する。
 日本野鳥の会の活動の直接の対象に野鳥が選ばれたのは、理念本文の後段に述べているように、野鳥は種々の生きものの中でも、姿や声が極めて魅力的であるばかりでなく、芸術や文化など人との関わりにおいて特徴的な点が多いことによる。さらに大切な点は、「野の鳥を野に」守ることは、他の多くの生きものたちも住む自然の環境をも維持することになる。また、人間が人間らしく存在できる安らかな生活環境をつくり出すことにもつながる。
 人類共通の財産として地球上の自然を守ることには、誰もが反対し得まい。とりわけ生態系の一員として重要な構成要素である野鳥は、その保護の活動を社会で効果的に展開できる可能性が高い。また、多くの野鳥が渡りをして各国の関心の的となるので、地球規模での環境保全のシンボルとして国際的にも共通して受け入れられる。自然や生きものを対象として保護の道を歩む団体のなかで、日本野鳥の会は野鳥を通して自然を守る活動を展開するのである。
7) 地球規模での豊かな環境をめざして
  日本野鳥の会は、野鳥を通して自然に親しみ自然を守る運動を、社会の信頼を得て世に広め、多くの支援賛同のもとに、自然と人間とが一体となって共存する豊かな地球環境をつくり出すことに貢献する。
(a) 自然と人間との共存を実現するのに幾つかの進め方が考えられる。日本野鳥の会は、野鳥から始めて、野鳥や人間も含めた他の生きものの住み家である自然をみつめ、地球や宇宙への視点をも踏まえて自然を守る活動を進め、人類の究極のテーゼ・自然との共存を目指すのである。
(b) 地球環境とは、野生の生きものや人間が一体となって地球規模で共に生きていける豊かな環境のことである。日本野鳥の会は、地球規模でのそうした共存の舞台をより多くつくり出す幅広い活動に貢献するものである。
(c) 自然と人間との共存の道を選ぶことは、人類に与えられた使命であり、現代と同時に後の世代に対しても、この使命を伝えていく責任がある。日本野鳥の会はこの使命と責任を自らに課すものである。生きとし生けるものの生活基盤である自然を守る活動を続けることが、ひいては人間性豊かな社会をつくることになり、究極的には人類の永続、自由と平和と幸福につながることになると信ずる。

3.日本野鳥の会の考える自然保護

日本野鳥の会の考える自然保護とは、自然と人間との一体的共存の実現を模索する「自然環境保全」を基本的な考え方とする。自然環境保全とは、自然を本来あるべき健全な安定した状態で保護し、自然を尊びつつ、適切な価値判断に基づいて、賢明に、永続的に活用し、また改変された自然を元に近い状態に復元することによって、自然と人間との一体的共存を図る総括的な概念である。
一体的共存の実現手段の主要なものとして、自然の保護、改変された自然の復元、そして自然環境の維持と活用の3点が挙げられる。これらの手段のうち、目的に沿って最も適した方法を選択し、組み合せ、または使い分けて実行すべきであると考える。
(1) 自然の保護
日本野鳥の会は、野鳥も人も住める豊かな自然環境の保全を第一に考える。それは、当然、安定した多様な生態系を守ることである。野鳥と人との関わりを見ると、野鳥の存在は人にやすらぎ感をもたらすことが知られている。野鳥たちの生息環境を守ることは、人間にとっても望ましい生活環境をつくることになるという基本的な考えに基づいて、野鳥とその生息する自然を一体として守るのである。
あらゆる地域の自然のほとんどが開発その他の人間の影響を受けて改変され、孤立、分断された状態になりつつある実状から、日本野鳥の会は、残された自然は基本的に総て守るべきものとの立場をとる。特に緊急に守るべき地域は手遅れにならないよう積極的に守っていきたい。
1) 守るべき自然環境
  残された自然のなかでも、ある地域に本来存在する原生自然、人為圧の少ない二次的自然、このような自然をまず大切に守り、その自然の本質が損なわれないようにして後世に残していく自然の保護こそが、最も重要と考える。とりわけ生態系の「生きた標本」としても、わずかしか残されていない原生自然環境は総てそのままに最優先して保全し、あらゆる開発から守っていきたい。
 原生自然が人との関わりの強まるにつれてその姿を変えてしまった二次的自然環境は、野生生物や自然環境としての豊かさ、地域の生活や文化との結びつき、そして人間と自然との基本的なあり方などの判断基準に基づき、守っていくべきと考える。
 原生自然と相対する都市の自然環境も無視できない。特に都市住民の生活と関わりの深い自然も、後世に引き継ぐべき自然として保護の対象に考えている。
2) 守るべき野鳥の生息地
  野の鳥を野に守ることは、野鳥とその生息環境を一体として守ることである。健全な生態系が維持されれば、他のあらゆる生きものも守られるのである。日本野鳥の会は、なかでも種や生態系の存続が危ぶまれる希少な野鳥の生息地保全には、特に強い関心を払うものである。一度失われた生命体やさらに複雑な均衡を保つ生態系を人間が再創造することは不可能であるからである。
 さらに、普通に数多くみられる種であるが故に注目されないうちに、開発などで生息地が破壊され激減することのないよう、普通種の生息地の保全にも注意を払う必要があると考える。
(2) 改変された自然の復元
  残された自然を保護すると同時に、自然とはもはや言えないような改変・破壊された環境に人手を加えて自然を取り戻す方法も、必要と考える。原生自然環境と比べて人の関わりが強くなってしまった環境を出来る限りその地域のもとの自然に近い姿に戻していくのである。複雑で微妙な生態系の機能をも含めた自然環境を、科学技術の力で再現させるのは極めて困難ではあるが、次善の策として、日本野鳥の会は復元方法に期待を持って進めていきたい。
 この方法では、最低の努力目標を、生態学の知見に基づいてその土地固有の自然の状態に極力近付けることに置くべきである。まったくその地域に関係のない”自然”を人間が勝手に”復元”することは厳に慎まねばならない。従って、外来種の人為的な移入は、原則として特に禁止すべきであると考える。
 復元を意図する環境の当初の状態や復元の目的設定によって、復元の方法も異なったものとなる。単に人為圧を除くだけでは十分ではない場合もあり、自然の遷移にゆだねたり、人為的に遷移を促進したり、意図的に遷移のある段階を維持する場合もある。特に、特定の種に着目して保護対策が取られる時には、差し迫って必要とされる環境条件を整えることが、まず優先されるものと考えるのである。
(3) 自然環境の維持と活用
  日本野鳥の会は、基本的には自然をあるがままに保護していく。そして、保護された地域の自然を守る目的が何であるかによって、自然環境に必要最小限の手を加え、維持および活用する場合があると考える。
 保護されている自然地域の開発は当然許されない。そのような保護された地域は、一般に考えられている利用の見地からは一見無駄に寝かせているかのようにみえる。しかし、日本野鳥の会は、保護すること自体が、長期間の公益的な視点から、その地域の最良の”利用”であると考える。その上で、さらに必要であれば、自然の理解を深め一層多くの自然を守っていく力となる人々を育てるための環境教育や調査研究の場として、また自然や野鳥に親しみ、精神のリフレッシュなどの機会として、自然を不用意に損ねない範囲で自然環境の積極的な”利用”を計ることもある。その際に望まれる観察路や展望塔、ネイチャーセンター等の施設の必要性やその規模は、自然環境の質の維持、目的効果、環境条件等を考慮して判断されることが重要であると考える。

理念と活動

日本野鳥の会の理念と活動

財団法人 日本野鳥の会
1992

目  次

第 I 章 日本野鳥の会の考え方

  1. 「野鳥も人も地球のなかま」
  2. 日本野鳥の会の理念
    1. 理念の明文化に際して
    2. 理念の全文
    3. 理念の要旨
    4. 理念の解説
  3. 日本野鳥の会の考える自然保護
    1. 自然の保護
    2. 改変された自然の復元
    3. 自然環境の維持と活用

第 II 章 日本野鳥の会の目的と性格

  1. 日本野鳥の会の目的
  2. 日本野鳥の会の性格と役割

第 III 章 日本野鳥の会の活動と基本方針

  1. 日本野鳥の会の自然保護活動
  2. 自然保護の社会的活動
  3. 普及活動
  4. 調査研究活動
  5. 企画事業活動
  6. 総務活動

事業計画・予算/事業報告・決算

事業計画・予算

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事業報告・決算

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