アカコッコ保護事業

アカコッコ保護事業

日本固有種のアカコッコは、主要な生息地の1つ三宅島で、人が放したイタチなど新たな捕食者の出現や、噴火や離農による生息環境の変化などが影響し、大きく数を減らしています。こうした環境の変化は、アカコッコだけでなく島の生物多様性にも大きな影響を与えています。当会は、アカコッコを島の自然保護のシンボルとして、その保護に取り組んでいます。

保護活動の最新情報

アカコッコとは

特徴

  • ツグミ科ツグミ属(学名 Turdus celaenops / 英名 Izu Thrush)
  • 全長 約23cm
  • 日本固有種で、伊豆諸島やトカラ列島など限られた地域の島々に生息します。国の天然記念物に指定されています。環境省により絶滅危惧ⅠB類に指定されるほど個体数が減少しています。

アカコッコの生息地

アカコッコの生息地(赤塗の地域で繁殖)

照葉樹林や二次林を好み、アシタバ畑や民家の庭など人に近い環境も利用します。地面に降りて落ち葉や土の下の昆虫やミミズなどを食べるほか、樹上で果実も食べます。木の上に草や苔でお椀状の巣を作り、一腹あたり3~4個の卵を産み、雌雄が協力して子育てをします。

アカコッコの親と巣立ちビナ

アカコッコの親と巣立ちビナ

  • アカコッコの鳴き声はこちら

重要な生息地の1つが伊豆諸島の三宅島です。一年を通して生息していますが、季節により見られる数が変化するなどそのくらしにはまだ謎が多い鳥です。

アカコッコが減った理由

アカコッコは、島という捕食者となる哺乳類がいない環境でくらしていました。ところが、三宅島では、農業被害を減らすため、ネズミの捕食者となりうるイタチを放しました。

1970年代に行なわれた公式放獣は、イタチの導入による島の生態系への悪影響が懸念されたため、オスに限るなど、慎重に行なわれました。しかし、非公式に行なわれた80年代の再放獣では、メスも一緒に放たれたため、イタチが島内で定着、増加するという事態を招きました。

こうして増えたイタチは、アカコッコの新たな捕食者となり、アカコッコは絶滅の危機に瀕するほどに減少してしまいました。

アカコッコの捕食者となったイタチ

アカコッコの捕食者となったイタチ

火山の島でくらしてきたアカコッコにとって、噴火による個体数の増減は自然の流れなのかもしれません。三宅島では2000年の噴火後にアカコッコの個体数が減少しましたが、時を経て徐々に森に緑が戻り、アカコッコが少しずつ増えてきています。それでもイタチ導入前に比べると、四分の一ほどの数しかいないと考えられています。次に何かアクシデントが起きた時に、アカコッコがどれくらい持ちこたえられるかが心配されます。


噴火の影響により枯死した樹木(撮影:青谷知己)


2016年の樹木の様子

保護への取り組み

当会は、アカコッコの個体数の増加を目的に、2012年から重要な生息地である東京都三宅島を中心に調査や環境整備、普及教育活動などを行なっています。

当会の活動が後押しとなり、2020年にはアカコッコが「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」による「国内希少野生動植物種」に指定され、国が保全のために必要な措置を講じることができるようになりました。

こうした当会のアカコッコの保護の取り組みは、カンムリウミスズメの保護の取り組みと共に、三宅村の小学校の副読本にも掲載されています。

目 標

  • アカコッコの生息地を増やすための森づくりモデルの考案と普及
  • 三宅島における森づくり作業の実施
  • 外来捕食者(イタチ等)への対策

図

これまでの活動

●アカコッコのくらしを調べる(調査の結果)
●アカコッコの生息地を守る(生息環境の保全)
●イベントなどの普及活動
  • 二代目江戸家小猫さんと森づくり
  • 三宅島産業祭での取り組み
●三宅島の自然保護の拠点
●アカコッコ保護事業年次報告書

活動へのご支援のお願い

アカコッコの保護活動は、日本野鳥の会へのご寄付などを基に活動を進めています。アカコッコをはじめとした島の生きものたちのために、ご支援をお願いします。

●ご寄付の種類や方法については資料またはホームページをご覧ください

オンライン寄付はこちら

●アカコッコのグッズを購入することで活動を応援。

アカコッコグッズ

オンラインショップはこちら

※本事業は、手島基金と多くの方からのご寄付を基に活動させていただいています。

野鳥と高病原性鳥インフルエンザ(過去の記事)

過去の記事一覧

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世界一斉個体数調査(2020年)

2020年10月7日

2020年クロツラヘラサギ世界一斉個体数調査の結果

日本クロツラヘラサギネットワーク・日本野鳥の会

東南アジアの各国が協力して毎年1月に実施している「クロツラヘラサギの世界一斉センサス」(主催:香港バードウォッチング協会)の2020年の結果がまとまりましたのでお知らせ致します。

この調査は、絶滅が危惧されているクロツラヘラサギの越冬個体数と分布を知るために日本、韓国、中国、台湾、香港、ベトナム、タイ、フィリピンなど東南アジアの自然保護団体が参加し、毎年実施しているものです。

日本でも九州や沖縄などの越冬地で、「日本クロツラヘラサギネットワーク」や日本野鳥の会の支部の会員が調査を行っています。2020年の国内での調査は1月17日~19日に、1都9県62か所、70名を超える協力者を得て行われました。

1.2020年クロツラヘラサギ世界一斉個体数調査結果の概要

2020年のクロツラヘラサギの世界一斉センサスは1月17日~19日にかけて行なわれました。調査結果は各国からの報告に基づき、香港バードウォッチング協会(HKBWS)が取りまとめを行なっています。
2020年の調査では、前年より401羽(9.0%増)増えて4,864羽が確認されました。

主要な越冬地は台湾で、2,785羽が観察され(15.7%増)、世界全体の約57%を占めます。増加した地域は韓国で14羽(60.9%増)、中国本土で44羽(4.4%増)。日本では6羽が増え544羽が観察されました(1.1%増)。減少傾向が、后海湾、マカオで見られています。

表1. 地域別のクロツラヘラサギの記録数

場所 2018年調査 2019年調査 2020年調査 前年比
(2020年-2019年. 羽数)
前年比
(2020年/2019年. %)
台湾 2,195 2,407 2,785 378 +15.7
后海湾(香港、深セン) 350 383 361 –22 –5.7
中国本土 744 990 1034 44 +4.4
日本 508 538 544 6 +1.1
ベトナム 65 65 60 –5 –7.7
マカオ 50 53 40 –13 –24.5
韓国 26 23 37 14 +60.9
タイ 0 1 0 –1 –100
カンボジア 0 0 0 0
フィリピン 3 3 3 0 ±0
合計 3,941 4,463 4,864 401 +9.0

(HKBWSの集計に基づく)

2.日本におけるクロツラヘラサギ一斉個体数調査の結果

日本クロツラヘラサギネットワーク・日本野鳥の会

2020年、日本国内では、前年より6羽多く、計544羽が確認されました(1.1%増)。熊本県が最も多く226羽が観察され、次いで、福岡県89羽、佐賀県78羽、鹿児島県69羽、山口県31羽等となっています。

日本におけるクロツラヘラサギの記録数の推移
図1. 日本におけるクロツラヘラサギの記録数の推移

クロツラヘラサギの記録個体数の県別の推移
図2. クロツラヘラサギの記録個体数の県別の推移

表2. 県別に見たクロツラヘラサギの記録数の推移
県別に見たクロツラヘラサギの記録数の推移

種の保存法と当会で保護事業を進めている種

当会の絶滅危惧種保護の基準と目的

種の絶滅を防ぐことは、生物多様性を維持するにはもっとも効果的な手法です。また、その種の生息環境を保全することは、その生態系に棲む多くの種を守ることにつながるという考えのもとに、当会ではさまざまな絶滅のおそれのある種の保護事業を行なっています。

保護に取り組む種を選ぶ基準は、

  1. 環境省版レッドリストおよび国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅のおそれが高いこと
  2. 日本が主要な生息地であること
  3. 国など他の主体による保護が不十分な種であること

などです。

シマフクロウやタンチョウなどは国等が保護事業を行なっていますが、生息地が私有地の場合には、買い取り等の保護手段がとれないため、当会では野鳥保護区の設置という手法で保護事業を実施しています。また、ナベヅル・マナヅルでも環境省による保護事業が行なわれていますが、鹿児島県出水市での鳥獣保護区の事業としてしか位置づけられていないため、新たな越冬地を形成する事業を当会が担っています。

絶滅から守るための法律「種の保存法」が作られたきっかけ

種の絶滅を防ぐための法律に、平成5年に施行された「絶滅のおそれのある野生動植物種の保存に関する法律」(以下「種の保存法」)があります(図1参照)。もともとレッドリスト掲載種数に対して、種の保存法で取り扱う国内希少野生動植物種の数が少なすぎるという批判があったため、2013年に法改正があった際に、2020年までに新規に300種を追加指定することになりました。また2018年の改正の際には、さらに2030年までに700種を追加指定することを目指すとされました。

【図1】絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律の概要
(平成4年6月制定・平成5年4月施行)

表1 を見ると鳥類は他の分類群に較べて国内希少野生動植物種に指定されている割合が高く、一見手厚く保護されているように見受けられます。これは、種の保存法の成立以前にあった「特殊鳥類の譲渡等の規制に関する法律」に指定されていた種が、種の保存法成立に伴い、そのまま指定されたことによります。この法律は「日米渡り鳥保護条約」の締結を機に鳥類の保護をより進めるために作られた法律ですが、種の保存法の成立に伴って廃止され、対象の種は種の保存法の国内希少野生動植物種に移行されました。

【表1】種の保存法指定種数と環境省レッドリスト指定種数一覧

分類群 A種の保存法
国内希少野生動植物種
B環境省レッドリスト
絶滅のおそれのある種
A/Bの割合 保護増殖事業
(計画数)
生息地等保護区
(箇所)
鳥類 39 98 40% 15
哺乳類 12 33 36% 4
爬虫類 8 37 22% 1
両生類 13 29 45% 1 2
魚類 7 169 4% 4 1
昆虫類 46 363 13% 10 1
陸産貝類 19 616 3% 14 1
甲殻類 6 65 9%
植物 143 2,266 6% 16 3

平成5年以降の施行開始後に追加指定された種は、ヘラシギ、チュウヒ、シマアオジ、クロコシジロウミツバメ、オガサワラヒメミズナギドリ、ワシミミズクの6種にとどまっています。

レッドリストと種の保存法のちがい

では、国内希少野生動植物種はどのようにして選ばれているのでしょうか。絶滅のおそれのある種のリストとして、レッドリストがあります。レッドリストは評価の時点で得られているデータを用いて科学的な見地から選定されているものです。そのため環境アセスメント等では重要種として評価の対象になります。

アメリカのように絶滅のおそれのあると評価された種を自動的に指定種とするという考え方もありますが、国の予算や人員には限りがあり、指定しても捕獲・流通の禁止以外はなんの対応もできないということが考えられます。また、種の指定は法律による禁止などを伴いますので、他の省庁との調整も必要です。

国内希少野生動植物種に選ばれる基準

国内希少野生動植物種の候補を選定する基本的な考え方は、次のように示されています。

(1)希少野生動植物種保存基本方針
(ア)絶滅のおそれが高い種
(イ)生息地等が消滅しつつあることにより、絶滅のおそれがある種
(ウ)分布域が狭くかつ、生息環境の悪化により、絶滅のおそれがある種
(エ)分布域が限定されており、かつ、生息地等における過度の捕獲又は採取により、絶滅のおそれがある種

国内希少野生動植物種は、これら4つの条件で選定された候補種のなかから、国として保護施策に取り組んでいく種として指定されます。

さらに、これらの種の中でも、以下のような種は優先度が高いとされています。

  1. 捕獲・採取圧が減少要因となっており、全国的に流通する可能性がある種
    鳥類は鳥獣保護管理法で捕獲が禁止されており、この条件はあまり当てはまりらないが、マニアが多い高山蝶やランの仲間などが該当する。
  2. 固有種が多く生物多様性が豊かな島嶼等、国内でも特に重要な生態系が見られる地域に分布する種
    最近多くの陸生巻き貝が小笠原で登録されたのは、この例。
  3. 分布範囲や個体の行動範囲が都道府県境をまたいで広域に及ぶ種イヌワシなどの猛禽類は、この視点で登録されている。
  4. 国境を越えて移動する種や国際的に協力して保全に取り組む必要がある種
    シマアオジやヘラシギが2017年に指定されたのは、この例。一見、国内では有効な保護施策がないよ
  5. 有効かつ汎用性のある保全施策の手法や技術を確立するために先駆的に取り組む意義がある種
    最近、生息地での人工飼育の試みが行なわれているライチョウなどはこの例に該当。

この他、その種の生息地を保全することで、同じ場所に生息する複数の絶滅のおそれのある種が保全されることが期待できる種であることも判断要素となっており、例として、チュウヒの指定が挙げられます。

国内希少野生動植物種に指定されると行なわれる保護策の例

では、国内希少野生動植物種に指定されると、どのようなことが行なわれるのでしょうか。

1.捕獲や譲渡し等、輸出入の禁止

すべての指定種について、捕獲や譲渡し等、販売目的での陳列又は広告が禁止されます。また、輸出入も禁止されます。「譲渡し等」という言葉はふだん聞かない言葉ですが、生死にかかわらずその個体そのものや羽などの器官や加工品の譲り渡し、販売、貸す、もらう、借りる等の行為全般を指しています。羽などの利用のための捕獲を抑制する効果があります。

2.生息地等保護区

また、生息地が局所的でかつ良好な状態が保たれている場合には、「生息地等保護区」の指定が行なわれます。生息地等保護区では、環境を改変する行為が原則として禁止されているほか、場合によっては立ち入りの規制や、その種の餌生物の捕獲や車の乗り入れ、薬剤散布などが禁止されます。規制が厳しく、現在全国で9か所しか指定されていません。

鳥類の場合は行動範囲が広いことと、鳥獣保護区の特別地区という仕組みが使えることから、生息地等保護区の指定例はありません。

なお、種の保存法の第34条には、生息地等保護区に限らず「土地の所有者又は占有者は、その土地の利用に当たっては、国内希少野生動植物種の保存に留意しなければならない。」、第35条には、「環境大臣は、国内希少野生動植物種の保存のため必要があると認めるときは、土地の所有者又は占有者に対し、その土地の利用の方法その他の事項に関し必要な助言又は指導をすることができる。」との条文があり、オオタカが国内希少野生動植物種の指定が解除される際に、里山の開発との関連が議論されました。

3.保護増殖事業

種によって積極的な保護手法がある場合には、保護増殖事業が行なわれます。鳥類では、現在15種で保護増殖事業が行なわれています(表2)。保護増殖事業は環境省だけでなく、農林水産省や国土交通省などの他省庁や自治体も関与して取り組みが行なわれています。

【表2】 「種の保存法」対象鳥類44種のリスト( 赤字 は保護増殖事業計画策定種) *亜種

種名 種名 種名
シジュウカラガン オジロワシ アカコッコ
エトピリカ オオワシ オオトラツグミ*
ウミガラス クマタカ ヤイロチョウ
ヘラシギ カンムリワシ チシマウガラス
アマミヤマシギ ハヤブサ オオヨシゴイ
カラフトアオアシシギ ライチョウ オーストンオオアカゲラ*
コウノトリ タンチョウ ミユビゲラ
トキ シマアオジ ノグチゲラ
クロツラヘラサギ シマクイナ アホウドリ
キンバト ヤンバルクイナ クロコシジロウミツバメ
アカガシラカラスバト* オガサワラカワラヒワ* オガサワラヒメミズナギドリ
ヨナグニカラスバト* ハハジマメグロ* セグロミズナギドリ
イヌワシ オオセッカ ワシミミズク
オガサワラノスリ* アカヒゲ シマフクロウ
チュウヒ ホントウアカヒゲ*

4.国際希少野生動植物種

種の保存法には、国内希少野生動植物種と国際希少野生動植物種とよばれる指定種があります。種の保存法は、もともとワシントン条約の批准に伴い、国際的に流通が禁止されている種の国内流通を規制するためにつくられた法律で、国際希少野生動植物種には、ワシントン条約の附属書1に掲載されている種と渡り鳥保護条約等で相手国から保護の要請のあった種が指定されています。

附属書1にはコンゴウインコなどが含まれており、登録をしたもの以外は流通が原則禁止されています。象牙などの流通規制もこの制度によるものです。後者にはトキやマナヅル、ナベヅルが含まれていて、国内希少野生動植物種と同様に譲渡し等販売のための広告陳列が禁止されます。日本は、中国、アメリカ合衆国と並ぶペットの輸入大国で、渡り鳥保護条約等での取り組みも海外の絶滅危惧種の保全には重要な仕組みです。

近年の、種の保存法の改正と改正のポイント

種の保存法は、1993年に法律が施行されて以来、20年間そのままでしたが、最近は2013年(図1 参照)と2018年(表3 参照)の5年おきに改定が行なわれました。

【表3】 2018年改定のポイント

特定第二種国内希少野生動植物種の制度を創設
里山の管理作業などの人為的な撹乱を受ける事によって維持されている二次的な環境に生息する絶滅危惧種 の保全に関して、調査研究や里山の管理作業、環境教育が重要なことから、販売や頒布目的についてのみ捕 獲や譲渡し等の規制を設ける。

認定動植物園制度の創設
一定の基準を満たす動植物園を認定動植物園に認定し、譲渡し等の規制を解除

国際希少野生動植物種の登録義務
登録票の更新手続きを創設、可能な種についてはマイクロチップ等の装着を義務付け、象牙の取引業については届出制から登録制変更

その他
第二種特定国内希少野生動植物種の保全のために対象種名を伏せた生息地等保護区を設置できるように変更、 国際希少野生動植物の国民からの提案制度の創設、科学委員会の法定化


2018年の改定の際に、衆参両院で付帯決議として5年後の見直しが記述されていますので、次は2022年の通常国会で改定の議論が行なわれます。

国民からの提案制度は2013年の改定の際に付帯決議に書かれたため、運用で行なわれていましたが、今回の改定で法制度化されました。シマアオジとチュウヒ、アカコッコの国内希少野生動植物種の指定は、当会の提案によるものです。

今後見込まれる課題と海外の例との比較

2018年の法律改正に伴って行なわれた科学委員会の設置は、国内希少野生動植物種の指定の経緯が不透明で問題があると、当会をはじめとしたNGOが設置を求めていたものです。2018年12月に第1回の希少野生動植物種専門家科学委員会として開催されましたが、本格的な議論はこれからです。また、現在の議論では、検討過程がどの程度透明なものになるかがまだわかりません。
議論を不透明なものにしている理由は、国内希少野生動植物種への指定検討の情報が広まることで駆け込みでの捕獲や採取が行なわれるおそれがある、ということです。アメリカなどでは保護を行なう民間のNGOが多数あり、監視が十分に行なわれるため、検討中の情報も公開されています。それに比べると、日本はまだ残念な状況です。また、新設された特定第二種国内希少野生動植物の指定と、これに基づく規制の緩やかな生息地等保護区の指定は、里地・里山の保全に関して重要と考えています。

さらに現在、環境省版レッドリストのほかに、2017年に公表された海洋生物レッドリストが存在しています。漁業対象種を水産庁が評価し、底生生物やサンゴなど水産資源以外を環境省が評価し、別々に公表されています。
環境省版は国際自然保護連合のIUCNに準拠した評価を行なっていますが、水産庁版では評価基準が異なっており、94種を評価したうち、データ不足の1種を除き、すべてランク外となっています。マグロなど中西部太平洋マグロ類委員会(WCPFC)など別の仕組みで評価されているものも対象外となっています。将来的には、海洋保護区の設置や洋上風力発電の影響の検討のために、この2つのレッドリストを統一していくことも重要と考えます。

国内希少野生動植物種に指定された後、その指定が解除された種は5種のみです。そのうち、ルリカケスとオオタカ以外のダイトウノスリ、ウスアカヒゲ、シマハヤブサはレッドリストで絶滅と評価されて指定が解除されています。これらのことは、いちど絶滅のおそれのある状態に陥ると、ふたたび状況が改善するのは困難なことを示しています。いちばん大切なことは、種が絶滅のおそれのある状態になる前に、対策をとることです。

シマアオジの調査・保護活動

シマアオジ

北海道の草原で繁殖する渡り鳥シマアオジは、現在、日本で繁殖する野鳥のなかで最も国内絶滅の危機にある種の一つです。日本野鳥の会では、シマアオジの国内外の生息状況の把握やシマアオジの繁殖地である北海道に保護区を設置するなど保護活動に取り組んでいます。

これまでの活動

観察情報をお寄せください!

現在、日本国内でのシマアオジの繁殖地はサロベツ原野のみで、その他の確認記録は渡りの途中と考えられるものだけです。さらにサロベツ原野での繁殖つがい数も減少傾向のままです。海外での取り組みが進み、国内でもサロベツ以外での繁殖地が復活したときには、急いで保護対策を行う必要があります。

北海道で夏にシマアオジを目撃された際には、当会保護室にぜひご連絡ください。関係方面と協議し、必要な措置がとられるように働きかけを行います。

連絡先:日本野鳥の会 自然保護室
E-mail:[email protected]


YouTube「シマアオジを知ろう、伝えよう」

シマアオジの世界分布

繁殖地は、東はロシアのサハリン、カムチャツカ半島、アムール地方から、西はフィンランドあたりまで、ユーラシア大陸の北側に広く分布する。繁殖地に比べて越冬地は狭く、中国南部、インドシナ半島、インド北東部など。日本国内では北海道のほかに、1976年に青森県むつ市で、1982年には秋田県の八郎潟干拓地で巣が見つかっている。

シマアオジの世界分布図

渡り鳥「シマアオジ」の世界的減少

2016年、環境省が北海道内で過去にシマアオジの繁殖記録があった場所で確認調査を行ったところ、サロベツ湿原でわずか3つがいの繁殖が確認できただけでした。1970年に同じサロベツ湿原で行われた調査では、シマアオジはもっとも数の多い種であり、繁殖も牧草地、海岸砂丘の草地、湿原などさまざまな場所で行われていました。

北海道全域で見られていたシマアオジが、各地の観察会で見られなくなってきたのは、1990年代になってからです。環境省のレッドリストでも、1998年には準絶滅危惧種でしたが、2007年には絶滅危惧Ⅰ類となってしまいました。「草原のフルート奏者」とも呼ばれるその姿は、もはや見ることが難しい現状です。

シマアオジの減少は、世界的にも起きています。シマアオジの繁殖地は東アジアを中心に次第に広がり、20世紀半ばにはフィンランドまで達していました。越冬地は中国南部から東南アジアで、秋には数万羽規模の渡りの群れが中国で見られたそうです。しかし、1990年代になって、北海道のシマアオジの減少が指摘されはじめ、いくつかの調査研究が行なわれた結果、ヨーロッパでは80%以上も個体数が減少しており、一部の国では消滅していることも明らかになりました。

中国の捕獲で激減か

シマアオジが減少した要因の一つに、渡りの中継地である中国での捕獲が指摘されています。シマアオジは中国の稲の収穫期に群れで渡って来るため、古くから米を食べる害鳥として捕獲され、食料とされていました。

1980年代以降の経済成長に伴って、中国では野生動物の売買が急増し、特にシマアオジは「空飛ぶ朝鮮人参」とも言われて人気があり、広東省ではシマアオジを食べる観光祭りが開催されるなど、大量に捕獲されていました。その後90年代にシマアオジの減少が指摘され、中国での捕獲や市場での売買が禁止されましたが、今でも違法な捕獲や闇市場での摘発が後を絶たない状況です。また、東南アジアの越冬地では、保護のレベルも低く、密猟も行われています。

サハリンと香港の市場の写真

右写真:香港の市場で、12羽70香港ドルで売られていたシマアオジ(1997年撮影) 写真提供/シンバ・チャン(バードライフ・インターナショナル東京)
左写真:サハリン北部で繁殖しているシマアオジは、日本で繁殖する種と近いと言われ、今後の保全計画に向けた調査が行われた

日本国内の保護増殖事業に向けて

罠の写真

2012年に中国警察が発見した密猟現場。シマアオジが大群でねぐら入りするところを狙い、罠をしかけていた 写真提供/シンバ・チャン(バードライフ・インターナショナル東京)

2017年、中国では野生生物保護法が改正され、シマアオジの保護のレベルが上げられました。しかし北海道のシマアオジはすでに危機的な状況です。そこで今年から、バードライフ・インターナショナルと当会、ロシアの研究者でサハリンでのシマアオジの共同調査を開始しました。

サハリン北部で、現在でも相当数が繁殖しているシマアオジは日本で繁殖しているものと同じ亜種と言われており、万一、日本で絶滅した場合に、北海道に再導入しての保護増殖が可能な個体群と考えられます。そのため今回の調査では、北海道のものと遺伝的に同じものかをチェックするために羽毛や血液のサンプルの収集、渡りや翌年の繁殖地への帰還率を調べるためにカラーリングの装着などを行ないました。来年は渡りの経路を調べるためジオロケーターという小型の装置を取りつける予定です。同様の取り組みは、モンゴルやアムール川流域のシマアオジの繁殖地でも始められています。

こうした国家間協働の保護政策がスムーズに行なえるよう、当会ではシマアオジを「種の保存法」の国内希少野生動植物種に指定するよう国に提案をしてきましたが、まもなく指定される見込みです。日本の法律によって保護されている種であれば、今後、遺伝的一致が検証された場合には、サハリンの個体の日本再導入の可能性が見えてきます。また、日中、日ロの渡り鳥条約に基づく国際連携も可能となるでしょう。

NGOが着手したシマアオジ保全の取り組みですが、本格的な保護政策の第一歩を踏み出すことができました。シマアオジが奇跡の復活を果たせるよう、継続して活動を続けていきます。

絶滅危惧種保護への寄付はこちら

ラムサール条約による湿地保護とワイズユース(賢明な利用)

ラムサール条約ロゴ

ラムサール条約湿地「葛西海浜公園」

ラムサール条約湿地「葛西海浜公園」 日本野鳥の会東京を中心とした本会等の活動で2018年に登録された

ラムサール条約は、湿地の保全と利用に関する国際条約で、正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」と言います。日本は1980年に批准しましたが、本会は、批准に向けて関連国際会議の開催の誘致支援を行うなど当初より関わってきました。

当会レンジャーが関わるラムサール条約湿地

風蓮湖・春国岱

風蓮湖・春国岱

ウトナイ湖サンクチュアリ開設10周年の1991年に、「ウトナイ湖」が日本で4番目のラムサール条約湿地となりました。レンジャーはじめ地元自然保護関係者の運動が実った結果です。1987年には鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリを開設し、日本の登録湿地第1号の「釧路湿原」の保全にも関わってきました。「風蓮湖・春国岱」は、2005年に登録されましたが、ここでも当会レンジャーが登録に寄与しました。2012年に登録された豊田市の「東海丘陵湧水湿地群」は、固有植物などの生育が評価され登録されました。ここは、当会が登録を提案し、2024年3月まで保全と管理に関わってきた湿地です。

日本のラムサール条約湿地地図 登録湿地数:54ヶ所、総面積:166,134ha

東アジア・オーストラリア地域フライウエイ・パートナーシップ

ラムサール条約関連の水鳥保護ネットワークに、東アジア・オーストラリア地域フライウエイ・パートナーシップ(EAAFP)と言うものがあります。「フライウェイ」とは渡り鳥の渡りルートを、地域レベルで包括的にくくった範囲のことで、世界で9つのエリアに分けられます。日本に飛来する野鳥はオセアニア、東南アジア、日中韓等が含まれる北東アジア、そしてロシア東部からアラスカまで22カ国をまたぎ、渡りをしています。

EAAFPは2006年に発足し、現在、日本の環境省を含む18カ国の政府組織や、日本野鳥の会、バードライフ・インターナショナル、ウェットランド・インターナショナルなどの国際NGOを含め、40組織が参加しています。日本の渡り性水鳥重要生息地ネットワークには34カ所あり(2023年8月現在)、当会のレンジャーが関わるウトナイ湖、風蓮湖・春国岱などラムサール条約湿地をはじめ、東京港野鳥公園も参加しています。

自然エネルギーとの共生

地球規模の温暖化は、私たちの生活に大きな影響を及ぼし、生物多様性の消失を引き起こしています。それを抑制するには、化石燃料由来のエネルギーの使用を抑え、自然エネルギーの利用を拡大していく必要がありますが、一方で、生物多様性の保全との両立は難しく、多くの課題があります。

野鳥と風力発電

風力発電の風車

風力発電の普及にともない、回転する風車のブレードに野鳥が衝突するバードストライク、風力発電周辺の生息地の放棄、渡りや移動の経路を阻害する障壁影響という問題が発生しています。当会では風力発電をはじめとした自然エネルギーの導入に賛成していますが、立地選定の誤りによって地域の生態系や生物多様性の消失を招くべきではないと考えています。

大規模太陽光発電施設が自然環境に与える影響

太陽光発電のパネル

当会では、太陽光発電等の再生可能エネルギーについても積極的に導入すべきと考えています。しかし近年、森林や草原、湿地、水面などにおける大規模太陽光発電施設(メガソーラー)の建設により、各地で野鳥の生息地の消失や自然保護上の問題が発生しています。適切な立地選定と詳細な環境影響評価を設置前に行なうことが必要です。

自然エネルギー問題対策への寄付はこちら

南伊豆洋上風力発電事業計画への対応

当会からの意見書等

南伊豆におけるカンムリウミスズメの生息状況

この洋上風力発電事業の計画区域には、カンムリウミスズメの繁殖地の1つ神子元島が含まれています。

下田市の神子元島および伊豆諸島の新島、神津島、三宅島周辺は、この地域の中で、カンムリウミスズメの繁殖個体数が特に多い地域で、世界最大の繁殖地である宮崎県枇榔島に次ぐ規模の繁殖地となっており、絶滅の恐れのあるカンムリウミスズメの保護を進める上で重要な場所となっています。特に神子元島は本州沿岸部に残された貴重な繁殖地でもあります。

図1.伊豆諸島周辺海域における繁殖期の分布
図1.伊豆諸島周辺海域における繁殖期の分布

図2.伊豆諸島周辺海域における繁殖地
図2.伊豆諸島周辺海域における繁殖地


カンムリウミスズメは繁殖期にだけ島に上陸し、巣で2個の卵を産みます。抱卵交代は1~3日おきに夜間に行い、約30日で孵化、孵化後1~2日ほどでヒナは海へと旅立っていきます。この時期、親鳥は交代で海に出た際に採餌をしますが、どの辺りまで餌を取りに行くかは全く分かっていませんでした。そこで、2018、2019年に神子元島でGPSロガーを用いて繁殖個体の採餌海域の調査を行ったところ、3個体から約17~40時間のデータを得ることができました。その結果、神子元島で繁殖を行うカンムリウミスズメは島から10km近く離れた場所まで採餌に行っており、伊豆半島と神子元島の間の海域を利用していることがわかりました。

図3.神子元島の繁殖個体3個体の採餌海域
図3.神子元島の繁殖個体3個体の採餌海域

また、2010、2011、2013、2019年の繁殖期に行った日中の洋上個体数調査で、神子元島周辺の個体が確認された位置データをまとめた結果、神子元島と伊豆半島南部との間の海域を広く利用していることがわかっています。

図4.神子元島周辺の繁殖期洋上個体数調査における個体確認地点
図4.神子元島周辺の繁殖期洋上個体数調査における個体確認地点

図3,4に示した赤い線の中が南伊豆洋上風力発電事業実施想定区域とされています。当会の調査結果から、カンムリウミスズメは、区域内を利用して生息していることが明らかになっており、当会は、計画の変更を事業者に強く求めています。

野鳥保護区シマアオジサロベツ(やちょうほごくシマアオジサロベツ)

シマアオジ保護のための野鳥保護区
北海道宗谷地域 14.7ヘクタール(※一部持ち分あり)

野鳥保護区シマアオジサロベツ

国内で繁殖するシマアオジは、当会の調査では2019年は14つがいしか確認されず、2年半前から半減しています。繁殖が確認されている場所は、国立公園や鳥獣保護区に指定されていますが、繁殖は確認されていないものの、生息が確認できる場所が1か所ありました。国の保護区外にあるため農地整備等で消失のおそれがあり、シマアオジの調査を協力して行っているサロベツ・エコ・ネットワークと共同で土地を購入し、野鳥保護区として保全することとしました。

購入には「絶滅危惧種の保全に」と匿名でいただいたご寄付をあてました。今後も調査や国際協力による保護や野鳥保護区の設置を進めます。

注)土地の所在等は希少種保護の観点から非公表とさせていただきます。

ツバメのねぐら入り

ツバメの集団ねぐらとは?

ツバメのねぐら入り「流れ」

ツバメの集団ねぐらとは、ツバメが夜に集まって眠る場所のことです。集団ねぐらの規模は、場所や時期、天候などの条件によって変わります。数百羽程度の小さなねぐらもあれば、5万羽、10万羽にもなる大きなねぐらをつくることもあります。

集団ねぐらは、ヨシ原につくる

ヨシ原に舞い降りたツバメたち

集団ねぐらをつくる場所は、主に大きな川の河川敷や、遊水地などの湿地にあるヨシ原です。ヨシとは、湿地で育つ植物のひとつ。成長すると草丈は3メートルほどにもなります。 ツバメは、ヨシの茎の先端や葉に器用にとまって夜を過ごします。

どうして集団ねぐらをつくるの?

ツバメが集団ねぐらをつくる理由は、よくわかっていません。ツバメを狙うヘビやタカ、カラスなどから身を守るためという説や、エサがたくさんとれる場所の情報交換をするためという説があります。 集団ねぐらをつくる鳥は、ツバメのほかにもハクセキレイやムクドリなどがいます。

ツバメのねぐら入りを観察しよう


ツバメのねぐら入り「流れ」 (撮影:佐藤信敏)


ツバメのねぐら入り「木の葉落とし」 (撮影:佐藤信敏)

ねぐら入り観察の見どころは、なんといっても壮大な迫力にあります。集団ねぐらの上空では、日没直前の30分くらいの間に、数千、数万羽ものツバメが舞い、集団ねぐらへといっせいに降りてゆきます。そして完全に日が暮れると、それまでの賑やかさがピタリとおさまり、ツバメたちは眠りにつきます。ねぐら入りを観察することで、子育てをしているときとは違う、ツバメの新しい一面に気づくことができます。日本野鳥の会では、7月~9月の期間に、全国各地でツバメのねぐら入り観察会を開催しています。実際にツバメがねぐら入りするようすを体感してみませんか?

全国「ツバメのねぐら入り観察会」のご案内

全国のツバメのねぐらマップ

観察にあたって注意すること

  • できるだけ公共交通機関をご利用ください。
  • 強力なライトを照らしたり、カメラのフラッシュをたくなど、ツバメをおどろかすことはやめましょう。
  • 田んぼのあぜには立ち入らないでください。
  • 夜間の観察になりますので、事故のないようにご注意ください。

パンフレット おやすみツバメ プレゼント!

小冊子『ようこそツバメ』

ツバメの「集団ねぐら」についての解説や、「ねぐら入り」の見どころ、ねぐらとなるヨシ原の重要性をわかりやすく紹介しています

詳細はこちら!

ツバメの現状(ツバメは減少している?)

ツバメをまもろう

日本野鳥の会の自然保護活動にご支援ください